イラストレーターに未経験から正社員に転職するには?準備すること・おすすめのキャリアパスを紹介
[最終更新日]2023/10/27

イラストレーターとしてのスキルを生かして転職したい——。このように考えたことはありませんか?
絵を描くことが大好きな人にとって、イラストレーターとして生計を立てていくことは憧れの1つでもあるはず。
一方で、イラストレーターへの転職で正社員を目指すことは可能なのか、具体的にどのような業界に就職口があるのかを知りたい人もいるでしょう。
目次
1)そもそも、イラストレーターで正社員は目指せるか

結論から言うと、イラストレーターで正社員を目指すことは可能です。美芸大を卒業していない人、独学でイラストを描いてきた人でも、正社員になれるチャンスはあります。
ただし、イラストレーターの求人数は全体として決して多くありません。
募集していたとしても1名のみなど、募集人数が非常に少ないケースがほとんどです。
また、純粋にイラストを描くだけでなく、グラフィックデザインや商品企画、その他のデスクワークを兼務して就業することもよくあります。
イラストを描く業務がメインの仕事が多いのは、主にゲーム業界です。
ゲーム業界に転職できればイラストレーターの仕事に集中できる一方で、必要なスキルレベルが非常に高いこともめずらしくありません。
とくにデッサン力が求められることから、美芸大卒者や実務経験者が有利になりやすい傾向があります。
2)イラストレーターを正社員募集している主な業界
イラストレーターの正社員を募集している業界は多岐にわたります。外注先としてではなく、自社内でイラストレーターを確保する必要がある企業であれば、どのような業界でもイラストレーターが求められる可能性はあるからです。
中でも、次に挙げる4つの業界はイラストレーターの正社員募集が比較的多く見られます。
ゲーム業界

ゲームプランナーやアートディレクターの指示のもと、キャラクターや背景、アイテムなどのイラストを描きます。
仕様書・指示書に従ってイラストを描くだけでなく、ゲーム内の設定や世界観への深い理解が求められる仕事です。
ゲームメーカーや制作会社では、さまざまなジャンルのゲームを手掛けています。特定のジャンルに限らず、幅広いテイストのイラストを描き分けることが求められるでしょう。
また、ゲームに使用するイラストは動きが加わることが前提のものも多く見られます。
キャラクター設定にも留意しながら、イメージに合ったイラストに仕上げなくてはなりません。
メインキャラクターの造形を任されるようになるには、相応の経験と実績が必要です。
未経験者の場合、はじめは制作工程のごく一部のみ担当することもあるでしょう。
インターネット・Web業界

インターネット・Web業界では、イラストレーター関連の職種を「Webデザイナー」として募集しているケースが多く見られます。
つまり、イラストレーターの仕事のみを担当するわけではなく、Webデザインの一部としてイラスト制作に携わることもあるといった位置づけです。
そもそもWebデザイナーの定義そのものが広範囲にわたっており、UIデザインが中心の場合もあれば広告バナーを大量に制作したり、図解のための挿入図を制作したりする場合もあります。
いずれもPhotoshopやIllustratorといったデザインソフトのオペレーションスキルは必須となるため、純粋にイラストを描くスキルだけで勝負するのは難しいのが実情です。
一方で、業務範囲が多岐にわたっており転職先として選択肢が多い業界ともいえます。イラスト+αのスキルがある人にとって、転職先の有力候補の1つとなるでしょう。
DTP・印刷業界

DTPデザイナーとして転職する場合、イラストが描けることがアピールポイントとなる可能性があります。
実務でイラストレーターの業務がメインになることはほとんどありませんが、イラストやカットが必要な案件を担当した際に自分で描けることは強みになるはずです。
DTPデザイナーと一口に言っても、素材をレイアウトするオペレーター寄りの仕事と素材やページデザインそのものを制作するデザイナー寄りの仕事があります。
デザイナー寄りの業務では色相や配色に関する知識が役立つため、イラストレーターとして培った能力を発揮できるはずです。
DTPデザイナーは、ディレクターやクライアントと打ち合わせをする場面も多い仕事です。
デザインソフトの扱いや印刷関連の知識に加え、調整力やコミュニケーションスキルが求められる仕事です。
メーカー

メーカーにもデザイン・イラストレーター関連の人材ニーズは少なからずあります。
ただし、多くは商品企画や自社HPへの集客を目的としており、純粋にイラストだけを描く仕事ではありません。クリエイティブ職とはいえ、実務においてはマーケティングに関する知識も求められるケースが多いと考えられます。
別の見方をすると、イラストレーターとして身につけてきた知見やスキルをビジネスで活用したい人にとっては最適な環境といえます。
メーカーの中にはオウンドメディア運営に注力している企業も多く見られますので、オリジナリティのあるメディアを作り上げていく工程に携わるチャンスもあるでしょう。イラストレーターに限らず、商業デザイン全般に興味のある人におすすめの業界です。
3)イラストレーター正社員の年収とキャリアパス
イラストレーター正社員の平均年収

dodaの調査によれば、グラフィックデザイナー/イラストレーターの平均年収は328万円です(※)。同調査による平均年収は403万円であることから、平均的な年収のボリュームゾーンよりは低めの水準といえます。
前職の業種・職種によっては、正社員イラストレーターに転職することで年収が下がる可能性もあると認識しておく必要があるでしょう。
一方で、正社員イラストレーターは固定給が保証されているため、フリーランスのイラストレーターと比べて安定的に収入を得られます。
正社員イラストレーターとして高収入を目指すのは決して簡単ではないものの、安定性という点ではフリーランスよりも恵まれているともいえるのです。
※平均年収ランキング(165職種別の平均年収/生涯賃金)2021年版より
イラストレーター正社員の将来性

近年ではAIによるパターン学習やディープラーニングの進歩により、イラストを自動生成できるサービスも台頭しています。「近い将来、イラストレーターの仕事がなくなってしまうのではないか」と言う人もいるほどです。
しかし、クライアントの意図を汲み取り、相手のニーズを深く理解したイラストを描くことは、少なくとも現状ではAIにはできません。イラストレーターという職業そのものが完全になくなることはないでしょう。
ただし、市場全体としてはデジタルイラストの需要が高まりつつあります。
PhotoshopやIllustratorといったデザインソフトを使いこなし、イラスト制作に付随するデザインやマーケティングといった分野の知見を深めていくことで、イラストレーターとして活躍し続けることは十分に可能と考えられます。
「AIをツールとして使える」イラストレーターは重宝される傾向にある
「イラストレーターの仕事は、当面なくならない」と言っても、AIによるイラスト制作は今後も増えていくことが見込まれます。
その際に、「AIに負けないイラストレーター」として活動するのも一つの選択肢ですが、「AIをツールとして使えるイラストレーター」をイメージすることも大切です。
要は、AIのイラスト制作の強み・弱みを把握したうえで、有効活用できるところは自身の制作・創作に取り入れるということです。
実際、BtoCのサービスを手掛ける企業では、AIイラストを扱えるクリエイターのニーズが高まりつつあります。
2023年現在では、「Novel AI」や「Stable Diffusion」といった画像生成AIが有名ですが、これらのツールについてまだ触っていない人は、どんなことができるのかいちど調査しておくとよいでしょう。
イラストレーター正社員のキャリアパス

正社員イラストレーターのキャリアパスとして有力な道の1つは、正社員のままキャリアを重ねていくことでしょう。
安定した環境下でじっくりとスキルを磨き、対応可能なジャンルやタッチの幅を広げていくのです。
イラストレーターとしてのスキルに自信がついたら、より視野を広げて次のキャリアを模索できます。一例として、次のようなキャリアパスがあり得るでしょう。
- 正社員としての実績を礎にフリーランスに
- Webデザインの知見を活かしてWebデザインナーに
- デザイン的な思考と発想力を活かして企画職に
- 折衝力やコミュニケーション力を活かしてアートディレクターに
- イラストレーターとしての知見・経験を活かして専門学校講師に
このように、イラストレーターとして経験を積むことで多彩なキャリアパスが想定できます。
将来的に活躍の場を広げていけることも、イラストレーターという職業の魅力の1つです。
4)イラストレーターへの正社員転職を目指す際に意識すべきポイント4つ
正社員としてイラストレーターに転職する場合、どのような点を意識しておくとよいのでしょうか。
とくに重要なポイント4点をまとめましたので、転職活動に向けて準備を進める際にぜひ役立ててください。
グラフィック系ソフトのマスターは必須

イラストレーターとして働くにあたって、グラフィック系ソフトのオペレーションスキルは必須です。
PhotoshopやIllustratorはもちろんのこと、ゲーム・Web系であればClipStudio、文字組が中心の印刷物であればInDesignのスキルも求められます。
Adobe CreativeCloudの月額サブスクリプションであれば比較的安く使えますので、基本的なオペレーションスキルはマスターしておきましょう。
グラフィック系ソフトのスキルやDTP関連の知識レベルをより効果的に伝えるには、DTPエキスパートなどの資格を取得しておくのも1つの方法です。
合格率50%前後の試験のため、学習期間を確保して臨まなければ合格するのは難しい資格といえます。見方を変えると、資格を取得することで他のイラストレーターに差をつけることにつながるはずです。
「これが私のイラストレーターとしてのスキル」といえるポートフォリオを作成する

イラストレーターとしての能力や実績を伝えるには、ポートフォリオを作成する方法が最も近道です。実際の作品を見てもらえれば、イラストレーターとして何ができるのか一目瞭然でしょう。
ポートフォリオにはできるだけ幅広いジャンル・タッチの作品を掲載することが大切です。
正社員イラストレーターの場合、特定のジャンルのイラストだけを描くことはほとんどありません。
1人で多くの仕事をこなせる人材は重宝されますので、過去に制作した作品のうち異なるジャンルのものを複数ピックアップしておくのがコツです。
また、ポートフォリオには作品そのものだけでなく、制作に用いた技術や携わった業務範囲を明記しましょう。
たとえば、指示書に従って制作したのか、企画段階から参画したのかによって、応募先の評価が大きく変わることはめずらしくありません。
イラストレーターにとってポートフォリオは実績そのものであり、名刺代わりの強力なツールとなるはずです。
イラストと「+α」を意識すると、キャリアの幅を広げられる

前に触れた通り、正社員の場合はイラスト制作だけが業務範囲ではないケースが大半です。
裏を返せば、イラスト制作以外の仕事にも対応可能な人材になることでより幅広いキャリアの選択が可能となります。よって、イラスト「+α」のスキルを意識しておくことが非常に重要です。
たとえば、イラスト+Web・イラスト+DTP・イラスト+企画・イラスト+マーケティングといったスキルを掛け合わせることで、より希少性の高い人材になれます。
実際、フリーランスのイラストレーターと比べると「広く浅く」さまざまな業務経験やスキルが求められるケースは少なくないのです。
イラスト以外に興味関心のある分野があれば、イラスト制作と並行して知識を深めていきましょう。
もし可能であれば、実務でその分野に携われるチャンスがあればキャリアアップの可能性も広がります。正社員イラストレーターを目指すからこそ、イラスト制作の仕事だけにこだわり過ぎないことが大切です。
イラストレーターの転職支援に強い転職エージェントを活用する

正社員イラストレーターへの転職を目指すのであれば、クリエイティブ系の職種の転職支援に強い転職エージェントを活用することをおすすめします。
営業職や技術職といった職種と比べて、クリエイティブ職の求人はそもそも希少です。その中でもイラストレーターの求人を探すとなると、自力で対処できる範囲には限界があります。
また、企業によってはそもそも公開求人を出さず、転職エージェントを通じてのみ応募可能な非公開求人で採用活動を進めるケースも少なくありません。
欠員補充など募集人数1名〜数名といった募集に対して、大々的に公開求人を掲載する企業は少ないのが実情です。
転職エージェントに登録すると、専任のアドバイザーがつきます。
ポートフォリオを作成する際のポイントなどをアドバイスしてもらえるだけでなく、採用時の条件交渉も代行してもらえるため、より有利な条件で転職できることもあるのです。
転職成功率を高めるためにも、転職エージェントはぜひ活用するとよいでしょう。
5)イラストレーターの正社員転職におすすめのエージェント
マイナビクリエイター
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求人のマッチングとポートフォリオ作成支援に強みのあるエージェント。Web・ゲーム業界出身のキャリアアドバイザーが担当に付きます。
マイナビクリエイターは、Web・ゲーム・IT業界に特化した転職エージェントです。
イラストレーターの求人は、2023年10月時点で約150件あります。
マイナビクリエイターは、サポートの強みとして「専門性」、「マッチング力」、「満足度」の3点を挙げています。
今回が初めての転職の人や新たな業界や職種をチャレンジする人は、マイナビクリエイターのサポートが特に役に立つでしょう。
マイナビクリエイターの特徴
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サービス対応地域 | 東京・愛知・大阪・福岡 |
イラストレーターの公開求人数 | 約150件(2023年10月現在) |
登録時のレジュメ内容をしっかり書くことで適切なサポートを受けやすくなります。「希望条件(優先したいこと・叶えたいこと)」を詳細かつ温度感高めに記入しておくとよいでしょう。
doda(デューダ)
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豊富な求人と、担当からの積極的な提案が特徴。「本気でいい求人を探したい!」ならぜひ登録しておきたい転職サイトです。
dodaは「なるべく早く転職したい」という人におすすめの転職エージェントです。
常時20万件を超える求人を保有していること(2023年10月現在)、担当エージェントが積極的に求人紹介を行ってくれることから、「希望にマッチした求人が見つかりやすい」のが特徴です。
イラストレーターの求人は、2023年10月時点で約300件あります。
dodaは求人を自分で探して応募する「転職サイト」と、求人紹介から企業への応募、日程調整までアドバイスしてもらえる「転職エージェント」両方のサービスを利用できます。
「まずは自分でじっくりイラストレーターの求人をチェックしたい」という人は、転職サイトのサービスを利用するとよいでしょう。
その後「応募や企業への交渉についてサポートしてほしい」となったときに、エージェントサービスを利用する使い方もできます。
dodaの特徴
特徴 |
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サービス対応地域 | 全国 |
イラストレーターの公開求人数 | 約300件(2023年10月現在) |
担当エージェント経由でのみ応募可能な求人も多いです。初回面談で担当エージェントとしっかりコミュニケーションをとっておくことで、希望条件に合った求人を紹介してもらいやすくなります。
リクルートエージェント
リクルートエージェントは国内No1の求人数を有する転職エージェントです。
2023年10月現在、イラストレーターの求人は約300件あります。
転職先を選ぶにあたって、なるべく多くの求人を比較したい人に、リクルートエージェントはおすすめです。
リクルートエージェントの強みは全業種・職種に対して豊富な求人数を持つこと、そして長年の実績で培われたノウハウ・転職支援ツールの充実さにあります。
とくに活用したい支援ツールは、企業の特徴から選考のポイントまでをまとめた「エージェントレポート」です。
ひとえにイラストレーターといっても、仕事内容は企業によって様々です。応募企業の詳細をチェックする際に、レポート情報は大いに役立つはずです。
また、担当アドバイザーもこれまでの実績をもとにイラストレーターへの転職に関する有益なアドバイスを提供してくれるでしょう。
リクルートエージェントの特徴
特徴 |
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サービス対応地域 | 全国 |
イラストレーター公開求人数 | 約300件(2023年10月現在) |
リクルートエージェントのサポートは効率的かつスピーディに進みます。日頃の転職活動にかけられる時間を確保しておくと、より有意義にサービスを受けられるでしょう。
ワークポート
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IT・Web業界で豊富な求人。未経験可の求人も多く、「新しい領域にチャレンジしたい!」という人におすすめです。
ワークポートは「IT・Web業界でキャリアチェンジしたい」と考えている人におすすめです。
ワークポートは様々な業種・職種を扱う総合型転職エージェントですが、とくにIT・Web・ゲーム業界への転職支援に強みがあります。
2023年10月時点で、イラストレーターの求人は約150件あります。
ワークポートでは「職種未経験者向け」の求人紹介・サポートも積極的に行っています。
「未経験からのキャリアチェンジ転職を検討している」という人はワークポートのエージェントが頼りになるでしょう。
ワークポートを利用した人からは、「経験が浅くても求人を紹介してくれた」「必要なスキルについて詳しく教えてくれた」など、未経験者への手厚いサポートを裏付ける評判が多く見られます。
ワークポートの特徴
特徴 |
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サービス対応地域 | 全国 |
拠点 | 北海道、宮城、福島、東京、埼玉、千葉、栃木、群馬、神奈川、新潟、静岡、石川、岐阜、滋賀、愛知、京都、大阪、兵庫、岡山、広島、加賀、愛媛、福岡、長崎、熊本、鹿児島、沖縄 |
イラストレーターの公開求人数 | 約150件(2023年10月現在) |
ワークポートは「積極的な提案」をしてくれる一方で、「電話・メールが多い」という利用者評価も見られます。初回面談でしっかりご自身の希望条件と「できること・できないこと」を伝え、相手からの提案の質とペースを調整していきましょう。
まとめ)正社員イラストレーターは実務未経験からでも目指せる
イラストレーターとして経験がある人なら、正社員イラストレーターに未経験でも転職することは可能です。
ただし、イラスト制作の仕事だけを担当するのはあまり現実的ではないと考えたほうが得策でしょう。イラスト+αのスキルを意識的に培い、人材の希少性を高めていくことが大切です。
今回の記事を参考に、ぜひ正社員イラストレーターへのキャリアを検討してみてください。
将来的なキャリアを見据えて転職活動を進めることで、イラストレーターとしてのキャリアがますます充実したものになっていくはずです。