49歳で「訪問看護」に転職。大学病院から在宅医療へ、看護師としての再挑戦|転職体験談
転職前
- 職業
- 医療
- 職種
- 看護師
- 従業員規模
- 1700人
- 年収
- 580万円
転職後
- 職業
- 医療
- 職種
- 訪問看護
- 従業員規模
- 22人
- 年収
- 540万円
目次
ひなたさんの転職ストーリー
1これまでの私
大学病院で27年。多忙な看護師生活と感じた寂しさ

私は看護専門学校を卒業後、新卒で大学病院に就職し、看護師として27年間勤務してきました。外科・内科・救命救急・小児科など、いくつかの診療科を経験し、夜勤を含む病棟勤務を続けていました。
私は「負けず嫌い」で、決めたことは最後までやり抜く粘り強さがあります。ただし、自分の考えに固執してしまいがちで、ときに周囲の意見を受け入れるまでに時間がかかることもあります。
一人暮らしで、遠方に高齢の両親がいます。仕事に追われる日々で「やりがい」や「生きがい」を感じる余裕は少なかったものの、患者さんから感謝の言葉をいただくと「この仕事を続けていてよかった」と心から思います。
大学病院では最先端の医療に触れる機会があり、学びも多い環境でした。ただ、患者さんの病状が安定するとすぐに地域の病院へ転院となるため、築いた信頼関係が途切れ、その後の様子を見届けられない寂しさもありました。
2転職のきっかけ
「家に帰りたい」と願ったまま亡くなる姿。訪問看護の道を決意

転職は、なにか特別なきっかけがあったわけではなく、これまでの積み重ねから「働き方を変えよう」という結論に至ったのが正直なところです。
コロナ禍以降、多くの病院で面会が制限されるようになり、家族に見守られずに寂しい想いをされている患者さんを診ることが多くなりました。
その中には、ずっと「家に帰りたい」と願いながらも亡くなっていく患者さんもいらっしゃいました。
「病院の個室」ではなく、「自宅という大切な場所」で、家族や友人に囲まれて過ごせる時間を支えたい──。
そんな思いが募り、導き出された答えが「訪問看護への転職」でした。
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3転職活動中
49歳の転職活動。年齢の壁と向き合いながら職場を探す

訪問看護ステーションは数多くありますが、私は「診療所併設型」で医師と密に連携できる職場を希望しました。
事業の安定性も重視して、看護師仲間から情報を集めたり、職場のホームページを直接チェックしました。
転職エージェントも候補にはありました。しかし、転職成立時に支払われる高額な紹介料を知っており、そのシステムが個人的に好きではなかったため、ハローワークや直接応募を中心に進めることにしました。
当時私は49歳。年齢不問とされる募集に応募しても、「うちは40歳くらいまでが希望でして…」と言われることが何度かあり、年齢による壁の大きさを実感しました。
ただ、悪いことばかりではありませんでした。大学病院での経験を評価してくださる職場も多くあり、前向きな気持ちを保てたのは今でもありがたいと感じています。何より友人や遠方の両親からの励ましに支えられました。
ハローワークの相談員には当たり外れがありますが、私を担当してくださった女性相談員は親身になってくれました。
たとえば、求人票で気になる箇所があったときに「ここは少し注意しておくといいかもしれませんね」など、細かな点まで丁寧に教えてくれました。
就職前の職場見学についても問い合わせてくれたり、不安な気持ちに寄り添ってくれたりと、本当に助けられました。
結果、かねて望んでいた、訪問介護も行っている診療所に就職先が決まりました。
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4転職後
在宅医療の現場。患者と家族の“最期の時間”を支える看護

現在は、医師3名・看護師15名・ソーシャルワーカー1名・看護補助者1名が在籍する診療所に勤務しています。
外来診療と並行して、訪問診療・訪問看護も行っており、主に高齢者やがん患者、医療的ケアが必要な方々のご自宅や施設を訪れています。
「病院ではなく、家で最期を迎えたい」と望んで退院された方を支えるケースが多く、限られた時間を痛みなく、穏やかに過ごしていただけるよう支援するのが私たちの役割です。
人間関係の難しさはありますが、「患者さんのために」という思いは全員に共通しており、大きな衝突はなく働けています。
中には、ご家族の対応に悩むこともあります。理不尽なクレームや感情的なやり取りがあることも事実です。
それでも、患者さんとご家族が「家で看取れてよかった」と言ってくださる瞬間があると、それまでの苦労が報われ、また頑張ろうと思えるのです。
まだ転職して1年ほどですが、実務には慣れてきました。それでも学ぶことは尽きず、日々が勉強です。
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5その後、どうなったか。
「病院だけが医療の場じゃない」地域に根差す看護の未来を見つめて

訪問看護を通じて、住み慣れた場所で人生を全うすることの尊さを深く実感するようになりました。
病院は安心感のある場所ではありますが、時間や面会の制限があります。家なら、家族の声や台所の音、日常の空気に包まれながら、安心して過ごせます。
ただし、医療に詳しくないご家族にとって、自宅で看取ることに不安を感じるのは当然です。だからこそ、私たちがサポートしながら「在宅医療は特別なことではない」と伝えていくことが重要だと感じています。
訪問看護は、家でも医療が受けられるという選択肢を地域に届ける手段です。
今後は、町内会など地域の場で訪問看護の説明会や事例紹介などを行い、気軽に相談してもらえる環境づくりに取り組みたいと考えています。
大学病院では退院後のフォローまでは難しかったですが、地域に根差した診療所だからこそ、住民の皆さんの「安心」を支える存在になれるはずです。それが、今の私の目指す姿です。