経営者・役員・CxOの転職はメリットもリスクも大きい? 転職に失敗しないためのポイント3つ
[最終更新日]2024/11/02
転職してCOO(最高執行責任者)、CFO(最高財務責任者)といった、いわゆるCxOや取締役に着任する——。こうした方法でキャリアアップを図るという考え方があります。
実際、特定の事業分野において経験が豊富な人材を役員として招き入れるのは、とくにスタートアップでは決してめずらしくないケースと言えるでしょう。
目次
1)経営者・役員・CxOの転職の求人は増加傾向にある
まず、多くの人が疑問に思うこととして
「そもそも役員やCxOを外部から採用しようとしている企業がどれくらいあるのか?」
「役員に着任することを前提に転職することが本当に可能なのか?」
といった点が挙げられます。
結論から言うと、「役員やCxOとして転職することは可能」ですし、「多くの企業で、外部から経営者を採用」しています。
例えば、ハイクラス向けの転職サービス「ビズリーチ」のサービスで「経営者・CEO・COOなど」で求人検索をかけると、日本全国で約700件の求人がHITします(※採用企業案件とヘッドハンター案件の合計。2024年11月 弊社調査)。
最も有力な候補となるのは「他社で経営者の仕事を経験してきた人」です。
他にも、事業責任者や部長職など、組織や部署を束ねるポジションで活躍してきた人や、特定の分野に関する専門知識を持つ人をCxOとして抜擢することは十分にあり得ます。
近年ではこうした動きはますます活発化しており、とくにベンチャー企業においては経営者やCxOを募集するケースがめずらしくなくなりつつあります。
──さて、なぜこのような現象が起きているのでしょうか。
特にベンチャー企業において、経営者・役員・CxOでの転職者のニーズが高まっている
急成長しているベンチャー企業は、「創業者+社員」という構成になっているケースが非常に多いです。
つまり、CEOや社長の右腕として活躍するポジションは存在せず、実質的に創業者が1人で経営を切り盛りしているような状況なのです。
事業規模が拡大するにしたがい、経営に関するあらゆる業務をCEOや社長が単独で行うのが難しくなっていくことは十分に考えられます。
そのようなとき、財務のスペシャリストであるCFOや、技術のスペシャリストであるCTOといったポジションを採用するという発想に至るわけです。
また、ベンチャー企業やスタートアップ企業の場合、社長を含む人材が全体的に「若い」ケースが少なくありません。
そのため「実務経験はそこそこあるものの、組織が大きくなっていく過程やその後に発生しやすい問題に関しては対策を知らない」といったことが起こりやすいのです。
一方で、こうした経営者・役員・CxOへの転職は、メリット・デメリット(リスク)双方あります。
転職の意思決定をする際には、これらを事前にしっかり把握しておくべきでしょう。
メリット |
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デメリット |
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2)経営者・役員・CxOで転職した際のリスク・デメリット
リスク・デメリット | 対策 |
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人間関係や相性でのトラブルが起きやすい | まずは「否定せず受け入れる」こと |
早いタイミングで「結果」を求められる | 焦らず、先を見据えた行動を |
責任の追及のされ方が違う | 「役員としての働き方」を学び実践する |
転職によってCxOをはじめとする経営者として活躍できるとなれば、とくにこれまで管理職など従業員として勤めてきた人にとっては「キャリアアップの大チャンス」と感じられることでしょう。
もちろんチャンスであることは間違いないのですが、同時にCxOなどのポジションに着任するのはリスクも伴うことをよく理解しておく必要があります。
一般的な転職や管理職採用の場合とは異なる、経営者として転職する場合のリスクとしてどのようなことが想定されるのでしょうか。代表的な3つのリスクについて確認しておきましょう。
一番注意すべきは、代表はじめ他の経営者との相性・コミュニケーション
転職先の企業カルチャーに馴染めるかどうか——。
これは一般的な転職においてもよく言われる、転職成功の可否を決める重要な要素の1つですが、とくにエグゼクティブの転職においてこの傾向は顕著になります。
すなわち、「役員として着任する以上、社長などのトップや他の経営者の人材との相性が第一のハードルになる」ことは避けられないのです。
「役員なのだから、自分の裁量で方針を打ち出せるのでは?」と感じた人は要注意です。
役員として採用されるからこそ、企業カルチャーや職場の雰囲気に与える影響は従業員よりも大きくなります。
とくに一緒に働く役員や代表者が創業メンバーで、自分だけが外部から入ってくる場合、彼らにとってあなたは「異質な人」です。
たとえ「新しい風を吹き込んでもらいたい」「これまでにない方針を打ち出して欲しい」と言われていたとしても、代表や他の役員と円滑にコミュニケーションを図り、もともとの企業カルチャーを否定することなくやっていけるかどうかが非常に重要なポイントなのです。
当然ながら、結果を求められる。ただし、あせりは禁物
役員クラスとして参画するわけですから、結果を求められることに関しては従業員とは比にならないプレッシャーがかかることを覚悟しておく必要があります。
しかも、自分自身がプレーヤーとして結果を出せばよいわけではなく、社員が結果を出せる会社にしていかなくてはなりません。
そのためには、周囲の仲間との信頼関係を築くことが不可欠です。彼らの仕事観や人生観を理解して受け入れるとともに、自身の考えを分かってもらい、共に同じ目標に向かって進んでいけることを確認し合います。
このプロセスは一朝一夕に実現できるものではありませんので、すぐに結果を出そうとあせっても良い結果につながりにくいと考えられます。結果を出すことを強く求められる一方で、あせらず先を見据えた施策を講じなくてはなりません。
目の前の事態に振り回されない、どっしりと大きく構えるだけの度量が求められるのです。
役員と従業員とでは、「責任の追及のされ方」が違う
役員は従業員ではありませんので、個人的な責任と役員としての責任の線引きは基本的にないと考えていいでしょう。業績が不振だった場合、管理職など従業員の立場であれば個人的な責任が問われることはまずありません。
ところが、役員にとって業績不振は自身が経営責任を負った上での結果であり、役員自身の個人的責任が問われる事由になり得るのです。
業績不振以外にも、たとえば会社の不祥事など個人的に非がない事由だったとしても、役員=企業が違法行為をすることがないよう監視するべきポジションである以上、責任を追及され賠償責任を負うことがあります。
これが役員としての「経営責任」なのです。
これまで役員クラスに着任した経験がなく、管理職など従業員としての立場で働いてきた人は、役員として責任を負うことの意味について、いまいちど確認しておいたほうがいいでしょう。
3)一方で、経営者・役員・CxOで転職するメリットも大きい
役員クラスのポジションで転職するにあたって、管理職など従業員として転職するのとは異なるレベルのリスクがあることは前述の通りです。一方で、経営者として転職することには大きなメリットがあるのも事実です。
CxOなどのポジションで転職する場合に考えられる代表的なメリット3点を挙げますので、これらのメリットと前述のリスクを天秤にかけてみましょう。
リスクを上回るほどの大きなメリットを感じられるとしたら、役員クラスのポジションを狙って転職活動を進めるのも「あり」かもしれません。
経営者・役員・CxOで転職するメリット
それぞれ、順を追って見ていきましょう。
組織を動かし、自らビジネスを創っていける
役員になるということは、端的に言えば「使われる側から使う側に回る」ことを意味します。
管理職として仕事を創っていくことが全くできないわけではありませんが、少なからず経営者が決めた方針に従って仕事を進めなくてはならない部分があるはずです。
役員として転職する場合、部門責任者としての管理職と比べると相当大きな裁量で組織を動かしていけることは間違いありません。そのため、管理職では経験できなかった、自らビジネスを創り育てていく手応えを感じやすいのです。
大企業で管理職を経験してきた人の中には、この点に大きな魅力を感じ、報酬の面ではダウンすることが分かっていながらベンチャー企業のCxOに転身する人もいるほどです。
経営者としての経験を積めて、キャリアの重みが増す
もしあなたが採用担当者だったとして、ある応募者の経歴にCxOの経験が含まれていたとしたら、少なからず見る目が変わるのではないでしょうか。経営者としての経験が「ある」のと「ない」のとでは、そのぐらいキャリアの重みが変わるのです。
役員クラスのポジションを経験しているということは、経営者が直面する問題や悩みを経験し、当事者として対応してきたことを意味します。
その経験を求める企業があれば、さらに別の企業でCxOとしての経験を重ねていける可能性もあるでしょう。
経営者には経営者の人脈が形成されやすくなりますので、将来的に人の紹介で転職する場合にも経営者のポジションを紹介される可能性が高くなります。
このように、CxOに転職することによってキャリアの重みが増し、のちのちのキャリアの選択肢を大きく広げることへとつながります。
ストックオプションによる将来的な収入が期待できる
報酬面でダウンしたとしてもCxOに転職する人がいると前で述べましたが、経営者として企業に参画する場合、ストックオプションの権利を得られるケースが少なくありません。
将来的にIPOなど企業が大幅な成長を遂げた場合、ストックオプションによって保有していた株式の売却益がかなりの額にのぼるケースがあります。
アントレプレナーの中には、この資金を元手に新たなビジネスを立ち上げる人もいます。
スタートアップやベンチャー企業でなくても、従業員持ち株会などの制度を利用して将来的に売却益を得ることは可能です。
しかし、成長の伸びしろという面から見た場合、成長途上の企業のほうが何十倍、何百倍といった株価の上昇を実現する可能性が高いのです。
4)経営者・役員・CxOの転職で、失敗しないためのポイント3つ
役員やCxOといった経営者の人材を外部から募るのは、どの企業にとっても社運を賭けた挑戦です。
どのような人材が着任するかによって、今後の経営を大きく左右することは明白だからです。企業としてもどのように人材を確保するのかは大きな課題であり、各社が創意工夫を凝らして人材を募るはずです。
そのため、経営者として転職する場合、どのように情報収集を行い、どの媒体を活用して応募するのかを慎重に見極める必要があります。
ここからは、経営者として転職する際に失敗しないためのポイントを押さえていきましょう。
エグゼクティブ向けの転職サービスをフル活用しよう
役員クラスの人材を求めている事実を、競合他社など外部にできるだけ知られたくないと考える企業は少なくありません。
こうしたケースでは、企業はいわゆるエグゼクティブ向けの転職エージェントを活用し、社名非公開(非公開求人)で募集をかけるのが一般的です。
非公開求人の場合、転職エージェント各社に所属するキャリアアドバイザーがマッチングをすることもあれば、外部のヘッドハンターがどの案件を紹介するか判断していることもあるなど、各社によって対応はまちまちです。
そのため、一般的なスカウトサービスと比べても、「どの求人を紹介してもらえるかは、その時々のタイミングによる」ところが大きいと言えます。
特定の転職サービス1社のみに登録していると、実は同じ時期に他社のエージェントで良い案件があった、といった事態になりかねません。
エグゼクティブ向けの転職サービスだからこそ、最低でも2〜3社に登録して網を張っておくほうが望ましいでしょう。
doda X
年収800万円以上の非公開求人を、ヘッドハンターが紹介&強力サポート
doda Xは、「キャリアに戦略を。」をキーワードにハイクラス人材に向けた支援をするヘッドハンティング型の転職サービスです。
doda Xに登録すると、ヘッドハンターがあなたの経歴と希望に合わせて厳選スカウト求人を提案してくれます。
紹介される求人の多くは、年収800万円以上の企業経営戦略や事業戦略に直結する重要なポジションのものが殆ど。
今よりさらに活躍できるフィールドで働きたい人にマッチしやすいサービスでしょう。
doda Xに在籍するヘッドハンターは約8,000名(2024年8月時点)。レジュメ(職歴書)の効果的な見せ方や面接対策などの転職サポートもしっかりサポートしてくれます。
doda Xの活用メリット
doda Xはヘッドハンターのサポートを受ける「ヘッドハンティングサービス」と、自分で求人を探して応募する「求人紹介サービス」の両方を利用できます。
ヘッドハンターからの提案をメインとする「じっくり、待ちのスタイル」で転職活動をしたい方はヘッドハンティングサービスを、積極的に求人を検索して企業にアプローチしていきたい方は求人紹介サービスを利用すると良いでしょう。
doda Xは幅広い職種の求人を扱っていますが、特に多いのがIT・通信、インターネット・広告・メディア、メーカー(機械・電気)です。
これらの業種でより責任あるポジションにチャレンジしたい人におすすめです。
JACリクルートメント
紹介される求人と、キャリア相談の品質が高い
JACリクルートメントは年収600万円以上のミドル・ハイクラス向け転職エージェントです。
要職ポジションへの求人が多く、一つひとつの求人の質も高めです。
JACリクルートメントの特徴として、転職支援をするコンサルタントの「ベテランの割合が高い」点が挙げられます。
他の人材会社からいわゆる引き抜きされることが多く、そのため豊富な転職支援実績を持ったキャリアコンサルタントが担当に付きやすいのです。
そのため、JACリクルートメントのサービスを利用した人たちからは「キャリア面談やキャリアの棚卸しをじっくりしてくれた」「急かさず、こちらのペースに合わせてくれた」といった好意的な感想が多く見られます。
JACリクルートメントの活用メリット
JACリクルートメントを活用するメリットとして筆頭に挙げられるのが「ハイクラス向け求人の充実度」です。とくに年収600万円以上など好条件の求人を多数保有していることから、ハイクラス人材を求める企業と転職者のマッチングを得意としているのです。
高年収帯の求人や、重要ポジションを募集する求人を探している人にとって、登録を検討する有力な理由となるはずです。
JACリクルートメントは両面型サポートのため、コンサルタントが企業の採用担当者が直接コンタクトを取り、企業の情報や就業条件についてヒアリングを実施しています。
つまり、転職者に伝えられる企業情報はコンサルタント自身が収集した一次情報なのです。
このため、企業担当と人材担当の間で情報が分断されてしまう心配がなく、精度が高く確実な情報を得ることが可能です。
ビズリーチ
優秀なヘッドハンターと良質な企業からスカウトが届きやすい
ビズリーチは主にハイキャリア人材を対象とした転職サービスです。
一般的にハイキャリア転職サービスは求人数が少なくなりがちですが、ビズリーチは近年求人数が増えており、首都圏はもちろんのこと地方での転職においても非常に豊富な求人を確認できます。
「ハイクラス転職サービスにはどんな求人があるのだろう?」「自分の場合、どのような企業からスカウトが届くのか?」といったことを知っておくだけでも、今後のキャリアプランを考える上で十分参考になるはずです。
現在の年収が500万円以上で、ゆくゆく転職を検討する可能性のある方であれば、登録する価値が十分にあるサービスといえるでしょう。
ビズリーチの活用メリット
ビズリーチの登録者に届くスカウトには、企業からの直接スカウトとヘッドハンターによるスカウトの2種類があります。
紹介される求人は経営管理(管理職・役員)やプロジェクト管理、専門職といった事業の上流工程を支える重要なポジションのものが多いです。
カバーしている業種も幅広いため各業界の最前線で活躍するポジションへの転職が期待できます。
紹介される会社は大企業だけでなく、中小の優良企業の求人も扱っています。
また、独自に「BizReach創業者ファンド」を創設するなど、スタートアップ企業の支援も積極的に行っていることから、スタートアップ企業やベンチャー企業への転職支援にも強いのが特徴です。
リクルートダイレクトスカウト
実績豊富なヘッドハンターを転職者が選んで、提案を受けられる
リクルートダイレクトスカウトは、転職大手「リクルート」が運営するヘッドハンティング型の転職サイトです。
年収600万円以上のミドル・ハイクラス層を対象とした求人を紹介しており、企業やヘッドハンターからの直接スカウトも多いです。
リクルートダイレクトスカウトの活用メリット
リクルートダイレクトスカウトでは「転職者がヘッドハンターを選べる」ことが大きな特徴です。
自分が希望する業種・職種に関する知識が豊富か、優れた転職支援実績があるか、といった点を見極めるために、ヘッドハンターのプロフィールを閲覧できます。
優秀なヘッドハンターを見つけたら、転職者のほうからヘッドハンターを選んで求人紹介を依頼できるのです。
また、ヘッドハンターは複数名を同時に指名することも可能です。
入念な企業研究・業界調査をしておこう
転職サービスの活用を通じて収集しておきたい情報として、企業情報や業界情報があります。スカウトを受けて転職を検討する場合も、入念な企業研究や業界調査を行い、しっかりと見極めた上で決断に踏み切ることが大切です。
企業研究においては、一緒に働くことになる役員や代表者の考え方や方針をよく確認し、うまくやっていけそうな人物かどうかを判断しましょう。
この時点で何らかの違和感を覚えたり、「どことなくしっくりこない」といった感覚があったりするようであれば、そもそも企業カルチャーにマッチしていない可能性があります。
また、業界調査においては、ここ数年間の競合他社の状況や業界全体が置かれた状況について確認しておくべきでしょう。とくにベンチャー企業を取り巻く環境は変化が激しく、半年前のデータが現在も通用するとは限りません。
競合他社の撤退や廃業といった不穏な動きがなかったか、今後伸びていくことが見込める業態であるかどうか、といったことも含めて情報収集をしておくことが重要です。
企業研究 見るべきポイント
企業研究をする際に、優先して見るべきポイントは以下の通りです。
チェック項目 | 確認ポイント | どこで確認するか |
---|---|---|
事業内容 | 自分自身の知識領域にあるか、また今後も興味・関心を持ち続けられる内容かを確認する | 企業HP |
主力商品・サービス | その商品・サービスの開発・運用を自身が携わることになる際に、どの範囲まで知っていて、どの範囲を知らないかを確認する | 企業HP、業界ニュース、四季報、業界地図、競合他社のHPなど |
強み・独自性 | 同業他社をいくつか確認し、「この会社ならではの特色・強み」がどこにあるかを見出す | |
企業理念 | 企業理念から、求められる人物像(主にスタンス面)をイメージし、自身との適合性を確認する | |
社風・雰囲気 | 歓迎される人物像や業務への取り組み姿勢をイメージする | インタビュー記事、口コミサイトなど |
求められる知識・スキル | 現在の自身の知識・スキルと照らし合わせて、過不足を確認する | 企業HP、求人票など |
こうしたリサーチを重ねた結果、「この企業で働いてみたい」「こういった文化の会社なら馴染めそうだ」といった手応えを得られれば、入社後のミスマッチを軽減する効果が期待できます。
今回の転職がうまくいかなかったときのことも考えておく
役員クラスの人材募集においてマッチングに成功するかどうかは、タイミングによるところも非常に大きいのが実情です。
自身のキャリアや実力にかかわらず、今回のタイミングでは偶然にもマッチングがうまくいかなかった、といったこともあり得るわけです。
とくに初めて役員として就任する人は、並々ならない覚悟をもって転職に踏み切る場合もあるでしょう。
覚悟をもってのぞむのは大切なことですが、「ここでダメならもう後がない」といった背水の陣のような覚悟の決め方はあまり好ましくありません。
役員として転職することに成功したとしても、企業との相性、他の役員との相性、企業が置かれた市場の状況など、さまざまな要因でうまくいかないこともあり得ます。
不本意な結果に終わったとしても、次のキャリアを見据えて立て直していけるだけのプランを考えておくことも必要なのです。
役員は従業員と比べると身分保障がほとんどなく、いつ解任されてもおかしくない立場にあります。転職後の安定を期待するのではなく、先を見据えて長期的な視点でキャリアを設計しておくことが大切です。
「役員になりたい」よりも「この企業で働きたい」気持ちを大切に
私の周囲で転職した人たちで、役員・経営陣としての実績を持ちながら、役員ではなく社員として新しい職場に転職された人が何人かいます。
全員とも今もその職場で精力的に働いており、何人かは役員への昇格を果たしました。
たしかに、転職で「いきなり役員」を目指すよりも「まずは社員で」という姿勢で転職したほうが、転職者も企業側も肩の力を抜いて接しやすいのかもしれません。
また、「ポジションを下げてでも入社したい」想いがある場合、採用企業からも良い印象を与えやすいのでしょう。
転職で何を一番大切にするかはその人の自由ですが、もし「この会社で働きたい」という企業がある場合は、「役員・経営者としての転職」とどちらを優先させるべきかを検討したうえで活動に臨むことをおすすめします。
まとめ)役員・CxOに転職するなら「アンラーン」する覚悟を持とう
企業経営は予測不能な事態に見舞われることの連続です。役員クラスとして転職するのであれば、ほとんど独立起業に近い感覚で動く覚悟を持つことが求められます。
管理職として経験してきたことが活かせないわけではありませんが、より本質的に自身の能力やバイタリティが試される場面が増えることは必至だからです。
これまでの実績や成功体験に囚われず、むしろそれらを一旦アンラーン(学んできたことをリセットする)ができるかどうかがカギとなります。
積み上げてきたものを一旦リセットできるかどうか——?
これを自身に問いかけた上で、役員やCxOを目指すべきかどうか再検討してみましょう。