転職先企業の定着率・離職率、事業内容・企業ビジョンの調べ方
[最終更新日]2024/07/30
転職活動では情報収集や企業へのエントリー、書類作成に面接準備など、やらなければならないことがたくさんありますよね。
その中でもとくに重要となる作業が「企業研究」です。
企業研究をしっかり行えば、企業と自分のスキルのマッチする部分が知れる、選択肢の幅が広がる、自分の条件と合わない会社にエントリーせずに済むなど、転職を成功させる可能性が大幅に高まります。
目次
1)そもそも定着率・離職率とはどんなもの?
企業研究をする際は、給与や勤務地、業務内容が主によく見る項目ではないでしょうか?
実は定着率や離職率も人によっては企業選びをする上で重要な項目になります。
しかしその数値からどのように考えればよいのかわかりにくいですよね。まずは定着率・離職率のそれぞれの意味と、数値からどのようなことが判断できるのかについてご紹介します。
定着率とは
定着率とは「一定の期間内にどれだけの労働者が離職していないか」を表す数値です。定着率が高ければ以下の可能性があります。
一般的に働きやすい環境である
激務である、人間関係が悪い職場であると、定着率は悪くなる傾向にあります。そのため、定着率が高いことは労働環境が整っていることが期待できます。
良くも悪くも安定感がある
人の入れ替わりが少なく安定していますが、悪くとるとマンネリした環境である場合もあります。
ポストになかなか空きが出ない
退職する人が少ない分、ポストに空きが出づらく昇進が難しい可能性があります。
全ての傾向が当てはまるとは言えませんが、実際にホワイト企業の基準として「3年後定着率」という項目がよく用いられています。
入社3年後における定着率が7割ほどあるようでしたら、「入社前との悪いギャップはない」「若い人でも働きやすい環境」であることが予想されます。
一方で、「定着率がほぼ100%」という会社があったら、それはそれで不自然でもあります。もしかしたら、「ぬるま湯」「なあなあの仕事」といった風土が根付いており、新陳代謝が鈍化しているために定着率が高くなっていることもありえるでしょう。
定着率の計算方法
定着率とは100%-離職率で計算されます。つまり以下の計算式となります。
- 100-(当該期間に離職した人÷当該期間の在籍者数×100)
例えば2019年に入社した社員が100人の会社で、入社3年目までに20名退職した場合、
- 100-(20人÷100人×100)=80%
となり、定着率80%(2019年度入社社員の入社3年目までの定着率)となります。
計算式を見て勘付かれた方もいると思いますが、「誰の」・「どんな期間で」の設定次第で、定着率の数値は大きく変わっていきます。安易に定着率が高いと飛びついてしまわないように、以下を確認することをおすすめします。
- 誰の?
〇年度入社の社員なのか、社員全員なのか対象を確認しましょう。性別ごとの項目があれば、女性も続けやすい環境であるかを確認できます。 - どの期間?
期間が1年など短いと判断が困難です。できるだけ長期間もしくは連続したデータを集めましょう。
離職率とは
離職率とは「一定の期間内にどれだけの労働者が離職したのか」を表す数値で、定着率と対の関係にあります。離職率が高いと以下のことが予想されます。
一般的に労働環境が悪い | 離職の理由は様々ではありますが、サービス残業をさせられる、激務なのに賃金が安いなど、労働環境が悪い可能性があります。 |
---|---|
雇用が流動的で変化が多い | 人の入れ替わりが多く、職場の雰囲気や業務の進め方などの変化が多いと予想されます。良くとらえると変化が多く刺激的、悪くとらえると安定性に欠けるかもしれません。 |
若手の裁量が大きい | 離職率が高いことは人手が不足している可能性が高く、若手のうちから大きな仕事を任されることが考えられます。 |
このように、離職率が高いことが必ずしも労働環境が悪いということではありません。
>離職率が高いと気になったら、その理由も調べておくことをおすすめします。
離職率の計算方法
離職率の計算方法は以下の通りです。
- 当該期間に離職した人÷当該期間の在籍者数×100
【例1】100人勤務するA企業で2019年に離職した人数が10人の場合、
- 10人÷100人×100=10%
となり、離職率は10%となります。
【例2】50人勤務するB企業で2010年~2019年に離職した人数が10人の場合、
- 10人÷50人×100=20%
となり、離職率は20%となります。
数値だけで見るとA企業の方が良い気がしますが、A企業が1年間の離職率であるのに対し、B企業は10年間の離職率です。A企業はもしかするとたまたまこの年は10%だっただけの可能性もあります。
離職率は「3年離職率が3割より低ければ働きやすい」と言われることも多いですが、安易に数値だけ見ずに、誰の・どんな期間での離職率なのかをしっかり確認しましょう。
2)特定企業の定着率・離職率を確認する方法
定着率・離職率を確認してみようと思いきや、求人情報に掲載されていないことが多いです。
定着率・離職率は記載必須の条件項目ではないため、「うちの会社は定着率に自信がある」という企業以外はあまり見かけられません。
しかし後悔しないためにも、情報は集めておきたいですよね。そこで定着率・離職率を確認する以下の3つの方法をご紹介します。
それぞれ、順を追って見ていきましょう。
転職エージェントに確認する
まずは転職エージェントに確認することをおすすめします。転職サイトには掲載されていなくても、経験豊富な転職エージェントの場合、ある程度定着率・離職率を把握している可能性が高いです。
転職エージェントとしては求職者と企業をマッチングさせるだけでなく定着させることも必要なので、親身になってくれることが期待できます。
また定着率・離職率については、企業によっては聞かれたくないウィークポイントの可能性もあります。
聞いてみて関係性が悪くなるのでは?と気が引ける方もいることでしょう。
そういった際も、転職エージェントを利用すれば、気まずい思いをせずに情報を聞き出せます。
企業の定着率・離職率確認におすすめの転職エージェント
リクルートエージェント
リクルートエージェントは国内最大手の転職エージェントで、転職支援実績も国内No.1を記録しています。
運営会社のリクルートブランドもあり、様々な企業との間に強固なパイプを持っており、「非公開求人」を含めると2024年7月時点でおよそ70万件の求人を保有しています。
これまでの転職支援実績の豊富さから、各求人企業の定着率についても独自の見解を持っているでしょう。
求人紹介は「キャリアアドバイザーからの紹介」で行われるのが一般的ですが、リクルートエージェントでは更に、過去の豊富な転職支援実績をもとに転職者の志向に合わせての「レコメンド求人」、提携企業からの「スカウト求人」からも求人を紹介してもらえます。
doda
dodaは国内でもリクルートエージェントに次ぐ大手の転職エージェントです。
公開求人数は約25万件(2024年7月現在)と豊富に取り揃えており、「IT」「技術職」「営業職」をはじめ、扱っている業種・職種も幅広いのが特徴です。
全国すべてのエリアに対応していますので、Uターン転職、Iターン転職をはじめ地方での転職活動を予定している人、大小規模かかわらず企業の定着率・離職率を確認したい際にもおすすめできます。
dodaは「転職エージェント」+「転職サイト」両方の機能を備えています。
転職エージェント | 転職者自身でサイト上の求人を検索・応募する。 面接日のスケジュール設定や年収交渉等も転職者側で行う。 |
---|---|
転職サイト | キャリアアドバイザーによる求人紹介や書類添削・面接対策などのサポートが受けられる。 面接日の設定や年収交渉等もキャリアアドバイザーが代行してくれる。 |
通常の転職サービスでは「転職エージェント」か「転職サイト」のどちらか一方の機能であることが多いですが、dodaではこれら2つを同時に利用できます。
また、dodaは企業からのスカウトメールが届く頻度が多いことでも知られています。
スカウトメールをもらうことで転職先の選択肢も広がりますし、「自分がどんな企業に関心を持たれているか」という市場価値の確認にも役立てられます。
転職先の選択肢を広げたい人、ある程度自分のペースで転職活動を進めたい人に、dodaは適したサービスと言えるでしょう。
パソナキャリア
パソナキャリアは全国都道府県に支店を設ける、支店数において国内No.1の転職エージェントです。そのため、都市部・地方に関わらず幅広い求人紹介を可能としています。
企業とのリレーションも強固で、定着率の高い優良企業を紹介されやすいでしょう。
「IT・Web業界」から「メディカル」「ものづくり」「営業職」「女性の転職」など、カテゴリ別に専門知識を持ったキャリアアドバイザーのサポートを受けられます。
パソナキャリアはサポート品質が高く、実際に利用した人の61.7%が年収アップを実現しています。
過去に25万人を転職成功へと導いたノウハウをもとに、転職者のスキルやキャリアに見合った年収となるよう、企業側と交渉してくれるのです。
参考:パソナキャリア公式サイト
女性活躍推進コンサルティングチームの設置や、ハイキャリア向けのサービス「パソナキャリア ハイクラス」の運営など、より幅広い層へサポートの輪を広げているため、転職を考えているすべての人におすすめできるサービスです。
マイナビエージェント
マイナビエージェントは「サポートの丁寧さ」で評判を勝ち得ている転職エージェントです。
特に20代~30代前半と言った若年層の転職支援に強く、また大手企業だけでなく中小規模の優良企業に独自のパイプを持ち、独占案件として保有しています。
マイナビエージェントでは業界ごとに専任のアドバイザーが担当するため、転職を希望する業界・職種に応じてサポートを受けられます。
自力で調べるのが困難な業界知識や企業情報を教えてもらえるので、転職活動を効果的に進められるでしょう。
「今回が初めての転職で、不安なことがたくさんある」という方は、マイナビエージェントの利用がおすすめです。
ハローワークに確認する
転職エージェント以外にも、ハローワークに確認するのも一つの手です。
企業は離職者が出た場合必ずハローワークでの手続きが必要となります。
ハローワークならよりリアルな定着率・離職率の情報が手に入るかもしれません。
またハローワークで企業の定着率・離職率に限らず、他の情報も聞くことをおすすめします。
例えばハローワークにどれほどの頻度で求人を出しているかを聞いておくと、頻度が高ければそれだけ定着率が悪いことが予想できます。
ハローワークは公的機関で企業との利害関係がないため、より公平な意見が期待できます。1つの情報源に依存しないよう、様々な場所で情報を収集することが重要です。
企業の採用面接で確認する
面接で定着率・離職率について直接的に聞いてしまうと、印象を悪くする恐れがあります。そこでやんわりと定着率・離職率について確認する一例をご紹介します。
-
職場の雰囲気について知りたいのですが、どれくらいのキャリアを積まれている方が多いですか?
「長いキャリアの方が多いので安心して業務に取り組めます」などの回答が得られるでしょう。
長いキャリアの方が多いと定着率が高いと予想されます。
若手中心と答えられた際は「ベテランの方は別の部署へと移動するようなキャリアパスでしょうか?」と聞いているのもおすすめです。
-
自分のような中途入社社員はどれほどいるでしょうか?
中途入社社員が多数勤務しているなら、中途入社の定着率が高いと期待できます。
「企業口コミサイト」等で確認する
匿名の情報なので他の情報と比較すると信用性に欠ける部分はありますが、企業口コミサイト等で情報収集できます。
具体的な定着率・離職率の数値は記載されていませんが、「こんな待遇ならどうやら離職者が多そうだ」ということがうかがえるでしょう。
ただし、企業口コミサイトに書き込む人は、退職前又は退職後であるケースが殆どです。そのため、ネガティブな意見の割合が多くなりがちです。
口コミ情報は全て鵜呑みにはせず、気になることがあれば転職エージェントや企業の担当者に探りを入れてみることをおすすめします。
例えば「自動車を持っていないのに自動車通勤を余儀なくされた」などの口コミを見たら、事業所の位置や転勤の有無を確認した方が良いでしょう。
エンゲージ 会社の評判
「エンゲージ 会社の評判」を運営しているのは、転職サイトなどで知られるエン・ジャパン株式会社です。
現在「エンゲージ 会社の評判」の口コミ登録社数は約22万社以上です。
利用は完全無料となっており、基本的には会員登録しなくても閲覧ができます。
ただし、会員登録をすることですべての口コミが閲覧できるようになります。
「企業データの比較をしたい」「女性の働きやすさを知りたい」人におすすめしたい口コミサイトです。
転職会議
「転職会議」を運営しているのは、「転職ナビ」「マッハバイト」などのサービスを提供している株式会社リブセンスです。
この「転職会議」は基本的には転職サイトで、「後悔のない転職」の実現を大きな目的としています。
現在「転職会議」の口コミ登録数は約290万件以上です。
会員登録は無料で、職種や勤務地など様々な条件での検索ができます。
「転職会議」では、口コミが確認できるだけでなく、口コミ付き求人を探すことが可能です。
「求人を探しながら1社ずつ企業の口コミも確認していきたい」人におすすめしたい口コミサイトです。
Open Work
「openwork」を運営しているのは、東京都にあるオープンワーク株式会社です。
この「openwork」は、転職や就職のための情報プラットフォームとして利用することが可能です。
現在「openwork」の社員口コミ数は1,000万件以上です。
「会社評価レポートに回答」「転職サービス登録プログラム」「就職サービス登録プログラム」などの利用で、口コミの閲覧が可能になります。
「転職や就職のための情報サービスを利用したい」人におすすめしたい口コミサイトです。
3)定着率・離職率だけで判断するのは危険!事業内容・企業ビジョンも大切に
明らかに定着率が低い・離職率が高い場合、「その企業は何かある」という指標にはなりますが、定着率・離職率だけで企業の良し悪しを判断することは危険です。
企業研究はたとえ自分の希望する条件が少ないとしても、できるだけ多くの項目を確認しておくことが重要です。例えば以下の項目が挙げられます。
企業を評価するうえで見ておきたいポイント
- 企業理念
- 詳しい事業内容
- 業績・成長性
- 景況・経済動向による影響度
- 競争力(独自性)
- 社風
- 勤務条件・福利厚生
全ての基本「企業理念」
企業理念の確認は必須です。志望動機になりやすい項目でもあるのでエントリーする企業は必ず確認しましょう。
「経済力」を知る
企業に経済力がなければ待遇は悪い傾向にあるので、働きやすさ重視の方も経済力を確認することは必須です。
まずは事業内容を確認しましょう。イメージとは異なり多数の事業展開をしている場合があります。
事業内容から市場と顧客を確認すると、今後の成長性や景況・経済動向による影響度がある程度把握できます。また企業HPには必ず企業の独自性となる強みが掲載されています。
強みと業績を組み合わせ、自分なりに企業の経済力を評価してみましょう。
「働きやすさ」を知る
経済力と合わせて評価したいポイントは「働きやすさ」です。これは社風、勤務条件、福利厚生などを参考に推測していきます。
社風は実際に働く人に聞くことが1番ですが、難しければ面接担当の社員やオフィスの雰囲気を参考にしましょう。
勤務条件・福利厚生については求人票や企業サイトのリクルートページをチェックし、あわせて転職エージェントの担当者にも確認しておくとよいでしょう。
企業研究 見るべきポイント
企業研究をする際に、優先して見るべきポイントは以下の通りです。
チェック項目 | 確認ポイント | どこで確認するか |
---|---|---|
事業内容 | 自分自身の知識領域にあるか、また今後も興味・関心を持ち続けられる内容かを確認する | 企業HP |
主力商品・サービス | その商品・サービスの開発・運用を自身が携わることになる際に、どの範囲まで知っていて、どの範囲を知らないかを確認する | 企業HP、業界ニュース、四季報、業界地図、競合他社のHP等 |
強み・独自性 | 同業他社をいくつか確認し、「この会社ならではの特色・強み」がどこにあるかを見出す | |
企業理念 | 企業理念から、求められる人物像(主にスタンス面)をイメージし、自身との適合性を確認する | |
社風・雰囲気 | 歓迎される人物像や業務への取り組み姿勢をイメージする | インタビュー記事、口コミサイト等 |
求められる知識・スキル | 現在の自身の知識・スキルと照らし合わせて、過不足を確認する | 企業HP、求人票等 |
こうしたリサーチを重ねた結果、「この企業で働いてみたい」「こういった文化の会社なら馴染めそうだ」といった手応えを得られれば、入社後のミスマッチを軽減する効果が期待できます。
まとめ)定着率・離職率も含め多角的に企業研究しよう
定着率・離職率は、企業評価の1つの指標となります。
しかし定着率・離職率も様々な見方ができ、それだけで「良い企業・悪い企業」と決められるものではありません。
他の様々な指標と組み合わせて総合的に考えることが重要です。
転職活動は時間と労力を要するだけでなく精神的にも負担がかかり、ついつい企業研究も疎かになりがちですよね。
しかしそんな中ここまで読んでくださった皆様は、とてもストイックに転職活動に取り組まれていると存じます。スキルや経歴とは違い、企業研究はやればやるほど知識が深まります。
皆様のストイックさで悔いのない転職のゴールを迎えられるよう、応援しております。