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認知症の方との接し方が不安な介護士へ|現場で役立つ3つのコミュニケーション法

[最終更新日]2026/04/18

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介護のお仕事で「認知症の方とのコミュニケーション」で不安を感じたら

介護士として働く際に、避けては通れないのが認知症の方とのコミュニケーションです。スムーズに会話できず、もどかしい気持ちになった人も多いでしょう。

認知症の方とのコミュニケーションが難しい…
どうすればスムーズなコミュニケーションが取れるの…?
具体的なコミュニケーションの対策を知りたい…

本記事では、こうした悩みへの対策をお伝えしていきます。

この記事でわかること(早見表)

  • 認知症の中核症状と周辺症状の違い
    → 中核症状は記憶障害・見当識障害など脳細胞疾患由来の症状。周辺症状は中核症状が原因で生じる「不安・攻撃・徘徊」などの行動面の変化。介護で接するのは主に周辺症状
  • 「すぐ忘れる」への対応:根気強く繰り返す
    → 認知症は最大15秒前の記憶を失うことも。利用者にとって毎回が「初めての状況」。感情記憶は残るため、穏やかな対応を繰り返すことが信頼構築の基本
  • 「帰宅願望」への対応:感情に寄り添ってから気分転換
    → 帰りたい気持ちの背景には切実な目的がある。真っ向から制止すると興奮・攻撃につながりやすい。「そうでしたか」と共感してから好きなものを提示して気持ちを切り替える
  • 否定しない・共感する姿勢が重要な理由
    → 認知症の方は記憶を失っても感情は残る。否定は自尊心を傷つけ周辺症状を悪化させるリスク。共感することで穏やかな感情状態を保ちやすくなり、長期的な信頼関係が生まれる
  • 完璧を目指さないケアの考え方
    → 認知症の症状は個人差が大きくマニュアル通りにはいかない。「昨日より少しよい対応」の積み重ねが重要。介護日記で自分なりのケアの引き出しを増やしていくことが長続きする介護の基本

目次

1)まずは、認知症についての理解を深めておく

介護士として、認知症への理解を深めておくことはとても大切です。
その理由は、認知症の症状を知れば、利用者の言動の意味が理解でき、困ることが減るからです。

突飛な発言や攻撃的な言動、不安を繰り返し訴えるような様子は、その多くが認知症による症状の一種と考えられています。

それらを正しく理解していないと、1つ1つの行動があなたを困惑させてしまい、精神的な負担も感じやすくなってしまうでしょう。

まずは、「認知症とは、どういう状態・症状なのか」について見ていきましょう。

認知症とは

認知症は、脳細胞の疾患により、行動や心理に影響が出る状態をいいます。
認知症と聞いて「物忘れのこと」と捉える人もいますが、物忘れは認知症によって発生する症状の一つに過ぎません。

また、認知症は大きく分けて2つの症状が発生するということが分かっています。1つは「中核症状」で、もう1つは「周辺症状」と言われるものです(下図参照)。

周辺症状。中核症状。

中核症状とは、記憶障害・見当識障害(時間&空間感覚の鈍り)・遂行機能障害(段取りがわからない)・失語,失行,失認という4つの症状のことを言い、脳細胞の疾患により発生します。

周辺症状とは、中核症状が原因となって現れる心理・行動面の変化で、「無関心」「不安」「焦燥」「イライラ」「興奮」「攻撃」「過食」「徘徊」「不眠」などが挙げられます。

つまり、私たちが認知症の方々と接するときに確認できる症状とは「周辺症状」であり、その原因・背景には「中核症状」があるということです。

引用元:【はじめての方へ】認知症の症状から予防・対応方法まで – LIFULL 介護(ライフル介護)

「認知症」と「物忘れ」の違いを知っておく

認知症についてよく聞かれるのが、「認知症と物忘れは何が違うの?」という質問です。

認知症と物忘れは似通った部分が多いですが、大きく異なるのは物事をそっくりそのまま忘れてしまうかどうかです。

認知症と物忘れの違い

物忘れ 認知症
要因 加齢(老化)など 認知機能の疾患
記憶 一部を忘れる 全てを忘れる
時間や場所 何となくわかる 全くわからない
自覚 忘れていると自覚 忘れていることすらわからない
症状の進行度 ゆっくりと進行 急激に進行することも
生活への影響 大きく影響しない 支障が出ることが多い

代表的な認知症

認知症の種類は大きく3つあり、主な違いは発症要因です。

アルツハイマー型認知症(アルツハイマー病) 脳に特殊なたんぱく質が混じることで発症する認知症です(諸説あり)。

認知症の半数以上を占めると言われており、主な症状としては「物忘れ・時間や空間認知能力の低下・遂行機能障害」などが強く発症します。これらの症状が出るのには個人差があり、未だに完治するための治療方法は分かっていません。
レビー小体型認知症 アルツハイマー型認知症の次に多いのがレビー小体型認知症です。

アルツハイマーとほぼ同じ症状が発生しますが、特徴的なのは「パーキンソン病」や「幻覚・幻視」が発生し易いというところです。こちらも完治のための治療法は不明です。
脳血管性認知症 脳梗塞やクモ膜下出血などの「脳卒中」によって発生します。

事故などによって発生するケースも多く、脳の損傷によるマヒや言語障害も発生しやすいです。リハビリによって改善するケースもあるため、別名「治る認知症」とも呼ばれています。

2)認知症ケアの現場で困らないためのコミュニケーション注意点

認知症の方への対応時の注意点 ●「すぐに忘れてしまう」とき…根気強い対応が大切 ●「活動意欲が著しく低下してしまう」とき… 「あなたを必要としています」という態度を示す ●「徘徊・帰宅願望」があるとき…その行動の背後に強い想いがあることを知っておく

ここからは、認知症の方への対応やコミュニケーションにおける注意点を、3つの症状に分けて解説していきます。

「自分ならどう対応するだろう?」と考えながら、読み進めてみてください。

「すぐに忘れてしまう」ときの注意点と対策

認知症による「記憶障害」が原因で引き起こされる物忘れは、コミュニケーションを難しくします。

数分前にご飯を食べたのに忘れてしまう」「どうして施設に来たのか忘れてしまう」「何度も会っている職員を覚えられない」など、ケアが必要な諸言動が多々発生するからです。

認知症は、脳の機能により最大で15秒前の記憶を忘れてしまうとも言われており、私もよく「あなた誰?」と忘れられてしまうことがありました。

職員は分かっているのに、利用者はわかっていない…という状況は対応が難しく、時に精神的な負担に繋がってしまう可能性もあります。あくまで「認知症だから」という意識を持ち、根気強く何度も対応することが大切です。

「活動意欲が著しく低下してしまう」ときの注意点と対策

「抑うつ」と言われる活動意欲の低下も、認知症によってたびたび発症します。

「自分は認知症なんだ…」というショックで自信を失ってしまう事が、抑うつの大きな発症理由だと言われています。私もある認知症の女性から「もう死にたい」と言われたことがあり、当時はかなりショックを受けました。

こうした抑うつ状態が見られたときは、「あなたを必要としていますよ」という態度を示すことが大切です。
また、気分が落ち込まないように、仕事やレクリエーションの機会などを積極的に持たせることが有効といわれています。

抑うつによって入浴や食事など日常生活で必要なことをしたくなくなる方もいるため、継続的に寄り添う姿勢を持ちながら対応していきましょう。

「徘徊・帰宅願望」があるときの注意点と対策

自分はどうしてここにいるのか?」など、認知症による見当識障害(空間理解の衰え)から、徘徊や帰宅願望といった言動が見られることもあります。

筆者も以前、施設に来たばかりの利用者から「今日は帰ります」と言われ、戸惑ったことがあります。

徘徊や帰宅願望には利用者なりの目的が必ずあります。例えば、30歳の母親だった時代に意識が向かっていて「娘にお弁当を作らなくては」と考えているのかもしれません。

こうした記憶の混在中は、利用者にとって目的が切実である場合が多いです。
そのため、無理に説得しようとすると攻撃的になったり、感情的になったりするケースも多々あります。

ポイントは、まずは「その強い想いがあることを、認める」ことです。
私たち人間は、自身の認知によってしか世の中を受けとめることができません。利用者の方が訴える事柄が事実に反しているかどうかではなく、「今、とても気になっていることがあるのだ」という想いの方に目を向けることが大切です。

3)現場で使える!認知症の方との会話をスムーズにする3つの方法

認知症の方とのコミュニケーションを円滑に行うための対策 ●否定しない ●「好きなこと」で穏やかな気持ちになってもらう ●完ぺきを目指さない

ここからは認知症の方への対応・コミュニケーション対策で、とくに大切となる3点を解説します。

否定しない

認知症の方は、記憶障害によって別の時間・空間を認知していることが多々あります。
例えば、「20年前にサラリーマンとして仕事をしていた頃の自分になる」などのケースです。

これに対し、「違うよ。今は介護施設にいるんでしょ」と真っ向から否定をするのは、相手の自尊心を傷つけてしまうなどのリスクがあります。

求められるのは、否定をせず、共感するという姿勢です。
ときに「そうでしたか、今は仕事の時間なんですね!」と共感し、相手の世界観を感じ取ろうと働きかけることが大切です。

また、認知症の方は記憶を失っても、感情による「好き・嫌い」は残るという研究データもあります。

そのため、常に共感して楽しく会話することができれば、今後ずっと利用者に好かれ、円滑に仕事を進めることにも繋がります。

「好きなこと」で穏やかな気持ちになってもらう

認知症の方は、「今日は帰ります」「入浴はしたくない」などの突発的な言動をすることもあります。

その際の対応として効果的な方法のひとつに、「好きなことを提示する」があります。

例えば「今日は帰ります」と言われた場合、「もう帰る時間でしたか!…あ、ですがその前に、美味しいミカンを貰ったので、最後帰る前に食べていきませんか?」と促すなどです。

このように、好きなこと・ものを示すことで、現在苦しんでいた感情が上書きされて、穏やかな気持ちになっていただけることは多いです。

先ほどお伝えしたように、認知症の方の「好き・嫌い」などの感情は持続することが多いです。
「好き」の感情を持てる時間をより多く持っていただけた方が、(認知症の方だけでなく)介護をする私たちも、より有意義な時間を感じやすくなるはずです。

完ぺきを目指さない

最後に、介護士であるあなた自身が完ぺきを求めないことです。

認知症の症状は、発症要因やその人の性格・人生経験によって複雑に変化します。
それら対応を完ぺきにこなすのは、ベテランの介護士であってもとても難しいものです。

大切なことは、一歩一歩の積み重ねです。
昨日できたことよりも、少し良いケアができたのならそれは大きな成長です。幾多の経験から自分なりの介護マニュアルを厚くしていき、その中でより良いと思う対応を選択していくことが、認知症の方への介護士の最も基本的な取り組みといえるでしょう。

具体的な方法としては、毎日介護日記などをつけるなどがあります。
利用者の方々は、あなたが完ぺきな対応をするかはそれほど重視していません。それよりも、あなたとの関係がより良いものになること、「昨日よりも今日の方が一緒にいて心地よい」と思ってもらえることが大切です。

【まとめ】認知症のコミュニケーションでは「適切な距離感」が大切

認知症には多数の症状があり、それらは同時にかつ複雑に発生することがあります。そのため、臨機応変な対応が求められます。

ポイントは、「否定しない」「好きなことを提示すること」「完ぺきを目指さないこと」です。これら3点を実践しながら、少しずつ相手の方との距離感を調整していくことが大切です。

「もっとこうすればよかったかもしれない」と過ぎたことを考えるよりも、「こうしたらもっとよくなるかも」とこれからに目を向けた方がうまく行くことも多いです。

あなた自身がポジティブな関心を持って、利用者の方と接していくことを意識して、コミュニケーションを取り続けていきましょう。

FAQ|認知症ケアでよくある質問

FAQ

Q1)認知症の方が同じことを何度も忘れるときの対応方法は?

認知症による記憶障害では最大で15秒前の出来事を忘れてしまうこともあるといわれており、何度も同じことを聞かれたり繰り返し不満を訴えたりする場面は介護現場でよく起こります。こうしたとき最も大切なのは「また同じことを言っている」と感じるのではなく、利用者の方にとってはその都度「初めての状況」であることを理解し、根気強く同じ対応を繰り返すことです。

認知症では記憶は消えても感情は残るという研究データがあります。穏やかで誠実な対応を続けることで、利用者に「安心できる介護士」として認識してもらいやすくなります。「何度言っても忘れる」という視点から「毎回初めて接する」という視点に切り替えることが、介護士自身のストレス軽減にもつながります。

実践として対応したことを簡単にメモする習慣をつけると、自分の対応パターンを振り返ることができます。毎日の記録を積み重ねることで「昨日より少し良い対応ができた」という実感が生まれ、介護の質向上につながります。

Q2)認知症の方が「帰りたい」と強く訴えるときはどうすればよいですか?

帰宅願望や徘徊は、認知症による見当識障害(空間感覚の低下)が引き起こす症状の一つです。利用者の方が「帰りたい」と感じるとき、その背景には「娘にお弁当を作らないと」「仕事に行かなければ」など本人にとって切実な目的があることがほとんどです。

そのため「帰れません」と真っ向から制止すると感情的になったり攻撃的な反応を示す場合があります。まず「それは大変でしたね」と気持ちを認めて共感してから、好きな食べ物や楽しいことを提示して気持ちを切り替えていただく手法が有効です。無理に説得しようとするよりも感情面への働きかけを優先することが、帰宅願望への対応で最も重要なポイントです。

具体的には「帰る前に美味しいものを食べていきませんか?」と好きな食べ物を提示する方法が実践的です。施設で好みの食べ物や趣味をあらかじめ把握しておくと、こうした場面で即座に対応できます。

Q3)認知症の方の発言を「否定してはいけない」のはなぜですか?

認知症の方は記憶障害により、現在ではなく過去の時間・空間を認知していることがあります。例えば「20年前のサラリーマン時代の自分」として話しかけてくることもあります。このとき「違います、今は施設にいます」と否定することは、相手の自尊心を傷つけ不安や興奮といった周辺症状を悪化させるリスクがあります。

一方「そうなんですね!」と共感し相手の世界観に寄り添う対応をとると、穏やかな感情状態を保ちやすくなります。研究では認知症の方も「好き・嫌い」の感情記憶は残ることが示されており、日々の関わり方が利用者との長期的な信頼関係に大きく影響します。

共感する際の言葉例として「そうでしたか!仕事のお話、もう少し聞かせてください」のように相手の世界に入り込む姿勢が効果的です。否定せず共感することを習慣にすることで利用者との関係が良好になり、介護業務全体が円滑に進むようになります。

Q4)認知症と物忘れの違いは何ですか?

最大の違いは「記憶の消え方」と「自覚の有無」です。加齢による物忘れは出来事の一部を忘れる(例:昨日の夕食のメニューは忘れたが夕食を食べたこと自体は覚えている)のに対し、認知症では出来事全体をそっくり忘れてしまいます(例:夕食を食べたこと自体を覚えていない)。

また物忘れのある人は「忘れた」という自覚がありますが、認知症の方は忘れていること自体に気づきません。時間・場所の感覚についても物忘れなら何となく把握できますが認知症では全くわからなくなることがあります。症状の進行速度も異なり、物忘れは緩やかに進むのに対し認知症は急激に進行するケースもある点が対応上の重要な違いです。

これらの違いを理解しておくことで、利用者の言動に対してより冷静に対応できるようになります。「認知症の方は忘れているのではなく認識している現実が違う」という視点を持つことで、適切な共感と対応につながります。

Q5)認知症ケアで「完璧を目指さない」とはどういう意味ですか?

認知症の症状は発症要因(アルツハイマー型・レビー小体型・脳血管性など)や本人の性格・人生経験によって千差万別です。同じ症状名でも個人によって全く異なる言動が見られるため、マニュアル通りの対応では対処しきれない場面が必ずあります。ベテランの介護士でも完璧に対応するのは難しいのが現実です。

大切なのは「昨日よりも少し良い対応ができた」という積み重ねの意識です。完璧を目指して失敗するたびに落ち込むよりも一歩一歩の成長を認めながら前進することが、介護士として長く活躍し続けるための重要な姿勢です。利用者が「あなたといると安心できる」と感じてもらえることこそが、完璧な技術以上に価値ある成果です。

実践として介護日記などをつけ自分なりのケアの引き出しを増やしていくことをおすすめします。うまくいった対応もうまくいかなかった対応も記録することで、自分だけの介護マニュアルが育っていきます。

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