「地位や年収へのコンプレックスはある？」約8割が「ある」と回答｜みんなの意見

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「現在の年収や肩書、地位に対しての劣等感やコンプレックスはありますか」というアンケートでは、「ある」と答えた人は全体の83％、「ない」と答えた人は17％でした（2024年11月）。

年代別・男女別で見たときには若い世代および男性のほうで「ある」と答える割合が高まっています（※上記「年代別」グラフ参照）。

また、このアンケートは2017年から実施しているのですが、「ある」と答える人の割合が年々少しずつ増加傾向にあります。
（2017年時点では、ある：68％　ない：32％）

仕事の年収や地位へのコンプレックスが「ある」と答えた人の傾向

「年収や地位へのコンプレックスがある」と答えた人のコメントでは、「自分より能力低そうで年収多く貰っている人を見ると、嫌な気持ちになる」（30代 女性）、「奥さんの方が年収が良い」（20代 男性）、「年収が若い人たちよりかなり少ない」（40代 男性）といった、年収の少なさに関するコメントが多く見られました。

多くの人は、（恐らく無意識の場合も多いと思いますが）年収の多さは「その人の価値」という感覚が強いのかもしれません。

そのほか、「上司の役に立ててない気がする」（20代 女性）、「何のとりえもない」（20代 女性）といった自身のパフォーマンスや価値発揮に対してコンプレックスを持つ人の声も確認されました。

なかには「コンプレックスがあるからこそ、高みを目指そうと頑張れる」（30代 男性）という声もありましたが、これらコンプレックスに対してポジティブに捉えられている人はどちらかというと少数派のようです。

仕事の年収や地位へのコンプレックスは「ない」と答えた人の傾向

一方で「年収や地位へのコンプレックスがない」と答えた人のコメントは現在の状況をポジティブに捉えているものが多かったです。

「年収や地位などは気にせず、フリーランスで気楽にやっている」（40代 男性）、「持たないほうが幸せ」（30代 男性）、「コンプレックスはないです。自信家な方なので」（40代 男性）といったコメントでは、現在の年収や地位に関わらず「自身の気の持ちよう」でいるように見られます。

そのほか、「周りにそういうコンプレックス持った人が多くて、逆に萎えた」（30代 女性）といったコメントも観られました。

さて、ここで改めて「コンプレックス」という言葉の意味合いについて確認したいと思います。

日本では「コンプレックス」というと「劣等感」と同義で扱われることが多いですが、本来両者は別の意味を持ちます。

コンプレックス

怒りや悲しみなどの強い感情、体験、思考などが無意識的に結びついている状態のこと。

劣等感

自分が他者よりも劣っているという感情のこと。実際にどうなのかという事実ではなく、あくまでも感情の上での問題。

上のアンケートで言うと、「ある」と答えた人の殆どはコンプレックスというより「劣等感」のほうが当てはまるでしょう。
他者と比較して、己を無価値だと受けとめたり、自信がないと悩んだりするのは劣等感の顕れです。

劣等感は、「所属感の欠如」により起きやすい

なぜ、人は劣等感を持つのでしょうか。

その問いに対して、精神医学者カレン・ホーナイは「劣等感は所属感の欠如である」と指摘しています。

例えば、学校のクラスで他の全生徒が解ける問題が自分だけ解らなかった場合、辛かったり、悲しかったりするでしょう。この感情こそが「劣等感」であり、それは「自分だけが違う」という気持ちから発生する「所属感の欠如」があるから、ということです。

上のアンケートであった「若い世代と比べても（自分の）年収が低い」や「パートナーの年収は気にする」というコメントも、いわば「自分は違う（劣っている）」という感覚からの疎外感もあるでしょう。

ですが、この「所属感」とは、現実的なものではなくあくまで個々人の「認知」によって描かれるものです。
認知があるからこそ人は世の中をこういうものだと認識することができますが、その認知自体をあたかも普遍的な事実・真実として扱うようになるとその認知は歪みを生じやすくなります。

コンプレックス（劣等感）は誰しも持つものです。

現在の年収や地位、そのほか自身のスキルなどにコンプレックス・劣等感を持っていたとしても、「それを克服するために頑張ろう」と行動を起こせているのなら、その意識自体もその人にとって大切なものだと思います。

ですが、ストレスがどんどん溜まったり卑屈な考え方になるなど、普段日常の行動に支障が見られるようでしたら早いタイミングで改善への働きかけを模索すべきでしょう。

劣等感や所属感の欠如を軽減するために有効な手段は、「今の自分を承認すること（自己承認）」です。
つまり、「今の自分は何か欠落している・不足している」という考えに囚われることなく、ありのままの自分を肯定するということです。

一方で、この自己承認がなかなか難しいという人も多いと思います。
そこで、最後に自己承認の意識を育てていくための有効な思考法を２つ、お伝えします。

心理学者アドラーの「自己受容」の考え方

心理学者アドラーは、自らの著書で「自己受容」という言葉をよく使います。
自己受容とは、「ありのままの自分を受け入れること」。つまり、自己承認とほぼ同じ意味合いです。

そして、自己受容をするうえで大切なことは「他者貢献」と「他者信頼」であるといいます。

どういうことか、下の図を観てみましょう。

例えば身近な人（パートナーや家族、オフィスの同僚等）になにか助けになることをした場合（他者貢献）、「良いことをした」「役に立ってもらえた」という満足感を得られることが多いと思います（自己受容）。

そして、他者とのやり取りで得られたポジティブな感情は、自然とその他者への信頼関係にも関わり（他者信頼）、相手に対して更に貢献しようという気持ちを持ちやすくなります。

つまり、こうした「他者貢献」「自己受容」「他者信頼」のサイクルを意識することによって、自然と自己承認がされやすくなるということです。

上記のサイクルはどこからでも基点として始めることができますが、現在自己承認への難しさを感じている方は、まずは他者信頼や他者貢献から始めてみると良いでしょう。

たとえば「あなたよりも給与の高い同僚」や「厳しい評価をしてくる上司」は、本来同じ目的に向かって社会活動を行う仲間のはずです。

それら相手に対して信頼感や貢献意識を持つことは、巡り巡って自身の自己承認の高まりに寄与していける可能性があるのです。

「グロース・マインドセット」の考え方

前述の「自己受容」の考え方に今一つしっくりこなかったという方は、「グロース・マインドセット」の思考法がおすすめです。

グロース・マインドセットとは、その通り「これからの成長（growth）」を意識する思考です。
対義語にフィックスト・マインドセットとあり、こちらは「現状の状態・評価」を意識した思考をいいます。

コンプレックス・劣等感に悩まされる人は、フィックスト・マインドセットの状態であることが多いといいます。
逆にグロース・マインドセットの状態でいると、（たとえコンプレックス・劣等感があったとしても、それよりも）自身のこれからやありたい姿に向けてポジティブな感情で行動しやすくなります。

つまり、グロース・マインドセットへの意識を育てることによって、コンプレックス・劣等感のしがらみからも解放されやすくなるのです。

グロースマインドセットの育て方

グロースマインドセットの思考にしていく為には、まずはそれを「意識」することです。

常に「グロースマインドセットであろう」という意識を持ち続けること──これだけで人はグロースマインドセットに寄っていくと言われています。

「グロースマインドセットのイメージが持ちにくい」という方は、以下の3つのポイントを意識してみてください。

グロースマインドセットの言葉の「グロース（成長）」にあるように、大切なのは「成長すること」への意識です。

そして、人は本来「成長したい」という欲求を持っているものです。

「他者からの評価の目」や「失敗への恐れ」が、その自然な欲求を抑制する要因になっていないかを振り返りながら、「自分はこれから先、どんな成長をしていきたいか」に目を向けていくことによって、自然とグロースマインドセットは育まれていきます。

先にお伝えした通り、コンプレックス・劣等感は誰しもが持つものです。
その感情をプラスに向けているようでしたら、無理にコンプレックス・劣等感をなくそうとしなくてもよいと思います。

一方で、コンプレックス・劣等感を意識したときは、自然と視野が狭くなりがちです。
「なんでこうなんだろう」「もっとこうなればいいのに」と思っているその思考の外側には、無限の世界が広がっているはずです。

コンプレックス・劣等感に振り回されることなく、自己受容と世界の広がりへの希望を育んでいくことは、現代社会の生きづらさを解消していくための、ひとつの有効な取り組みでしょう。

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お時間のある時に、ぜひ読んでみてください。