「私たちは、なんのために働くか」を200人に聞いてみた。あなたにとって仕事とは?
[最終更新日]2024/07/21
「自分は、なんのために働くのか?」「自分にとって仕事とは何か?」という問いは、働いている人であれば幾度となく自問自答してきたはずであり、同時に根源的な問いでもあります。
高度経済成長期に代表されるように、働くことで暮らしが豊かになり、世の中も発展していくという実感を持つことができた時代であれば、働く理由に悩むことも少なかったかもしれません。
目次
1)「何のために働くか?」 一番多かった理由は、「現在の生活を維持するため」
今回、社会人経験3年以上の方200名を対象に、「あなたの仕事の目的は?何のために働きますか?」というアンケートを実施しました。(調査期間:2019年5月22日~5月31日 調査方法:自社Webアンケート・集計による)
今まさに社会人として歩み始めている方々が、どのような目的を持って働いているのか、リアルな本音の部分を聞いてみたというわけです。
ビジネス書籍などを見ると、仕事に対する意識の持ち方やモチベーションアップについて説いているものは少なくありません。しかし、働くのは賃金を得て生活するためでもあるはずです。
そこで、「世の中の役に立てるため」「やりがいを求めて」といったポジティブな項目だけでなく、「生活を維持するため」「家族を養っていくため」といった現実的な項目も設け、皆さんの本音を聞いてみました。
その回答結果が、下のグラフです。
アンケート結果【全体】
社会人歴3年以上の方「あなたにとっての仕事の目的は?何のために働きますか?」
全体の4分の1以上を占め、最も多かった回答は「現在の生活を維持するため」でした。次いで、「家族を養っていくため」が全体の5分の1強を占めるという結果になっています。
「夢や目標を叶えるため」「有意義な時間・人生のため」といった項目を選んだ人ももちろんいますが、全体としては生活のため・生きていくためといった理由を挙げる人が半数近くを占める結果になりました。
当面の暮らしを維持することを重視している人が少なくない実態が見えてきます。
この結果を、「そりゃそうだろう」と思うでしょうか、「意外だ」と感じるでしょうか。
アンケート結果【男女別】
社会人歴3年以上の方へ「あなたにとっての仕事の目的は?何のために働きますか?」
次に、結果を男女別に見てみます。
男性で最も多かった回答は「現在の生活を維持」で、実に35%近くの人がこの項目を選んでいます。
一方で、「夢や目標」「世の中の役に立つ」といったことを働く理由に挙げている人の割合が、「有意義な時間」や「趣味・余暇」を上回っている点は注目に値します。
働くことを通じて社会や他者に貢献したいという気持ちで働いている人が一定数いることがうかがえます。
女性の場合、最も多かったのは「家族を養っていくため」、次いで「現在の生活を維持」となりました。
共働きの夫婦や家族の介護といった事情を抱えている人もいるはずで、家計を支える上で女性の力が大きいことが分かります。
また、「有意義な人生」「将来・老後の蓄え」などは女性のほうが高い割合となっており、将来的な人生設計を女性のほうが慎重に考えるケースが多いようです。
アンケート結果【年代別】
社会人歴3年以上の方へ「あなたにとっての仕事の目的は?何のために働きますか?」
年代別に見ると、最も多い回答は20・50代が「現在の生活を維持」、30・40代が「家族を養っていくため」となっています。
「家族を養っていくため」に20・50代で差が認められることから、20代は独身の方の割合が高く、「現在の生活」の指すものが若い世代は「自分自身の暮らし」、上の世代ほど「家族の生活」となっていると考えられます。
また、「夢や目標を叶える」「世の中の役に立てる」といった項目は、20代と50代が他の世代よりも高い割合となっています。社会経験を積むに従って、自分のために働くだけでなく、誰かの役に立ちたいという思いが強くなっていくのかもしれません。
2)全年代で、「仕事にやりがいとか、考えている余裕はない…」といった声は多い
アンケートの結果から見えてきたのは、当面の生活を維持するために働いている人が少なくない現実です。日々の仕事に追われる中で、「やりがいや夢について考えている余裕は正直なところない」という人も多いのかもしれません。
それぞれの世代の方々が働く中で、どのようなことを実感しているのか、実際のところを聞いてみました。もしかしたら、「自分と同じだ」「似たようなことを考えたことがある」と思う部分があるかもしれません。
- 20代
女性 -
私にとって仕事は、端的に言えば「お金を稼ぐためのもの」ですね。
お金がなければ生活をしていけないので、それを稼ぐために仕方なく仕事をしているのが現実。
仕事へのやりがいを求めてなどは特にありません。
- 30代
男性 -
仕事は、日々の生活のためにやるものだと思っています。
生活していくためにはお金が絶対に必要ですから。仕事へのやりがいはあったに越したことはありませんが、絶対必要ではありません。
逆に仕事へのやりがいはあっても、貰えるお金が少なければ、生活がままならなくなってしまいます。
お二人とも「生活のため」というのが働く第一の目的とのこと。
たしかに、生活日諸々をはじめとする暮らしを回していくための資金がなければ、生きていくことができなくなってしまいます。お金を稼いで生きていくため、というのは、働く理由として優先度が高いことに異論はない人も多いはずです。
一方で、30代男性が「仕事へのやりがいはあったに越したことはない」と言っているように、暮らしていけるだけの収入が確保できたとして、その上でやりがいを感じることができたら、と考えている人もいるようです。
- 40代
男性 -
特に仕事に仕事へのやりがいを求めたりしていません。
生きていくためには仕事をするしかありませんし、稼いだお金を自分の趣味のために使うというモチベーションのために頑張っています。
その結果として誰かの役に立てたり社会に貢献できるのなら嬉しいことだと思っています。
- 40代
女性 -
仕事は、生活費等必要なお金を稼ぐためにやっています。
若い頃は仕事で自己実現したいとか自分を成長させたいと思っていましたが、年齢を経るに従って、生活をしていくにあたって必要なお金を稼ぐための手段と思うようになりました。
仕事を通じて「誰かの役に立てたら」といった思いを抱いていた時期があった人でも、年齢を重ねるにつれて経済的な責任が増すケースも多く、「稼ぐための手段」と捉える人が増えていく傾向があるようです。
きれいごとではなく、地に足をつけて暮らしていくことが第一、と考える人が年齢ととともに増えていくのでしょう。
3)一方で、仕事の目的に「やりがい」や「楽しみ」を一番に見出す人も
仕事をする目的の1つが、生活資金を稼ぎ暮らしていくためであることは間違いないでしょう。ただ、一方で「稼げるけれども全くやりがいのない仕事」「誰かの役に立っていると実感できない仕事」を続けるのはつらい面もあります。
年齢に関係なく、仕事をする目的として「やりがい」や「楽しみ」を見出している人が一定数いるのもたしかです。
- 20代
女性 -
お金を稼ぐのは生活のためですが、私が仕事をしているのは「誰かのために役に立つこと」を行っていくためです。
医療職に従事しています。
自分の仕事によって助かる人がいたり、自分の笑顔で喜んでくれる人がいるということで仕事へのやりがいを感じ、それが生き甲斐にもなっています。
- 30代
男性 -
仕事は、「世の中の役に立てるため」にやりたいですね。
人のためになっていない仕事も世の中にはたくさんありますが、自分の中で「仕事をする意味」や「仕事の定義」を考えたときに、「誰かのために自分の能力を奉仕して、お金を得る」ということが一番大切かなと考えました。
生活のために仕事をしながらも、誰かの役に立っていることを実感したり、世の中に貢献できているという自信につながったりすることが、生き甲斐へと結びついているとのこと。
注目すべきは「収入など、どうでもいい」と言っているわけではない点です。生活の糧を得ることの重要性を理解した上で、仕事へのやりがいや社会貢献も同じぐらい重視しているようです。
- 40代
女性 -
私にとって仕事は、自分の人生の価値を高めるためであり、スキルアップで自分の得意なことを増やすためのものですね。
現在はイラストレーターのお仕事をしています。
正直、お金にはあまりなりませんが、それ以上に仕事へのやりがいを求めてますし、自分がずっとあこがれていた職業に就けたので今は毎日が充実しています。
- 40代
男性 -
収入は最低限あればよい。そこから先は、「社会に貢献できること」を目的とします。
以前は自身の出世欲や経済的余裕を前提としていましたが、年齢とともに価値観が変化して最近では仕事内容そのものに社会的な意義を優先しながら働くという部分に焦点を当てて考え方を変えたのが背景になります。
自身のスキルアップにつながる仕事に携わることや、社会的意義を感じられる仕事をすることに喜びを感じる人もいます。
いま携わっている仕事が将来的にどのように結実していくのだろうか?と長い目で見たとき、「いま現在の暮らしを維持しなくては」といった感覚に囚われ続けるのではなく、もう一歩踏み出しておきたいと考え始めるのかもしれません。
もちろん生活していくための最低限の収入は誰にとっても必要ですが、その上で充実感をもって働けるかどうかを重視している人もいることはたしかです。
4)「3人のレンガ職人」の逸話から、現代の私たちの働き方について考える
働く人々の生の声をご紹介してきましたが、働く上で重視したいことは人それぞれであり、「これが正解」という決定的なものはありません。
しかし、目の前の状況はともかく「本当はこう働けたらいいとは思う」「お金に困らないなら、もっとこうしたいという思いはある」といった理想像のようなものは、誰しも持っているのではないでしょうか。
最後に、働く理由は人それぞれであることを風刺した「3人のレンガ職人」という逸話をご紹介します。
あるところに、3人のレンガ職人がいました。3人とも、レンガを1つ1つ積み上げるという仕事内容には違いがありませんでした。いつものようにレンガを積んでいるところへ、1人の旅人が通りかかりました。旅人は、3人のレンガ職人にそれぞれ話しかけてみました。
1人目のレンガ職人は、疲れ切った表情でレンガを積み続けています。
「レンガを積むのが私の仕事だ。なぜこんなことをしなくてはならないのだろう。まったく、毎日同じことのくり返しで嫌になってくる」
「あなたはなぜ、そんな辛い仕事を続けているのですか?」と、旅人はたずねました。
「決まっているだろう、これが私の仕事だからだ。他に理由なんてないよ」2人目のレンガ職人は、レンガを積むことを楽しんでいるように見えました。
「何年もこの仕事を続けているうちに、うまく積めるようになってきた」
「でも、レンガは重いし、大変そうな仕事ですね。辛くはないですか?」と旅人はたずねました。
「そんなことはない。この仕事を続けてきたおかげで職人として認められるようになって、家族を養うことができている。こうして生活できているのだから、不満なんてないさ」3人目のレンガ職人は、目を輝かせながらレンガを積み続けていました。
「なぜレンガを積んでいると思う?いま作っているちょうどこの部分が、大聖堂の外壁になるのさ。」
「そうですか。大聖堂と言うと大きな建物でしょう? 大変そうですね」と旅人は声をかけました。
「それより、このスケールの大きさを見ろ。誰も見たことがないような、立派な聖堂になるぞ。私は歴史的な建造物を手掛けた職人の1人となる。素晴らしいだろう?」旅人は、再び旅路につきました。振り返ると、あのレンガ職人たちが仕事を続けています。こうして見ると、やはり3人とも全く同じようにレンガを積む仕事をしているのでした。
出典元:イソップ寓話「3人のレンガ職人」
一番幸せな働き方をしているのは、3人のレンガ職人のうちだれ?
3人のレンガ職人のうち、自分自身が最も近いと感じたのは何人目の職人だったでしょうか。また、自分の中で理想としている働き方は、どの職人に近かったでしょうか。
この逸話は、どの職人に働き方が素晴らしいといった正解を示すものではありません。たとえば、3人の職人が働いている目的という観点で見たとき、次のような見方ができるでしょう。
- 1人目の職人:仕事をやらされている
- 2人目の職人:生活のために働いている
- 3人目の職人:ビジョンを持って仕事をしている
ただし、この見方だけが正しいわけではありません。少し視点を変えてみると、次のように見ることもできます。
- 1人目の職人:不満を含めて自分の感情に正直に生きている
- 2人目の職人:今やるべき仕事に集中している
- 3人目の職人:やや誇大妄想で地に足が付いていない
生活のために働くのが間違っているわけでも、やりがいや社会貢献を目的に働くことだけが正しいわけでもありません。重要なのは、働くことに対して自分なりの意義を見出せること、手応えを感じられることなのかもしれません。
まとめ)人生の多くの時間を費やす仕事。どのように働きたいですか?
今回、社会人3年目以上の方々を対象に行ったアンケートでは、生活を維持したり家族を養ったりするために働いている、と答えた方がたくさんいらっしゃいました。
一方で、夢や目標を叶えたい、有意義な時間を過ごしたいといった考えを持って働いている人も一定数いることが分かりました。
どの人にとっても、1日の大半を仕事に費やすことに変わりはありません。
言い換えれば、人生のうちの多くの時間を仕事のために費やしていくことになります。
先々、「働いてきて良かった」と思えるよう、後悔のない日々を過ごしていきたいものです。
さまざまな年代の方々がどのような考えを持って働いているのかをご紹介したこの記事が、ときおり立ち止まって考えてみるきっかけになれば幸いです。