挫折しやすい人・長続きしない人への 「達成志向性」へのすすめ
[最終更新日]2024/10/10
仕事やプライベートで何か目標を決めて取り組んでいても、
「いつも途中で挫折してしまう」「なぜか長続きしない」
と感じていませんか?
1つのことにじっくりと取り組み、目標を達成するまで続けるのは案外難しいものです。
途中であきらめてしまうことなく初志貫徹する力のことを「達成指向性」と呼ぶことがあります。
達成指向性は個人の性格や意志の強さによって決まるものと思われがちですが、実は後天的に高めることも可能です。
目次
1)「いつも途中で挫折する」「長続きしない」のはなぜ?
目標を決めて物事に取り組む場合、目標が高ければ高いほど達成までの期間は長くなるのが一般的です。
達成できず仕舞いになってしまう原因として、途中で挫折してしまったり長続きせずあきらめてしまったりすることが挙げられます。
では、なぜ達成するまで続けることは難しいと感じるのでしょうか。まずは目標を達成できなくなりやすい原因を整理しておきましょう。
「絶対に達成したい」と思える目標ではないため
目標を達成するまでには、多くの壁を乗り越える必要があります。困難に直面しても乗り越えられるかどうかは、掲げた目標をどうしても達成したいという強い動機があるかどうかによって大きく左右されます。
自分で決めた目標のようでいて、実は人から与えられた目標だった場合、目標を達成したいという動機は弱くなりがちです。
たとえば「今月の売上目標を達成する」という目標を掲げていても、実際には上長から提示されたノルマを達成することが目的の場合、目標達成は義務的なものになりやすいのです。
目標を設定する際、非常に重要なポイントとして「自分自身で設定し、決断した目標かどうか」という点が挙げられます。
どうしても達成したいという強い動機に支えられていないと、仮に達成できない公算が高くなった際に「仕方ない」「目標が高すぎた」などと自分自身に言い訳をしてしまいがちです。
目標設定が強力な動機に支えられているかどうかは、途中で挫折することなく達成まで完遂できるかどうかを分ける重要なポイントといえるでしょう。
ゴールから逆算して計画を立てていないため
目標を達成するためには計画性も重要になります。
計画と聞くと、物事を進めていく順序を決めておくことをイメージする人が多いはずです。
たしかに段取りを決めておくことは重要ですが、その際に「ゴールから逆算しているかどうか」が実現の可能性を大きく左右することを見落とすべきではないでしょう。
実は、目標を着実に達成していく人の多くが、計画を立てた時点で「達成できるはずだ」という感触を得ています。
なぜなら、決めた目標をゴールとして設定し、そこから逆算して計画を立てていくため、あとは計画通りに行動していけば理論的には目標が達成できることが分かっているからです。
ゴールから逆算した結果、当面取り組むべきタスクに無理があると分かれば、目標達成までの期間や目標そのものを見直す必要があることが分かるでしょう。
つまり、ゴールから逆算して計画を立てることができれば、その目標が実現可能なものかどうか判断することができるのです。
途中で行き詰まりを感じたとき、うまく軌道修正できていないため
目標に向けて物事に取り組んでいくと、ほぼ確実に「予定通りに進まない」「予想していたよりも難しい」といった事態に遭遇します。
このように行き詰まりを感じたときこそが、目標達成をあきらめてしまいやすい瞬間といえるでしょう。
しかし、目標を着実に達成していく人の多くが、そもそも当初の計画通りに進むとは限らないことを織り込んで行動しています。
行き詰まりを感じたら、計画を見直して現実に即したものへと軌道修正していくのです。
当初立てた計画通りに進まないことを必要以上に深刻に考えず、臨機応変に計画を練り直せるかどうかが目標達成に向けた実現の可能性を左右するといってもいいでしょう。
反対に、途中で挫折しやすい人は「達成できないかもしれない」と感じても、どうにかして挽回しようと当初の計画を据え置いたままにしてしまいがちです。
その結果、理想と現実との差が日に日に開いていき、ある時点で「とても達成することはできない」と感じてあきらめてしまうのです。
2)目標に向けて行動する「達成指向性」を構成する3つの力
前項で挙げた挫折の原因を乗り越え、目標達成まで粘り強く取り組むことを「達成指向性」と呼びます。
「目標を着実に達成できるようになりたい」という思いは、「達成指向性を身につけたい」と言い換えることができるでしょう。
達成指向性はいくつかの能力が複合的に組み合わされた能力と捉えることができます。
それぞれの能力を意識的に身につけていくとことで、達成指向性を高めることができるはずです。達成指向性を構成する能力として、主に次の3点が挙げられます。
「達成指向性」を構成する3つの力
自ら目標を設定し、必ず達成すると決断する力
達成指向性を高いレベルで実現するには、目標を自ら設定することが非常に重要です。
人から勧められたり提示されたりした目標ではなく、自分の意思で決めることがポイントとなります。
そして、目標を決めたからには必ず達成すると決意を固めることが、達成指向性を高めるための第一歩となるでしょう。
会社などの組織内で働いていると、部署や会社の方針に応じて目標を提示されることもあるはずです。
しかし、提示された目標をそのまま自分の目標とするのではなく、自分なりに再解釈したり、より高い目標を独自に掲げたりすることで、自分自身の目標とすることができるでしょう。
目標に対して受動的な姿勢で臨むのではなく、自分の意思で目標を掲げるという主体的な態度で臨むことが大切です。
主体的な目標設定の例
与えられた目標 | →自分で掲げた目標 |
売上を対前年比110%に引き上げる | →担当の新規取引先を2社増やす |
半年以内に資格取得を目指す | →1年後、もう1段高いレベルの資格試験に挑戦する |
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「目標」には、大きく3つの種類がある
目標には、大きく分けて「行動目標」「成果目標」「意義目標」の3つのタイプがあります。
それぞれの定義と具体例は次の通りです。
行動目標 | 日々の業務における各アクション・行為に関する目標 ex)「今月内に新規顧客開拓〇〇社を目指す」「サービス〇〇の開発をバグなく完成させる」 |
---|---|
成果目標 | 売上や会員数またはそれに関わる指標値等の、数値や状態に関する目標 ex)「今月問い合わせ数〇〇件を目指す」「今月売上〇〇万円を目指す」 |
意義目標 | 組織ビジョンやミッションなどの、「このチーム・組織が存在する・活動し続ける」上での意義に関する目標 ex)「サービス〇〇を通じて、世の中の人達の生活を変革する」 |
どの目標タイプがより重要であるかは、現在の業務・チームの状況・環境によって異なります。
3タイプの目標はそれぞれ「ゴール設定」、「行動への移しやすさ」に違いがあります。
現在、あなたがどのタイプに意識を寄せていたかを振り返り、改めてどのタイプの目標を重視するかを検討しておくとよいでしょう。
目標達成まであきらめずに粘り強く取り組む力
目標が固まったら、達成するまであきらめずに粘り強く取り組む必要があります。
達成を目指す過程で、ほぼ間違いなく乗り越えるのが難しいと感じる事態に遭遇することでしょう。
目標が高ければ高いほど、困難に直面することをあらかじめ織り込んで行動していく必要があります。
粘り強く取り組む力と聞くと、困難に打ち克つ精神力や胆力をイメージするかもしれません。
しかし、重要なことは最終的に目標を達成できるかどうかであり、苦しい状況下で耐え忍ぶことではありません。
もし計画そのものに無理があると途中で発覚したら、計画を変更したり達成までのプロセスを根本的に見直したりすることを厭わない柔軟性を持つことも大切です。
目の前の仕事に埋もれてしまうことなく、最終的な目標達成までの道筋を大きな視点で捉え、着実に前進することで達成が現実味を帯びてくるはずです。
目標達成の目処が立ったら、さらに高いレベルを目指す力
目標達成が見えてきたら、そこで慢心することなくさらに高いレベルを目指すことも大切です。
目標に向けてせっかく着実に前進を続けてきても、最終的な局面で詰めが甘くなってしまうのは、「このぐらいで大丈夫だろう」といった慢心に原因があることが少なくないからです。
目標に向けて着実に前進しつつあると感じている状態のとき、集中力が高まり感覚が研ぎ澄まされていくことがあります。
こうした状態は「ゾーン」と呼ばれ、作業や活動に没頭できる意識状態にあるといわれています。アスリートが試合本番で自己ベストを更新することがあるように、集中力が高まることで自分でも想像していなかった力を発揮できることがあるのです。
目標を達成した経験は、自分自身の中で成功体験として蓄積されていきます。
当初の目標を上回って達成できたという実績は、次の目標を定める際により高い到達点を目指す原動力となるでしょう。
「やり切る力」を持つ人の多くが、常に現状に満足することなくさらに高い目標を掲げているのです。
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3)達成指向性を高めるために実践するべきこととは?
ここからは、達成指向性を高めるために実践すべき具体的な行動について述べていきます。
達成指向性は生来備わっている能力や才能ではなく、後天的な工夫や努力によって身につけられる力といえます。
実践すべきことを1つ1つ着実に実行に移していくことで、達成指向性の獲得を目指しましょう。
達成指向性を高めるために実践するべきこと
適切な目標を設定する
目標設定は達成指向性を高める上で非常に重要なプロセスです。
効果的に目標を設定するには「SMARTの法則」を活用するといいでしょう。
SMARTの法則とは、1981年にジョージ・T・ドラン氏が提唱した法則で、しばしばピーター・ドラッカー氏が唱えた目標による管理と関連づけて論じられてきました。
SMARTの法則は、次の5つの要素から構成されています。
SMARTの法則
Specific(明確性) | 設定した目標は明確か |
---|---|
Measurable(計量性) | 目標の進捗度や達成度は測定可能か |
Achievable(達成可能性) | 達成できる現実味のある目標か |
Relevant(関連性) | 会社のミッションと自身の目標に関連性があるか |
Time-bound(期限) | 目標達成までの期限は明確になっているか |
目標を設定する際は、SMARTの法則に照らし合わせて各要素を満たしているかチェックしておくことが大切です。
目標設定のどこかに無理があると、多くのケースで上記のいずれかを満たしていないことが発覚するはずです。
たとえば「顧客満足度を高める」という目標は漠然としており、とくに計量性(Measurable)の点で問題があることが分かります。
その場合、「既存顧客の売上を対前年比105%とする」といった数値目標にすることで、測定可能な目標にできるでしょう。
目標に向けてやるべきことをタスク単位に分割する
掲げた目標は一挙に達成しようと試みるのではなく、課題をできるだけ小さな単位に分割していく必要があります。
目標に向けてやるべきことを細分化し、タスク単位に落とし込んでいくことでPDCAサイクルを回しやすくなり、達成度や進捗状況を把握できるようになります。
目標をタスク単位に分割したら、タスクに漏れ重複がないよう整理しておくことが大切です。
取り組むべきタスクを書き出し、漏れ重複のチェックをしながら優先順位づけをしていきましょう。
次にそれぞれのタスクに期限を設け、「いつまでに」「何を」「どのレベルまで」完了させるのかを明確にしていきます。
こうしたプロセスを実践していく上で有名なのが「フランクリン・プランナー」です。
フランクリン・プランナーはアメリカで誕生し、日本でも多くの人が使用するシステム手帳です。
フランクリン手帳として文具店などで販売されていますので、活用してみるのも1つの方法でしょう。
フランクリン・プランナー手帳(画像引用元:「フランクリン・プランナー」実践セミナー)
タスクを着実に実行し、達成できていると実感することによって、大きな目標に向かって一歩一歩進んでいくことができるはずです。
定期的に振り返りを行い、計画を軌道修正する
日ごと・週ごと・月ごとといったように、定期的に振り返りを行い、タスクの進捗状況を確認しましょう。
完了しないまま残っているタスクがあれば、なぜ終わらないのか原因を検証しておく必要があります。
タスクの切り分けが不十分だったり、実現の可能性が高くないものだったりした場合、無理に続けようとせず軌道修正をすることが大切です。
また、計画通りにタスクをこなしているにも関わらず効果が薄いようであれば、タスクを完了させるレベルや深度に問題がないか、取り組み方を見直さなくてはならないケースも出てくるでしょう。
最も重要なことは、目標達成に向けた取り組みが途中の段階で挫折してしまうのを未然に防ぐことです。
計画通りに進むことが理想ですが、当初の計画を厳守すること自体が目的ではありません。
計画と実際の進捗に差が開き始めたら、計画そのものに疑いの目を向ける勇気を持ちましょう。
計画の見直しは早期であればあるほどよく、適切に軌道修正すれば体勢を立て直して取り組み直すことも十分に可能なはずです。
4)「挫折」「長続きしない」を繰り返さないための工夫
最後に、目標達成に向けて努力を継続していく際、「挫折してしまった」「長続きしない」といった失敗を繰り返さないための工夫について解説します。
セオリー通りに目標達成のプロセスを設定し、実践していったとしても、実現できる人とそうでない人が出てくるのは「挫折しないための工夫」をしているかどうかが大きく影響しています。
これまでに目標未達となってしまった経験がある人は、とく次の点に注意しましょう。
「挫折」「長続きしない」を繰り返さないための工夫
まずは現実味のある高すぎない目標から達成を目指す
挫折しがちな人の中には、あまりにも高すぎる目標を掲げがちな人がいます。
実現できる可能性が全くないわけではなくても、現実味の薄い目標を掲げてしまうと、達成できる見込みが計画当初から低くなってしまいます。
一般的に、目標を達成する経験を重ねるほど自己肯定感が高まり、「次も必ず達成できる」という自信がついてくるものです。
「今回も挫折するのではないか」と感じるようなら、まずは欲張らずに現実味のある目標から達成を目指していくことをおすすめします。
目標はささいなことでも構いません。「1日1本、必ず新規開拓の営業に取り組む」「一緒に働くメンバーに毎日1回は『ありがとう』と言う」など、すぐに実行可能なことから取り組んでいきましょう。
自分で決めたことを実行に移せると確認できたら、次により高い目標を掲げて実践していけばいいのです。
まずは「挫折しないで完徹できた」という成功体験を重ねていくことを重視しましょう。
1つ1つのタスクが完了していくことに達成感を持つ
目標に向けて努力する過程で挫折しやすい人の多くは、自分自身に対して厳しすぎる傾向があります。
掲げている目標が高すぎたり、達成までの道のりの長さを意識しすぎたりするあまりメンタルの面で負けてしまうのです。
そこで、分割したタスクが完了するたびに「終えることができた」「実行できた」という達成感を持ち、自分を褒めていくことを習慣化しましょう。
目標が高ければ高いほど、1つのタスクが完了しても先の道のりは長いものになるはずです。
しかし、「たとえこのタスクが終わっても、まだ先は長い」などと常に考えていては心身がもちません。
予定していた期日内にタスクが完了したら、息抜きの時間を設けるなどしてリフレッシュすることを心がけましょう。達成感を得ると脳内でドーパミンが分泌され、爽快な感覚がもたらされます。
この感覚をまた味わいたいと感じるようになることで、無意識のうちに次のタスクにも精力的に取り組めるようになるのです。
タスクが完了するたびに少々大げさなほどの達成感を得ることで、目標達成に向けた原動力を得ることへとつながっていくのです。
計画の変更や軌道修正は「悪」ではないと認識する
「コンコルドの誤謬」という有名なたとえ話があります。超音速旅客機コンコルドは、開発の途上ですでに採算が合わないことが分かっていたといいます。
しかし、サンクコスト(回収できないコスト)を惜しむあまり投資と開発を続けた結果、予想通り収益の改善が見込めず2003年に営業飛行を終了したのです。
計画が機能していないことが発覚したら、それまでに投じた時間や労力を度外視してでも見直しを図るべきだ、といった事例としてしばしば引用されます。
計画通りに進んでいないと感じると、計画に合わせて進捗のペースを早めなくてはならないと考えがちです。
しかし、すでに進捗が遅れ気味になっているのであれば、必ずどこかに根本的な原因があるはずです。
原因が取り組み方ではなく計画のほうにあるとすれば、早急に計画の見直しと軌道修正をする必要があるでしょう。
計画の変更は決して「悪」ではありません。
定期的に振り返りを行った結果、計画そのものに問題があると感じたら、ためらわず軌道修正に乗り出す覚悟を持つことも達成指向性を高める上で重要な要素といえるでしょう。
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まとめ)達成指向性を高めて「挫折しやすい」自分を克服しよう
「挫折しやすい」「長続きしない」といった傾向は、多くのケースで個人の性格や精神力と結びつけて語られてきました。
しかし、今回解説してきたように達成指向性を高めるにはテクニカルなアプローチによって解決できる問題も数多くあります。
目標の設定方法や達成に向けた行動を変えていくことで、達成指向性を高めていくことは十分に可能です。
ぜひ本記事で解説してきたポイントを参考に、達成指向性の獲得を目指してください。
「達成できた」という経験を重ねるほど、自信がつき次の目標にも前向きに取り組めるようになっていくはずです。
達成指向性を高めて、「挫折しやすい」「長続きしない」自分を克服していきましょう。