「小説を書く」ことを諦めきれずにいた私が、ライターになった話。|私の転職体験談
転職前
- 職業
- 印刷会社
- 職種
- 営業
- 従業員規模
- 60人程度
- 年収
- 240万円
転職後
- 職業
- ライター
- 職種
- 研修・組織開発
- 従業員規模
- 8名
- 年収
- 300万円
目次
不可思議さんの転職ストーリー
1これまでの私
「将来は小説家に」。そんな思いを抱きながら、営業会社に就職した私。
学生の頃は、某大学の文芸創作を専門に学ぶ学科に所属していました。
高校生くらいからでしょうか、本を読むことが大好きになり、それに伴って「自分で小説を書きたい」と志し、現役の小説家の先生方の下で学べる、その大学を選んだのです。
正直に申し上げると、小説家になる、ということはそんなに難しくないと思っていました。
それこそ、在学中に自信作を書き上げて、新人賞を受賞しデビュー。そんな目論見もありました。若気の至りかもしれません。
ですので、卒業後、社会人としてどこかに勤める、というヴィジョンが全くありませんでした。
大学四年の春になり、周囲が就活ムードで慌ただしくなる頃にも、私は一日中、小説を読んだり書いたりを繰り返していました。
…焦りですか? まったく無かったとは言いませんが、世間の大学四年生の中ではかなり「就活」というものに対して日和見だったと思います。
そんな中きっかけを下さったのが、当時のゼミの教授です。その教授も小説家の方でした。
- 教授
-
「小説家になるには、まず社会人としての経験を積んだ方がいい」
その教授は、大学を卒業後、某大手出版社で編集者として勤め、30代の頃に小説家デビューされた方でした。
私はその時、
- 私
-
(卒業して働いて、10年後にデビュー…。いや、長すぎる)
そんなことを思っていました。
しかしこれまで自分が書いた原稿などを読み返してみて、あることに気が付きました。
まだ学生としての経験しか積んだことのない私の作品が、ひどく拙いものに見えてきたのです。
- 私
-
(これは教授の言う通りかもしれないな)
そう思った私は、周囲の就活の波に随分遅れて、ようやく重い腰を上げたのです。
しかし「いずれ小説家」という目標しか頭に無い私は、どんな仕事をしたいかといった希望もまったく無く、
- 私
-
(なるべく倍率の少ない、どこでもいいから雇ってくれるところに勤めよう。所詮、小説家になるまでの我慢だし)
そんな思いで、ある小さな印刷会社の営業職として内定をもらったのです。
今思えば、本当に生意気で失礼な動機ですね。
印刷会社の営業職とは
印刷会社の営業職は、顧客のニーズに応じて、印刷物の提案や受注活動を行う役割を担います。
パンフレットやカタログ、ポスター、名刺などの印刷物の制作において、クライアントとの窓口となり、納期や予算、品質の調整を行い、印刷のプロセスをスムーズに進める重要な役割です。
印刷会社の営業職の主な仕事内容
仕事内容 | 説明 |
---|---|
顧客対応と提案 | クライアントのニーズをヒアリングし、最適な印刷物を提案します。 デザインや仕様、紙質、加工方法など、クライアントの要求に応じた提案を行い、納得のいく製品を提供します。 |
見積もり作成と交渉 | クライアントから依頼を受けた内容を基に、印刷の見積もりを作成します。 コスト、納期、品質をバランスよく調整し、クライアントと交渉して契約を進めます。 |
進行管理 | 受注した案件がスムーズに進行するよう、印刷工程の管理を行います。 納期を守りながら、製品の品質がクライアントの期待に応えるものであるかをチェックし、必要に応じて修正や調整を指示します。 |
2転職のきっかけ
「結局、何がしたいの?」という同期のきつい一言。
「社会人生活」というものをナメきっていた私は、いざ就職してみてさっそく横っ面を叩かれることになります。
印刷・広告業界はとにかく忙しく、入社間もなくだろうと関係なく、連日連夜の残業続き。
帰りはギリギリ終電。そんなの当たり前でした。
最初は上司の元で伝票の切り方とか教わるんですけど、教えてくれる上司もそれ以上に忙しいですから、きちんと基本が身につかないうちから実務へ放り投げられるんです。
- 私
-
(仕事を早めに切り上げて、毎日ちょっとずつ小説を書いていこう)
そんな私の幻想はあっという間に打ち砕かれました。
しかも、何の思い入れも無く就職した会社ですから、仕事を好きになれるはずもなく。
- 私
-
「何が楽しくてこんな生活をしなくちゃいけないんだよ」
ある日、同期の3人と飲みに行った場でポツリ、そんなことを漏らしました。
- 同期
-
「逆に何がよくてこの会社に入ったの? 全然わかんないんだけど。私は、ここがいいからここで働いてる。あんまり会社のことを悪く言われるの嫌なんだけど」
同期にそう返された時、私は何も言えませんでした。
今の自分は、自分にも周りの人たちにも嘘をつきながら、目的もなく嫌々仕事をこなしている。それって一体、誰の役に立っているんだろう? そもそも、この先自分はどうなりたいんだろう…?
そんな自問自答を繰り返すたび、脳裏に過ぎるのは「小説家になりたい」という思い。
この気持ちが無くならない限りは、今の会社で働くことはできないだろうと思い、就職からわずか2ヵ月です、私は退職を決意しました。
私の不遜な態度は、一緒に働く同期たちに嫌な思いをさせていたと思います。にも関わらず、私が辞めると言ったとき、泣きながら送別会をしてくれました。
退職した私は、アルバイトをしながら小説家を目指そうと思いました。ただし、1年間の期限付きで。
- 私
-
(1年間、小説家を目指してみて無理だったら、潔く真面目に働こう)
たとえば10年先、20年先、その夢が叶っていなかった時、私はまだフリーターで、先の見えない毎日を生きている。そう思った時に初めて「怖い」と思ったのです。
3転職活動中
「文章を書く」を仕事にするために。
私の1年間はあっという間に過ぎました。
週5日、8時間ずつ働いて、帰宅後は新人賞へ応募する作品を執筆する。
そんな私の焦りや不安や、けれど少しの期待を詰め込んだ作品は、一次選考で落選という結果に落ち着きました。
そこから転職活動に移行する時に「後悔」は不思議とありませんでした。
「一年間、全身全霊でぶつかっていけた」そう思ったからです。
かくして退職から一年越しの転職活動に臨んだわけなのですが、まずは「社会人として、自分は何をしたいのか」を考えました。
そして「書く」ということが何よりも好きな私は、「なにも小説家だけが書く仕事ではない」と思ったわけです。
一年間、アルバイトでライターをしていたのも大きかったと思います。
ホームページの無い治療院や飲食店の、新規HP立ち上げの際の、サイト内文言を制作する仕事だったのですが、これがまた楽しかったのです。
- 私
-
(自分の特技を活かして、好きなことを仕事にできるとしたら、ライターしかない!)
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転職エージェントは「リクナビNEXT」「ウズキャリ」に登録していました。
リクナビNEXTは大手なのでライターの求人数も豊富そうだな、と思ったからで、ウズキャリは正直に言うとアルバイト先から歩いて面談に行けるからという理由でした。
しかし、前職を早期退職し、なおかつライター経験がアルバイトしかない私の転職活動は順風満帆とはいきませんでした。
- エージェント
-
「やっぱりライター職っていうのは経験者優遇なんですよ。〇〇さんの経歴ですと、ちょっと難しくなるかもしれません…探してはみますが、他の職種も視野に入れておいた方がいいですね」
実際、自分で求人を見つけては応募をしてみたりもしたのですが、大体が書類選考で落とされてしまいました。
ようやく面接に漕ぎつけても、早期退職の理由や、一年間の空白をうまく説明できずに落とされてしまう、といったこともありました。
- 私
-
(やっぱり未経験で高望みしすぎかな…)
諦めかけていた頃でした。ウズキャリの担当エージェントさんから「ライター未経験でも歓迎の求人があります!」と連絡を貰いました。その会社が私の今の職場です。
私のライター職にかける思いを理解してくれていたエージェントさんは、何度も面接練習をしてくれ、些細な表現など、「こう言ったらもっと伝わりやすい」と一緒に悩んでくれました。
企業から晴れて内定をいただけた時、私は感謝の気持ちでいっぱいでした。
新卒採用の時も、こんな気持ちを味わえていたら違っていただろうな、と思います。
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4転職後
新しい職場で、待ち受けていた状況は。
新しい仕事は、Webライターです。一部、HTMLのコーディング業務も含まれます。
Webライターとは
Webライターは、インターネット上のコンテンツを執筆するライターのことを指します。
SEO対策を考慮したライティングや、読者のニーズに応じた魅力的なコンテンツ作りが求められるため、文章力とマーケティングの知識が重要です。
Webライターの主な仕事内容
仕事内容 | 説明 |
---|---|
記事の執筆 | クライアントやメディアの依頼に応じて、Web上で公開される記事を執筆します。 対象読者に合わせた文体や内容で、情報をわかりやすく伝えることが求められます。 |
リサーチ | 記事のテーマに関連する情報を収集し、正確で信頼性のある情報を基に記事を作成します。 信頼性の高いソースからのリサーチが重要です。 |
SEO対策 | 検索エンジンで上位表示されやすくするために、キーワードの最適化や、記事の構成を工夫します。 SEOの知識を持ち、記事の露出を増やすことがWebライターには求められます。 |
私が今の会社で働きたいと思った理由は2つあります。
1つは、そこで働く社員さんたちの人柄です。
と言っても、入社前は面接でしか判断できない側面はありましたが、その面接での社長と、後の直属の上司の人柄が、とても良く感じたのです。
正直それまではある企業の面接に行っても、私の経歴を見るだに眉をしかめられたり、説教をされたりといったこともありました。
しかし今の職場の上司は、「小説家になりたい夢を捨てきれず、会社を辞めた」という、社会人としてはかなり甘い私の背景にも理解を示してくれましたし、「書く」ことが好きな私の話を、どんどん深堀りして聞いてくれたのです。
もう1つは、事業内容ですね。
今の会社のメイン事業は研修や組織開発になるのですが、私はもう一つのメディア事業での応募枠で転職しました。
- 上司
-
「ゆくゆくは、自社内のHPで小説を連載したいと思っています」
面接の際にその話を聞いた時に、まさか自分の夢がここで繋がる可能性があるかもしれないことに驚きましたし、ぜひその事業に携わりたいと思ったのです。
私の今の業務は、多くの方の転職にまつわる体験談を自社サイト上に掲載する作業と、転職や管理職の方に向けた様々な情報記事の執筆、そして念願だった連載小説の執筆にも関われています。
私の得意を活かせていると感じていますが、もちろん簡単な事ばかりではありません。
転職前にやっていた「小説を書く」ということは、自分の思ったこと・感じたことを、自分なりの表現で自由に書けました。
しかし、今の業務はそうはいきません。当然「不特定多数の人に読んでもらう」ことを前提としていますので、誰が読んでも伝わるような、そんな表現を求められるのです。
このギャップが、始めのうちは戸惑いました。
書いた原稿も何度も赤印をつけられて戻ってきてしまう時期もありました。
それでも腐らずにいられたのは、やっぱり書くことが好きだったのと、「私の成長を願ってくれているのだな」と上司の姿勢から伺えたことです。
5その後、どうなったか。
転職を振り返って、今思うこと。これから、目指したいこと。
先日、ゼミの教授に会う機会があり、今の私の仕事を説明すると
- 教授
-
「そうか、夢が叶ったんだね」
と言われました。その時になって私も初めて「そうか、叶えられているのか」と思いました。
今でも小説を読むことが好きですし、「俺の方が面白く書けるのに!」なんて思うこともあります笑。
学生時代の知人が小説の賞を獲ったと人伝に聞き、胸がざわざわとすることもあります。
でも、それは別に隠さなくてもいい気持ちなんじゃないかな、と思えるようになりました。
今の職場は研修や組織開発をしていることもあり、ミーティングの時間が多くあります。
そこでは自分の率直な気持ちが求められており、今でも自分のありのままの意見をぶつけることには迷いがあります。
もっと言えば、これまでの私の人生は、言いたいことを自分の内側に閉じ込め、そのフラストレーションこそが創作の意欲に繋がっているところもありました。
けれど精神衛生上は、あまり良くないですよね。
自分の思ったことを素直にぶつける。そしてそれを受け入れてくれる土壌が、今の職場にはある。
◇ ◇ ◇
なので、今後はもっともっと自分の意見を発信し、場を活性させられるような人間になりたいと思っています。
また、自社サイトで連載している小説の最終目標は「書籍化」です。
叶えられたらいいな、と思っています。
社会に出るということは、それだけ様々な人との関わりが生まれることでもあります。その中では理解し合えることもあれば、衝突が生まれる瞬間だってもちろんあると思います。
でも、今はとにかく後先考えず、色々と行動してみたいという気持ちがあるのです。
私の好きな小説にこんな台詞があります。
「道々考えればいいさ」
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