「翻訳の仕事に就きたい!」未経験から翻訳家を目指す際のポイント・必要なスキルは
[最終更新日]2024/07/10
「語学力を活かした仕事をしてみたい」
「異文化の橋渡し役になりたい」
こういった思いを抱いている人の中には、翻訳家を目指したいと考えている人もいることでしょう。
翻訳家とはその名の通り翻訳を仕事とする人のことですが、具体的にどのような仕事をしているのか、どうすれば翻訳家になれるのか、詳しく知らない人もいるはずです。
目次
1)そもそも翻訳ってどんな仕事?
一般的に「翻訳」という仕事は一括りにされがちですが、実はその仕事内容は多岐にわたります。
専門とする分野によって、同じ翻訳の仕事でも必要なスキルには大きな差があることもめずらしくありません。
翻訳家を目指すにあたって、まずは翻訳の仕事内容や分野によるちがいについて知っておくことは非常に重要です。
また、翻訳の仕事の大変な点や収入面の実態についても理解しておき、翻訳家になったときのイメージを具体化しておきましょう。
翻訳の主な仕事内容
翻訳の仕事は、翻訳する対象によって次の3つに大きく分類されます。
文芸翻訳
海外の小説、ノンフィクション、児童書、雑誌といった出版物を中心に翻訳する仕事で、出版翻訳と呼ばれることもあります。
誤訳のないよう正確な知識にもとづいて翻訳するだけでなく、原作者の意図や作品の世界観を十分に理解し、ふさわしい表現を選ぶことが求められます。
また、読み物として多くの読者を惹きつける文章にする必要がありますので、日本語の豊かな語彙や表現力を持っていることも重要な要素です。
たった1つの単語を訳すために、適した言葉をじっくりと時間をかけて吟味することもあります。
文芸翻訳を専門とする翻訳家がいる一方で、プロの小説家が自身の作品を執筆する傍ら、海外文学作品などの翻訳を手掛けるケースも見られます。
実務翻訳
ビジネスにおけるマニュアルや契約書をはじめ、学術書・実用書といった専門性の高い文書を日本語に翻訳する仕事です。
医療、テクノロジー、金融、特許といったようにさまざまなジャンルがあり、大半の翻訳家が自身の専門分野を持っています。
実務翻訳で最も重視されるのは正確性ですので、語学力だけではなく各分野に関する十分な専門知識があることも重要な要素と言えます。
翻訳する文書によっては学術論文など専門性の高い文章を参照する場合もあるため、専門用語を外国語・日本語の両方で理解できることも必須となります。
実務翻訳を手掛ける翻訳家の中にはもともと専門分野の現場で働いていた人や、専門分野における有資格者も数多くいます。
映像翻訳
海外の映画、ドラマ、ドキュメンタリーといった映像作品の音声を翻訳する仕事です。外国の映画作品には日本語の字幕と吹き替えがあるように、翻訳した内容を文字にする場合と音声にする場合があります。
視聴者に瞬時に理解してもらえる言葉を選ぶだけでなく、作品世界や映像制作者の意図をきちんと理解した上で翻訳する必要があります。
映像作品には撮影された国や地域の文化や習慣が反映されていたり、スラングが使われていたりすることも多いため、異文化や時代背景への深い理解が求められます。
たとえば英語圏特有の言い回しが使われているような場合は、日本の風習やことわざなどに置き換えて、日本人にとって理解しやすい言葉で訳す必要があります。
翻訳のやりがい・大変な点
翻訳の仕事は語学力に長けた人にとって憧れの職業の1つと言えます。多くのやりがいがある仕事である一方で、翻訳の仕事には大変な点も数多くあります。
翻訳のやりがい
翻訳家としてのやりがいは、何と言っても自分自身の語学力を活かせる点にあります。
外国語と母国語の橋渡し役となって海外の情報や文化を届けられることは、世の中に与える影響という点においても十分なやりがいを感じられるでしょう。
また、翻訳する文章は海外の最新作や、価値が広く認められている歴史的な文書であることもめずらしくありません。
国内ではごく一部の人にしか知られていない情報や最新の情報にいち早く触れられるのは、翻訳家の醍醐味と言えます。
翻訳で大変なこと
原作が優れていればいるほど、作品の魅力を引き出せるかどうかは翻訳家の手腕にかかっていると言えます。
単語1つ1つの意味を正確に訳せていることと、文章としてきちんと伝わる翻訳になっていることは別次元の問題ですので、常に言葉のセンスを磨き続けていく必要があります。
この自己研鑽には終わりがなく、翻訳家を続ける限りは向上させていかなくてはなりません。
語学はいったん修得すれば終わりではなく、言葉は常に変化していくものです。
外国の最新の文化や研究内容に関する情報収集を怠らず、情熱を持って探究していくことが求められます。海外の文献などに触れることが好きでなければ続けられない仕事と言えるでしょう。
翻訳の年収イメージ
翻訳家としての収入は、いくつかの要素によって差が開いているのが実情です。
翻訳家としての実績やスキル、知識のレベルによって報酬は大きく変わります。また、専門性の度合いやジャンルのちがいが報酬に表れることもあります。
文芸翻訳の場合、平均年収は480〜800万円、実務翻訳の場合は300〜500万円、映像翻訳の場合は480〜600万円程度となることが多い傾向があります。
ただし、雇用形態によって年収に開きがあり、とくにフリーランスの翻訳家は副業で年収100万円に満たない人もいれば、専業で1,000万円を超える人もいます。
報酬の設定もさまざまで、印税方式の場合もあれば単語で単価が設定されている場合もあります。
単語あたりの単価は、工業技術やコンピューターマニュアルでは1語あたり28円前後、金融や財務に関するジャンルでは1語あたり30円前後、医学や薬学といった専門性の高い分野では35円前後と、分野ごとに相場に差があります。また、映像翻訳の場合は映像の時間に応じて料金が設定されることもあります。
このように、翻訳家と言っても専門とする分野や雇用形態によって年収には開きがあることを理解しておく必要があります。
2)翻訳に求められる3つのスキル
翻訳家として必要なスキルとして、語学力が重要であることは言うまでもありません。十分な語学力があることを前提として、他にも必要なスキルは何か?という視点で考える必要があります。
翻訳の仕事で必要とされるスキルとしては、大きく分けて次の3つがあります。
翻訳に求められる3つのスキル
専門とする分野によって若干の差はあるものの、これらのスキルはおおむねどのジャンルでも必須と言えます。それぞれのスキルについて詳しく見ていきましょう。
リサーチ力
翻訳の仕事をするにあたって、専門分野に関する知識を持っていることは非常に重要です。
ただし、専門知識を持っていたとしても知らない言葉や定義が曖昧な言葉に直面することはあります。
単語の訳し方が1つ誤っているだけで、文章の意味合いが全く異なったものになってしまう場合もありますので、正確性を期する意味でもリサーチする能力は非常に重要です。
リサーチする際には、信頼できる情報源かどうか、複数の情報源にあたったかどうか、といった点も大切になります。
辞書に載っている言葉でさえも時代とともに意味合いや使われ方が変化していくように、「この資料で調べておけば間違いない」といった絶対的な基準はありません。
常に情報源を疑い、納得いくまで調べ尽くすリサーチ力が問われます。
表現力
翻訳家にとって、分かりやすく的確な表現で翻訳できることは非常に重要です。
外国語で書かれた原著が持つニュアンスを捉え、読者に適切に伝わる言葉を選ぶセンスが求められます。
専門性の高い実務翻訳では、難解な定義や理論を分かりやすく伝えなくてはならないことも多いため、簡潔で的確な表現を見つけるのは容易ではありません。
こうした表現力は文章を書く力や語彙と結びつけて考えられることが少なくありませんが、実は分かりやすい表現を実現するためには翻訳家自身がその分野に関する十分な知識を持っていることも重要な条件となります。
知識が豊富にあるからこそ、どういった言葉を選んで伝えれば最も適切に伝わるのか、何を強調すべきなのか判断できるのです。
読み手を意識した文章力(日本語力)
翻訳家の仕事と聞くと、多くの人は語学力など外国語に関する能力が問われる仕事をイメージするでしょう。
もちろん翻訳に携わる以上、外国語の能力が高いことは不可欠ですが、それと同じくらい日本語力も重要です。
なぜなら、翻訳によって生み出されるのは日本語による文章であり、読者の目に触れるのは日本語の文章だからです。
読み手の知識量や年齢層、興味関心に合わせた文章を書けることも重要な要素です。翻訳家自身がその分野に詳しいからと言って、読者に伝わらない難解な文章を書いてしまうようでは多くの人に読んでもらうことはできません。
読み手の存在を意識し、読者に合わせた文章を書けることも、翻訳家として重要な条件の1つと言えるでしょう。
3)翻訳への転職を成功するために、意識したいポイント4つ
翻訳の仕事をする上で必須の資格はありません。裏を返せば、「こうすれば翻訳の仕事に就ける」という決定打がないとも言えます。
そのため、未経験者が翻訳の仕事を始めたいと考えた場合、まず何から準備したらいいのか見えにくい面があるのです。
翻訳の仕事に就くための手順をシンプルに表すと「経験を積んでおくこと」「実績を作っておくこと」に尽きます。これから翻訳の仕事に転職するのであれば、とくに次の4つの点を意識しておくことが大切です。
「文芸翻訳」「実務翻訳」「映像翻訳」のうちのどれに携わりたいのか明確にしておく
前に触れたように、翻訳の仕事は携わるジャンルによって仕事内容が大きく異なります。「文芸翻訳」「実務翻訳」「映像翻訳」のうち、自分がどの翻訳を専門としていきたいのか明確にしておく必要があります。
携わりたい分野を決めておくことは、翻訳家になるためのキャリアを形成していく上でも重要な意味を持っています。
文芸翻訳ではコンテスト応募や出版社への持ち込みが主な入口となりますが、実務翻訳であれば翻訳を専門にしている企業への転職やフリーランスとして登録するといった方法があります。
映像翻訳の場合は制作会社へ入社するか、プロの翻訳家のアシスタントとして経験を積むといった方法が考えられます。将来的に携わりたい分野の翻訳と仕事として携わる分野に食い違いがあると、キャリア形成としては回り道をすることになりやすいため注意が必要です。
まずはクラウドソーシングで簡単な仕事を請けてみる
翻訳の実務未経験の人が、最初から翻訳家として企業に転職するのは決して簡単なことではありません。
しかし、翻訳家を目指したい人の立場からすれば「翻訳の仕事は経験がものを言う」「でも経験がないと仕事を請けられない」というのでは、仕事を始めるタイミングが見極められないと感じることでしょう。
そこで、クラウドソーシングを利用してまずは小さな案件を受注してみることをおすすめします。
クラウドソーシングであれば実務未経験でも応募可能な案件を見つけやすく、単発での仕事も多いことから実務経験を積むには最適な仕組みだからです。「翻訳を仕事としてこなせるかどうか」といった自分の中での見極めにもなるので、最初から翻訳の仕事に飛び込んでいくのが難しいと感じている人にもおすすめです。
リスニングは習慣にする
「通訳ならともかく、翻訳にリスニングは必要?」と思うかもしれませんが、翻訳の能力を伸ばしていく上でリスニングは非常に重要です。
翻訳の仕事をしたいと考えているレベルの人であれば、おそらく文法や語彙といった基礎的な力は一定以上持っているはずです。では、どこで翻訳の力に差がつくかと言えば、いかに外国語に触れる時間を意識的に作ってきたか、自然な外国語を数多くインプットしてきたか、といった点に尽きるでしょう。
映像翻訳の場合はもちろんですが、文芸翻訳や実務翻訳においても扱うのは「言葉」ですので、生きた言語に触れることの重要性に変わりはありません。
リスニングは「勉強」というよりも、日常生活の中で自然と続ける「習慣」にしていきましょう。
翻訳へのサポートに強い転職エージェントを活用する
未経験から翻訳の仕事に就きたいのであれば、翻訳へのサポートに強い転職エージェントを活用することをおすすめします。
翻訳の能力がある人材を求めているのは、翻訳が専門のプロダクションなどだけではありません。
さまざまな業種の企業で、数多くある部署のうちの1つに翻訳の能力を求めているセクションがある場合もあります。
そのような求人が偶然にも見つかればいいのですが、日々更新される膨大な求人情報の中から見つけ出すのは至難の業でしょう。
翻訳の仕事をしたい人と、その能力を持つ人を求める企業のマッチングをする転職エージェントを活用することで、自力で求人を探すよりも効率的に転職活動を進められるのです。
転職エージェントや人材紹介サービスを活用することによって、一般には出回らない非公開求人を紹介してもらえる可能性もあります。翻訳の仕事に転職するのであれば、サポート力の高い転職エージェントの活用を検討しておきましょう。
4)翻訳の就職・転職に、おすすめの転職エージェント
翻訳の仕事に携わるには、従業員として雇用される方法とフリーランスとして活動する方法があります。
ここでは、実務未経験者が翻訳の仕事に就職・転職する場合を想定しておすすめの転職エージェントを紹介しています。
従業員として携わるには、正社員として就業する方法と派遣やパート従業員として勤務する方法があります。
どのような働き方を目指すかによって利用を検討すべき転職エージェントも変わりますので、自分に合った働き方が実現できそうな転職エージェントを選ぶようにしましょう。
正社員を目指す人は、翻訳系の求人が多く、転職支援をしてもらえる転職エージェントを
翻訳の正社員の求人はあまり多くありません。そのため、正社員でお仕事を探している人は、少しでも多くの翻訳の求人を確認できるよう、求人数の豊富な転職エージェントを活用すると良いでしょう。
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コーディネーターのサポート品質の高さが評判ですが、担当との相性もありますので、リスクヘッジに他の派遣会社にも登録しておくことをおすすめします。
まとめ)翻訳の仕事につながる「最初の一歩」を踏み出すことからはじめよう
翻訳の仕事において求められる能力は、語学力以外にも幅広くあります。実務未経験者にとって、プロの翻訳家としてすでに活躍している人との間には埋めようのない大きな隔たりがあるように感じられることでしょう。
しかし、レベルアップしたいからと言って「外国語の勉強をする」だけでは翻訳の仕事への道が開けてこない可能性があります。なぜなら、翻訳の仕事をしたいと考えている人はすでに十分な語学力を持っているケースがほとんどだからです。
外国語が得意というだけでは、翻訳の仕事で能力の差をつけるのは困難と考えたほうが現実的でしょう。
この記事でも紹介してきたように、クラウドソーシングで小さな案件を受注してみるなど、実績を築くための行動を起こすことが大切です。ぜひ翻訳の仕事につながる「最初の一歩」を踏み出してみてください。