転職体験談:ITベンチャー企業の取締役から一転、社長との対立から鬱(うつ)に
転職前
- 職業
- IT・コンピューター
- 職種
- 取締役
- 従業員規模
- 300名
- 年収
- 1,300万円
転職後
- 職業
- フリーランス
- 職種
- コンサルタント
- 従業員規模
- 0
- 年収
- 350万円
目次
コーネリアスさんの転職ストーリー
1これまでの私
なかなか芽の出ない、辛い過酷な日々を越えていって──
ITベンチャー企業のWebコンテンツ事業の取締役として働いていました。
事業部の社員数は100名強。年間の売り上げは25億ほど。その業界で言うと、大体中の上くらいの立ち位置でした。
とはいっても、その数年前は年間売り上げはわずか2000万ほどで、毎月赤字を数百万も出ている、超赤字部署だったのです。
その時期はとても大変でした。私含め、多くのメンバー(当時は20名ほど)は終電ぎりぎりまで仕事して、泊りになることも週に何度もあって。
まさに寿命を縮めるような働き方をしていました。
何度かのサービスをリリースし、その多くが失敗して。でも諦めずに作り続けて。そうして1年経った頃に、ようやく一本ヒットと言えるタイトルを出せて──。
それからすべてがガラッと変わりました。事業部に笑顔が増えて、社員のやる気がみなぎってきて、社内での私たちの見られ方も変わっていって。
その年の社員旅行は香港だったのですが、そこで私たち事業部が表彰されて、何人かはうれし泣きしていました。
──忘れられないですね、あの時の光景が。
2転職のきっかけ
社長との対立から――。
事業が拡大するにつれて、私の待遇も上がっていきましたが、それに反比例するかのように、代表との仲が悪くなっていきました。
代表は絵に描いたような「ベンチャー社長」という感じで、とにかく周囲からの見られ方を気にする。上場してからはその傾向がより強まっていって。
「明らかにそれは悪手だろう」という戦略も、株主やIRを意識してやってしまうのです。例えば、ネームバリューはあるが将来性は乏しい企業と「戦略的事業提携」を組んで、将来性のある進出分野を切り離してしまったり、どう考えてもミスマッチな企業を買収してしまったり…。
そのしわ寄せは全部こちらに来ました。私はサービス開発に集中できなくなり、組織も古株メンバーと買収で入ってきた新参メンバーとで対立が起きたりして、…そのうち事業部の売り上げも落ちてきて。
いつも代表と言い争ってましたね。彼はいつも自分をきれいに見せようとするから、自分の落ち度は認めない。でも、こっちはどんどんしんどくなる。眠れない日が続きました。会議中、なんども代表を殴りたい衝動に駆られていました。そして、業績もまた、どんどん落ち込んでいきました。
そのうち、代表は外から役員クラスの人員を事業部に招き入れました。──つまり、私の後釜候補です。それからは、まあお決まりのパターンですね。私は干されて、そして退職することになりました。
3退職をして、
何もやる気が出ず、病院で診察を受けた結果は。
転職活動は、実はしなかったんです。…というか、まったくやる気になれなくて。
無職になってからもなにもしないでいる私のことを心配した家内が、心療内科に連れて行きました。そこで私は「鬱(うつ)」と診断されました。
驚きました。だって、全くそんな自覚なかったものですから。
- 医師
-
「皆、そういうんですよ。自分では気づかないものです」
50歳くらいの初老の医師の方が、そう私に伝えてきました。
そこで私は気付きました。仕事を辞めてから、まったく行動を起こす気になれない自分に。…私の仕事へのモチベーションは、完全に燃え尽きていたのです。
4その後の私
今、あのときの自分を振り返って思うことは──。
上司に干されて窓際に追いやられることも、それで退職することになることも、──そして、そこで燃え尽きてしまう話も、まあ世間ではよくある話でしょう。
しかし、まさか自分がそうなるなんて、思いもしませんでした。
不思議と、今は前職の代表への怒りは収まっています。──というより、心の奥底に封印しているといった形でしょうか。
…いえ、そもそもこうなったのは本当に代表のせいだったのでしょうか。色々な要因・原因が絡み合ってこの結果になったのであって、私と代表との確執は、その中のひとつにすぎないのかもしれません。
そして、その原因の中に、私の人間性というのも、少なからずあったのでしょう。
幸い、前職で得た収入で貯えがありましたので、しばらく私は休養を取ることにしました。
──そして、半年の月日が経ちました。
5その後、どうなったか。
知り合いの会社の相談役として。
私は今、前職で付き合いのあった会社に相談役として呼ばれて、非常勤で大体週3回のペースで出勤しています。…コンサルの真似事のような仕事です。──真似事といったら、お仕事を依頼していただく方に失礼な言い方ですよね。でも、本当にそんなものです。
もちろんそれだけでは収入が心もとないので、フリーランスの仕事を始めました。大体月に2~3社ほど、小さな仕事を受託して、自宅で作業します。
仕事をしている時間は月で大体100時間ほど。現在の年収はおよそ350万。──前職で取締役として働いていた時と比較すると、約3分の1です。…それでもまあ、贅沢しなければ充分にやっていけます。家内も働き始めましたので、その分は貯金に回しています。
将来のことを考えるととても不安ですが、今の私の気力で言うとこれがギリギリのところでしょう。
以前と比べるととても平穏な日々です。怒りで我を忘れることもありませんし、芳しくない業績に胃を痛めることもありません。
ですが、嫌な夢を、未だによく見ます。前職での、代表やその取り巻きと、険悪になっている夢。そこでは私は嵐のように怒り狂っているのです。そして、夢から醒めて、怒りはふっと収まり、その代わりにとても嫌な気持ちと、疲れを感じて──。
◇ ◇ ◇
いつか、そんな夢ももう見なくなって、以前のように元気になると思いつつ、その「以前」っていつのことだったのかが分からなくなってきているのです。もしかしたら、私は元々、ずっとこうだったんじゃないかって。いっとき前職の事業が好調だったとき──、じつはあの時が私の人生にとってはイレギュラーな状態であって、そして、これから先の人生は、ずっと今のままなんじゃないかって。
いつも、私の頭の中はまどろんでいます。