エンジニアと営業の対立はどう対処する?無理な要求の回避法をケース別に解説!
[最終更新日]2024/08/16
営業とエンジニアの対立。
これらはエンジニアとして仕事をしていると、必ず一度は遭遇する場面ではないでしょうか。
同じ組織で活動している以上、最終的にはお互いに同じ目標に向かっているはずなのになぜか対立が絶えない「エンジニア」と「非エンジニア」という構図はIT業界あるあるといっても過言ではありません。
しかし、社内での対立など無いに越したことはありませんし、円滑に業務を遂行したいものです。
目次
1)エンジニアと営業のコミュニケーションが衝突しやすい理由
そもそも、なぜエンジニアと営業の対立は起こってしまうのでしょうか。
冒頭でも述べた通り、同じ組織の人間で最終的な目標は同じであるはずですし、当然のことながら好き嫌いの感情だけで動いているわけでもありません。
私自身もエンジニアとして開発プロジェクトに従事していた際には、こういった状況に遭遇することはもちろん、時には当事者になることもありました。
どちらかが一方的に悪いわけではない。でもどうしてか仕事の中で対立は起こってしまう。よくよく考えてみると、大きく分けると以下のような3つの理由があるのではないかという考えに至りました。
それぞれ、順を追って見ていきましょう。
理由1 エンジニアと営業とでは、仕事で見ているポイントが違う
一概に言い切ることはできませんが、仕事に対するアプローチの大まかな傾向として「作業の効率性や保守性」を重点的に考えて仕事に取り組んでいるのがエンジニア。「顧客との関係性・案件の継続性」を重点的に考えているのが営業です。
営業は、継続的に業績を残すことを考えて仕事をしています。
そのためにはお客様の満足度向上はもちろんのこと継続的な関係性も視野に様々な折衝を行っています。
時には、納期や予算についてもお客様との今後の関係性も考慮した交渉となるわけです。
それに対して、エンジニアは限られた時間やリソースの中でいかに効率よく作業をするかを考えて仕事をしています。
エンジニアが利益を生みだすために出来ることは、作業を効率よく行って工数を削減すること。そして、仕事の品質を上げて顧客満足度を高めていくことです。
双方とも顧客満足と利益の獲得という大目標に違いはありません。しかし、下記の表のように重視する項目が大きく異なっていることで意見の食い違いが発生してしまうのです。
エンジニアと営業の視点の違い
エンジニア | 営業 | |
---|---|---|
仕事で重視するポイント |
|
|
理由2 お互いに大変。だからお互いに「(こっちのことを)もっと分かってほしい」と思っている
営業には営業の苦労、エンジニアにはエンジニアの苦労があります。
決してどちらかが楽をしていることはありませんし、それは多くの人が理解していることでしょう。それぞれが様々な制約やしがらみの中で最善の方法を探して仕事をしています。
しかし「隣の芝は青く見える」というのは人間の性なのでしょう。
自分が苦労している状況に置かれていると、お互いに苦労していることは理解していながらも、他の職種の同僚が自分たちの苦労も知らずに仕事をしていることに苛立ちを感じてしまうことが多々あります。
私が以前いたプロジェクトでは、
- 営業
-
「エンジニアは顧客折衝のツラさを知らないから…」
といった営業の人の台詞や、
- エンジニア
-
「営業は指示出すだけでモノが出来ると思っている…」
といったエンジニアの人の台詞を聞くことが、しばしばありました。
ですが、仕事を分業してこなすにあたって、大事なのは「双方が尊重しあう」ことです。
「こっちの都合ももっと分かってくれよ」と思ったとき、相手も同じ苦労をしているかもしれないと一歩踏みとどまって考えたいものです。
理由3 そもそも、仕事(事業)がうまく行っていないときに人は険悪になりやすい
仕事がうまくいっていない時は、日々の対応に追われることで心の余裕が無くなってしまいます。
心の余裕がなくなってしまえば、相手の立場や状況を思いやることも難しくなってしまいます。
「営業がムチャクチャな条件で仕事を取ってきたからこうなった」だとか「エンジニアは顧客のことを考えていない」といったように、全く違うアプローチで仕事に取り組んでいるエンジニアと営業の関係となればより一層溝が深まってしまいます。
こうなってしまった以上、分かり合えない相手に理解を求めるのは得策ではありません。理解しようとするより先に、不満などが口から出てしまい空気はさらに悪くなっていくことでしょう。
それならいっそのこと、「現状を打破すること」に注力したほうが得策です。
現状の問題点を改善するためにエンジニアが、営業が出来ることは何か。
お互いの立場を理解することは難しくても共通の目標に向けて協力は出来るはずです。
2)エンジニアが、営業から「無理な仕様」を求められたときの対策
ある日、営業が神妙な面持ちで自分に近づいてくる。
エンジニアがドキドキする瞬間ではないでしょうか。そして自分の近くで足を止め名前を呼ばれる。
「ちょっとご相談がありまして…」の一言。こんな時は大体相談じゃない。
ひとたび心を許せば「こんな仕様を実装してほしい」「今あるシステムに、こんな機能を追加してほしい」などと突然仕事を投げつけられる。エンジニアであれば一度はこのような状況に遭遇したことがあるのではないでしょうか。
時には簡単な内容で安心することもありますが、大抵の場合は「出来るわけがないだろう!」と言いたくなるような無理難題です。
「どうしてそれが出来ると思っているの?」とお説教を始めたくなってしまう状況ですが、こんなときはどのようなコミュニケーションを取るのが良いのでしょうか。
営業の言い分は──
営業としても、内心ではその仕様の実現が難しいことにうっすら勘付いている状態で相談に行っていることが多いものです。
営業はお客様と対話していくために、自分のチームで開発・販売しているコンテンツのことは把握しているわけですから何も知らずに相談してくることは稀です。
自分の知識から結果はある程度想定している、しかしお客様からは要望が挙がっており今後のことを考えていけばそれを無下に断ることはできない。
そんな八方ふさがりの状況に追い込まれ、藁にも縋る思いで社内のエンジニアに相談しに行くことが多いのです。「できない」と突っぱねられたらどれだけ楽か…。エンジニアとは違った苦労があるのです。
【エンジニア側の対策】営業から「無理な仕様」を求められたとき
仕事の目的は、求められた仕様を頑張って実現することではありません。あくまでもお客様が満足するシステムを作ることが目的であり、それを実現するための手段として仕様を決めていくのです。
営業から無理な仕様を求められた時もこの大前提を念頭にコミュニケーションをとりましょう。その手法として有効なものが「Yes,but」のコミュニケーションです。
Yes,butは「いったん肯定をする」コミュニケーションです。
実現が難しい仕様の場合でも「そんな仕様は出来ません!」と言い切るのではなく
「わかりました、頑張ってみます。ただ、予算がこのくらいかかりそうですが、そのあたりは大丈夫そうでしょうか。」
「なるほど、良いアイデアですね!ですが、この要件は現状のシステム構成では難しそうです」
といったようにまずは肯定から入ることで相手がこちらの意見を聞きやすい状況を作ります。
これはよくビジネストークのテクニックとして用いられるものですが、人は最初に肯定されると、相手に対してより寛容になります。
とはいえ、無理な仕様を出来るとは言えません。「無理なものは無理」ということは伝えなる必要があるでしょう。
ただ、その伝え方は気を遣って、互いにストレスが最小限留まるようなコミュニケーションを意識していきたいものです。
3)エンジニアが、営業から「無理なスケジュール(納期)」を求められたときの対策
エンジニアであれば、「無理なスケジュール(納期)を求められる」ことは、嫌というほど経験することでしょう。
案件のキックオフが始まる、営業が顧客情報や納期についてなどの情報を話す。その後、本格的な機能要件を話していく。
この時、エンジニアであれば大まかなスケジュールを脳内で描きながら話を聞いてくことでしょう。
「このくらいの機能なら期限内に何とかなりそうだな」さらに要件の説明は続いていき「おや?なかなか厳しい案件だな。頑張らなければ」と気を引き締める。
それでもまだまだ要件の説明は尽きず、「こんなの残業ありきのスケジュールじゃないと終わらない」そう悟った時のエンジニアの目の前は真っ暗です。
その先数か月、長ければ1年以上先までの残業が確約されてしまったのですから。
営業の言い分は──
「こんな利益も出ないような予算の案件をなぜ持ってきた。この予算と納期で利益を出せだなんて無理な話だ」と現場のエンジニアであれば当然の怒りだと思います。
そのようなムチャクチャな要件に加え、依頼主は新規の顧客だったとなればなおさらです。
重要顧客ならまだしも、新規顧客でなぜこんな無茶な要件を飲んでくるのか、エンジニアの立場で理解するのは難しいことでしょう。
一方で、営業の目線で言えば「新規の顧客だからこそ」こういったことが発生する面もあるのです。
企業の存続で求められるのは持続ではなく成長。新規顧客の開拓も当然ながら必要になってきます。
時には火中の栗を拾う覚悟で難しい案件を受注しその後の継続した関係性の構築を目指すのです。
【エンジニア側の対策】営業から「無理なスケジュール(納期)」を求められたとき
まずは落ち着きましょう。
このような採算の赤字と残業まみれの生活が確定したような状況では難しいかもしれませんが、怒ったところで何かが好転することもありません。
落ち着いたところで、営業からこのような形で案件を受注するに至った理由を聞くようにしましょう。何度も述べている通り、営業はエンジニアには分からない苦労や葛藤があります。同じ組織に所属する者同士、敵ではありませんから建設的な対話を意識すべきでしょう。
理由によっては改善が図れることも少なくありません。
例えばお客様が急を要していることで短納期の案件を受注した場合、機能の切り分けをすることで急を要しない機能についてはスケジュールを延ばすことも可能かもしれません。
営業の見積もりが甘かっただけの場合もあるでしょう。こういった場合、この案件については諦めて進めるしかないかもしれません。
しかし、その後同じようなことが無いように、営業が今後見積もりをする際の精度を高めてもらう必要があります。
エンジニアもこういった組織体制の改善に関わっていくことが必要です。
4)エンジニアからの技術的な説明を、営業がちゃんと聞いてくれないときの対策
会議などでエンジニアが仕様や技術的なことについて説明するとき、もの言いたげな営業を見かけることはありませんか?
「簡潔に話してくれる?」などと言われてしまうことも少なくないかもしれません。エンジニアからしてみれば「無駄なことは話していないしこれでも簡潔に話している方だ!」と言い返したくもなってしまいます。
しかし、専門的なスキルを有していない営業側からしてみればエンジニアの話す内容は「これは日本語か?」と耳を疑ってしまうほどに内容が把握しにくくストレスにも感じてしまうのです。
しかし、営業がとんでもない条件で案件を受注すれば最終的に何とかするのは現場のエンジニアですから、エンジニアとしても伝えたいことはたくさんあるのです。
営業の言い分は──
エンジニアとの打ち合わせで一番困ってしまうのは、こちらが話した要件や納期に対して「出来ません」の一点張りで終わらせてしまうことです。
出来ない理由を延々と話されてしまうと、こちらとしては聞いているのが辛くなってしまいます。出来ないのであれば一言で済まして欲しいと思うときも少なくありません。
技術的に無理なことがあるのも承知していますしそれを可能にしろとは言いません。
しかし営業としても「検討の結果無理でした!」とお客様に返答することは出来ないのです。例えば「別な方法であればここまでなら出来る。」といったような折衷案を出してもらえるようなエンジニアがいてくれると非常に助かります。
【エンジニア側の対策】こちらの説明を、営業がちゃんと聞いてくれないとき
営業はエンジニアリングの専門家ではありません。
当然、理解できない内容もあることをまず大前提として受け入れましょう。
多くの場合、打ち合わせの目的は技術の理解などではなく「認識を合わせる」もしくは「情報を共有する」といったことでしょうから、その目的の達成に注力しましょう。
話を長くしても前に進まない内容については、簡潔に伝えることを心がけると良いかもしれません。出来ない理由を長く話すくらいなら、別な選択肢について論じた方が有益です。
事前に話すべき内容が分かっているなら、資料を準備するなどして少しでも専門性のハードルを下げてあげるなどエンジニアとして出来ることは妥協無く取り組むようにしましょう。
残念ながら、それでもエンジニアの話を聞かない(聞けない)人がいるかもしれません。
そういった時のために、資料をメールで送付するなど証跡を残すことも意識しましょう。
過保護なように感じるかもしれませんが、後々「言った、言わない」の不毛なやり取りを回避する自衛にもなります。
5)ストレスが溜まる一方・我慢の限界と感じるのなら転職も視野に入れて
ここまでエンジニアと営業の対立で起きやすいケースとその対策について説明しました。
もし、これらの対策について「既にやっていた」、かつ「状況は改善しなかった」ということでしたら、転職も視野に入れておくことをおすすめします。
職場環境は会社によって大きく異なります。
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とくに多いエンジニア職種 | プログラマー・Webエンジニア、社内SE、製品開発・ASP、組込み・制御エンジニア、ITコンサル |
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サービス対応地域 | 全国 |
公開求人数 | 約2.5万件(2024年7月現在) |
とくに多いエンジニア職種 | プログラマー・SE全般、PL・PM、ITコンサルタント |
まとめ)本当に実力あるエンジニアは、営業からも重宝される
エンジニアという仕事は高い専門性を有した仕事ですし、その高い専門性の対価として報酬を得ているわけですから、営業など畑の違う職種の人に理解されないのは当然と言えば当然です。
しかし、本当に技術力が高いエンジニアというのは、その技術について噛み砕いて驚くほどに分かりやすく説明できます。
その豊富な知識から様々な選択肢をディレクターや営業に提言できるのです。そういったエンジニアは営業から重宝されています。
自分の持っている技術力を活用しているだけでは3流、応用できて二流、人に伝えられるエンジニアこそが一流のエンジニアではないでしょうか。