「未経験から教師に転職したい」民間企業から教職への転職は可能?
[最終更新日]2024/07/10
民間の会社員として勤めてきた人が「学校の先生になりたい」と思ったとしたら、民間の他社へ転職するよりも、分からないことや知りたいことが次々と出てくることでしょう。
民間企業から教師に転職する際に意識しておきたいのが「転職後のミスマッチ」。
「教師」という職業をイメージのみで捉えていたために、転職してからギャップを感じるケースが多いのです。
目次
1)未経験から教師に転職できる?
学校の教員として現在働いている人の中で圧倒的に多いのは、「大学を卒業して教師になった人」です。
近年では民間企業経験者を積極的に受け入れようとする自治体も増えてきているものの、それでも全体で見ると民間企業経験者の教員は5%程度に留まっています。
民間企業から転職して先生を目指す人は、教職の世界ではまだまだ少数派なのです。
しかし、教育の仕事を経験したことのない民間企業経験者は教員を目指せないかと言うと、決してそうではありません。
必要な免許を取得し、教員採用試験に合格することで、教員としての第一歩を切り拓くことは可能です。
民間企業から転職する際に懸念されることとして、
- 働きながらどうやって教員免許を取得するか
- 教員資格認定試験、教員採用試験に向けた勉強をどうするか
- 勤務開始後、民間企業とのギャップにどう折り合いをつけるか
といった点が挙げられます。
ときどきメディアなどで話題に挙がるように、教員の仕事は決して楽なものではありません。
「どうしても教師になりたい」という強い信念を持つことが、まずは転職成功への第一歩となります。
2)教員免許の取得は必須
教員免許は小・中・高と分かれており、免許を取得するにはそれぞれの教員資格認定試験を受ける必要があります。
また、免許を取得しただけでは教員として働くことはできません。
取得後、さらに教員採用試験に合格することで、晴れて教員として働き始められるのです。
教員を目指す過程を詳しく見ていきましょう。
免許取得の要件となる所定の単位を取得する
すでに大学で教育系の学科を卒業している人であれば、必要な単位を取得済みの場合もありますが、そうでない人は大学に通うなどして単位を取得する必要があります。
「大学に通わないといけないなんて、一度仕事を辞めなくてはいけないの?!」と思うかもしれませんが、社会人が働きながら単位を取得する方法がいくつかあります。
- 科目履修生として必要な講義のみ受ける
- 夜間学科に通学する
- 通信制大学を利用する
社会人が働きながら単位を取得する場合、通信制大学の利用が最も現実的なケースが多いようです。
単位取得には教育実習も含まれていますので、社会人の受け入れを積極的に推進している大学に相談してみるといいでしょう。
教員資格認定試験を受験し合格する(小学校教員を目指す場合)
教員資格認定試験とは、教員免許を取得するための試験のことです。
小学校教員を目指す人は、この認定試験を受けて合格することで、初めて教員免許を取得できます。
中・高の教員を目指す人は、大学で実習を受けたのち免許申請をしますので、教員資格認定試験を受験する必要はありません。
教員になるには教員採用試験を受ける必要がありますが、それ以前に教員免許を持っていなければ教員採用試験の受験資格を満たしていないことになります。教員免許の取得は必須です。
ときどき、私立の学校であれば教員免許は不要なのでは?と考える人がいますが、公立・私立を問わず学校であれば教員免許が必要であることは、教育職員免許法という法令で定められています。
教員免許が不要なのは大学や民間の学習塾ですので、誤解のないようしっかりと確認しておきましょう。
教員採用試験を受験し合格する
教員を目指す上での最大の難関は教員採用試験と言えるでしょう。
採用試験に何年もかけてチャレンジし続ける人もめずらしくありませんので、働きながら勉強しなくてはならない社会人の場合、なおさら採用試験がネックになりやすいのです。
市販の問題集がたくさん刊行されていますので、独学で合格を目指す人も少なくありません。
また、社会人を対象とした予備校や通信講座もありますので、独学では心許ないと感じる人はプロの力を借りるという方法もあります。
採用試験に合格すると晴れて教員となり、合格した自治体の学校に配属されます。私立校の場合は学校ごとに選考しますので、採用試験を受けて合格する必要があります。
3)民間企業から転職した場合、ギャップを感じることも多い
民間企業の会社員から教員になるためにはいくつかハードルがあるものの、決して不可能ではないことが分かりました。
教員を目指す人の多くが「先生になるまで」の道のりをどう乗り越えるかを考えていますが、実は「先生になってから」のことも知っておく必要があります。
なぜなら、教員の世界は民間企業とは異なる面が多々あり、教員として働き始めてからギャップを感じる人も少なくないからです。
実際、民間企業から教員になった場合、どういった点にギャップを感じることが多いのでしょうか。典型的な3つの例を見ていきましょう。
勤務時間外や休憩時間に仕事をするのは日常茶飯事
学校の先生が長時間労働で大変ということはよく知られています。
ただし、「今までも残業がある会社で働いてきたし、多少のことは大丈夫」などと安易に考えないほうが無難です。
民間企業では、よほどのブラック企業でない限りは勤怠管理が行われています。
定められた勤務時間を超過して働いた分は残業手当を支給しなくてはならないルールもあります。
ところが、公務員である公立校の教員には残業代という概念が「ない」のです。
夜遅くまで残って仕事をした場合や、休日に部活の顧問や学校行事などで出勤した場合でも、残業代は支給されません。
教員の仕事は「勤務時間はあってないようなもの」と言われるほど、自分の時間と仕事をする時間との境界が曖昧です。休憩時間や勤務時間外に会議が設定されるのは当たり前の世界なのです。
学校経営に関わる校務の優先順位が最も高く、授業や学級経営は最も低い
学校の先生になりたいと思っている人の多くが「子どもたちに分かりやすい授業をしてあげたい」「生徒たちのために頑張りたい」と考えているはずです。
教員になれたら授業に全力投球するぞ!と思いたいところですが、実際の学校現場はそうではないことを知っておく必要があります。
学校現場で最も重視されるのは「校務」です。
つまり、学校経営に関わる仕事を積極的に手伝う教職員は高く評価され、管理職への階段を上っていきます。
担任を持っていたとしても、自分の学級の運営は校務よりも後回しにせざるを得ません。
まして授業準備となると、それらよりもさらに後回しとなります。
実際、学校の先生方が遅くまで残ってこなしている仕事の多くは授業準備などではなく、校務に関わることです。
「一生懸命に授業をしたら評価されるのでは?」といった考え方だと、教員になってから大きなギャップを感じる可能性が高いと言えます。
論理よりも人間関係や好き嫌いが優先される場面によく出くわす
民間企業では「論理的思考」を重視する会社が増えてきました。
感覚や印象ではなく、因果関係を明瞭にしたアウトプットを求められる機会も多くなっています。
しかしながら、いまだに上長の好き嫌いや人間関係が人事を左右するようなケースが完全になくなったとは言いがたいでしょう。
転職するとしたら、そういった評価基準の曖昧な職場は避けたいと思う人も多いはずです。
ところが、教員の世界はまさに「人間関係」「好き嫌い」で物事が進んでいくことが多いと言われる世界です。
「何を言っているか」よりも「誰が言っているか」が重視されることが少なくないため、会社員時代に論理的思考力に自信を持っていたタイプの人ほどギャップを感じる可能性があります。
4)塾など「教育業界への転職」という選択肢もアリ
教育に携わるなら「教育業界」を視野に入れても
教育に携わる仕事をしたいのであれば、学校の教員以外にも道はあります。たとえば、民間の教育系の企業に転職するのもひとつの手です。教育関係の企業の例としては、
- 学習塾、予備校
- 英会話スクール、プログラミング教室
- EdTech系企業
- 教材出版社
などが挙げられます。
少子化の影響で教育業界は市場規模が縮小に向かうと予測する人もいましたが、各家庭の子ども一人あたりにかける教育費はむしろ増えているため、市場規模は拡大し続けています。
一人の子どもが複数の習いごとを掛け持ちし、塾にも通うのがめずらしくなくなっている、といったイメージです。
2020年度には小学校で新学習指導要領が実施され、英語やプログラミングが必修化されます。
こうした大きな転換期にあたることもあり、教育業界には大きなチャンスがあるという見方もできるのです。
教育業界といえども、ビジネスの世界であることに変わりはない!
教育業界も視野に入れて転職活動をする際、ひとつ注意しておきたいことがあります。
それは「教育業界といえどもビジネス」であることを理解しておく必要がある、という点です。
「そんなのは当たり前」と思った人も、ビジネスという側面を少し深く掘り下げて考えてみてください。
たとえば学習塾であれば、教室運営を成功させるカギは「塾生が集まること」「合格実績が出ること」にあります。
しかし、授業さえ頑張れば成果がついてくるわけではありません。
教室責任者であれば、アルバイト講師の募集や管理、集客のためのチラシやDMの戦略立案、より多くの講座を受講してもらうための面談などが主な仕事となることもめずらしくないのです。
実際、「勉強を教えたくて塾に転職したのに、営業活動ばかりやっている」という感想を持つ人はたくさんいます。
教育業界を過度に美化して考えすぎないようにするのも大切な視点の1つです。
5)まずは教員・教育業界両方の「生の声」を聞く機会をつくる
教員にも教育業界にも、それぞれに大変な面があることを紹介しました。
「それでも教育の仕事をあきらめたくない」という人は、自分が教員と教育業界のどちらに向いているのか、よく見極めることが大切になってきます。
そこでぜひ参考にしたいのが、実際に教員として、あるいは教育業界の会社員として働いている(または働いていた)人の意見です。
「身近にそういう人がいない」という人も、貴重な生の声を聞く機会はありますので、ぜひ参考にしてください。
教員志望の人は個別相談会への参加を検討してみるとヒントが見つかるかも
自治体によっては、教員志望者を対象とした個別相談会を開催していることがあります。
教員を目指すにあたっての準備について聞けたり、実際に教壇に立っている先生方のアドバイスや経験談を話してもらえたりする場として、とても貴重な機会と言えるでしょう。
教員向けの研修制度を独自に用意している自治体もありますので、教員になるまでのことだけでなく、教員になってからのことをイメージしやすくなるはずです。
運が良ければ、民間企業から教員に転身した経験を持つ先生の話を聞く機会が得られるかもしれません。
もちろん毎回どの自治体でもそういった先生が必ず参加しているわけではありませんが、個別相談会に出席することで貴重なアドバイスをもらえるチャンスを増やすことにつながります。
教育業界を視野に入れるなら、転職エージェントへの相談もおすすめ
学校の教員に限らず教育全般に興味があるなら、民間の教育業界にも目を向けてみるといいでしょう。
ただし、教育業界は近年細分化が進んでおり、多種多様な業態・職種が台頭しています。選択肢が多いのは良いことですが、一方で「あまりに多くて探しきれない」「迷ってしまう」といったことにもなりかねません。
特に未経験から教育業界へ飛び込もうとしている人は、転職市場におけるプロの転職エージェントにアドバイスしてもらうことをおすすめします。
代表的な転職エージェントとして、教育業界を目指す人におすすめの4社をご紹介します。
リクルートエージェント
求人数・サポート実績の豊富なエージェントからサポートを受けたい人におすすめ
未経験の業界に転職する際は、これまで転職をしたことがある方も、そうでない方も「転職活動が上手くいくか」心配になることでしょう。
そんな時は、少しでも信頼できる転職エージェントにサポートを頼みたいはず。
リクルートエージェントは国内最大手の転職エージェントで、国内No.1の転職支援実績があるサービスです。
保有している求人は、2024年7月時点でおよそ42万件。そのうち、教師・講師・インストラクター、教室長・教室運営・学校経営、教材開発に関わる求人は3,500件あります。
また、リクルートエージェントには、職務経歴書を自動で作成できる「職務経歴書エディタ」や無料の「面接力向上セミナー」など、転職活動を強力にバックアップしてくれるツール・サービスも充実しています。
リクルートエージェントの特徴
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サービス対応地域 | 全国 |
公開求人数 | 約42万件(2024年7月現在) |
マイナビエージェント
学習塾講師やスクールマネージャーなどの教育サービス系に興味がある人におすすめ
学習塾講師やスクールマネージャーといった職種は「教育サービス」に分類されます。
広い意味ではサービス業ですが、成長過程にある子どもたちを預かるという意味で責任は重く、同時にやりがいのある仕事でもあります。
サービス業に強い転職エージェントの1つにマイナビエージェントがあります。
運営会社のマイナビ社は新卒採用に長年携わっていることで知られており、多数の企業と人材採用を通じて信頼関係を築いてきました。
他社にはない独占求人や知る人ぞ知る優良企業といったように、独力で探すことが難しい求人を多数抱えていますので、これまでの経験やスキルを活かして教育業界で活躍したい人にとって最適な転職エージェントと言えるでしょう。
マイナビエージェントの特徴
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サービス対応地域 | 全国 |
公開求人数 | 約6.0万件(2024年7月現在) |
業界・職種ごとの専任サポートチームが「じっくり親身になって」支援してくれるのがマイナビエージェントの強み。サービス入会時に登録する情報で担当が決まりますので、経歴・希望条件は丁寧に記入しておきましょう。
doda
教育業界の中で幅広い業態・職種を見ておきたい人におすすめ
未経験の業界への転職活動は、まずどのような業態の会社があるのか、どういった仕事内容の職種があるのか、といったリサーチから始めることになります。
限られた転職活動期間中に業界研究を進めるのは楽なことではありませんが、ここでしっかりと調べて情報を集めておかないと「もっと適した職種があったのに、知らなかった」などと後悔することになりかねません。
dodaは求人を自分で探して応募する「転職サイト」と、求人紹介から企業への応募、日程調整までアドバイスしてもらえる「転職エージェント」両方のサービスを利用できます。
「まずは自分で教育系の求人をじっくりチェックしたい」という場合は転職サイトのサービスを利用し、その後「応募や企業への交渉についてサポートしてほしい」となったときにエージェントサービスを利用する、という使い方もできます。
教育業界の求人は約3,000件(2024年7月時点)。そのうち、学習塾・予備校・専門学校に関わる求人が多く見られます。
dodaの特徴
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サービス対応地域 | 全国 |
公開求人数 | 約25万件(2024年7月現在) |
dodaは求人を自分から応募可能ですが、エージェント経由でのみ紹介される非公開求人も多いです。担当エージェントには初回面談時に希望条件をしっかり伝えておくことで、より有意義なサポートを受けられるでしょう。
ビズリーチ
転職後の平均年収840万円。特にEdTech企業を目指す人におすすめです。
ビズリーチは主にハイキャリア人材を対象とした転職サービスです。
一般的にハイキャリア転職サービスは求人数が少なくなりがちですが、ビズリーチは近年求人数が増えており、首都圏はもちろんのこと地方での転職においても非常に豊富な求人を確認できます。
紹介される会社は大企業だけでなく、中小の優良企業の求人も扱っています。
また、独自に「BizReach創業者ファンド」を創設するなど、スタートアップ企業の支援も積極的に行っていることから、スタートアップ企業やベンチャー企業への転職支援にも強いのが特徴です。
ビズリーチの特徴
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サービス対応地域 | 全国 |
公開求人数 | 約13万件(2024年7月現在) |
ビズリーチで企業からのスカウトを多く得るためには、レジュメ(職歴書)の品質を上げること!どのような自己PRが企業からの目にとまりやすいかをじっくり考えて、取り組んでみましょう。
まとめ)民間企業から教職への転職は「可能」、ただし実態を理解しておくこと
民間企業から教職へ転職することは努力次第で可能です。
最近では社会人経験者を教員に登用しようという動きのある自治体も増えてきています。
教師になってみたい!という思いのある人にとってはチャンスの時期と言えるでしょう。
民間企業とはまた違った大変さや苦労はあるものの、教職は子どもたちの成長に関わるやりがいのある仕事です。
「先生」という仕事をイメージや印象だけで捉えることなく、教員として働く上での実態をしっかりとリサーチしておくようにしましょう。