40代・50代の「人事」への需要は?転職で人事部を目指す際のポイント・注意点
[最終更新日]2024/08/30
現在、人事の仕事に従事している40〜50代の方の中には、今後を見据えて転職も視野に入れたキャリアプランを検討している人もいることでしょう。
現役時代が長くなりつつある現代において、ミドル・シニア人材の転職は決してめずらしいことではありません。
一方で、現在の年齢で新たなキャリアに挑戦できるのか、人事業務の経験者として需要があるのか、不安に感じる人もいるはずです。
目次
1)40~50代ミドル・シニア人材を求める企業は増加傾向にある
40〜50代の方が転職を検討するにあたって、まず不安に感じるのは「現在の年齢で人材として需要があるだろうか?」という点ではないでしょうか。
ひと昔前であれば転職はかなり厳しくなるといわれてきた年齢層ですので、転職に対して慎重になるのは自然な心境といえます。
結論からいうと、40〜50代の人材が転職することは十分可能です。これには主に2つの理由があります。
理由1:少子高齢化に伴う若手人材の不足
現代の日本では少子高齢化が急速に進みつつあります。
20代・30代の人材を採用しようとしても、労働人口そのものが減少しているため、優秀な人材を確保することは至難の業となっています。
その結果、多くの企業は採用の年齢幅を拡大し、40〜50代の採用も視野に入れるケースが多くなっているのです。
理由2:マネジメント人材の不足
現在の40〜50代は就職氷河期に新卒だった世代です。
当時は多くの企業が採用を抑制したため、この年齢層の人材が少ない傾向があります。これにより、管理職などマネジメントを担う人材が不足しがちであり、外部から40代・50代の人材を採用する企業が増えているのです。
一方で、「人事部」向け求人は少なめ
40〜50代の人事経験者が同じ人事部への転職を希望する場合、転職先は確保できるのでしょうか。
現実問題として、人事部の採用枠そのものが少ないことから、さらにミドル・シニア層を対象とした求人となるとかなり希少なものとなるのが実情です。
20代・30代の人材のように転職サイトで求人を探し、自分で応募する転職活動の進め方はあまり現実的でないと考えたほうが無難でしょう。
ミドル・シニア世代を対象とした求人は常に一定数が確保されているわけではなく、時期によって突発的に人員補充が必要になるケースが多いです。
参考:ミドル世代求人の発生イメージ
これから人事のポストで転職を検討しているミドル・シニア層の方は、こうした採用枠が発生するタイミングを狙って、希望する仕事内容・条件の求人を「待つ」姿勢で臨むことが望ましいでしょう。
そのためには「転職エージェント」に登録しておき、「良い求人があれば紹介してほしい」と伝えておくのが得策です。
2)企業が40代・50代の人材に求める「人事の働き方」とは
40〜50代の人事経験者を求める企業は、どのような働き方や経験を求めているのでしょうか。
企業が求める条件に合致していれば、採用に至る確率を高めることができるはずです。
40〜50代の人事経験者に企業が期待している働き方について理解を深めておきましょう。
企業が40代・50代の人材に求める「人事の働き方」として、主に次の2つが想定できます。
企業が40代・50代の人材に求める「人事の働き方」
それぞれ詳しく見ていきましょう。
「戦略系人事」としての働き方
人事には大きく分けて「守り」の人事と「攻め」の人事があります。
「守りの人事」とは、労務管理から評価・育成体制の構築をはじめとする人材のインフラ面での働きかけを指すことが多いです。
一方の「攻めの人事」とは、既存のルールや業務範囲にとらわれず、時代の移り変わりやそれに伴う新たな企業理念や価値観を受け入れ実践していくことをいいます。
近年注目されている「働き方改革」「DX推進」「健康経営」「ダイバーシティ」に関わる目標を掲げ、実現に向けて取り組むことは攻めの人事といえるでしょう。
そして、「戦略系人事」とは、これら守りと攻めをバランスよく講じ、企業としての中長期的な成長と発展を目指していく試みにあたります。
守りの人事 | 労務管理や評価・育成など、既存の仕組み・体制を状況に合わせて適切に運営・改善していく |
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攻めの人事 | 時代の移り変わりやそれに伴う新たな企業理念や価値観を受け入れ実践するための取り組みをする |
戦略系人事 | 「守りの人事」、「攻めの人事」をバランスよく講じ、中長期的な企業成長の計画立てと運用をする |
「これからは攻めの人事が重要になる」という言葉を聞いたこともあるでしょうが、戦略系人事を担う人材に求められるのは、未来を見据えた新たな試みだけではありません。
従来の「守り」の人事もまた、企業にとって土台となる重要な機能だからです。
戦略系人事では、従来の人事体制を適切に評価し、変革に着手すべきこととあえて残しておくことを見極める能力が求められます。
そのためには人事としての経験が欠かせないことから、ミドル・シニア層の人事経験者の力が必要になるのです。
「経営者の相談役」としての働き方
人事の仕事は経営方針と密接な関わりがあります。優秀な人材の採用や既存の従業員の退職防止、各種の研修など教育制度の充実は、経営戦略と切っても切れないつながりがあるからです。
ひとくちに人事といっても、日々のルーティンをこなす仕事から制度設計を担うエキスパートまで、必要なスキルや経験のレベルはさまざまです。人事に関する制度設計となると、人事としての豊富な経験が求められるのは間違いないでしょう。
企業の将来を左右する人事体制を設計していくにあたり、経営者は頼りになる相談役を求めていることが少なくありません。
現に、外資系企業を中心にHRBR(HRビジネスパートナー)を導入し、経営者・事業責任者の視点から人事戦略を練っていくポジションを新設する企業も増えています。人事として豊富な経験を持つ40代・50代の人材は、経営者の相談役として活躍することが期待されているのです。
3)ミドル・シニア層が人事部への転職を目指す際のポイント4点
40〜50代のミドル・シニア層が人事部への転職を目指すにあたり、次の4点をとくに意識しておくことが重要です。
「焦りの転職」はNG。中長期的な転職活動を
ミドル・シニア層の転職において、成功する人・失敗する人には以下の傾向があるといいます。
転職成功する人に多い傾向 | ゆとりを持った活動期間で転職を進められる人 →「自分にマッチする」と思える求人が発生したときに行動できる |
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転職失敗する人に多い傾向 | 短期間で転職をしようと行動する人 →そのときにある求人の中から応募先を選ぶ必要があり、条件の妥協や準備不足に陥りやすい |
多くの転職ノウハウ系サイトでは、「転職活動にかける期間は3ヵ月ほど」といった紹介をしているのが見受けられますが、ミドル・シニア層の転職者では1~2年の中長期スパンで活動をする人が非常に多いです。
そして、「この条件だったら、自分にマッチするだろう」という求人が出た際に、本格的に行動に移すのです。
もちろん、中長期的に活動するといっても、条件に合う求人が見つかるのをただ待っているだけでは十分ではありません。
企業が求める人材は時流にあわせて変化していきます。そして、あなた自身も知識や経験の蓄積があったり、価値観や考え方の変化もあるでしょう。
自己分析やキャリアの棚卸しを定期的にアップデートしていき、希望する働き方を実現できそうな企業の求人があった際に、その企業が求めている人材要件にマッチするかをすぐに確認できるよう準備しておくことが大切です。
新しい「資格取得」が武器になることも
じっくりと腰を据えて転職活動に臨むのであれば、準備期間として新たな資格取得に挑戦するのも1つの考え方です。
たとえば、中小企業診断士やビジネスマネージャーといった資格を取得しておくことで、戦略系人事や経営者の相談役を担う人材として十分な知見やスキルを持っていることのアピールにつながります。
また、採用担当からは「年齢を経ても新たな分野に向けて知識習得していこうという意識が高い」という印象を持たれやすいでしょう。
もちろん、資格を取得したことで必ずしも転職活動を有利に進められるとは限りません。
保有資格を軸に転職活動を進めるのではなく、あくまで実務経験を補強する要素の1つとして捉える視点を持つことが大切です。
資格取得に向けて勉強する中で、これまで実務を通じて習得してきた知識を整理し、体系化しておく効果も期待できるでしょう。
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「確実に価値発揮できる」と思える求人企業を探す
企業が求める能力・経験に見合っているかどうかは採用の可否を分ける重要な要素ですが、「この企業はどのような能力を求めているのか」「自分の経験を元に価値を提供できるかどうか」を見極めておくことも非常に大切です。
提供可能な価値と企業が求める能力が合致していれば、採用を前向きに検討してもらえる可能性が高いからです。
たとえば、現在の職場で女性社員の活躍を後押しすることを目標に掲げ、人事評価制度の改訂を担った経験があれば、女性の活躍を推進したいと考えている企業にとって適任の人材となるでしょう。
反対に、ダイバーシティの整備がすでに進んでいる企業にとっては、今すぐに採用する有力な理由にはなりにくい可能性があります。このように、「この人を採用すると何を実現してくれるのか?」という企業側のニーズに関する仮説を立て、アプローチしやすいと思われる企業を探していくことが大切です。
職務経歴書では「企業が求めるスキル・実績」、面接では「人柄」を重点的にPR
40代・50代の人材はこれまでのキャリアで培った経験が豊富であるため、あらゆる経験や実績を記載しようとすると職務経歴書は膨大な情報量になりがちです。
しかし、企業が知りたいのはそのうちほんの一部のはずです。企業が求めていると考えられるポイントに絞って職務経歴書を作成し、集中的にアピールしたい実績を決めておきましょう。
一方の面接選考では、企業は40代・50代の人材に対して「一緒に働けそうなタイプか(偉ぶっていないか、柔軟な対応ができそうかなど)」といったスタンス・人柄面を重点的に観てくることが多いです。
新しい環境に対応するための「適応力」や「柔軟性」は年齢の高まりとともに低減する場合も多く、ミドル・シニア層を採用する企業もその点に留意しています。
これまでの経歴のPRも大切ですが、面接の場では「この人となら、うまくやっていけそう」「一緒に働いてみたい」と感じてもらうための「人柄」が伝わる部分を重点的に話すと良いでしょう。
ミドル・シニア層の転職支援に強い転職エージェントを活用しよう
ミドル・シニア層を対象とした人事部の求人は、企業によっては公募求人ではなく、転職エージェントを経由した非公開求人のみで人材を募集することが多いです。よって、ミドル・シニア層の転職サポートに強い転職エージェントを活用することは必須となるでしょう。
転職エージェントを活用するメリットは、希望条件に合った求人を紹介してくれることだけではありません。担当アドバイザーとのキャリアカウンセリングを通じて、キャリアの棚卸しや職務経歴書の作成について相談できます。
第三者のアドバイスを取り入れることで、自分では気づいていなかった強みを発見できる場合もあるでしょう。自身のキャリアを客観視する意味でも、転職エージェントの活用は積極的に検討することをおすすめします。
4)ミドル・シニア層の人事部への転職に、おすすめ転職エージェント
転職エージェントを活用する上で重要になるのが、転職活動の方向性やスピード感に合ったサービスを選ぶことです。
ミドル・シニア層が人事への転職を目指す場合、転職活動に一定期間を要する覚悟で臨む必要があるのは前述の通りです。
ただし、想定している期間が半年程度という人と、1〜2年かかっても問題ないという人とでは、利用するべきサービスは異なります。
可能であれば早めに転職したい人と、じっくりと時間をかけて転職したい人に、それぞれおすすめの転職エージェントについて紹介します。
できるだけ複数の転職エージェントに登録しておき、併用することで希望条件に合った求人を紹介してもらえる確率を高めておきましょう。
「なるべく早めに転職したい」という場合は、doda、リクルートエージェント
転職時の年齢や今後のキャリアプランを考慮すると、可能な限り早めに転職先を確保したい場合があるはずです。
なるべく早めに転職したい人は、dodaやリクルートエージェントといった大手転職支援サービスを活用することをおすすめします。
これらのサービスは求人数が豊富でサービス体制が充実しているのが大きな特徴です。
「40代・50代を対象とした求人」で、かつ「人事部への配属」を希望するとしたら、対象となる求人はかなり限定されます。
転職エージェントが保有する求人の母数がなるべく多い転職サービスを活用することで、希望条件に合う求人を紹介してもらえる確率を高めておくことができるでしょう。
ただし、転職エージェントはその仕組み上、希望条件と異なる求人を紹介するケースもあります。
登録後に行われる担当アドバイザーとの面談で、「人事部への配属を希望」する旨をしっかりと伝えておくことが大切です。
サービス名 | 特徴 |
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doda |
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リクルートエージェント |
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「じっくり時間をかけて転職活動を行える」人は、MS-Japan、ビズリーチ、JACリクルートメント、パソナキャリア・ハイクラス
転職活動に一定の期間を費やしてでも、納得できる転職先をじっくり吟味したい人もいることでしょう。
ある程度の長期戦を覚悟して臨むのであれば、優良求人を扱う人事・管理部門向け転職サービスや、いわゆるハイクラス人材向けのサービスを活用することをおすすめします。
複数のサービスに登録しておき、良い求人が見つかった場合は紹介してもらうイメージです。
人事経験者の40代・50代の人材は多くの企業にとって希少な存在であることは間違いありません。
これまで取り組んできた業務内容や実績を担当アドバイザーにじっくりと伝えるとともに、希望する条件を共有しておくことが大切です。
その上で、転職先を確保するスピードよりも希望条件とのマッチ度を重視することを伝えておき、良い求人が見つかったら紹介してもらうよう依頼しておきましょう。
サービス名 | 特徴 |
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MS-Japan | 管理部門(経理・財務・人事・総務・法務など)の転職におすすめ
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ビズリーチ |
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JACリクルートメント |
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パソナキャリア ハイクラス |
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まとめ)40代・50代の人事への転職は希少なチャンスを逃さない工夫を!
ひと昔前であれば、いわゆる「転職適齢期」を超えていると考えられてきた40代・50代の人材も、昨今では転職可能な年齢層となりつつあります。
同時に、人事担当者に企業が期待する能力・経験も年々高度になっています。ミドル・シニア層の人事経験者にとって、大きなチャンスが訪れているといえるでしょう。
一方で、40代・50代を対象とした人事の求人は決して多くないのも事実です。
希少なチャンスを逃さないよう、いつでも採用選考に臨める体制を整えておくと同時に、複数の転職サービスを活用するなどの工夫を凝らすことが大切です。
希望条件に合った求人を見つけて、今後のキャリアをより充実したものへと昇華させていきましょう。