デザイナーの転職で「ポートフォリオ」を効果的に作成するには?
[最終更新日]2024/09/09
デザイナーやディレクターなど、クリエイティブ関連の転職活動で必須となるのが「ポートフォリオ(作品集)」です。
他職種とは異なり、クリエイターの採用選考ではポートフォリオが最も重要視されるといっても過言ではありません。
では、採用の確率を高める効果的なポートフォリオを作成するには、どのような点を意識すればいいのでしょうか。
※エンジニアの方のポートフォリオの書き方・ポイントについては、以下記事をご覧ください。
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目次
1)デザイナーのポートフォリオはなぜ重要?企業が見ているポイントとは
デザイナーが採用選考を受ける場合、ポートフォリオは職務経歴書の代わりになる重要なツールです。
どれほど言葉を尽くして経歴や実績を伝えたとしても、実際の作品を閲覧することで得られる情報量には及ばないからです。
採用の可否を左右することも十分にあり得るポートフォリオ。企業の採用担当者は、ポートフォリオのどういった点を重点的に見ているのでしょうか。とくに重要となるのが、次の3つのポイントです。
成果物のクオリティ・デザイナーとしてのスキルレベル
ポートフォリオは過去に制作した作品集ですので、言うまでもなく成果物そのもののクオリティが重要視されます。
プロフェショナルとして質の高い仕事をしてきたかどうかは、実際の作品を見れば一目瞭然のことも少なくありません。
デザイナーとして活動してきた「実績」を示すツールとして、ポートフォリオに勝るものはないといえます。
同時に、ポートフォリオに収録された作品はデザイナーとしてのスキルレベルを知る上で重要な指標となります。
企業が求めるスキルレベルを十分に備えているか、即戦力として活躍できるレベルに達しているか、といった点を採用担当者は見ているのです。
よって、ポートフォリオには過去に手掛けた作品の中でも選りすぐりの成果物を掲載する必要があります。
また、多様なテイストの作品を創ることができることも、デザイナーとしてのスキルの高さを示す絶好の材料となります。
ポートフォリオに掲載する作品を選ぶ際には、できるだけ多彩な作品を選ぶことが大切です。
制作意図や担当業務領域
成果物が完成に至るまでには、デザイナー独自のこだわりや工夫が凝らされているはずです。
作品がどのような制作意図で創られたものかを知ることで、デザイナーがどのぐらいの深度・精度で作品と向き合ってきたかを判断するヒントを得られます。
こだわってきたポイントが企業の求めるクリエイティビティと合致していれば、採用後に活躍できる確率が高まるはずです。
また、成果物に対してどのような関わり方をしてきたか、という点も重要視されます。
たとえばWebデザイナーであれば、ワイヤーフレームやプロトタイプ作成といった設計段階から参画したのか、デザインの実務が中心だったのか、コーディングも含めてワンストップで対応可能か、といった点は、入社後に任せられる業務領域を把握するために知っておく必要があるからです。
制作意図や担当業務領域が明確に示されていれば、採用担当者としても知りたい情報を得ることができ、選考がスムーズに進むでしょう。
自身の成果物について「伝える力」
ポートフォリオに収録する作品は重要な評価ポイントですが、実はポートフォリオ自体の出来栄えも評価対象になっています。
たとえ優れた制作スキルを持っているデザイナーであっても、自身の成果物を効果的に紹介し、魅力を余すところなく伝えられなければ、実務においてクライアントの評価を高めるのは困難だからです。
デザイナーが制作するのは芸術作品ではなく、あくまでもビジネスを推進することを目的とした商業デザインです。
独りよがりに陥ることなく、客観的に説得力のあるプレゼンができることは、デザイナーとして必要な資質といえるでしょう。
見やすさや作品の魅力を効果的に紹介する上での工夫が凝らされたポートフォリオは、デザイナーとしてのスキルレベルを証明する強力なツールとなるはずです。
2)ポートフォリオに記載しておきたい項目
ポートフォリオは採用資料として提出しますので、必要な情報が漏れなく記載されていることが重要です。
記載すべき項目が多い場合は、表にまとめるなどして見やすさに配慮する必要があります。次の項目のうち、自身の職種で提示できるものは漏れなく記載するようにしましょう。
【ポートフォリオに記載するべき項目】
- ポートフォリオの目次
- 作品の画像、スクリーンショット
- 作品タイトル、紹介文
- クライアント名
- 制作年月日、制作期間
- 想定するユーザー
- 使用ツール・言語、スキルレベル
- プロジェクトでの担当領域
- 自己紹介、プロフィール
- 今後やってみたいこと
上記のうち、とくに評価ポイントとなりやすい5つの項目について詳しく解説します。
作品の画像・スクリーンショット
作品を見てもらうことがポートフォリオの主な目的ですので、鮮明な画像を大きく掲載しましょう。
Web上で閲覧可能なものはスクリーンショットとURLを記載します。紙媒体の場合は、スキャンした画像を用意しておくと便利です。立体造形物であれば、複数の角度から撮影した画像を使用するとよいでしょう。
画像はポートフォリオの中でも最も目を引き、視覚に訴える重要な要素です。採用担当者が最初に目にする部分ですので、掲載する画像はじっくりと厳選する必要があります。
作品の紹介文
制作意図や担当範囲、制作環境といった紹介文を付記します。
作品画像の詳細を説明することが紹介文の目的ですので、端的に分かりやすく記載することが大切です。項目ごとに箇条書きにするなど、長文にならないように工夫しましょう。
採用担当者はポートフォリオの中から気になった作品を中心に見ていきます。ポートフォリオの冒頭から順に見るとは限らないため、重複する項目がある場合も「前ページの作品と同様」といった表現は避けましょう。
自己紹介文・プロフィール
ポートフォリオを通じてアピールしたいのは作品自体ではなく、作品を制作したデザイナー自身です。
履歴書を同時に提出する場合も、プロフィールや自己紹介文はポートフォリオに記載したほうがよいでしょう。
ポートフォリオは履歴書と比べて自由度が高いため、自身の個性や人柄を知ってもらう上でも有効なツールとなります。
採用資料であることを踏まえる必要はありますが、デザイナーとしての特色や個性が伝わるプロフィールにすることで印象に残りやすくなるはずです。
使用可能なソフトや言語などのスキルレベル
デザイナーとしての「スペック」を記載する項目です。
たとえ能力やセンスを感じるポートフォリオであっても、企業側の制作環境や想定するスキルレベルに合致していることが確認できなければ、採用の決定打にはなりません。
使用可能なソフト・使用言語といった情報はできるだけ詳しく記載しましょう。
採用担当者としては、自社が求めるスキルを持った人材かどうかを確認したいはずです。
必須のスキルを保有しているか確認しておきたいケースもありますので、表や箇条書きを用いるなど情報を整理して記載することが大切です。
今後やってみたいこと
デザイナーの仕事は非定型的な要素が多く、就業する企業が目指している方向性や企業文化とマッチしているかどうかが重要なポイントとなります。
デザイナーとして今後やってみたいこと、取り組んでいきたいことを記載することで、採用担当者は「当社の方向性との親和性が高いかどうか」を判断しやすくなるでしょう。
また、将来的にデザイナーとして専門性を高めていきたいのか、ディレクションやマネジメントといったポジションにも興味があるのか、といったキャリアプランも含めて記載するとより効果的です。
企業が求める人材像に合致していれば、入社後にミスマッチが発覚するリスクも回避できるはずです。
3)おすすめの無料ポートフォリオ作成サービス3選
ポートフォリオを紙ベースで用意するべきか、データで用意するべきかで迷っている人もいるはずです。
結論から言うと、ポートフォリオはデータで提示して問題ありません。
近年ではイラストレーターやデザイナーもデジタル処理で制作を進めるケースが多くなっています。
面接時にPCやタブレットを持参し、ポートフォリオを見てもらっても問題ないケースがほとんどです。
そこで、ポートフォリオを無料で作成できるおすすめのサービスを紹介します。短時間で本格的なポートフォリオを作成できますので、試しに利用してみてもいいでしょう。
直感的な操作で作成するならMATCHBOX
MATCHBOXはマイナビデザイナーが運営するポートフォリオ作成サービスです。コーディングの知識不要で直感的にポートフォリオを作成できます。
最大の特徴は人材サービスであるマイナビグループが運営している点にあります。
質問に答えながら入力していくだけで、「案件概要」「関わり方」「ポイント」といった選考時に採用担当者が重視する項目を記載できます。
画面上でポートフォリオを確認するだけでなく、PDF形式で保存することも可能です。紙に出力して面接に持参したいときなどに、作成したポートフォリオのイメージ通りに仕上げることができます。
直感的な操作で効果的なポートフォリオを作成したい人は、MATCHBOXを活用するといいでしょう。
Web領域以外のデザイナーも使いやすいSalon.io
Salon.ioはドイツの9elements社が運営するポートフォリオ作成サービスで、世界中のデザイナーから高い支持を得ています。
最大の特徴はドラッグ&ドロップ操作のみで本格的なポートフォリオを作成できる点にあります。
ふだん紙にイラストなどを描いている人にとって、Web関連の知識が求められるサービスはハードルが高いと感じるかもしれません。
Salon.ioであれば、Webの知識がなくても150画像までのポートフォリオを無料で作成できるのです。
また、HTMLやCSSの知識があれば、コードエディタでデザインをカスタマイズすることも可能です。Web初心者から中級者以上まで、幅広く利用できるのがSalon.ioの魅力といえるでしょう。
クオリティにこだわるならBehance
Behanceはデザイナー御用達のAdobe社が運営するポートフォリオ作成サービスです。
Adobeアカウントがあればすぐに登録可能ですので、日頃からPhotoshopやIllustratorなどを使用しているデザイナーにおすすめです。
デザイナー向けのツールを提供している企業だけに、細部にまでこだわってデザインをカスタマイズしやすくなっています。Lightroom CCから画像を直接読み込むこともできるため、ふだんからLightroomで作品を管理している人はシームレスに利用できるでしょう。
また、Behanceはデザイナーを求める企業とデザイナーをマッチングするSNS機能も備えています。
GoogleやNIKEといった有名企業もデザイナーの募集に活用していますので、今すぐに転職活動を予定していない人も登録しておく意義があるでしょう。
4)ポートフォリオ作成時の注意点
実際にポートフォリオを作成するイメージが湧いてきたでしょうか。最後に、ポートフォリオを作成するにあたって注意しておきたい点について解説します。
ポートフォリオはクリエイティブ職以外の職種における職務経歴書に相当します。そのため、自身の強みやアピールポイントを伝えるための工夫を凝らすことも非常に重要です。
次に挙げる3つの注意点については、ポートフォリオ作成時に必ず意識しておくようにしましょう。
デザイナーとしてのコンセプトを明確にしておく
ポートフォリオを作成するにあたって、デザイナーとしてのコンセプトや制作の方向性を明確にしておく必要があります。
ポートフォリオに収録する作品が豊富であればあるほど、それらを手掛けたデザイナー自身が何を重視し、どのようなコンセプトに基づいて制作に携わってきたかが問われるからです。
ポートフォリオは、デザイナーの実績とスキルレベルを知ってもらうためのツールです。ただし、ポートフォリオで紹介できるのはあくまでも過去の実績のみとなります。
デザイナーとして今後どのような方向に進みたいのか、目指すべき到達点がどこにあるのか、といった未来の視点はデザイナーが自分の言葉で伝えなくてはなりません。
提出したポートフォリオと自身の今後の方向性に乖離が見られると、企業側も入社後のキャリアパスをイメージしにくくなってしまいます。
デザイナーとしてのコンセプトを再確認した上でポートフォリオの作成に着手することが大切です。
紹介文は長くなりすぎないよう端的にまとめる
作品に対する思い入れが強ければ強いほど、伝えたいメッセージは多くなりがちです。
しかし、採用担当者は複数の応募書類に目を通さなくてはなりません。ポートフォリオの主体はあくまでも「作品」ですので、紹介文は端的にまとめ、あまり長くなりすぎないようにしましょう。
ポートフォリオに記載する紹介文には、最低限伝えておくべき制作の背景や経緯を記載します。
より詳細な情報については、面接の場で伝えることもできるはずです。
このように、ポートフォリオ内で伝えておくべきことと、興味を持ってくれた応募先に面接で直接伝えるべきことを切り分け、準備しておく必要があります。
もし紹介文の書き方や適切な分量が分からないと感じたら、前項で紹介したポートフォリオ作成サービスで他のデザイナーのポートフォリオを参照してみましょう。
いくつかのポートフォリオを見ていくうちに、標準的な紹介文のボリュームがつかめるはずです。
ポートフォリオ自体を「作品」と捉える
採用担当者がデザイナーの作品を初めて目にするのはポートフォリオです。したがって、ポートフォリオのレイアウトやデザインそのものが、デザイナーに対する印象を大きく左右することは十分に考えられます。
自身の作品の魅力やアピールポイントを適切にプレゼンできるかどうかが分かるという点で、ポートフォリオは作品単体で見るとき以上にデザイナーの技量を伝える役割を果たします。
ポートフォリオ全体がすっきりまとまっているか、見やすさに配慮されているか、といった点にもこだわりましょう。
場合によっては転職活動開始まで期間が空いたり、じっくりと時間をかけて転職先を探したりすることもあり得ます。
アピールしておきたい作品が新たに完成したら、随時ポートフォリオを更新して最新の状態を保ちましょう。ポートフォリオがデザイナーの最新動向を伝えるための資料になっていることが大切です。
まとめ)魅力的なポートフォリオで転職成功を実現しよう
デザイナーの転職において、ポートフォリオは実績や実力を伝えるための重要なツールです。
採用担当者が最も参考にする資料となることも十分にあり得るため、きちんと時間を確保して自身の作品を最大限にアピールできるポートフォリオを作成しましょう。
魅力的なポートフォリオで採用担当者の心をつかむことができれば、採用に至る確率は飛躍的に高まるはずです。本記事で紹介したポイントを参考に、ぜひ魅力的なポートフォリオの作成に挑戦してください。