退職届・退職願の正しい書き方と注意すべきポイント【テンプレート・見本 例文付き】
[最終更新日]2024/07/21
転職と言えば転職先を探すことに気が向きがちですが、現職の退職手続きをすることも必要となります。
ドラマでは「退職届」と書かれた封筒を上司に手渡すシーンをよく見かけますよね。
退職の際は退職届を提出するのかな?というイメージはあるものの、手続きの詳細を知っている方は少数ではないでしょうか?
退職届を提出した後もしばらく勤務する場合もあり、気まずい思いをしないためにも退職手続きは揉めることなくスムーズに進めたいと、多くの方が思うところでしょう。
目次
1)まずは退職届・退職願の目的を知っておこう
退職の際には退職届を出すことが必要となります。
定型文に当てはめて書けばさほど作成は難しくはありませんが、会社に対する正式な届け出となるため、退職届の役割についてきちんと把握しておくことが重要です。
また退職届と似ていますが、意味が異なる「退職願」や「辞表」といった言葉もあります。これらの違いとともに、まずは退職届の目的についてご紹介します。
「退職届」「退職願」の違いについて
「退職届」と「退職願」は一文字違うだけでその意味合いは大きく異なります。まずはざっくり違いを表にまとめた上で、詳細をご説明します。
目的 | 書式 | |
---|---|---|
退職届 | 退職が認められた後に届け出る書類 |
|
退職願 | 「これから退職したい」意志を会社側に伝える書類 |
「退職届」とは
基本的には、会社と自分との間で退職の詳細について合意した内容を書面化し、「〇〇という理由により〇月〇日付で退職します」という内容を会社側へ届け出るものです。
したがって届け出るタイミングは、退職の意向を会社側へ伝え、退職日等について相談し決定した後となります。
退職届は提出後会社との合意がなければ撤回や修正はできませんので、退職について少しでも迷うことがあれば提出を控えた方が無難です。
会社との合意がなくても退職は可能な場合もある
退職届を提出した後も、有休など休暇でない場合は勤務を続けることになるでしょう。
したがって会社側と退職の内容についてきちんと話し合った上で合意することが望ましいですが、合意を得ずとも退職が可能な場合が法律に定められています。
期間の定めのない雇用契約については、解約の申し入れ後、2週間(ただし、月給制の場合は、当該賃金計算期間の前半に申し入れて下さい。)で終了することとなっており、会社の同意がなければ退職できないというものではありません。(民法第627条)
ただし雇用契約の期間が定められている方、退職するのにやむを得ない事由がある方は別途取り扱いが異なります。気になる方は各都道府県労働局や労働基準書監督署内にある「総合労働相談コーナー」に相談してみましょう。
「辞表」は経営層の役員もしくは公務員が使用
辞表の意味合いは退職届とほぼ同義ですが、使用する人が限られています。
- 雇用関係のない経営層の役員:役職を離れる際に提出する。その後役職なしで勤務することもある。
- 公務員:組織を辞める際に提出する。
退職願とは
退職の意向を会社に願い出る際に提出するものです。
退職の意思を固め、直属の上司に退職の意向を報告した後に提出となり、これを元に会社側との退職についての交渉が開始します。
口頭で願い出ることも可能ですが、書面化することでいつ退職の意向を示したのかという証拠になるので、提出するのがおすすめです。
なぜ退職届を提出するのか
退職届の提出は法的に義務化されていませんが、提出することを強くおすすめします。推奨したい理由は以下の通りです。
合意した退職の内容についてのトラブル防止
会社側と相談しお互いに合意したとはいえ、認識が食い違っている場合があります。退職届という形で書面化しお互いの認識をはっきりとさせ、「言った・言わない」のトラブルを防止する手段として有効です。自分の手元にも退職届のコピーを残すようにしましょう。
本当に退職する意思表示をするため
自分としては本気で退職するつもりで相談していたものの、上司に「一時感情的になっただけだ」と思われている可能性もあります。書面として提出することで本気で退職するという意思表示になります。
2)退職届を書く/提出する際に注意したい3つのポイント
退職届は提出の後、会社側との合意がなければ撤回できない届け出です。
また退職届は単に退職するという記載だけではなく、退職の理由や退職日の記載も必要となります。
退職届を書き、提出すること自体は難しい作業ではありませんが、軽々しく提出してしまうと後悔するかもしれません。そこで退職届を書く/提出する際に注意したいポイントを大きく3つに分けてご紹介します。
その1 書き始める前に「就業規則」を確認
まずは書き始める前に、就業規則で退職の手続きについて確認しましょう。
「退職希望日の1ヵ月前までに、直属の上司に退職願にて退職の意向を申し出ること」のような記載があると思われます。
退職手続きをスムーズに進めるためにも、就業規則に則った期日にて準備を進める方が良いでしょう。
民法第627条にて「期間の定めのない雇用契約については、解約の申し入れ後2週間で終了する」とされていますが、就業規則では給料の手続き等もあり2週間以上の期間が定められている場合がほとんどです。
どちらの方が効力を持つかについては意見が分かれていますので、会社の就業規則に納得できない方は会社の労働組合、もしくは各都道府県労働局や労働基準書監督署内にある「総合労働相談コーナー」に相談してみましょう。
その2 退職届を提出するまでのスケジュールは綿密に
退職届は提出するまでに様々な過程を要するため、しっかりと予定を立てることが重要です。手続きが難航し転職先の入社日に間に合わなくならないように、退職届を提出するまでの予定を組むポイントをご紹介します。
退職手続き全体のフローを確認する
退職手続きは基本的には以下のように進み、正式に退職が確定した後に退職届を提出します。全体のフローを確認しておきましょう。また上司に退職の意向を伝える際に、今後必要な手続きと目安の期間を聞いておきましょう。退職の交渉は長ければ1ヵ月ほどかかる場合もあります。
交渉難航の最終手段とは、退職届を人事部宛に内容証明郵便にて郵送する方法です(期間の定めのない雇用に限ります)。
郵送してから14日後に会社の合意なしで退職となりますが、退職について困った際は各都道府県労働局や労働基準書監督署内にある「総合労働相談コーナー」に相談してみましょう。
退職についての自分の希望を整理しておく
自身の退職の希望が曖昧だと、交渉が難航する恐れがあります。以下の事項については整理しておきましょう。
退職したい理由
「会社を退職するしかない」という一貫した自分の思いを伝えられるようにしましょう。
退職日
転職先の入社に伴う準備や入社日、有休の残数を考慮して希望しましょう。
その3 封筒の書き方・中身の折り方にも決まりがある
封筒の選び方
公式な書類なので白の無地・和封筒、郵便番号を記載する枠がないものにしましょう。退職届の用紙がA4の場合は長形3号、B5の場合は長形4号が一般的です。
封筒の書き方
用紙の縦書き・横書きに関わらず、封筒への記載は縦書きが一般的です。以下のように黒のボールペンなどにて記載しましょう。
退職届の封筒への入れ方
用紙を巻き三つ折りにして封筒へ入れます。
巻き三つ折りとは、用紙の記載面を表にして縦向きに置き、下3分の1を表側に折り、その後上3分の1を表側に折る方法です。封筒に入れる際は封筒裏の右上と退職届の右上が重なるように入れましょう。
封筒は見やすいように糊付けは不要です。封をした場合は消えない黒ボールペンなどで必ず〆マークを付けるようにしましょう。
3)退職届の書き方【テンプレート付き】
退職願・退職届は記載内容がほぼ定型的なので、簡単に作成することが可能です。
会社によっては決まった書式があるので、退職の相談をする際に上司や人事部に聞いてみましょう。特に様式がない場合の退職願・退職届についてのテンプレートは以下の通りです。
提出の際は直属の上司に手渡しするようにしましょう。机に置いておくなどはトラブルの元となる可能性があります。それでは記入の際のそれぞれのポイントについてご紹介します。
退職願の書き方解説
退職願
私義
このたび、一身上の都合により、誠に勝手ながら、〇〇年××月□□日をもって退職いたしたく、ここにお願い申し上げます。
〇〇年××月□□日
△△部☆☆課
転職 次郎
株式会社●●
代表取締役社長 ●●殿
※便宜上横書きで表示しておりますが、退職願は縦書きが一般的です。
①黒のボールペンもしくは万年筆にて手書き
間違えたときは新しく書き直しましょう。消えるペンを使用するのはNGです。
②「私儀」とは
普段使いなれないと思われますが、「わたくしぎ」と読みます。「私の個人的なことで恐縮ですが」という意味です。
③「一身上の都合」は割愛可能
自己都合による退職の場合一身上の都合と記載しますが、割愛も可能です。会社都合退職の場合、退職願の提出は不要です。
④労働契約の合意解約を「願い出る」文面
退職願を元に会社側との退職についての交渉が開始します。テンプレート通りに書かない場合、退職をあくまで願い出るような文面にしましょう。
⑤希望する退職日を記載
退職願を見て会社側は調整や交渉をするので、退職願を記載するまでに退職日を考えておきましょう。就業規則や退職手続きのフローも記載前に確認しておくことが重要です。
⑥文章最後の日付は願い出る日付を記入
退職願を渡す日付を記載します。
⑦自分の名前の下に捺印
名前の下に捺印します。シャチハタは不可です。
退職届の書き方解説
退職届
私義
このたび、一身上の都合により、誠に勝手ながら、〇〇年××月□□日をもって退職いたします。
〇〇年××月□□日
△△部☆☆課
転職 次郎
株式会社●●
代表取締役社長 ●●殿
※便宜上横書きで表示しておりますが、退職届は縦書きが一般的です。
退職届は提出の後、会社側との合意がなければ撤回できない届け出です。もし自分の不利なように誤って記載・提出すると、退職届通りになってしまう可能性があります。退職願同様、原本をコピーし保管することをおすすめします。
①黒のボールペンもしくは万年筆にて手書き
退職願同様、消えないタイプを使用しましょう。書き損じた場合は新しく書き直しましょう。
②退職理由を記載
退職理由は退職金や失業保険等に影響する場合があります。自己都合の際は詳細を記載する必要はなく、「一身上の都合により」の記載で十分です。会社都合の際は「事業所閉鎖のため」など会社と合意した内容を書くようにしましょう。
③退職を「届け出る」文面
会社との交渉で合意した内容を記載するため、「~をもって退職いたします」と記載します。退職願のように相手側へ伺うような末尾でなく言い切る形式にします。
④合意した退職日を記載
会社側と合意した退職日を記載します。提出後は修正できないので、転職先との調整等は済ませておきましょう。
⑤文章最後の日付は届け出る日付を記入
退職届を提出する日付を記載します。
⑥自分の名前の下に捺印
退職願と同様です。正式な文章なのでシャチハタは不可です。
まとめ) 退職手続きは「自分」でしっかり準備する
転職先との条件交渉は転職エージェントに代行してもらうことができ、新たな転職先との手続きも先方の指示通りにすれば上手くいくでしょう。
しかし退職手続きに関しては、転職エージェントのアドバイスを受けることはできますが、実際に退職についての交渉をし、退職届を作成するのは自分自身で行わなければなりません。
周りの体験談は参考になりますが、自分の会社には当てはまらない場合もあります。転職活動中から退職手続きについて、自分でしっかり準備することが重要です。
円満に退職し気持ちよく新しいスタートを切るためにも、余裕をもって退職願・退職届の意味や提出するに至るフローを確認しておきましょう。