無期雇用派遣になるには?条件と正社員との違い・おすすめの派遣会社
[最終更新日]2024/10/24
2018年4月より、新たに「無期雇用派遣」という働き方が登場したことをご存知でしょうか。これまで派遣スタッフとして働く上でデメリットと言われてきた面をカバーできる可能性がある制度として注目されています。
目次
1) 無期雇用派遣とは
無期雇用派遣が登場した経緯は、2013年の労働契約法改正にさかのぼります。
それまでの派遣社員は、派遣先で何度も契約を更新し、何年間も働き続けていたとしても、いつ契約満了を告げられるか分からない立場にありました。
派遣社員として今後も働き続けていきたい人や、いずれ正社員になりたいと考えている人にとって、雇用の安定が保証されているとは言いがたい状況だったわけです。
そこで2018年4月より、一定の要件を満たしている派遣社員は、雇用期間の定めのない「無期雇用契約」への転換を申し込むことができるようになりました。
無期雇用契約を申し込むには、次の3つの要件を満たす必要があります。
- 有期雇用契約(つまり従来の派遣契約)期間が通算5年超
- 契約更新が1回以上あった
- 派遣元と現在も契約している
つまり、同じ派遣会社から派遣されていて、5年を超えて働き続けており、かつ契約更新をしたことが一度でもある人は、無期雇用派遣の対象となります。
無期雇用派遣と登録型派遣の違い
無期雇用派遣と登録型派遣、どちらも「派遣」という名称ですが、どのような違いがあるのでしょうか。
まず、世間一般でよく言われている「派遣」とは、大半が登録型派遣のことを指しています。
登録型派遣の場合、派遣会社に登録して派遣先で就業しますが、雇用契約期間となるのは「派遣先での就業開始から契約満了日まで」となります。
つまり、派遣先が決まらなければ給与は支払われませんし、契約が満了すればその時点で給与の支払いはストップします。
一方、無期雇用派遣も派遣会社から派遣されている点は同じですが、雇用契約期間の定めがないのが登録型派遣との大きな違いです。
派遣先との契約が満了し、次の派遣先が見つかるまでの空白期間ができたとしても、給与は月給制ですので固定給が支払われます。
なお、似た雇用形態に「常用型派遣」がありますが、常用型派遣は派遣会社の正社員として派遣先で就業する働き方のことを言います。無期雇用派遣は正社員ではない点に注意が必要です。
参考:無期雇用派遣と登録型派遣の比較
無期雇用派遣 | 登録型派遣 | |
---|---|---|
雇用のスタート時期について | 派遣会社が採用した時点から | 派遣先での就業が決まった日から |
雇用期間について | 期間の定めなし | 期間の定めあり |
給与額について | 月給制 | 時給制・派遣先の条件によって変動 |
派遣契約が満了した時について | 雇用契約は継続する | 雇用契約は終了する |
2) 無期雇用派遣のメリット・デメリット
無期雇用派遣のメリット
- 雇用期間の定めがないため、安定して働くことができる
- 中長期的な視野に立ってキャリアプランを考えることができる
- 派遣先との契約が満了しても次の仕事を探す手間がかからない
- 同一の派遣先で3年以上働くことができる
無期雇用派遣の最大のメリットは、登録型派遣と比べて安定していることでしょう。「今の派遣先で契約満了したら、次に仕事が見つかるのだろうか?」「次も契約を更新してもらえるだろうか?」という不安を抱えることなく働いていくことができるのです。
数か月単位の契約期間ではなく、1年後、3年後、5年後といった見通しを持ってキャリアプランを立てやすいとも言えます。
登録型派遣の場合、いったん派遣先との契約が終了すると、次に新たな派遣先を見つけなくてはなりませんでした。
しかし、無期雇用派遣は派遣会社が給与を支払い続ける以上、早く新たな派遣先を見つける必要がありますので、次の仕事を自分で探す労力をかけずに済みます。
さらに、登録型派遣では同じ派遣先で3年以上就業を続けられないことになっていましたが、無期雇用派遣契約に変更することにより、3年以上働くことも可能になります。
同じ職場環境で腰を据えて働き続けたい人にとっては、無期雇用派遣のメリットを感じられる点がいくつもあるはずです。
無期雇用派遣の注意点① 待機期間中は給与全額にならないことが多い
待機期間中も給与が支払われるのが無期雇用派遣の大きなメリットですが、支払われる額は全額とならないこともあります。
待機期間中は基本給の6割~7割の給与に設定している派遣会社も多く見られます。こうしたルールは派遣会社によって異なるため、契約時に確認する必要があります。
無期雇用派遣のデメリット
- 派遣先が変更になる可能性があり、自由に選べない
- ブランクなく働き続ける必要がある
- あくまで派遣社員であり、正社員ではない
無期雇用派遣は派遣社員にとって複数のメリットがある反面、デメリットもいくつかあることに注意しましょう。
無期雇用とはいえ、同じ職場でずっと働き続けられる保証はありません。
あくまで派遣元の派遣会社と無期雇用を結んでいるという意味ですので、派遣先は変更になる可能性があります。正社員のようにずっと同じ就業先というわけにはいかないことを理解しておきましょう。
また、登録型派遣で得られていたメリットを犠牲にしなくてはならない面もあります。
雇用期間の定めがないため、裏を返せばずっとブランクなく働き続けなくてはならないということでもあるのです。
一定期間派遣で働き、しばらく旅行に行って、また派遣で働く、といったような自由度の高い就業スタイルを実現することはできなくなります。
そして、誤解されやすい点として、無期雇用はあくまで派遣社員という点が挙げられます。
派遣先から「ずっと働いてくれる派遣さん」と認識される可能性がありますので、いずれ社員登用して欲しいと考えている人は、無期雇用派遣になったことで正社員になるチャンスを失う可能性があることも知っておきましょう。
無期雇用派遣の注意点② 無期雇用派遣は、正社員とは異なる
無期雇用派遣では、雇用期間の定めがないことから「正社員と同等」と紹介するサイトや派遣会社も見られます。ですが、実際のところ両者には以下の違いがあります。
無期雇用派遣と正社員の違い
観点 | 無期雇用派遣 | 正社員 |
---|---|---|
雇用期間 | 期間の定めなし | 期間の定めなし |
契約先(雇用先) | 派遣会社(派遣元) | 直接雇用企業(勤務先) |
働き方の特徴 | 派遣先企業での勤務、派遣先が変わる可能性あり | 企業内での勤務、安定して長期勤務が可能 |
キャリアアップのしやすさ | 派遣先の評価に依存し、機会が限定的 | 企業内で昇進の機会が多く、体系的なキャリア形成が可能 |
両者の大きな違いは、「契約先」「働き方の特徴」「キャリアアップのしやすさ」です。
どちらも雇用期間は「期間の定めなし」である一方で、無期雇用派遣は一定期間を経る毎に派遣先(勤務先)が変わり、かつ正社員のような昇進の機会は限られる点に注意が必要です。
無期雇用派遣で働く際は、こうした正社員の雇用形態との違いも理解したうえで、登録を進めるようにしましょう。
3) 無期雇用派遣になるには、2通りの方法がある
無期雇用派遣にはさまざまなメリットがあることを見てきました。では、どうすれば無期雇用派遣として働くことができるのでしょうか。
無期雇用派遣になるには、いくつかの条件があります。その条件を満たすための入口として、次の2通りの方法があります。
無期雇用派遣になるための方法2つ
- 派遣会社と契約してから、有期雇用契約の期間5年経過後に申し込む
- 無期雇用派遣を募集している派遣会社に申し込む
それぞれの方法について、順を追って見ていきましょう。
派遣会社と契約してから、有期雇用契約の期間5年経過後に申し込む
無期雇用派遣は、もともと派遣社員の雇用の安定を図るために作られた制度です。そのため、派遣社員として長く働き続けることによって無期雇用派遣になる要件を満たすことができます。
具体的には、まず登録型派遣として派遣会社に登録し、有期雇用契約を結びます。
派遣契約は多くの場合、2〜3ヵ月の契約期間になっており、順次契約を更新しながら就業を続けていくことになります。この更新を繰り返しながら、同じ派遣会社で通算5年以上働くと、無期雇用派遣に切り替える要件を満たすことができます。
これまで同じ派遣会社で働き続けてきた人の中には、「考えてみたら、もう5年近く同じ派遣会社にお世話になっている」というケースもあるかもしれません。その場合、5年を経過したタイミングで無期雇用派遣に切り替えることができるというわけです。
ただし、5年という期間は決して短くないため、これから派遣として働き始める人にこの方法は必ずしもおすすめではありません。
無期雇用派遣を募集している派遣会社に申し込む
無期雇用派遣は前述の通り、もともとの主旨としては派遣社員として長く働いている人が簡単に派遣切りに遭ったりしないよう、雇用の安定を図るための方策です。
ただし、自分の意思で「無期雇用派遣として働きたい」と表明している人と、「この人を無期雇用派遣として採用したい」という派遣会社の双方の考えが一致すれば、5年を経過していなくても無期雇用派遣として働くことができるのです。
具体的には、無期雇用派遣社員を募集している派遣会社に応募し、選考を受けて採用されることによって、無期雇用派遣として就業できるようになります。
登録型派遣として働き始め、同一の派遣元との契約下で5年が経過すれば無期雇用派遣に切り替えることはできますが、5年間同じ派遣会社で仕事をつないでもらえる保証はありません。
これから派遣社員として働き始め、無期雇用派遣として働きたいという希望がある人の場合、無期雇用派遣を募集している派遣会社を活用することをおすすめします。
4)無期雇用派遣を目指す際の、おすすめの派遣会社
ここからは、無期雇用派遣として働きたい人材を募集している派遣会社をご紹介します。正社員ではなく無期雇用派遣として働くという選択を検討している人は、それぞれ考えや事情があるかもしれません。
自分のライフスタイルやワークスタイルに合った派遣会社を活用することによって、希望する働き方を叶えられる可能性も高まるはずです。
無期雇用派遣に応募可能な派遣会社3社について、それぞれの特徴やメリットについて見ていきましょう。
アデコ
事務系の仕事でスキルアップを目指す方を対象とした無期雇用派遣「キャリアシード」がある
無期雇用派遣として働いていく中で、自分なりの強みやスキルを活かしてステップアップしていきたい人には、アデコがおすすめです。アデコの「ハケン2.5」では、無期雇用派遣として働きたい人を募集しています。
将来的に専門性の高いスキルを活かしてスペシャリストとして活躍していきたい人は、キャリア開発を目的としたキャリアシード制度を活用できます。ゆくゆくは役職につくなどキャリアアップも考えている人は、正社員としての転職をアデコにサポートしてもらうことも可能です。
もちろん、無期雇用派遣として長く安定して働き続けたい人は、そのまま無期雇用派遣を継続できます。
アデコは、無期雇用派遣としてのワークスタイルを経験しつつ、今後の働き方を検討したい人におすすめの派遣会社です。
アデコの特徴
特徴 |
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サービス対応地域 | 全国 |
公開求人数(案件数) | 約1.0万件(2024年10月現在) |
とくに多い職種 | オフィスワーク・事務系|営業・販売・サービス系|IT系|メディカル・ヘルスケア系|製造・物流・軽作業系など |
コーディネーターのサポート品質の高さが評判ですが、担当との相性もありますので、リスクヘッジに他の派遣会社にも登録しておくことをおすすめします。
テンプスタッフ
未経験から事務へチャレンジできる「育成型無期雇用派遣(ファンタブル)」がある
テンプスタッフは、大手人材紹介会社パーソルキャリアが運営する、国内求人数トップクラスの派遣サービスです。
対応している職種に関しても、一般事務をはじめとするオフィスワークはもちろんのこと、営業やクリエイティブ系、保育・介護といったように、幅広い職種に対応可能です。
また、テンプスタッフでは無期雇用派遣契約を結んだ後に、未経験から事務職へチャレンジできる「育成型無期雇用派遣 funtable(ファンタブル)」という働き方を用意しています。
このサービスは、将来的に就業先企業の直接雇用となるようパーソルテンプスタッフがサポートしてくれるのです。
幅広い求人から自分に合った職場をチェックしたい人、未経験から事務職へチャレンジできる「funtable(ファンタブル)」を利用したい人は、テンプスタッフに登録しておくと良いでしょう。
テンプスタッフの特徴
特徴 |
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サービス対応地域 | 全国 |
公開求人数(案件数) | 約6.0万件(2024年10月現在) |
とくに多い職種 | 事務(事務職全般、人事・総務、マーケティング・広報等)|テレマーケティング |営業 |金融・証券(金融事務、保険事務)|販売・接客(アパレル販売、食品販売、コスメ販売等)|IT・CAD・クリエイティブ(SE・プログラマー、Web制作、DTPデザイン、CAD・設計等)|研究開発・メディカル・医事(研究開発(実験・検査・分析)、メディカル・臨床開発、医療事務)|作業・物流・整備(作業・物流・運転、設備管理・整備等)など |
案件の豊富さと高単価のお仕事の多さが評判の人材派遣会社です。登録後はまず案件をチェックしてみましょう。
スタッフサービス
エンジニア・オフィスワーク・医療/介護系の職種で無期雇用派遣がある
スタッフサービスは派遣会社の中でも最多の求人数を誇り、2024年10月時点でおおよそ16万件の案件を保有しています。
全国都道府県に97か所の拠点を展開しているため、地方で派遣社員として働きたい方にもおすすめのサービスです。
スタッフサービスの特徴として、無期雇用派遣の採用ケースが多いこと、そして派遣社員のスキルアップ制度が充実している点が挙げられます。
たとえば「スタッフサービスeラーニング」と呼ばれる無料ツールでは、WordやExcelなどのPCスキル、IT系スキルなど全35種類の講座をネット上で受講することが可能です。
無期雇用派遣では主に「エンジニア(機械・ITなど)」「オフィスワーク(事務職・経理など)」「医療・介護(薬剤師・介護士など)」などの職種で募集があります。
紹介案件も豊富ですので、該当する職種で無期雇用派遣を検討している人はいちど相談してみるとよいでしょう。
スタッフサービスの特徴
特徴 |
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サービス対応地域 | 全国 |
公開求人数(案件数) | 約16万件(2024年10月現在) |
とくに多い職種 | 事務職|介護・看護・医療事務|IT・システム系|ものづくり系エンジニア|製造業全般など |
お仕事の案件数・スキルアップ制度ともに充実した派遣会社です。キャリアプランを立てたうえでの利用が有意義でしょう。
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ファーストコンテック
建設業界でキャリアステップしていきたい人におすすめ
ファーストコンテックは、建設業界に特化した人材派遣会社です。
東京首都圏の建築・施工管理・CADオペレーター関連のお仕事を取り扱っており、正社員や無期雇用派遣の案件も多いです。
実務経験のある人向けの求人がメインですが、給与はじめ好条件のものが多く見られます。これまで建設業界で働いた経験のある人は、ぜひチェックしておきたい派遣会社です。
まとめ)無期雇用派遣はワークスタイルの選択肢の1つと考えよう
無期雇用派遣は、常用型派遣の雇用形態の1つとして新設された制度です。
2018年4月からスタートした制度ですので、無期雇用派遣として働いた経験を持つ人の数がまだ決して多くないなど、働く上での実態が見えていないところがあるのも事実です。
従来の登録型派遣との違いや、メリット・デメリットをしっかりと理解した上で、ワークスタイルの選択肢の1つとして無期雇用派遣という働き方もあることを知っておいて損はないでしょう。