介護職員の「高齢の利用者とのコミュニケーションが難しい」悩みへの対策3つ
[最終更新日]2024/08/16
介護の仕事で高齢者の方とうまくコミュニケーションが取れず、苦労することってありますよね。利用者に怒られてしまったり、悲しまれてしまったりすると、働いている私たちも辛い気持ちになるものです。
「高齢者の方とのコミュニケーションが不安…」
「もっとうまく会話し、仕事をスムーズに進めたい」
「どうしてコミュニケーションがうまくいかないか、要因を教えて!」
本記事では、介護職員の方々のそんな悩みに応えていきます。
目次
1)介護職員が高齢者の方とのコミュニケーションが難しくなる時
介護職員が高齢の利用者とコミュニケーションが円滑に進まないシチュエーションは、主に以下の3つがあります。
これらに利用者の方々の性格や行動特性が加わり、コミュニケーションの難易度が増すことが多いです。
#1 入浴や食事などのアクション前
「入浴」「食事」「排泄」など、日常生活で必要な何かしらのアクションを起こす前は利用者とのコミュニケーションが難しくなりがちです。具体的には「拒否」などが起こります。
そして、そのように難しくなってしまう理由は、利用者が嫌がることが何かしらあるからです。
例えば入浴を嫌がる利用者がいた場合、「衣服の着脱が面倒」「人に身体を見られるのが恥ずかしい」など、様々な要因が絡み合って拒否という行動に繋がることがあります。
こうした日常生活関連の介助は、ひとつの滞りがあると次の仕事も遅れが出てしまうケースが多いです。逆に言うと、上手なミュニケーションを取ることで、業務効率の改善に繋がることも多いです。
#2 相手が機嫌を損ねているとき
どの場面でも利用者が一度機嫌を損ねてしまうと、コミュニケーション滞りがちです。機嫌をどう直せばいいのか、判断に迷ったことのある方も多いのではないでしょうか?
これは主に高齢による精神状態の変化が影響して起こると考えられており、「あの人は頑固でわがままだから…」と決めつけるべきではありません。ほかにも、認知症の影響による反応であることもあります。
もちろん、頑固な性格が要因であることもありますが、「孤立感」「衰えによる不安」「死への恐怖感」といった高齢者特有の感情が起因となっているケースが多いことを介護職員は知っておく必要があります。
#3 認知症の方とコミュニケーションをとるとき
認知症の進行が原因で、コミュニケーションが円滑に進まないケースは多く見られます。
最も割合の多いアルツハイマー型認知症では、「物忘れ」「判断能力の低下」「場所や時間感覚の迷い」などが症状として表れます。
認知症が進んでいる方とのコミュニケーションで大切なことは、相手の方の症状を知ることです。
症状が進み言葉を発するのが難しい場合でも、表情や身振り手振りを観察するなどで、コミュニケーションを取ることは可能です。
そのためには、利用者の方に寄り添う気持ちとそのための行動が求められます。
2)高齢者の心理状況を知る
ここからは、具体的な高齢者の心理状況を知るべく、エリクソンの発達心理学を解説します。
エリクソンの発達心理学では、人生を「乳児期」「青年期」など8つの時期に分け、それぞれの時期で役目や課題が異なることを説いています。
エリクソンの発達心理学における老年期の心理
60歳以降の老年期には、年齢と環境の変化から2つの絶望といいます。
- 社会からの孤立からくる絶望
- 病気、身体の衰えからくる絶望
筆者も以前老人ホームで働いていた時、「私なんてどうせ独りだし、死んだ方が良いのよ」が口癖になっている女性利用者を担当したことがあります。
こうした慢性的なうつ状態は、上に挙げた2つの絶望が影響していることが多いです。
また、不安感が拭えずにいることから、精神的に不安定になったり、攻撃的になったりする利用者の方もいました。
一方でその方は、一人になったとたん寂しそうな様子を見せることも多かったです。
認知症の方の心理
認知症においては、主に2つの症状が見られます。
1つが中核症状というものです。これはアルツハイマーなどによって脳細胞が破壊され、もともと脳が担っていた正常な働きができなくなって起こる症状のことです。
もう1つが周辺症状というものになります。これは中核症状によって二次的に引き起こされる症状のことであり、別名を「行動・心理症状」と言います。例としてよく挙げられるのが、徘徊などです。
認知症の方が突然怒ったり、不安そうな発言をしたり、無関心な様子を見せるのも、この周辺症状が原因だといわれています。
こうした症状を知っておかないと、介護職員が利用者の方が望むコミュニケーションを取ることは非常に難しいでしょう。
まずは「これらの不安定な行動は認知症の症状が原因だ」ということを認識し、「どうコミュニケーションを取ればお互い安心できるかな?」という前向きな姿勢でいることが大切です。
3)高齢の利用者とのコミュニケーションを円滑に行うための対策3つ
#1 まずは相手の言葉を傾聴する
不安感から生じる「攻撃性」が見られる利用者の方には、とにかく真剣に聞く「傾聴」が大切です。
高齢者の持つ孤独感や不安感を払しょくするには、何よりも私は味方という気持ちを伝えることです。しっかりと話を聞き、共感の姿勢を見せるように心がけましょう。
おすすめは、「相槌・復唱・質問」を意識することです。
「そうですよね…。物忘れが酷いと辛いですよね…。他にも辛いこととかは無かったですか?」という風に話しかけ、繰り返していきます。
その際は、利用者の方から「一緒に悩みを乗り越えようとしてくれている」と伝わるようにコミュニケーションを取ることが大切です。
傾聴のポイント
ポイント | 説明 |
---|---|
相手を尊重し、理解しようとして話を聴く | 傾聴の目的は、「相手をより深く理解すること」です。「相手のことはわかっている」という固定観念をなくし、相手がまだ気づいていない本心や無意識の感情にまで耳を傾けます。 |
頷きや相槌、表情で、対話を促進する | 頷きや相槌、表情を使って相手に関心を示すことで、相手が話しやすい雰囲気を作ります。これにより、相手は自分の話がしっかり聴かれていると感じ、対話がスムーズに進みます。 |
適宜確認や要約を入れ、話を整理する手助けをする | 相手の話の要点を確認し、要約することで、話の内容を整理する手助けをします。相手は自分の話が理解されていると感じ、また、自身の考え・想いをより明確にしていけます。 |
#2 落ち着いた声でゆっくりと話す
高齢になると、高音域の音が聞きづらくなったり、早口の会話に付いていけなくなったりすることが多くなります。
できるだけ落ち着いて、ゆっくりと話すように心がけることが大切です。
こちらから情報を伝える際は、わかりやすく一文を短めに区切って伝えるとよいでしょう。
また、ときに介護職員であるあなたの状況についても、正直に伝えるようにしてください。
たとえば、他の仕事が重なり忙しい時は、「すみません、忙しいから、少しだけ待っていてください」と伝えることで、大抵の利用者の方は待ってくれます。
#3 表情やボディランゲージを活用する
人は会話の内容よりも、「表情」「ボディランゲージ(身振り手振りなど)」から相手の感情を読み取ることが多いといいます。
そのため、表情は可能な限り笑顔で接し、会話が楽しいということが伝わるようにボディランゲージも活用するとよいでしょう。
筆者は過去に、やや性格が頑固な利用者の方に対して苦手意識を持ってしまったことがあります。
コミュニケーションを取る際は互いに強張った表情でしたので、結果として感情の「負の連鎖」が起きやすく、入浴拒否や無視をされてしまいました。
その後、同僚から私の表情・態度について指摘を受けて、それから笑顔を作るように努めたところ、あるとき利用者の方からも笑顔を返してくれたのです。その後はこれまでの苦労が嘘であったかのように、スムーズな介助ができました。
まとめ)高齢者の心理を理解し、円滑なコミュニケーションを
高齢になると様々な不安から、コミュニケーションが円滑にいかないケースが多くなります。
その際は、傾聴の姿勢、表情やボディランゲージなど、「相手を理解しようとする前向きな姿勢」を意識することで、利用者の方々の不安を軽減していくことができます。
相手を理解し、サポートすることができれば、介助もより円滑に進むはずです。
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