AIエンジニア転職は未経験でもOK?年収・スキル・キャリアパスを徹底解説
[最終更新日]2025/12/22

ChatGPTをはじめとする「生成AI(Generative AI)」の急速な普及により、AIエンジニアの需要はかつてないほど高まっています。
これまでAIエンジニアといえば、「高度な数学やアルゴリズムを駆使して、ゼロからモデルを作る研究職」というイメージが強く、敷居が高い職種と思われがちでした。
しかし現在は、APIを活用したアプリケーション開発や、AIを動かすための基盤構築など、「既存のWeb開発やインフラ構築のスキル」を活かせるフィールドが急拡大しています。
目次
1)AIエンジニアの仕事内容とキャリアパス

これまで、AIエンジニアといえば「高度な数学を駆使して、ゼロからAIを作る仕事」というイメージが強かったかもしれません。
しかし、生成AI(Generative AI)の登場により、その役割は大きく広がっています。現在は「モデルを作る」だけでなく、「既存のAIを組み込んでサービスを作る」「AIが動く環境を支える」といった役割も重要視されています。
ここでは、現在の転職市場で求められている3つの主な役割と、それぞれのキャリアパスについて見ていきましょう。
① AIモデル開発(機械学習・データサイエンス領域)
データの収集・分析を行い、学習データを読み込ませてAIモデルそのもの(脳みその部分)を構築する仕事です。
従来のイメージに最も近く、統計学や数学の深い知識が求められます。
- 業務内容:ビッグデータの分析、学習モデルの構築・精度改善、最新論文の実装
- 向いている人:理数系のバックグラウンドがある人、一つの技術を深く追求したい研究肌の人(ペルソナC層)
この領域では、PythonやR言語といったプログラミングスキルに加え、微分積分や線形代数といった数学知識が不可欠です。未経験から目指す場合、大学レベルの基礎知識を習得する覚悟が必要です。
② AIアプリケーション開発(生成AI・API活用領域)
いま、最も求人が増えているのがこの領域です。
自分たちでAIをゼロから作るのではなく、OpenAI社(ChatGPT)などの既存のAIモデルをAPI経由で利用し、Webアプリや社内システムに組み込む仕事です。
- 業務内容:AIを活用したWebアプリ開発、プロンプトエンジニアリング(AIへの指示出し設計)、RAG(社内データをAIに参照させる仕組み)の構築
- 向いている人:Web開発経験があるエンジニア、サービス作りに関わりたい人(ペルソナA層)
ここでは高度な数学よりも、「どうAIを使えばユーザーが便利になるか」という視点や、Webアプリケーションの開発スキルが重視されます。Webエンジニアからのキャリアチェンジとして非常に狙い目です。
③ AI基盤構築・運用(MLOps領域)
AIモデルが常に安定して動き続けるための「インフラ(土台)」を作る仕事です。
AIは一度作って終わりではなく、日々新しいデータを学習させ続ける必要があります。このサイクルを自動化し、支えるのが主な役割です。
- 業務内容:クラウド(AWS、Google Cloud、Azure)上のAI基盤構築、学習パイプラインの自動化、モデルの監視
- 向いている人:サーバーやネットワークの構築経験がある人、システムの安定運用にやりがいを感じる人(ペルソナB層)
この分野は「MLOps(エムエルオプス)」と呼ばれ、クラウドインフラの知識を持つエンジニアが非常に重宝されています。
スペシャリストかマネジメントか、将来のキャリアパス

AIエンジニアとして転職した直後は、実務経験を積みながら、上記のいずれかの専門性を高めていくことになります。
その後のキャリアパスは、大きく分けて「技術を極める」か「プロジェクトを率いる」かの二手に分かれます。
データサイエンティストやAIリサーチャーとして第一線の技術力を磨き続ける道もあれば、AIプロダクトマネージャー(PdM)として、ビジネス視点でAIプロジェクトを成功に導くリーダーになる道もあります。
特に最近では、「技術もわかるし、ビジネスの話もできる」というブリッジ人材(橋渡し役)の価値が高騰しています。将来の希望に応じて、スペシャリスト・ゼネラリストどちらの選択も可能なことは、AIエンジニアの大きな魅力です。
AIエンジニアの平均年収

AIエンジニアは高いレベルが求められるため、年収も他のIT系職種より高めであることが特徴です。求人ボックスの調査(2020年10月28日現在)によると、以下の通りとなっています。
- 平均年収は602万円。476~560万円の人が多い
- 年収幅は393~1,064万円と幅広くなっている
AIエンジニアの年収はシステムエンジニアの平均年収よりも高いですが、一方でAIエンジニアの年収幅が広いことを見逃してはいけません。
これはあなたのスキルや入社した会社により、年収が大きく異なることを意味します。
そのため「実力と経験があれば、給料もアップする可能性がある」と考えましょう。特にAIエンジニアになったばかりの人の場合、年齢に関わらず年収が低いことは我慢しなければなりません。
一方で、実力があれば年収1,000万円超えも期待できます。海外の企業では、特に優秀なAIエンジニアに対して数千万円から数億円の年収を提示する場合もあります。
AIエンジニアの将来性

AIエンジニアは、将来性がある職種といえます。それはAIを取り入れる業界が次々と現れている一方で、開発に従事する技術者は不足しているためです。
情報処理推進機構は「IT人材白書2019」において、AI人材の過不足を調査しました。これによるとIT企業において、今後5年間でAI人材が不足すると答えた企業は全体の61.2% におよびます。
AIの活用は社会全体のトレンドにも合致する動きですから、今後さらに重要な開発案件として扱われる場合も多いことでしょう。
このような状況ですから、多くのIT企業でAIエンジニアの募集が期待できます。一人前になるまでは学習が必要な職種ですが、その後は高いスキルを生かし、さまざまな場面での活躍が可能です。
参考文献:
・経済産業省・IPA(独立行政法人情報処理推進機構):デジタルスキル標準(DSS)
2)AIエンジニアに必要なスキルセット
AIエンジニアに求められるスキルは、技術の進化と共に変化しています。
以前は「数学と理論」が全てでしたが、現在は「便利なツールをどう組み合わせるか」という実装力も重要視されています。
ここでは、現代のAIエンジニアとして活躍するために押さえておきたい5つのスキルセットを解説します。
プログラミング言語とフレームワーク

まず必須なのが、AI開発の共通言語であるPythonです。文法がシンプルで、AI開発に特化した便利な部品(ライブラリ)が世界中で共有されているためです。
現場では、単にPythonが書けるだけでなく、以下の主要ライブラリやフレームワークを使いこなすスキルが求められます。
| カテゴリ | 代表的なツールと用途 |
|---|---|
| 数値計算・データ処理 |
|
| 機械学習・AIモデル構築 |
|
| アプリ化・Web連携 |
|
かつてはC言語やC++での高速化チューニングも必須と言われましたが、現在は「まずはPythonで動くものを作る」能力が最優先されます。特にWebエンジニアの方は、FastAPIなどを使って「AIをAPI化する技術」で即戦力になれます。
数学・統計学の知識(職種により深度は異なる)

「AIエンジニアには数学が必須」と聞いて不安になる方も多いでしょう。確かに、ゼロからモデルを開発する研究職には高度な数学(微積分、線形代数、確率・統計)が必要です。
しかし、「AIアプリ開発」や「既存モデルの活用」がメインの職種であれば、まずは高校数学レベルの基礎知識と、ライブラリの仕組みを理解するところからスタートできます。
最低限、以下の学習分類については「どんな仕組みで答えを出しているか」を概念として理解しておきましょう。
| 学習方法 | 概要とイメージ |
|---|---|
| 教師あり学習 | 「問題と正解」のセットを読み込ませて学習させる手法。 (例:メールが迷惑メールかどうかを分類する) |
| 教師なし学習 | 正解を与えず、データの特徴や構造をAI自身に見つけさせる手法。 (例:購買データから顧客をグループ分けする) |
| 強化学習 | 試行錯誤を繰り返し、スコア(報酬)が最大になる行動を学習する手法。 (例:将棋AI、ロボットの歩行制御) |
【最新】生成AI・LLM関連の知識と実装力

ここ数年で爆発的に需要が増えたのが、ChatGPTなどの大規模言語モデル(LLM)を扱うスキルです。企業は今、「AIをどう業務に組み込むか」を模索しています。
- プロンプトエンジニアリング:AIに対して適切な指示(プロンプト)を出し、精度の高い回答を引き出す技術。
- RAG(検索拡張生成):社内マニュアルなどの独自データをAIに参照させ、回答させる仕組みを作る技術。
- LangChain / LlamaIndex:複数のAI機能やデータソースを連携させ、複雑な処理を実現するための開発フレームワーク。
「モデルを一から作る」のではなく「既存の賢いモデルを上手に使いこなす」という、新しいエンジニアリング力が求められています。
クラウドプラットフォームの活用スキル

AIシステムの多くは、クラウド上で動いています。そのため、AWS(Amazon Web Services)、Microsoft Azure、Google Cloudといったクラウドサービスを扱うスキルは、転職において強力な武器になります。
特に最近では、クラウド各社が提供しているAIサービス(Amazon BedrockやAzure OpenAI Serviceなど)を活用することで、サーバー構築の手間をかけずに高機能なAIアプリを作ることが可能です。
インフラエンジニア出身の方は、この領域(MLOps)で大いに活躍できるでしょう。
ビジネス課題解決力とAI倫理

最後に欠かせないのが、「AIを使って何を解決するか」を考えるビジネス視点と、リスク管理の知識です。
AIは万能ではありません。時にはハルシネーション(もっともらしい嘘をつく現象)を起こしたり、著作権や個人情報の問題に抵触するリスクもあります。
「ここはAIに任せるべき、ここは人間がやるべき」という判断を行い、安全にAIを活用するためのルール作りやセキュリティ対策を知っている人材は、どの企業でも重宝されます。
参考文献:
・総務省:令和6年版 情報通信白書(ICTによる社会課題解決)
・JDLA(日本ディープラーニング協会):G検定・E資格 シラバス
3)AIエンジニアへの転職成功に向けて準備すべきポイント3つ
ここまで必要なスキルを解説しましたが、「勉強してから転職活動をしよう」と考えると、いつまで経ってもスタートできません。
現在のAI転職市場では、完璧な知識よりも「今のスキルで何ができるか」という実績と戦略が評価されます。
未経験からでも確実にキャリアをつかむために、以下の3つのポイントを準備しましょう。
1. 自身の強みとAIを掛け合わせた「ポジション選定」

AIエンジニアへの道は一つではありません。1章で紹介した「3つの役割」のうち、自分の経歴(強み)が最も活きる場所を狙うのが近道です。
| あなたの現在の強み | 狙うべきポジションとアピール戦略 |
|---|---|
| Web開発経験がある (Java, PHP, Ruby等) | →「AIアプリケーション開発」を狙う 「APIを使ってAI機能をアプリに組み込めます」「使いやすいUIを作れます」という即戦力性をアピール。数学の深掘りより、Pythonフレームワーク(FastAPI, Streamlit)の習得を優先しましょう。 |
| インフラ経験がある (AWS, Linux等) | →「AI基盤構築(MLOps)」を狙う 「モデルを安定稼働させる環境構築なら任せてください」とアピール。クラウドのAIサービスの知識(SageMaker, Vertex AI等)をプラスすれば強力な武器になります。 |
| 未経験・ポテンシャル層 (理系出身・第二新卒) | →「データ分析・モデル開発」のアシスタントから 基礎的な数学力と学習意欲が最大の武器です。資格(G検定・E資格)取得や、Kaggleなどのコンペ参加実績で「素養」を証明しましょう。 |
「自分は全部できないからダメだ」と思う必要はありません。「Web × AI」「インフラ × AI」という掛け算こそが、あなたの市場価値になります。
2. 「動くもの」を見せるポートフォリオ作成

採用担当者が一番見たいのは、「どれだけ本を読んだか」ではなく「実際に何を作れるか」です。
特に実務未経験の場合、GitHubにコードを上げるだけでなく、以下の「目に見える実績」を用意しましょう。
- Webブラウザで動くデモアプリ:
Streamlitなどを使って、「URLをクリックすれば誰でも使えるAIチャットボット」などを公開する。 - 技術ブログでの発信:
QiitaやZenn、noteなどで、「自分が学んだこと」「作ったアプリの仕組み」を解説する記事を書く。思考プロセス自体が評価対象になります。 - データ分析コンペの実績:
KaggleやNishikaなどのコンペに参加し、順位や工夫した点を職務経歴書に書く。
もちろん、基礎学習のための書籍活用も重要です。以下の書籍などは、ポートフォリオを作る際の基礎固めに役立ちます。
AIエンジニアを目指す際のおすすめの書籍
3. 常に最新情報をキャッチアップする習慣作り

AI技術は「日進月歩」どころか「秒進分歩」の世界です。先月使えていた技術が、今月には古いものになっていることさえあります。
そのため、面接では「普段どうやって情報を集めていますか?」と必ず聞かれます。
論文サイト(ArXiv)はもちろん、X(旧Twitter)での有識者の発言、Connpassなどの勉強会コミュニティ、海外のテックブログなどを日常的にチェックする習慣をつけましょう。
「新しい技術を楽しんで追いかけられること」こそが、AIエンジニアにとって最強の才能です。
そして、これらの準備ができたら、最後は「自分に合った企業」を見つけるステップです。
AIエンジニアの求人は特殊なものが多く、一般の転職サイトには出ない「非公開求人」も多数あります。
あなたの強みを正しく評価してくれる企業に出会うために、業界に精通した転職エージェントを賢く活用することをおすすめします。

もっとも、転職エージェントはどこも同じではありません。次の章では、どの転職エージェントに相談するとよいか解説していきます。
参考文献:
・厚生労働省:職業情報提供サイト(日本版O-NET)job tag「AIエンジニア」
4)AIエンジニアへの転職におすすめの転職エージェント
AIエンジニア向けの求人を取り扱う転職エージェントは多くあります。
選ぶ際は、「AIエンジニア業務の求人が豊富か」「希望する転職地域に対応しているか」「担当者はこちらの希望をしっかり聴いて理解してくれるか」の3点を意識するとよいでしょう。
「担当者の品質」については、まずは「ここが良さそう」と感じたサービスを2~3つ登録して、そのうえで自分に合った担当者を見出して利用を絞っていくのがおすすめです。
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