社会人・未経験から教師になるには?教員免許なしで教職に転職する方法を解説
[最終更新日]2025/09/01

民間企業で働いてきた人が「学校の先生になりたい」と考えた場合、通常の転職とは異なり、多くの疑問や不安が生じることが少なくありません。
民間企業から教師に転職する際に意識しておきたいのが「転職後のミスマッチ」。
「教師」という職業を具体的に理解しないまま転職すると、現実とのギャップを感じることが少なくありません。
目次
1)未経験から教師に転職できる?
教員として働いている人の多くは、大学卒業後に教職課程を修了し、そのまま教員になった人です。
一方で、近年では社会人経験を経てから教職を目指す人も増えており、教員不足への対応として、各自治体も民間出身者の採用枠や特別免許制度を活用する動きが広がっています。
従来は教職免許を取得していないと採用が難しいとされていましたが、今では教員免許がなくても特別免許状や社会人特別選考などのルートで教壇に立つことが可能となっています。
教育の実務経験がなくても、学校現場で教員として働くチャンスは十分にあります。
以下のような方法で教職を目指す人が増えており、民間企業からのキャリアチェンジも現実的な選択肢です。
- 働きながら教員免許を取得する(通信制大学・科目履修など)
- 教員資格認定試験や特別免許状を活用して免許を得る
- 社会人特別選考枠を利用して採用試験に挑戦する
- 非常勤講師や臨時的任用教員として現場経験を積む
採用倍率が全国的に下がっていることも、社会人にとっての追い風となっています。中には倍率が2〜3倍台の自治体もあり、社会人が挑戦しやすい環境が整いつつあります。
もちろん、教職は決して容易な仕事ではありません。業務の幅が広く、責任も重いため、「なぜ教師になりたいのか」という強い意志が不可欠です。
教育への情熱と目的意識を持ち、準備を整えれば、未経験でも教職への転職は十分に実現可能です。
今、学校現場では民間企業出身者の専門性や社会人経験が求められています。
あなたのキャリアは、未来の子どもたちの学びにとって大きな価値となります。
参照元
- 参議院 事務局企画調整室(立法と調査) 教員不足とその対応(2024/6/27)
- 文部科学省(中央教育審議会資料) 多様な専門性や背景を有する社会人等の教職参入(特別免許状 等)
2)教員免許は必須? 社会人向けの多様なルートも登場
教員として学校現場で働くには、原則として教員免許状の取得が必要です。免許は小学校・中学校・高等学校などで区分され、それぞれに応じた手続きを経る必要があります。
ただし近年では、教員免許を持たない社会人でも特例制度を活用して教壇に立つルートが整備されつつあります。
ここでは代表的な免許取得ルートと、社会人向けの代替ルートについて紹介します。
教職課程の単位を取得して免許状を得る

教育系学部を卒業していない場合でも、大学の科目履修や通信制課程などで必要な教職単位を取得することで免許取得は可能です。
社会人が働きながら単位を取得する方法としては、以下のような方法があります。
- 科目履修生として必要な講義のみ受講
- 夜間学科・定時制の大学に通学
- 通信制大学で在宅・オンライン中心に学習
多くの社会人にとっては、通信制大学の活用がもっとも現実的な選択肢となるケースが多いようです。教育実習も必要になるため、社会人受け入れに理解のある大学を事前に確認すると安心です。
小学校教員を目指す場合:教員資格認定試験も選択肢

小学校教員を目指す場合、教員資格認定試験(文部科学省実施)に合格することで免許を取得するルートもあります。
認定試験は年1回実施され、試験科目や出題範囲は広いため事前の十分な準備が必要です。中学校・高等学校の教員免許については、大学で教職課程を履修し単位を修める方法が一般的です。
社会人向けの特別免許状・非常勤講師制度の活用
近年では、特別免許状や非常勤講師制度を活用することで、免許を保有していない社会人が教壇に立つ例も増えています。
特別免許状は、教育職員免許法に基づき、「優れた知識や経験を持つ社会人」に対して都道府県が推薦・授与するもので、任用された学校でのみ有効です。
また、臨時的任用や非常勤講師として経験を積みながら、後から教員免許を取得するケースも一般化しています。採用に関する条件や詳細は自治体ごとに異なるため、最新情報を教育委員会の公式サイトなどで確認しましょう。
教員採用試験に合格する

正規教員として働くためには、原則として教員採用試験に合格する必要があります(私立校は学校ごとの選考)。
採用試験は各都道府県・政令指定都市などが実施し、筆記・面接・模擬授業・論文・実技試験など多岐にわたる試験が行われます。
倍率は地域によって差がありますが、近年は教員不足の影響もあり、全国的に下がっている傾向です。働きながら挑戦する人も多く、社会人向けの予備校や通信講座も活用されています。
合格後はその自治体の公立学校に配属され、晴れて教員としてのキャリアをスタートさせることになります。
従来の「教員免許+採用試験」だけでなく、特別免許状や社会人枠の選考など、多様なルートが広がっています。
あなたの経験や専門性を活かせる方法を選びましょう。
参照元
- 文部科学省(中央教育審議会資料) 特別免許状・臨時免許状の位置づけと活用
- 参議院 事務局企画調整室(立法と調査) 教員不足とその対応(採用・任用の現状)
3)民間企業から転職した場合、ギャップを感じることも多い

これまでの章で見てきたように、民間企業から教職への転職は十分に可能です。
しかし、多くの人が「教師になるまで」の準備に集中しがちな一方で、「教師になってから」の現実も、しっかり理解しておく必要があります。
教員の仕事は、働き方や評価のあり方などが、民間企業とは大きく異なる側面を持っています。
特に社会人経験者が戸惑いやすい、典型的なギャップを3つ紹介します。
勤務時間外労働が常態化している

文部科学省や日本教職員組合の調査によると、教員の週あたりの平均労働時間は約60時間とされており、法定労働時間(週40時間)を大幅に上回っています。
公立校の教員には残業手当が支給されない仕組みになっており、勤務時間外や休日に部活動、会議、学校行事に参加しても、時間外手当は原則支払われません。
また、朝の会議や放課後の打ち合わせが、正式な勤務時間外に行われることも多く、休憩時間に業務をこなすことが常態化しています。
現在、文科省は働き方改革として部活動の地域移行や業務の整理を進めていますが、「勤務時間はあってないようなもの」という現状に対して、覚悟と自己管理が求められます。
授業より校務が重視される学校現場の実情

「子どもたちの成長に寄り添いたい」「良い授業をしたい」と願って教職を志す人は多いはずです。
しかし、現場に出てみると、評価されやすいのは授業よりも「校務分掌」への貢献という実情にギャップを感じる人も少なくありません。
校務とは、学校運営に関わる庶務や委員会活動、研修準備、外部対応などの業務全般を指します。
これらに積極的に取り組む教員は組織内で高評価を得やすく、管理職への登用にもつながりやすいため、担任業務や授業準備は後回しになりがちです。
「良い授業をすることが最も評価される」と考えていると、現実との間にズレを感じる可能性が高いため、あらかじめ知っておくことが重要です。
論理よりも人間関係が影響する文化

民間企業では近年、論理的思考・エビデンスに基づく意思決定が重視される傾向にあります。
ところが学校現場では、人間関係や上下関係、校内の空気感が意思決定に強く影響するケースもあり、「何を言うかより、誰が言うか」が優先される文化が根強く残っていることもあります。
特に年功序列的な組織文化や、「前例踏襲」を重視する風潮に戸惑う社会人出身者も少なくありません。
論理的思考力に自信がある人ほど、自分の意見が受け入れられにくい場面に違和感を覚えることもあるでしょう。現場では、柔軟な姿勢や相手との関係構築力も重要なスキルです。
参照元
- 日本教職員組合(JTU) 2024年 学校現場の働き方改革に関する意識調査(週平均60時間54分 ほか)
- 文部科学省 学校における働き方改革について
- 参議院 事務局企画調整室(立法と調査) 教員不足の段階(常勤的非常勤講師の位置づけ 等)
4)塾やEdTechなど「教育業界への転職」も選択肢に
教育に携わるなら「学校以外」も視野に入れて

「教育に関わる仕事がしたい」と考えるなら、学校教員以外のフィールドにも目を向けてみましょう。近年は、教育分野でも民間企業によるサービスが多様化しており、活躍の場は広がっています。
たとえば、以下のような職種・企業があります:
- 学習塾・予備校(教務・教室運営・マネジメント)
- 英会話スクール、プログラミング教室
- EdTech企業(教材開発、プロダクト企画、営業、LMS設計など)
- 教育コンテンツ出版社・動画教材プロバイダー
とくに注目すべきは、EdTech(教育×テクノロジー)業界の急成長です。国内EdTech市場は2023年に3,000億円を超え、2027年には約3,600億円に達するとの予測もあります。
リモート学習・STEAM教育・AI教材などが広がり、学校外の教育機会は拡大しています。
小学校では英語・プログラミングが必修化され、企業でもリスキリングや研修制度の強化が進むなど、教育の形は多様化しています。
こうした社会の動きを背景に、教育業界全体に新しい可能性が広がっているのです。
教育業界もビジネスの世界であることを理解しよう

ただし、教育業界に進むうえで忘れてはならないのは、「教育であっても、ビジネスである」という側面です。
学習塾であれば、「生徒数の確保」「合格実績の向上」が重要な評価軸であり、収益性やリピート率が業績に直結します。
教室長やマネージャー職に就けば、講師の採用や研修、広告戦略、カリキュラム設計、面談対応など、幅広い業務を担うことになります。
「教育の現場で生徒と向き合いたい」と思って転職しても、実際には営業・管理業務に追われることも少なくありません。
教育業界に理想だけを持ちすぎず、ビジネスとしての現実も冷静に把握しておくことが、ミスマッチを防ぐ第一歩となります。
参照元
- Morning Pitch(デロイト トーマツ ベンチャーサポート) EdTech特集(国内市場の動向・将来予測)
5)まずは教員・教育業界両方の「生の声」を聞く機会をつくる
ここまでご紹介してきた通り、教員にも民間の教育業界にも、それぞれに特有のやりがいや大変さがあります。
「それでも教育の仕事に携わりたい」と感じるなら、自分の適性がどちらに合っているのか、リアルな声を聞いて判断することが非常に重要です。
教員として働いている人、民間教育企業に勤務する人など、実際の経験者の話を聞くことで、自分では気づかなかったポイントに気づけることもあります。
「身近にそういう人がいない」という方でも、今はオンライン・対面を問わず相談機会が充実しているので、積極的に活用してみましょう。
教員志望の人は自治体の説明会や相談会を活用しよう

多くの自治体では、教員志望者を対象にした個別相談会や採用説明会を定期的に開催しています。
たとえば、東京都では「TOKYO 教育 Festa!」と題して、教員経験者による講演や模擬授業体験、相談ブースを設けた大規模イベントを開催。
現役の先生や教育委員会の担当者に直接質問できる貴重な機会です。
中には、民間企業から転職した現職教員が登壇する回もあり、現場ならではのリアルな声を聞くことができます。
また、自治体によっては独自の研修制度やメンター制度を設けており、説明会でそれらの情報を入手することが可能です。
教育委員会の採用ページや公式SNSで開催情報が告知されることが多いため、定期的にチェックしておくことをおすすめします。
教育業界全般に関心がある人は、転職エージェントや民間支援プログラムを活用

教育に関わる仕事は、学校教員に限らずさまざまなスタイルがあります。
教育系スタートアップ、塾やスクール運営、教材開発、教育研修など、民間教育分野の求人も年々多様化しています。
こうした中で、教育分野専門の転職エージェントを活用すれば、求人紹介にとどまらずキャリア相談・書類添削・面接対策まで一貫した支援が受けられます。
また、Teach For Japanのように、社会人が教員として学校現場に入るためのフェローシップ・プログラムも存在します。
2年間限定で教員として赴任し、現場での経験をもとに教育行政や教育事業への道を拓く人も増えています。
どの道を選ぶにせよ、“自分で調べる”だけでなく“話を聞く”ことが大きなヒントになります。信頼できる相談先を見つけて、情報を深めていきましょう。
代表的な転職エージェントとして、教育業界を目指す人におすすめの4社をご紹介します。
リクルートエージェント
求人数・サポート実績の豊富なエージェントからサポートを受けたい人におすすめ
未経験の業界に転職する際は、これまで転職をしたことがある方も、そうでない方も「転職活動が上手くいくか」心配になることでしょう。
そんな時は、少しでも信頼できる転職エージェントにサポートを頼みたいはず。
リクルートエージェントは国内最大手の転職エージェントで、国内No.1の転職支援実績があるサービスです。
保有している求人は、2025年2月時点でおよそ52万件。そのうち、教師・講師・インストラクター、教室長・教室運営・学校経営、教材開発に関わる求人は3,500件あります。
また、リクルートエージェントには、職務経歴書を自動で作成できる「職務経歴書エディタ」や無料の「面接力向上セミナー」など、転職活動を強力にバックアップしてくれるツール・サービスも充実しています。
リクルートエージェントの特徴
特徴 |
|
---|---|
サービス対応地域 | 全国 |
公開求人数 | 約62万件(2025年9月現在) |
マイナビAGENT
学習塾講師やスクールマネージャーなどの教育サービス系に興味がある人におすすめ
学習塾講師やスクールマネージャーといった職種は「教育サービス」に分類されます。
広い意味ではサービス業ですが、成長過程にある子どもたちを預かるという意味で責任は重く、同時にやりがいのある仕事でもあります。
サービス業に強い転職エージェントの1つにマイナビAGENTがあります。
運営会社のマイナビ社は新卒採用に長年携わっていることで知られており、多数の企業と人材採用を通じて信頼関係を築いてきました。
他社にはない独占求人や知る人ぞ知る優良企業といったように、独力で探すことが難しい求人を多数抱えていますので、これまでの経験やスキルを活かして教育業界で活躍したい人にとって最適な転職エージェントと言えるでしょう。
マイナビAGENTの特徴
特徴 |
|
---|---|
サービス対応地域 | 全国 |
公開求人数 | 非公開 |
業界・職種ごとの専任サポートチームが「じっくり親身になって」支援してくれるのがマイナビAGENTの強み。サービス入会時に登録する情報で担当が決まりますので、経歴・希望条件は丁寧に記入しておきましょう。
doda
教育業界の中で幅広い業態・職種を見ておきたい人におすすめ
未経験の業界への転職活動は、まずどのような業態の会社があるのか、どういった仕事内容の職種があるのか、といったリサーチから始めることになります。
限られた転職活動期間中に業界研究を進めるのは楽なことではありませんが、ここでしっかりと調べて情報を集めておかないと「もっと適した職種があったのに、知らなかった」などと後悔することになりかねません。
dodaは求人を自分で探して応募する「転職サイト」と、求人紹介から企業への応募、日程調整までアドバイスしてもらえる「転職エージェント」両方のサービスを利用できます。
「まずは自分で教育系の求人をじっくりチェックしたい」という場合は転職サイトのサービスを利用し、その後「応募や企業への交渉についてサポートしてほしい」となったときにエージェントサービスを利用する、という使い方もできます。
教育業界の求人は約3,000件(2025年2月時点)。そのうち、学習塾・予備校・専門学校に関わる求人が多く見られます。
dodaの特徴
特徴 |
|
---|---|
サービス対応地域 | 全国 |
公開求人数 | 約28万件(2025年9月現在) |
dodaは求人を自分から応募可能ですが、エージェント経由でのみ紹介される非公開求人も多いです。担当エージェントには初回面談時に希望条件をしっかり伝えておくことで、より有意義なサポートを受けられるでしょう。
ビズリーチ
転職後の平均年収840万円。特にEdTech企業を目指す人におすすめです。
ビズリーチは主にハイキャリア人材を対象とした転職サービスです。
一般的にハイキャリア転職サービスは求人数が少なくなりがちですが、ビズリーチは近年求人数が増えており、首都圏はもちろんのこと地方での転職においても非常に豊富な求人を確認できます。
紹介される会社は大企業だけでなく、中小の優良企業の求人も扱っています。
また、独自に「BizReach創業者ファンド」を創設するなど、スタートアップ企業の支援も積極的に行っていることから、スタートアップ企業やベンチャー企業への転職支援にも強いのが特徴です。
ビズリーチの特徴
特徴 |
|
---|---|
サービス対応地域 | 全国 |
公開求人数 | 約15万件(2025年2月現在) |
ビズリーチで企業からのスカウトを多く得るためには、レジュメ(職歴書)の品質を上げること!どのような自己PRが企業からの目にとまりやすいかをじっくり考えて、取り組んでみましょう。
参照元
- 東京都公立学校教員採用ポータルサイト イベント情報・採用説明会
- 文部科学省(中央教育審議会資料) 社会人の教職参入に関する取組(Teach For Japan 等)
【まとめ】教職への転職は「現実的な選択肢」。だからこそ、今こそ動き出そう。
民間企業から教職へ転職することは、今や十分に現実的な選択肢です。
社会人経験を活かした多様な人材を求める流れは全国の自治体で広がり、特別免許状や社会人特別選考など、かつてないほど多様なルートが用意される時代になりました。
もちろん、民間企業とは異なる文化や制度に戸惑うこともあるでしょう。
でも、それを補って余りあるほど、子どもたちの未来に関われることのやりがいは大きいと、多くの転職者が語っています。
大切なのは、理想だけでなく現実も知り、自分に合ったルートや働き方を見つけること。
「先生になってみたい」――その気持ちが、社会を変える力につながるかもしれません。
今のキャリアを無駄にすることなく、教育というフィールドで次の一歩を踏み出してみませんか?
あなたの経験と情熱を、待っている子どもたちがきっといます。