プレイヤーとマネジャーどちらを目指す?役割の違いと向いている人
[最終更新日]2024/07/21
社会人として一定の経験を積んでいくと、今後のキャリアについて方向性を考えるべき時期が訪れることがあります。プレイヤーであり続けるべきか、マネジャーの道を歩むべきかという選択は、その代表的な例といえるでしょう。
今回は、プレイヤーとマネジャーのどちらのキャリアを目指すべきか、それぞれの役割の違いや向いている人の特徴について解説します。
目次
1)プレイヤーとマネジャーの違い
はじめに、プレイヤーとマネジャーの違いについて、仕事の特性や担うべき役割を整理しておきます。
一般的にプレイヤーとして成果を挙げた人は、マネジャーへと昇進するか、更に専門領域のスペシャリストとして活躍するかのいずれかになることが多いです。
そして、両者の役割は以下のように大きく異なります。
プレイヤー(スペシャリスト) | マネジャー |
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整える対象の違い
プレイヤー(スペシャリスト)は自身が業務を遂行するために必要な環境を整えますが、マネジャーは部下が業務を遂行するための環境を整えます。
自分のためではなく人のために環境を整えるという意味で、マネジャーは想像力がいっそう求められるポジションです。
実務担当者の違い
プレイヤー(スペシャリスト)が担当するのは、自分に割り当てられた実務です。
一方、マネジャーは部下に業務を指示・提供する点が大きく異なります。自分自身がこなせるかどうかではなく、一人ひとりの部下の能力や適性に応じて全体を指揮します。
管理する対象の違い
プレイヤー(スペシャリスト)が管理するのは、基本的に自身の業務に関するスケジュールや成果のみです。
一方、マネジャーは部下が遂行する業務の進捗や成果を管理する必要があります。部下の動きを把握し、先手を打って指示を出していくことが求められます。
評価基準の違い
プレイヤー(スペシャリスト)の評価は自身の成果・成長に応じて決定されますが、マネジャーの場合は部署やチーム全体の成果・成長が評価対象となります。
マネジャー自身が一人のプレイヤーとして挙げた成果によって評価されるわけではない点に注意が必要です。
プレイヤー(スペシャリスト)が向いている人と、マネジャーが向いている人
プレイヤー(スペシャリスト)とマネジャー、それぞれどんな人が向いているのでしょうか。
職種または企業によって必要なスキルや適性は異なりますので、「確実にこうだ」とまで断定することは難しいでしょう。ですが、多くの環境においては以下が当てはまると思います。
プレイヤー(スペシャリスト)が向いている人
- その領域で「第一線に居続けること」・「第一人者になること」に、情熱を掲げられる人
マネジャーが向いている人
- 「人を教育すること」・「人の強みを引き出すこと」に、情熱を掲げられる人
プレイヤー(スペシャリスト)が向いている人とは、その領域で「第一線に居続けること」・「第一人者になること」に、情熱を掲げられる人。言い換えれば、パフォーマンス・成果、そして知識・スキルの向上に強い関心を常に持てる人です。
一方のマネジャーが向いている人とは、「人を教育すること」・「人の強みを引き出すこと」に、情熱を掲げられる人です。組織・チームで大きな成果を上げるマネジャーは、大抵この特性があるといいます(※)。
もちろん、上に挙げた性質が現在見られなかったからといって、そのキャリアを目指すべきではないということではありません。
未来の自分は、大きく変わるものです。
転職や部署異動で「これだ」と思える領域を新たに見つけられることもあるでしょうし、「この人を育てたい」と感じる人に出会えることもあるでしょう。
また、現在プレイヤーとマネジャーとでキャリアの方向性を悩んでいる人は、上のそれぞれの向いている人の特性を見て、「どちらがより自分が望む将来像に近いか」で判断するのも良いと思います。
※ 特性の傾向については、以下書籍を参考にしています。
2)プレイヤーとマネジャー、それぞれのメリット・デメリットは?
プレイヤーとしてスペシャリストを目指すのも、マネジャーを目指すのもキャリアの選択としてはどちらもあり得ます。一方で、それぞれのポジションにはメリット・デメリットの両面があることを理解しておくことが重要です。
プレイヤー(スペシャリスト)のメリットとデメリット
プレイヤーのメリット
プレイヤーは自身が取り組んできた仕事の成果をはっきりと可視化できます。営業職であれば契約数や売上高、クリエイティブ職であれば成果物といったように、「私はこれだけの仕事をしてきた」と明示しやすいことがプレイヤーのメリットといえるでしょう。
業務の目的は「自分自身が成果を挙げること」であり、成果は自身の行動によってコントロールできます。したがって、成果を挙げるために何をすべきかを明確にしやすく、個人的な行動目標に向けて日々の業務を進めることができるのです。
さらに、担当業務に関する知識・スキルを培いやすいこと、どのような知識・スキルが身についたかを実感しやすいのもプレイヤーとして働く上でのメリットです。
このように業務に対して負う責任が自身に限定されているため、仕事の成果も自身に跳ね返ってくるのがプレイヤーの特徴といえます。
プレイヤーのデメリット・注意点
自身の担当業務を追究し、深められることはプレイヤーのメリットですが、同時にデメリットにもなり得ます。
なぜなら、業務範囲が専門領域に特化されるということは、今後のキャリアパスを選択する上で制約となるリスクも孕んでいるからです。
たとえば、ITエンジニアとしてスペシャリストを目指していく場合、後発の優秀な若手人材にそのポジションを奪われる、または培ってきた開発経験や業務知識が技術の進歩によって陳腐化してしまうなどのリスクがあります。
もし特定の分野における開発しか経験していない場合、その分野が時代の流れに淘汰されるようなことがあればキャリアの選択肢が極端に狭くなることもあり得ます。
一方で、PLやPMといったマネジメントに関わるポジションは、開発環境や開発言語が変化しても必要人材として扱われる可能性が高いでしょう。
仮に自身が携わってきた分野が開発の主流ではなくなったとしても、マネジメント能力は汎用スキルとして活かせるからです。
特定の分野でスペシャリストを目指すことには、こうしたリスクも伴うことを理解しておく必要があります。
プレイヤー(スペシャリスト)のメリット | プレイヤーのデメリット |
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マネジャーのメリットとデメリット
マネジャーのメリット
マネジャーと一口に言っても、統括する事業規模やマネジメント人数は多種多様です。
キャリアを重ねていくことによって、より大規模なマネジメントに携わるチャンスが得られることもあるでしょう。
マネジャーとして活躍できた際はキャリアアップや収入アップにも繋がりやすいです。
また、マネジメント能力は分野や業界を問わず必要とされるスキルです。
特定の業務に限らず通用するポータブルスキルを培うことで、将来的に活躍の場を広げられる可能性があるのです。
実際、事業統括や取締役といったポジションには、過去にマネジャーとして優れた実績を挙げてきた人材が起用されるのが一般的です。
ゆくゆく転職や起業といったキャリアパスを検討する余地があるなら、マネジャーとして培ってきた経験が活かせる可能性は十分にあります。
汎用的なスキルが身につくことは、マネジャーの大きなメリットです。
マネジャーのデメリット・注意点
マネジャーは自分以外の業務を管理し、成果を挙げていく必要があることから、活動の結果・成果がすぐには表れないことも多いのが実情です。
部下が成長するまでには期間を要するため、マネジャーの能力が十分に高くても今すぐに成果が出るとは限りません。
また、マネジャーになると自ら実務に携わる機会は減ることから、専門分野に特化した知識・スキルを培うことに集中しにくくなるはずです。
いわゆるゼネラリストタイプの中間管理職が重宝されていた時代とは異なり、昨今はマネジャーにも一定の専門性が求められる傾向があります。
自身の知識・スキルが古くなっていくことで、優れた知見を持つプレイヤーを統括できなくなっていく恐れもあるのです。
こうしたリスクはプレイングマネジャーであれば回避できる場合もあります。
ただし、プレイヤーとマネジャーを兼任すれば業務量が肥大化しやすくなるでしょう。
ワークライフバランスも意識した上で、マネジャーへのキャリアとその働き方を検討しておく必要があります。
マネジャーのメリット | マネジャーのデメリット・注意点 |
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3)20代・30代・40代の「プレイヤー・マネジャー」キャリアの方向性の考え方
プレイヤーとマネジャーのどちらを目指すべきかを考える際、年代によって重視しておきたいポイントは異なります。
そこで、続いては各年代においてキャリアの方向性を考える上で重要なポイントを確認しておきましょう。
20代のキャリアの方向性の考え方
20代は「実務経験を積み、プレイヤーとしての実績を築いていく時期」といえます。
将来的にマネジャーに着任した際は、自身の経験が部下を指導・育成していくための判断基準となるでしょう。また、スペシャリストを目指す場合は、20代にどれだけその領域で経験を積めたかが重要になります。
もし若いうちからマネジメント経験を積みたいのであれば、チームリーダーや主任といった実務が主体のポジションからチャレンジしていくことをおすすめします。自身も実務を兼任することで、メンバーと目線を合わせて経験値を高めていくことができるはずです。
マネジメントに「正解」はありません。10人のマネジャーがいれば10通りのマネジメントの手法があるように、チームを統率していくスタイルは人それぞれです。自身が実務を通じて体得してきたプレイヤーとしての経験が、その土台となるでしょう。
一方、スペシャリストとしてのキャリアパスを検討している人、または「マネジャーとプレイヤーのどちらに進むか、今はまだわからない」という人は現在の環境で得られる知識・スキルについて感度を高めておくとよいでしょう。
経験値の高まりは、キャリアの選択肢の広がりに繋げられるからです。
また、20代はたとえ今マネジャーへの志向がなかったとしても、30代以降から目指すにも十分間に合う時期です。
30代のキャリアの方向性の考え方
30代に入ると、プレイヤーとマネジャーのどちらのキャリアを歩むべきか迷いが生じる人が増える傾向があります。今後のキャリアの展望と自身の適性をバランスよく考慮しつつ、方向性を定めていく必要があるでしょう。
キャリアの方向性を決めかねるようなら、擬似的なマネジメント体験を通じて自身の適性を確認しておくことをおすすめします。たとえば、下記のような経験を通じてマネジャーとしての適性をチェックすることが可能です。
- 後輩社員のOJT
- 新入社員の教育・指導
- チームリーダー・プロジェクトリーダー
- 上長の補佐
とくに直属の上司は身近なロールモデルとなりますので、プレイヤーである自身の考え方と上長の考え方の差異に着目してみましょう。
上長の指示や方針の背景を考え、全体を見る習慣を身につけていくことでマネジャーとしての基礎を築くことに繋がります。
その上で、前章で紹介したプレイヤー・マネジャーそれぞれのメリットとデメリットを天秤にかけ、自身の適性に合ったキャリアを選択するのがおすすめです。
40代のキャリアの方向性の考え方
社会人経験が豊かなものとなった40代は、一般的にはマネジャーへのキャリアを歩む人が増える時期です。
キャリアの裾野を広げておく意味ではマネジャーのキャリアは有効な場合もありますが、一方で「名ばかり管理職」にならないよう注意する必要があります。
あえてプレイヤーとしてスキルを高め続けていく道を選び、スペシャリストを目指すのもキャリアの選択肢の1つです。
また、ライフステージの面から見た場合、40代は社会的な成功と自身の幸福感のバランスを考慮し始める時期でもあるでしょう。
培ってきた知識・経験を最大限に生かしつつ、より幸せな働き方ができそうな道を選ぶことが大切です。
どのようなキャリアを歩みたいか(WANT)の先には、どのような人生を望んでいるか(WILL)があるはずです。
自身のWILLを改めて見つめ直し、プレイヤーとマネジャーのどちらを選ぶのかを大きな視点で捉えて判断することをおすすめします。
50代のキャリアの方向性の考え方
50代に入ると、年収アップを実現するキャリアの選択は徐々に難しくなっていきます。
しかし、子どもの独立や住宅ローンの完済といったライフステージの変化に伴い、自身の生き方により特化した選択がしやすくなる時期でもあるはずです。
一般的なキャリア観に囚われず、たとえば「若い頃は忙しくて実現できなかったことに挑戦する」「働き方だけでなく、暮らし方にもこだわってみる」といった選択をするのも1つの考え方でしょう。あるいは、これまでのキャリアで培ってきた知見を生かして後進の育成に携わるのもおすすめです。
近年では、豊かな業務経験を持つ人材をフリーランスの顧問として迎え入れる企業も増えています。
40代までの延長線上として50代以降のキャリアを捉えるのでなく、今後の生き方や働き方を定義し直す時期と考えておくと新たな可能性が見えてくるはずです。
まとめ)プレイヤー・マネジャーのキャリアは「適性・志向」の両面で判断を
プレイヤーとマネジャー。どちらのキャリアを選ぶかは「究極の選択」のようにも思えるかもしれません。
しかし、少し距離を取って考えてみると「どちらが向いているか」という適性の面だけでなく、「自分はどんな働き方・生き方をしたいのか」という志向の問題でもあることが分かります。
年代ごとにポイントは少しずつ異なるものの、適性と志向の両面からキャリアを検討する必要がある点は共通です。
今回の記事を参考に、プレイヤーとマネジャーのどちらが自身のキャリア観や人生観にフィットするか、今いちどじっくりと考えてみてはいかがでしょうか。