状況が変わらなければ、環境を変えよう。ホテルフロントから地元の家業へ|私の転職体験談
転職前
- 職業
- ホテル接客業
- 職種
- フロントスタッフ
- 従業員規模
- 20名
- 年収
- 280万円
転職後
- 職業
- 移動販売
- 職種
- 移動スーパーの経営と販売
- 従業員規模
- 5名
- 年収
- 380万円
目次
レッサーパンダさんの転職ストーリー
1これまでの私
「接客」という仕事への憧れ
物心ついたときから、「接客の仕事っていいな」と思っていました。
その理由は、私の実家は自営業で移動スーパーを営んでおり、小さい頃から父がお客様と楽しそうに会話をしているのをみて育っていたからです。
商品を仕入れて、お客様にそれを届けて、そして感謝をされる。──そんな働き方に、憧れを持っていました。
大学を卒業後、私は愛知県にあるホテルにフロントスタッフとして就職しました。
ホテルのフロントスタッフとは
ホテルのフロントスタッフは、宿泊客のチェックイン・チェックアウト対応をはじめ、滞在中のさまざまなサポートを行う職種です。
主に、予約管理やお客様からの問い合わせ対応、館内設備の案内、さらに地域情報の提供などを担当します。
ホテルのフロントスタッフの主な仕事内容
仕事内容 | 説明 |
---|---|
チェックイン・チェックアウト対応 | 宿泊客のチェックイン時には、予約情報の確認や部屋の案内を行い、チェックアウト時には精算や感謝の言葉を伝えます。 |
予約管理・変更対応 | 宿泊の予約受付やキャンセル、変更対応を行います。オンライン予約システムや電話での対応も多く、ダブルブッキングを防ぐための管理が重要です。 |
館内設備の案内 | 宿泊客に対して、ホテル内のレストランや温泉、会議室などの設備について案内します。顧客の要望に応じて、最適なサービスを提案します。 |
地域情報の提供 | 観光案内や周辺施設、交通情報の提供を行い、宿泊客が滞在中に楽しめる情報を提供します。地元の知識が求められます。 |
問い合わせ・トラブル対応 | お客様からの問い合わせに応じ、滞在中に発生するトラブルの解決にあたります |
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就職して最初の数か月はかなり大変でした。
研修では覚えることは山積みでしたし、私は就職する前の大学四年生の頃に彼女が妊娠して、就職と結婚、出産、子育てがほぼ同時進行だったからです。
4月に大方の研修を終え、5月に正式にホテルフロントとして実務をはじめて段々と仕事に慣れてきて、するとようやく、小さいころから憧れていた「接客業」の良いところが徐々に見えてきて。
フロントとして働き始めてすぐに、宿泊客の方々から直接感謝の言葉を頂く機会が数回あり、(接客業を選んで、本当によかった)と感じられたのです。
また、職場の雰囲気や人間関係もとても良好で、残業もほとんどありませんでした。
(この先私は、ずっとホテルフロントで働いていくのだろう)、──当時はそんな風に思っていました。
2転職のきっかけ
「状況が変わらなければ、環境を変えればよい」という考え。
ホテルフロントとして働き始めて3年目の2020年、新型コロナウイルスの感染拡大が起きて、私のホテルも大打撃を受けました。
宿泊の予約は殆ど入らなくなり、それにあわせて私の給料もガクンと下がりました。
業績の悪化へのストレスがあったのでしょう、私の上司はいつも不安そうな表情で、ときに苛々して私にきつく当たることも多くなりました。
「今は皆大変な時期だからしょうがない」──そう自分にいい聞かせていましたが、あるとき友人から
- 友人
-
「転職とかは考えないの?」
と訊かれて。
私は転職という言葉にあまり良いイメージを持っていなかったのですが、それに対して友人はこう言いました。
- 友人
-
「今が大変かどうかは、職場によっても変わるもんだよ。それにお前は家族も養っているんだし。職場の人たちのことを考えることも大事だけど、『家族にとってのもっと良い環境』を選んでった方が良いんじゃないか」
──その友人は去年転職をしていて、結果として年収も若干上がり新しい職場でやりがいを持って仕事ができていると話してくれました。
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その数日後、実家の父と電話で話していた時に、父からは
- 父
-
「まあ、今の仕事が大変だったら(地元に)戻ってきたらどうだ。うちの家業を継ぐという選択肢もあるだろう」
と言われました。
友人からは転職を勧められ、父親からは家業を継ぐことを提案されて、最初は「みんな、こっちの状況も知らないで、勝手なことを言う」程度に思っていましたが、そのことはずっと頭の片隅に留まっていました。
そしてその2ヵ月後には、
- 私
-
(ホテルフロントマンを辞めて、実家の家業を継ごう)
という気持ちになっていました。
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3転職活動中
ホテルフロントを辞めて、実家の家業を継ごう。
- 上司
-
「一週間、よく考えてみたらどうだ」
退職する意を伝えたときに、上司からはそう言われました。
その際に、「この時勢では、次の就職先を決めるのも大変だろう」とも言われました。
意外だったのは、私が退職することに上司が少なからずのショックを受けていたということです。
あまり男性スタッフのいない職場でもありましたし、上司はそれなりに将来の私に期待をかけていてくれたのでしょう。
このときになってはじめて、私は(職場を辞めるというのは、こういうことなのか)と知りました。
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続いて苦労したのは、妻の説得でした。
子どもの保育園が見つかって、妻もパートを始めた矢先のことでした。
家業を継ぐとなれば、まず引っ越さないといけませんし、そうなれば妻はパートを辞めなければなりません。子どもの保育園もまた新しく選ぶ必要があります。
妻とは、「どちらかがヒートアップしたらいったん次回に持ち越そう」というルールで、何日間もかけて話し合いました。
そしてようやく、実家は二世帯住宅に改築すること(その費用は親が負担してくれました)、そして子どもの面倒は私の両親も診てくれるという条件で、妻のほうも納得してくれました。
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──余談ですが、Uターン転職が決まってからは、私よりも妻の方がテキパキと準備を進めてくれました。
こういうとき、男は本当にダメですね。
決めた後も「本当にこれで良かったのか」とぐずぐず悩むのは大抵男(つまり私)の方で、妻の行動力には大いに助けられました。
4転職後
Uターン転職して、新しい生活が始まって。
慣れ親しんだ地元、そして実家に戻って、新しい生活が始まりました。
先述したように両親は私たち家族のために二世帯住宅のリフォームしてくれて、私と妻と子どもはそこに住まわしてもらうことになりました。
そして毎朝、父とともに移動スーパーの仕事をはじめました。
移動スーパーとは
移動スーパーは、車両に食品や日用品を積み、地域を巡回して販売を行うサービスです。
特に、買い物が困難な高齢者や過疎地の住民にとって重要なサービスとして機能しています。
利用者のニーズに合わせ、定期的に地域を訪問し、顧客との信頼関係を築くことも特徴の一つです。
移動スーパーの主な仕事内容
仕事内容 | 説明 |
---|---|
商品販売 | 移動販売車を利用して、地域住民に対して食品や日用品を販売します。車内の商品は定期的に補充され、利用者のニーズに応じた品揃えを提供します。 |
地域の巡回と顧客対応 | 定期的に地域を巡回し、固定の利用者に加え新規の顧客にも対応します。 |
商品管理 | 販売する商品の品質管理や在庫管理を行い、鮮度や衛生面に配慮します。また、季節や地域ごとの需要を把握し、適切な商品を準備します。 |
売上管理・レジ操作 | 移動販売車でのレジ操作や売上の管理を行います。売上データの記録や、会計業務を正確に処理します。 |
地域のサポート役 | 地域住民の生活を支える役割として、商品販売以外に地域の声を聞き取ったり、交流を深めることもあります。 |
実際に働いてみると、想像以上に大変な仕事だということを感じました。
当然、ホテルのフロントスタッフとは全く異なる仕事内容です。
ただ、仕事内容を教えてくれるのは父親でしたので、遠慮せずにどんどん分からないことを聞けましたし、父も丁寧に教えてくれました。
たまに両親がご飯を用意してくれたり、子供の面倒を診るのも手伝ってもらったりもあったので、私生活の面でも非常に助かりました。
5その後、どうなったか。
今回の転職を振りかえって、今思うこと。そして、これから目指したいこと。
転職する数か月前に、友人から「コロナ禍の大変さも、環境によって変わる」と言われましたが、実際にその通りでした。
移動スーパーは、コロナ禍で自粛を余儀なくされている人にとって、大きな需要の追い風になっていたのです。
売り上げはコロナ禍前と比べてものすごく伸びていて、私の給料もホテルフロントの時よりも高くなりました。
またそうした時候もあってか、お客様から感謝されることも多かったです。──「こんな辺鄙(へんぴ)な場所まで、よく商品を届けてくれた」と。
転職をして良いことづくめであったように感じますが、ただ、今のこのストレスフリーな生活が、果たして自分の成長にどれだけ関わっているかについて、若干の不安もあります。
ホテルフロントでは厳しい上司がいて、そしてミス一つ許されない緊張感があって、それらは私の社会人としての経験やスキルアップにも大きく寄与してくれていると感じられました。
今は、あまりそういった手応えのようなものはありません。
まだ若い今のうちに、もっと社会の荒波に揉まれて人間としてもっと成長したほうが良かったのかもしれない──と、そんな風に思うこともあります。
◇ ◇ ◇
将来にむけて考えていることは、まず父から受け継いだ仕事を、「もっと大きくしていきたい」ということです。
父が移動スーパーを始めて15年くらい経ちますが、初めの数か月間の売り上げは一日千円程だったそうです。
つまり、その当時はごく一部の人からしか必要とされていないようなサービスだったのです。
それが現在では、非常にたくさんの人たちから必要とされるようになって、ときに休みも返上して働かないといけない程になっています。
ここまで盛況するまでどれだけの苦労があったのか、あえてなのでしょうが、父は私にそういう話を殆どしません。
ですので、私も今の状況に甘んじることなく一生懸命働き、今の市場を更に拡大していきたいと思っています。
また、そのまま父の仕事を受け継ぐのではなく、自分のアイデアも足してもっと良いものに変えていきたいです。
そして一番の願いは、自分の子供が将来仕事を継いでくれることですね。
もちろん強要はしませんが、子供が大きくなった時に自分からやってみたいというような、そんな風に仕事ができたら良いと思います。
そして家族を末永く養っていけるよう、心身の健康にも気をつけて、毎日を暮らしていきたいです。
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