転職体験談:デザイン事務所で、「身も心も捧げる働き方」をしていた私。
転職前
- 職業
- デザイン事務所
- 職種
- デザインおよび事務
- 従業員規模
- 10名
- 年収
- 240万円
転職後
- 職業
- デザイン事務所
- 職種
- デザイナー
- 従業員規模
- 100名
- 年収
- 300万円
目次
ramさんの転職ストーリー
1これまでの私
やりがいはある。だが、ブラック企業。
大学を卒業後、私は建築や内装を扱うデザイン事務所に勤めていました。
会社の規模は小さかったのですが、所長は界隈で「巨匠」と表現されることもあるような才能と実績のある方で、その人のもと私は半分修業のような感じで働いていました。
デザイン業務以外にも、お客さんとの接待、営業やメーカーとの打合せ、現場に足を運ぶことはもちろん、所長の広い人脈関係を維持・活用するためのスケジューリングや打ち合わせ・会食の設定等の、秘書的な仕事をすることもありました。
とても大変でしたが、やりがいを感じるときもあって、それは2年目になって先輩社員が数人辞めたこともあって、任されることも増えてきてからは特に感じるようになりました。
ただ、そのやりがい以外で言うと、そこは完全な「ブラック企業」でした。
2年経っても給料は初任給から変わらず、そして毎日が終電近くまでのサービス残業。
女性スタッフは私のほかに2人しかいませんでしたし、所長他古株の社員達は皆厳しく、パワハラまがいの指導になることもしょっちゅうありました。
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2転職のきっかけ
「ストイックさ」を自分に向けず、部下に要求する上司たち。
「仕事に慣れれば、きっともっと楽になる」
──ずっとそう思っていましたが、2年目、3年目と働いていくうちに状況はもっと苛酷になっていきました。
逆に多くの仕事を任されるようになり、抱える案件を3~4本並行して進める時期が続きました。
終電に間に合わず、近くに住んでいる友人の家に泊めてもらうという日もありました。
当時は2019年の末で、ちょうど新型コロナの感染流行のニュースが騒がれはじめていた頃です。
そんな折、所長はじめ上司たちが1ヵ月間の長期海外出張に行くことになって。
出張とは名目のみの、完全な慰安旅行でした。
新型コロナのこともありましたし、かつ仕事もかなり忙しい時期でしたので、さすがに(この時期に海外旅行なんて、ちょっとおかしいんじゃない?)と感じました。
社会人になって一社目の会社でしたし、これまで残業代が支払われなかったり明らかにキャパオーバーな業務を割り振られても、「会社勤めとは、こんなものだろう」と割り切って仕事に臨んでいましたが、このときようやく無意識下にあった「不信感」が、ニョキニョキと芽生え始めたのです。
そうしたらもう、その気持ちはどんどん大きくなっていきました。
海外旅行中の上司の都合(時差やネット環境)に合わせてのオンラインミーティングも、進行中の案件を伝書鳩のように伝えなくてはならないやりとりも、(この人たちは、私たちを使って自分が楽しようとしている)と感じるようになって。
所長も上司も、仕事や成果物に対する一切の妥協を示さない「ストイックさ」がありました。
でも、そのストイックさを自分の努力で賄うのではなく、社畜のように働く私たち若手社員に押し付けていたのです。
それに、私の体力も限界でした。
ある日、終電を乗り過ごしたホームで、ふらふらになりながら自販機で缶ジュースを買って、でも指に力が入らずプルタブが空けられなくて。
急に情けなさと悔しさがこみあげて、不覚にも涙がこぼれ落ちてしまいました。
そして、「もう、この会社は辞めよう」──と、決めました。
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3転職活動中
デザイン事務所を退職してからの、転職活動。
転職活動は、事務所を退職してから開始しました。
進行中の案件もありましたし、引継ぎも多くて、とても在職中に時間の余裕を持てなかったのです。
それから、転職活動と同時に私は引っ越しをして一人暮らしを始めました。
これまで郊外の実家から通っていましたが、距離があったので通勤が大変だったからです。
次の職場が決まるまで、約4ヵ月かかりました。
最初の2ケ月は引っ越しと環境に慣れるのに費やしてしまい、その後転職サイトを使って気になる求人に応募したりとしましたが、書類審査や面接で落とされることも多かったです。
結局、次の職場は大学時代にバイトでお世話になった、とある研究所に決まりました。
研究所の人たちとはデザイン事務所に就職してからもたまに近況報告を取り合っていて、私が「転職活動をしている」と話したところ、「ちょうど今人手が不足しているので、良かったら来ないか」と誘ってくれたのです。
前職とはまったく異なる業界でしたが、職場の環境もそこで働く人たちも知っていたので安心感があり、すぐに「ぜひお願いします」と連絡しました。
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4転職後
新しい職場で気づいた、新たな「やりがい」の形。
新しい職場は、比較的スムーズにスタートできました。
以前も働いていて、ある程度内情を分かっていたことが大きかったと思います。
それと、数年とはいえ前職で幅広く業務経験を積めていたことが意外に大きく役立ちました。
研究所の人たちは比較的年配の人が多く、コロナ禍の対策に向けて書類のデジタル化やテレワーク業務に勤しんでいて、「他の会社が取っていた対策を知りたい」と私の経験を重宝してくれたのです。
既に使っているツールがやや旧式なものだったので、「もっと最新の便利なソフトウェアを使うと良いかもしれない」と提案したところ、皆が大変興味深く聞いてくれて取り入れてくれました。
前職では小間使いのような働きばかりでしたので、入社間もない私の意見をこうして受け入れてくれることがとても嬉しかったですし、また前職とはまた違うやりがいを感じることができました。
あとは、残業時間や休日出勤が劇的に減って、ゆとりのある生活ができるようになったのも大きかったです。
前職のデザイン事務所では、取引先に外食産業が多かったこともあり、業務外や休日に急ぎの相談や依頼の連絡が来ることも多かったのです。
転職して3ヵ月経って、ようやくこれまでの働き方を振り返ることができて、前職でいかに心身ともに消耗していたかに気付くことができました。
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5その後、どうなったか。
転職を振り返って、今思うこと。そして、これから目指したいこと。
前職のデザイン事務所では、身も心も会社に捧げて働いていました。
もちろんその情熱やエネルギーはとっても大切なものだと思いますし、一生懸命できたことに悔いはありません。
ですが、それを続けていたら恐らく私は身体を崩してしまっていたでしょう。
退職する前の2年間は毎日の睡眠が4時間程度、更には毎日の満員電車に疲弊し、親に勧められて病院で診てもらったところ「過労」の診断を受けました。
そこですぐ辞めていれば良かったのでしょうが、当時は睡眠時間の短さや上司のパワハラによる恐怖心が、正しい判断を鈍らせていたと思います。
今の職場は、前職のような「身も心も捧げよう」という思い入れはありません。
ですが、それで良いと思っています。
無理のない範囲で、一緒に働く人と自分自身を大切にしながら仕事をしたいと思っていますが、それが長く働くうえでの大前提だと思っています。
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これから先も、現在の職場で引き続き頑張っていこうと思っています。
ですが、「デザインをやりたい」という気持ちも未だあり、色々考えた末に「副業フリーランス」としてデザイナーの仕事も始めることにしました。
現在ところはまだクラウドソーシングのサービスを登録したのみですが、手始めに簡単なデザイン業務を受け持っていこうと考えています。
私が今までやっていたデザインは、内装デザインや看板デザインといったものが多かったのですが、フリーランス向けに紹介されている案件は圧倒的にWEB系のものが多く、そのために学ばなくてはいけない知識・スキルもあります。
ですが、「学ぶことがある」ということは、「自分の働き方を変えていくことができる」ことにも繋がるものだと、そう思えている自分がいます。
前職で様々な業務経験したからこそ今の私の働き方がありますし、またより良い働き方を目指していくうえでは、きっと更に新しい経験が求められるのではないでしょうか。
少しずつでも、「自分が望む働き方」を実現できるように、頑張っていきたいです。
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