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言語聴覚士・医療機関から福祉施設へ。マミートラックの壁|私の転職体験談

ゆのん さん(女性 36歳 東京都)
ちょっと成功、
やや失敗

転職前

BEFORE
職業
医療機関
職種
言語聴覚士
従業員規模
約350人
年収
380万円

転職後

AFTER
職業
福祉施設
職種
言語聴覚士(パート)
従業員規模
約150人
年収
250万円

目次

ゆのんさんの転職ストーリー

1これまでの私

子どもができるまで、私の第一優先は言語聴覚士の仕事だった。

イメージ図:言語聴覚士として働く30代女性

大学を卒業後はずっと、医療機関で言語聴覚士として勤務していました。

言語聴覚士とは

言語聴覚士は、言語や聴覚、発音、嚥下(飲み込み)に関する障害を持つ人々に対し、リハビリテーションや治療を行う専門職です。
子どもから高齢者まで、幅広い年齢層の患者を対象に、コミュニケーションや嚥下に関する問題の改善を支援します。

言語聴覚士の主な仕事内容

仕事内容 説明
言語障害の評価と治療 言語の発達に遅れがある子どもや、脳卒中などの後遺症で言葉が話せなくなった患者に対し、言語能力を評価し、改善のための訓練を行います。
聴覚障害のリハビリ 聴覚に問題がある患者に対して、聴覚検査を行い、補聴器の調整やリハビリテーションを通じて、聞こえやコミュニケーション能力の向上を支援します。
発音・発声の指導 発音や発声に困難を抱える患者に対し、正しい発音を習得するための指導を行います。
嚥下障害のリハビリ 飲み込みに問題がある患者に対し、嚥下機能の改善を図るリハビリテーションを行います。
コミュニケーション支援 失語症や自閉症スペクトラム障害など、コミュニケーションに問題がある患者に対して、適切なコミュニケーション方法を指導し、日常生活での対話能力を向上させます。

結婚して子どもを出産した後は、時短勤務制度を利用して職場復帰しました。

子どもができる前は、仕事にかなり熱心な方だったと思います。
勉強会や研修会にも積極的に参加しており、言語聴覚士として働くことにやりがいや誇りも感じていました。

元々あまり趣味といえるような趣味もなく、仕事をアイデンティティとしている部分もあったんだと思います。

ですが、出産してからは、優先順位の一位は「子ども」に変わりました。

仕事については「それなりにお金が稼げて当たり障りなくやれればいい」と考えるようになったのです。

夫も働いていましたし、夫自身も私の働き方には干渉せず「やりたいようにやればいい」と考えている様子でした。

2転職のきっかけ

医療機関で、言語聴覚士として働くこと。そして、マミートラック。

イメージ図:キャリアか家族か、どちらを優先するかの分岐点

「転職しよう」と考えた一番の理由は、産後の職場復帰後に使用していた時短勤務の制度のリミット(子どもの年齢により使えなくなる)が近づいたからです。

育児と仕事を両立させるのに、フルタイムで働くのはさすがに無理だろうと思い、パートの仕事を探そうと決めました。

医療機関で働くことは、学生時代の頃からの夢でした。
ずっと、「それを手放すことはしたくない」と思っていたのですが、出産後に子どものことが第一優先になると、「医療機関で働くこと」そして「言語聴覚士として働くこと」にも固執しなくてもいいだろうと考えるようになったのも、転職への気持ちが傾いた背景にあったと思います。

それから、もうひとつあったのが「マミートラック」です。

マミートラックとは、出産や育児休業から復帰した女性社員の主な業務内容が、アシスタント業務や単純作業に変わり、昇進や昇格を目指すキャリアコースから外れてしまうことです。
私が、まさにそうでした。

マミートラックとは

マミートラックとは、主に育児中の女性がキャリアの中で昇進や昇給が難しくなる状況を指す言葉です。
育児や家事との両立を理由に、責任のある業務から外され、キャリアの停滞を余儀なくされることが多い状況を表します。

マミートラックの主な例

説明
責任の軽減 育児や家庭の事情を理由に、以前担当していた大きなプロジェクトや管理職から外され、比較的負担の少ない業務に回されるケースです。
昇進の見送り 育児休業や時短勤務などが理由で、同僚が昇進する中、自分だけ昇進の機会を逃してしまうケースがあります。
給与・待遇の変化 時短勤務やフレックスタイム勤務を選択した結果、給与が減額されたり、ボーナスや評価に影響が出ることがあります。
キャリア開発の機会減少 育児や家事との両立を優先することで、研修やスキルアップの機会に参加できず、結果的にキャリアの停滞を招くことがあります。

3転職活動中

病院で働くか、福祉施設で働くか。

イメージ図:履歴書を作成する30代女性

転職活動は、いくつかの医療職専門の求人サイトに登録するところからスタートしました。

また、自分でも近隣や気になった医療機関・福祉施設での求人がないかを各病院等のホームページやハローワークのサイトなどでチェックをしました。

苦労した点については、仕事と育児をしながら書類の作成や病院・施設の見学、日々の転職情報のチェックなどをする時間をなかなか持てなかったことです。
平日の休みの日に病院・施設見学に出向くので、その時期は身体的に疲れることが多かったです。

ありがたかったことは、学生時代の友人や元同僚が仕事を紹介してくれたことです。
転職を検討していることを伝えたところ、「自分が勤めている職場を紹介しようか」と言ってくれたり、パートで働く際の仕事内容を教えてくれたりしました。

転職活動にかけた期間は、3ヵ月ほどです。
給与や勤務時間の都合がつきやすい点から、結局は転職前と同じ言語聴覚士の仕事を探しました。

いくつかの転職サイトからは登録するとすぐに連絡があり、転職先候補を提示してもらいました。

それで3つ病院・施設の見学を行い、3つとも「ぜひうちに来てほしい」と、エージェントを通して連絡がありました。

最後に見学した福祉施設が一番自分に合ってそうだと思い、そこに転職先を決めました。

4転職後

福祉施設の言語聴覚士に、パートとして勤務して。

イメージ:福祉施設の職場風景

福祉施設の言語聴覚士として、パートで平日週5日勤務することになりました。

仕事内容は入居者及びデイサービスでの希望者へのリハビリテーションと、たまに訪問リハビリテーション(利用者の自宅に訪問してリハビリの支援をおこなうこと)をしています。

業務内容自体は、前職と大きく変わるわけでは無いので苦労はしませんでした。
ですが、業務書類の作成や1日のスケジュールについてはほとんど説明されず、きちんとこなせるようになるまで3ヵ月ほどかかりました。

それから、苦労したのは職場の人間関係です。
人数の少ない職場ということもあってか、すでにグループが出来上がっていて入り込めない感じがありました。
また、年齢層が高くて女性が多く、よく陰口を話しているのを聞きました。

ときに、私自身が標的となることもありました。
上司からは「自分で決めてやっていい」と言われた業務について、他の先輩には「なぜその手順でやるのか」と注意されたり、私が話しかけるとあからさまに冷たい反応をしてきたり。
正直、とてもストレスが溜まります。

また、パート勤務であるにも関わらず、会議の進行や委員会など、正社員と同様に行うことを求められることも少なくありませんでした。

5その後、どうなったか。

自分のキャリアについて、もう一度向き合いたい

イメージ図:これからのキャリアをプランニングする、言語聴覚士の30代女性

転職して2年近くたちましたが、職場環境について「馴染んだ」とはまだ到底言えません。

それでも、「同じ職業でも職場によってここまで違うのか」と知れたのは、勉強になったと思います。

残念に思っているのは、やはり現在の職場の人間関係があまりいいとは言えないことです。
入職前の見学だけではなかなか見えないかもしれませんが、もっと慎重に見極めておくべきだったと思っています。

また、転職して「やはり自分は医療機関で働くのが好きだ」ということを再認識しました。
今も医療系の仕事には就いていますが、福祉施設よりも医療機関で働いた方が、自分に合っていたと感じています。

◇ ◇ ◇

あと数年して子どもが小学生になったら、再度正社員として働きたいと思っています。

今回の転職の気づきと、あとは前職での医療機関での経験を忘れないうちに、早いタイミングで転職できればと思っています。

それから、こんなことも考えています。

  • 自宅でオンラインでの言語リハビリテーションの開業
  • セラピスト同士や患者同士で交流できるような場(ネット含め)の提供

まだ何の準備もしていませんが、最近はまた「自分のキャリアについて、もう一度考えたい・向き合いたい」という気持ちが強まっています。

育児を第一優先にするのに変わりはありませんが、残りの範囲で、私自身がもっと、やりがいや活力を感じられる働き方ができるように、取り組んでいきたいです。

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