転職を妻・家族から反対された場合の対策と思考の切り替え方
[最終更新日]2024/07/21
転職を決意するときに必要なのは、自分自身の決断だけではない場合があります。
家族や婚約者などにとって、パートナーの転職は大きな出来事です。転職には少なからずリスクが伴います。リスクを取ってチャンスを得ようとするか、現状維持を貫くか、身近な人の意見を聞き入れないわけにはいかない場合もあるでしょう。
目次
1)妻・家族からの反対が、転職時のハードルになる場合もある?
妻・家族から転職を反対される状況とは?
近年、メディアなどで「嫁ブロック」という言葉を聞くようになりました。転職を検討している夫や恋人に対して、「転職しないで欲しい」「今の仕事を続けてもらいたい」と言って転職を阻止することを、このように呼んでいます。
そもそも転職は働く本人自身が今後のキャリアについて考え、決断するべきものです。
しかしながら、働くことで収入を得て生活しているわけですから、今後も一緒に暮らしていく妻や恋人にとって、パートナーの収入が減ってしまう(またはゼロになってしまう)ことは大きなリスクです。
嫁ブロックという言葉には、「転職しようとしているパートナーの決断を阻む」というネガティブなイメージが含まれている、という見方もできるでしょう。
妻・家族から転職を反対される主な原因3つ
では、嫁ブロックはなぜ起きるのでしょうか。これには主に3つの理由が考えられます。
- A:転職に伴うリスクなど負の部分だけを見ているから
- B:現状の待遇に対して致命的な不満がないから
- C:本人の転職に対する考え方が本当に甘いから
多くの人は身近な人から転職を反対されたとき、Aの理由で反対しているのだろう、と直感的に考えます。
今でこそ社会人人生の中で転職を経験するのはめずらしくなくなっていますが、終身雇用の時代であれば転職は「逃げ」でしかありませんでした。
その感覚は今も根強く残っているため、転職=危険なもの、と感じて反対する人は少なくないのです。
パートナーの心情を考えると、Bの理由はよく分かるはずです。「今の職場でそう問題がないのだから、このまま堅実にやっていくほうが安全」というわけです。
あるいは、大企業など安定した環境を捨てることと、転職によってチャンスを手にすることとを天秤にかけ、安定を取りたくなるのは本人のことを心配しているからでもあるのです。
ただし、Cのパターンもあり得ることを忘れるべきではありません。求人には美辞麗句が並んでいることもありますので、「今の職場より良さそうだ」と安易に考えて転職してみたら、悪い部分が目につくということはよくあるのです。
パートナーの客観的な意見を聞き入れるべき場合もあることを頭の片隅に置いておくことが大切です。
2)現状維持と体面のために転職を断念するとどうなる?
ここからは「嫁ブロック」によって転職を再検討した事例を見ていきましょう。
1つめの事例は、結果的に転職を断念することになったパターンです。奥さんが転職に反対した理由と、意見を聞き入れた理由に着目してみてください。
安定した暮らしと大企業勤務のプライドを捨てきれなかったTさんの事例
Tさんは新卒から大手印刷会社に勤務してきた38歳の男性です。大企業ならではの手厚い待遇には満足していましたが、紙媒体の印刷物の受注は年々微減しており、Tさんは将来への漠然とした不安を抱えるようになっていました。
転職を検討したのは8年前のこと。知人の紹介でデジタルサイネージ広告の制作をやってみないか、と誘われたのでした。かなり前向きに転職を検討し始めていたTさんでしたが、妻は猛反対。
- 妻
-
「その会社ってベンチャーでしょう?これからどうなるか分からないよ」
- 妻
-
「家族手当も住宅手当もないの?今の職場なら、毎月けっこうな額をもらえるよね?」
そして、極めつけはこのひと言。
- 妻
-
「主人が〇〇印刷(Tさんの勤務先)に勤めていると言うと、ママ友が羨ましがるんだよ」
…誰もが知る有名企業に勤務していることを、Tさん自身も誇りに思っていたところがありました。転職を検討している会社が無名のベンチャーで、待遇も今よりずっと悪くなることを思うと、わざわざ今の安定を捨ててまで転職に踏み切る理由はないように思えてきたのです。
結局、Tさんは転職を断念し、そのまま8年間、印刷会社に勤め続けました。
この8年間で世の中は大きく変化し、最大の顧客だった金融機関は帳票類のペーパーレス化を推進しています。印刷物の受注は激減し、Tさんの所属部署で早期退職希望者を募るという噂まで聞こえてくるようになりました。
目の前の安定と大企業の社員であるというプライドを捨てきれなかったTさんは、あのとき転職に踏み切っておくべきだったのかもしれないと、ときどき悔やむことがあるそうです。
妻・家族の反対に反論できないのなら、転職理由を再考するべき
Tさんの転職理由は「漠然とした不安」でした。転職を検討した先の企業がベンチャーであれば、大手に勤務していたときとはまた別の「不安」が生じることは目に見えていたと言っていいでしょう。
転職にはリスクが付き物です。妻の立場としては、安定した暮らしをみすみす捨てたくないという気持ちになるのは自然なことでしょう。しかし、長い目で見たとき転職した場合のメリットのほうが勝ると妻を説得できないようであれば、転職理由そのものが弱いとも考えられます。
妻の反対に反論できなかった時点で、もう一度転職理由を考え直してみるチャンスだったのかもしれません。
3)妻・家族の反対を押し切ってでも転職したほうがいい?
妻や恋人と言えど、詳細にわたって仕事の状況を知っているわけではありません。はじめは転職に反対されたとしても、転職先で努力し結果を出していく姿を見てもらうことで、納得してもらうこともできる場合があります。次の事例は、妻の反対を押し切って転職して成功したパターンです。転職後の行動に着目しましょう。
妻の反対意見を押し切って転職、ひたすら努力する姿を見せ続けたEさんの事例
Eさんは中学校の英語科教員でした。校務や職員会議、部活動の顧問に追われる日々で、帰宅は毎日深夜、土日も試合の引率のために休めない状態が何年も続いていました。「若いうちはいいかもしれないが、年齢を重ねてずっと現場で働き続けるのは相当厳しそうだ」と感じるようになっていました。かと言って、教頭や校長などの管理職には適性がないという自覚があったEさんは、転職サイトに登録して転職活動を始めました。
学習塾向け教材メーカーの営業職にスカウトされたのは、転職サイトに登録してから間もなくのことでした。面接だけでなく、職場見学や役員との会食の機会も設けてもらうことができ、とても熱心に誘われました。
「学校現場を知っている人なら、うちに来たら必ず営業として活躍できる」という言葉に背中を押され、年度末のタイミングに合わせて転職するつもりでいたのです。
営業職は未経験だったEさんのことを、妻はとても心配していました。
「あなたは学校の先生としては経験があるけれど、営業の世界のことはよく分かっていないんじゃないの?」
——Eさんの妻の父親は営業一筋の人だったので、厳しい競争の世界だということをよく知っていたのです。
結局、妻の反対を押し切って転職に踏み切ったEさん。入社直後から商品知識を猛勉強し、持ち前のバイタリティで複数の大手塾と信頼関係を築いていきました。3年後、ついにEさんは営業担当として売上トップに輝き、主任から課長へとスピード出世することができたのです。
今では、Eさんの妻は「転職してよかったね」と言ってくれるそうです。転職できたことで慢心せずひたすら努力する姿を見せ続け、結果につなげることができたのが、最大の勝因だったと言えるでしょう。
働き方や仕事内容まで妻は把握していないことが多い
Eさんの事例から、パートナーが見ているのはあくまで「結果」の部分だということが分かります。
教員時代も、毎日遅くまで働いていることや、土日も出勤していたことは知っていたはずですが、どの程度の負担感だったのかはEさんにしか分からないことがほとんどだったはずです。
Eさんが営業職として適性があるかどうかについても、Eさんの妻は自分自身の体験ではなく、あくまで父親の姿を見ていて「厳しそうだ」と心配していただけなのです。
最終的には、Eさん自身が転職先でどれだけ頑張れるか、結果を出す覚悟ができているか、といった部分が大きいと言えるでしょう。
4)パートナーの意見を冷静に聞き入れたほうが良い場合も
ここまで、パートナーの反対を聞き入れないほうが結果的に良かった事例について見てきましたが、中にはパートナーの意見のほうが冷静で客観的な場合もあります。
「隣の芝生は青い」といった状態になっているときや、転職先の条件をよく確認していないときなどは、パートナーの意見をいちど冷静に聞いてみたほうがよい場合もあるのです。
妻に反対されたことがキャリアプラン再考のきっかけとなったRさんの事例
RさんはあるIT企業でSEとして働いていましたが、マネージャークラスにならない限り昇給がほとんど期待できない待遇に対して不満を持ち続けていました。
30歳になる直前に子どもが生まれ、今後ますます出費が増えることから、良い転職先があれば検討するつもりでいました。
ときどき求人を検索していた中で、Rさんはある企業への応募を考え始めました。大手不動産企業グループで用地仕入れの営業職を募集していたのです。
求人に提示されている想定年収は、Rさんの現在の年収の2倍以上でした。
求人には「皆はじめは未経験からスタート」「土地オーナー様とじっくり信頼関係を築いていく仕事なので、すぐに結果が出なくてもOK」と書かれています。
Rさんが最も惹かれたのは、成約数に応じてインセンティブが出る点でした。未経験で入社したというある営業担当の例では、月給とインセンティブを合わせると月に150万円を超えることもあるらしいのです。
- Rさん
-
「未経験でも何とかなると書いてあるし、成果が出れば収入に反映されるならモチベーションも上がりそうだね」
Rさんは、妻も転職に賛成してくれるものと思って相談を持ちかけました。妻の反応は冷静なものでした。
- 妻
-
「用地仕入れって、地上げのことだよね?あなたのような控えめなタイプの人には向かないんじゃない?」
聞けば、妻の友人が競合の不動産グループで働いたことがあるものの、成果が出ない期間は無休で営業活動を続け、上司に叱責され続けても辞めないメンタルが必要だったとのこと。
Rさんは不動産業界についてほぼ知識がなく、用地仕入れの具体的な仕事内容を理解していなかったのです。
結局、Rさんは社内SEとして転職に成功し、年収アップも実現しました。今でもときどき求人をチェックしていると、あのときの不動産グループが用地仕入れ営業を募集しています。
けっこうな頻度で求人を見かけるので、おそらく入っては辞め、辞めては人を入れ…を繰り返しているのでしょう。
あのとき妻の忠告に耳を傾けて良かった、とRさんは心から思っています。
パートナーの反対に明確な理由があるなら耳を傾けておくべき
この会社に応募してみよう、と思った時点で、求人の良い部分にフォーカスしてしまっている可能性があります。
Rさんの場合、現在よりもはるかに高い年収やインセンティブといったメリットに気を取られてしまい、肝心の仕事内容については求人の美辞麗句に乗せられそうになっていました。
パートナーが転職に難色を示した場合、何か理由があって反対しているのであれば、意見に耳を傾けておいたほうがいいでしょう。
もしかしたら、あなたが求人の良い部分に注目し過ぎていることや、新たな職場を選ぶ上での見通しが十分でないことを見抜いているのかもしれません。
5)転職失敗をパートナーのせいにしてしまうのは「最悪」
パートナーの反対を押し切って転職した場合・反対を押し切れず転職を断念した場合のいずれにおいても、最悪なのは転職がうまくいかなかった責任の一端をパートナーに負わせてしまうことです。
反対されて転職を断念したのであれば、転職に対する思いの強さはそれほどでもなかったということになります。
反対を押し切ってでも転職したのであれば、転職後の結果については本人の責任ということになるでしょう。
ときどき、「家族に心配をかけたくない」といった理由で転職を踏みとどまり、心身を病んでしまう人がいます。このような自己犠牲的な働き方は、本人はもちろんのこと結果的に家族にもつらい思いをさせることになりかねません。
働くのは自分自身であり、転職するかどうかを決めるのは最終的には自分の意思です。「パートナーに反対された」というのは今後のキャリアを決める上での決定打ではなく、最終的に「転職したほうがよい」「今の仕事に留まったほうがよい」という判断を自分で下すべきだ、という感覚を持つことが非常に重要です。
まとめ)妻・家族への説得を通じて転職への決意を自問自答してみよう
転職に際してパートナーに反対されたら、自身の転職への決意を試すつもりで説得を試みましょう。妻や恋人に対して、転職理由や今後のキャリアプランについてプレゼンしても響かないようであれば、転職への決意がまだ不十分なのかもしれません。
また、パートナーが「根拠のない不安」のために反対しているようなら、転職後の活躍を見て納得してもらうなど、時間をかけて理解してもらうのもひとつの方法です。
パートナーから転職を反対されると、「転職を邪魔された」と考えがちですが、実はパートナーの反対は転職への決意を自問自答する絶好の機会と考えることもできるのです。