MBA(経営学修士)で学べることは?取得するメリットから進め方・キャリアの活かし方を紹介
[最終更新日]2024/07/21
MBA(経営学修士)を取得するためにビジネススクール(経営大学院)を探してみたものの、どのような基準で学校を選んだら良いかわからないという方は多いと思います。
そもそも通学のためには資金と時間もかかるため、通うべきかどうか悩んでいるという方もいるのではないでしょうか。
MBAを学べる大学院は国内外に複数存在し、学校によって特色は異なります。
まずはMBAをなぜ取得したいのかという目的を明確にすることと、実際に通えるのかという現実的な目線で検討する必要があります。
目次
1)MBA(経営学修士)とは
経営学修士(Master of Business Administration:MBA)とは、ビジネススクールで経営学を学んだ方が得られる学位のことです。
企業を経営するために必要な戦略的思考やファイナンスの知識、問題を発見し解決する思考法、企業倫理などを学んでいきます。
座学だけでなくディスカッションや演習を通して実際のビジネスの場で生かせる力を伸ばしていくカリキュラムになっています。
また、実際の企業の経営上の問題の解決策を考えるような、答えのない問いにチャレンジする課題が多いことも特徴です。テストで模範回答を提出するのとは違い、MBAでは想像力や創造力といったクリエイティブな思考も鍛えられます。
仕事の実務にすぐに生かせる知識が多く、学ぶことの楽しさを発見できる方は少なくありません。
MBAで学べること
一般的に起業経営に必要な資源として「ヒト・モノ・カネ」があげられます。
経営大学院ではこれらの資源をどのように生かして企業を存続させ、さらに成長させるのかということを学んでいきます。
「ヒト」とは組織や人事のことです。どのような組織にすれば効率的に業務が回っていくのか、どのような管理・評価制度が社員のモチベーションアップに繋がるのかといったことを学びます。
「モノ」とは製品やサービスのことです。世の中の人のニーズを理解し、どのような商品を作れば売れるのかを考えます。
「カネ」とは財務などのファイナンスの考え方のことです。人も物もお金がないと動きません。企業にとってのお金は人の体で例えると血液にあたります。
限られたお金をどのように回せば会社がうまく動いていくのか、お金はどこから集めてくるのかといったことを学んでいきます。
MBAのビジネススクール 海外と国内、フルタイム・パートタイムの違い
MBAを取得するためのビジネススクールには種類があります。
大きく分けて海外と国内、そしてフルタイムとパートタイムです。
参考:MBAビジネススクールの種類
海外MBA(フルタイム) | 国内MBA(フルタイム) | 国内MBA(パートタイム) | |
---|---|---|---|
受講形態 | 海外にて通常通学して受講 | 国内にて通常通学して受講 | 国内にて土日・夜間に通学して受講 |
国内にて土日・夜間に通学して受講 | 履修期間 | 1~2年 | 最短1~2年 |
学費総額イメージ | 学校によって大きく異なるが700万円~2,000万円程度 | 120万円~400万円 | 130万円~340万円 |
言語 | 主に英語 | 主に日本語 | 主に日本語 |
海外のMBAは学費と現地滞在費用の合計額が何千万円にもなることがあります。
さらに時間も費やしますので、相応の覚悟を必要とする自己投資といえるでしょう。
国内MBAの中でも日中に講義をするスタイルの場合、仕事をしながら通うことができないため、長期休業をして通うか、会社の制度を利用し業務の一環として通うという選択肢になります。
パートタイムのMBAの場合は、夜間や土日に講義をするので会社帰りのビジネスパーソンも通うことができます。
また、中にはオンラインで講義をするビジネススクールもあります。この場合、地方や海外からでも講義に参加できます。
海外MBAの場合は語学力の向上が期待できる、国内MBAのフルタイムの場合は絆の深い仲間ができる、パートタイムのMBAの場合は学んだことをすぐに実務に生かせるという長所があります。
2)MBAを取得することのメリットとデメリット
ビジネスパーソンとして生きていく上でMBAの学びで得られるメリットは大きいといえます。
しかし、ビジネススクールに通うにはそれなりに時間とお金を費やす必要があり、どうしても負担が大きくなるというデメリットもあります。
ここからはMBA取得を進める上で発生する具体的なメリットとデメリットを見ていきます。
MBAを取得することのメリット
- ビジネスの各分野に精通したジェネラリストになれる
- 人脈の幅を広げられる
- 海外スクールの場合、英語力を高められる
ビジネススクールで経営学を網羅的に学ぶことでビジネスのジェネラリストになれます。
客観的にみてもMBAを持っているということは「ビジネスの各分野に精通した高い知見を持っている人」という1つの証拠になります。
社内でプロジェクトのリーダーを選定する際に、MBAホルダーであればバランス感覚をもって判断できるだろうという信頼があるので、選ばれる理由の1つになることがあります。
また、具体的な事例として社内で様々な部署を統括する部署のリーダーとして任命されたときに、本来ならプレッシャーを感じるポジションではあるはずなのに、MBAの知識を得たことで取るべき行動に迷いがなく落ち着いて業務を進めることができたという方もいます。
ビジネススクールに通ったことで得られた最高の財産として、「人脈」をあげる方は多くいます。
ビジネススクールの中では同期生が様々な講義で顔を合わせます。難しい課題に共に切磋琢磨することで深い絆が生まれます。
ビジネススクールの在学中または卒業後に同期生が一緒になって新規事業を立ち上げる例は少なくありません。
海外のビジネススクールに通った場合は、日常生活はもちろん講義も全て英語です。
ビジネスで使えるレベルの流暢な英語も身に付くでしょう。海外MBAであれば経営学と語学力を同時に高めることができます。
英語が苦手な人が多い日本人が海外MBAを取得することでライバルと差をつけることができます。
MBAを取得することのデメリット・注意点
- 費用は相応にかかる
- 働きながらの通学・または休職等の手続きが必要
- 課題に追われプライベートの時間は削られる
MBAのデメリットとして最初にあげられる点が費用の高さです。
海外MBAの場合は学費だけで1,000万円以上 かかってしまう場合がありますし、国内MBAでも300万円前後の費用はかかってしまいます。
自己投資ではありますが、資金の回収の見込みがどの程度あるのかを想定して入学を判断する必要があります。
またパートタイムのビジネススクールの場合は、仕事との両立が必要になります。
仕事の後でも講義の時間に間に合うのか、間に合わない場合はビデオ講義等の受講はできるのかといったことを確認しておきましょう。
会社の任務ではない形でフルタイムのビジネススクールに通う場合は仕事を休業する必要があります。
また、退職してビジネススクールに通う場合は卒業後の進路をしっかりと考えておかなければいけません。卒業後にスムーズに仕事に戻れるような計画を立てておくことが大切です。
またMBA取得のためのカリキュラムはどこの学校に通った場合でも、易しいものではありません。
どのように手をつけたら良いか分からないような、難しい課題にも関わらずタイトな提出期限が設けられているのが通常です。
課題の提出時期が重なった場合には プライベートの時間を削っても足りず、睡眠時間を犠牲にするしかない場合もあります。
土日は課題にかかりきりの時期も発生するためMBA取得のためには家族の理解も必要だと覚えておきましょう。
3)MBAを取得して、実際何が変わった?取得者の体験談
ビジネススクールでは論理的思考力が身に付きます。
社内で新規事業を提案する際などにはMBAで培った思考法が役に立ちます。
他者が感情的な議論や根拠のない思いつきで意見をしている中で、MBAの知識を生かして理路整然とした提言をしたところ、なかなか進まなかった社内改革が動き出したという事例もあります。
また、キャリアアップの転職に成功し、新しい会社でMBAの知識を生かした新規事業提案を行ったところ、そのプロジェクトが採用されたという方もいます。その方は会社から何千万円もの予算を任され、自身が携わる仕事の規模が一気に膨らんだそうです。
MBA取得後に社内で責任あるポジションに昇格になり、ビジネススクールに支払った学費と同額以上の年収アップを果たした人もいます。
もちろんMBAはその名称だけでメリットを及ぼすものではありません。MBA取得のための努力の過程で思考・発言・行動が洗練されると、自ずと結果が伴うということです。
4)MBAの取得後の、キャリアの活かし方
MBA取得はあくまでも手段であり目的ではないという認識を持つことが大切です。
将来のキャリアプランにMBAで得られる知見がどのように役立つのかを分析しておきましょう。
MBA取得の道は先述の通り楽なものではありません。
普段の課題に追われているうちにいつの間にか卒業することが目的になってしまう人もいます。
また、目的意識が明確でないとモチベーションが続かず中退することになってしまうこともあるので卒業後のキャリアはしっかりと考えておきたいものです。
- 経営層へのキャリアアップ
- 外資系企業・コンサル系企業への転職
- 独立・起業
MBA取得の目的を経営層へのキャリアアップのためとしている方は多いでしょう。
中には経営管理部門へ異動になり経営学をしっかり学ぶ必要が出てきたためにビジネススクールに通うことにしたという方もいます。
経営層として組織を管理していくためには会社全体を俯瞰して見る必要があります。そのような際にMBAの知識は役立つでしょう。
また、外資系のコンサル系企業への転職を考えている方にとってもMBAの知識は役立ちます。
コンサルティング会社は企業の経営者から会社の状況をヒアリングし問題点を明確にした後に解決策を提示し実行支援をする仕事です。
コンサルティングの現場ではMBAの知識を生かしていくことができます。
独立・起業のためにMBAを取得する方も多くいます。
MBAのカリキュラムでは、市場調査→商品やサービスの立案→マーケティング・広報→セールスといったビジネスモデルの流れを学びます。自身でビジネスを興す際にはこのような考え方が不可欠です。
また行動が早い方の中には在学中にビジネスモデルを考えつき、早くも独立してしまう方がいます。周りにそのような方がいることで、良い影響を受け広い視野で自身の可能性を考えることができます。
5)MBA取得の流れ 準備するポイント
MBA取得の道のりは易しいものではありません。
もちろん入学試験に合格しなければスタートを切ることもできないことは言うまでもありません。
入学後は時間もお金も労力もかかるため、しっかりと卒業までの計画を立てておく必要があります。
また、ビジネススクールによって入学の時期は異なります。どれくらいの準備期間が必要で、いつの期に入学するのかを検討しておきましょう。
国内フルタイムのプログラムの場合
ビジネススクールに入学し卒業するまでの流れは一般的に以下の通りになります。
- 1.MBAを取得する動機の明確化
- 2.自分が学びたいカリキュラムがある学校を選択
- 3.入学願書及び必要書類の提出
- 4.書類選考及び面接試験などを受験
- 5.合格発表→入学
- 6.卒業後に知識を生かして行動する
また、フルタイムのプログラムの場合は、生活資金の確保も必要になります。
まずは今一度自分が何のためにMBAを取得したいのかを明確にしましょう。そして学びたいことが得られる学校を選ぶことが大切です。
入学願書提出の際は同時に推薦状が必要になる場合があります。
推薦状は同僚や上司などに書いてもらうとスムーズです。
面接試験の際にはその学校に入学したい理由を明確にしておきましょう。
入学の動機を明確にしておくと学校とのミスマッチを防げます。
せっかく入学したにも関わらず、卒業できずに中退する学生は少なくありません。そのようなことがないように自己マネジメントも大切です。また、卒業後に燃え尽きてしまう方もいます。
学びをすぐにビジネスの場で生かせるように目的意識をもって臨みましょう。
海外フルタイムのプログラムの場合
海外MBA取得の道のりは、国内MBAよりもさらに険しくなります。
- 1.MBAを取得する動機を明確にする
- 2.自分が学びたいカリキュラムがあり入学可能なレベルの学校を選ぶ
- 3.GMAT、TOEFLの試験対策をする
- 4.GMAT、TOEFL試験を受け合格ライン以上の点数を出す
- 5.入学願書及び必要書類(推薦状、GMAT、TOEFLの点数)の提出
- 6.エッセイなどの試験を提出
- 7.合格発表→入学
- 8.卒業後に知識を生かして行動する
海外MBAに通う際に「それまでの預貯金を全て費やして留学した」という方も少なくありません。投資した資金を早めに回収するつもりで卒業後のビジョンを明確にしておきましょう。
海外MBA取得のためにはGMATとTOEFLという英語試験が必要になります。
語学力を付けるために1年以上の時間が必要になる方も多いと思います。英語力は一夜漬けでは身につきませんので早めに学習をスタートしましょう。
希望する方の中で実際に海外MBA取得に動き出す日本人は一部に限られます。自分が望むキャリアに海外MBAが必要なのであれば、まずは動き出すことが大切です。
まとめ)キャリアビジョン実現の手段としてMBAがある
MBAを取得する過程でビジネスパーソンとしてのスキルや知識が身に付くことは事実です。
まずは自身のキャリアビジョンを明確にし、そのキャリアビジョンを実現するためにMBAの知識が必要なのであれば早速学校選びから進めていきましょう。
MBAの学びは資格試験のように暗記をするようなものではなく、議論や研究を通して思考を深めていく講義がほとんどです。
入学した際には単位を取ることばかりを目的とせず、好奇心や探究心を持って取り組むと得られるものは大きくなります。