【あの人、またマウント?】イライラせず華麗にかわす!マウンティング女子・男子への対処法
[最終更新日]2025/03/14

仕事でもプライベートでも、どうしても避けられないのが“マウンティング”してくる人との遭遇。
「また自慢話?」「なんだか上から目線…」とイラッとした経験はありませんか?
しかし、見方を少し変えるだけで、不快な気持ちを軽減するヒントが見つかるかもしれません。
目次
1)そもそも「マウント」って何?ざっくり解説

「マウントを取る」とは、コミュニケーションの場面で相手より優位に立っていることを示す、あるいは相手を見下すような態度を取る言動を総称する俗語です。
もともと「マウント」とは、柔術や総合格闘技(MMA)において、相手の上にまたがり、攻撃しやすい有利なポジションを取ることを指す用語です。
そこから転じて、「相手よりも優位に立つ」「上から目線で押さえ込む」といった意味合いが生まれ、インターネットやSNSを通じて広がりました。
2010年ごろから一般社会で「マウンティング」の表現が使われるように
インターネット掲示板やSNSなどで、2010年前後から「マウント」という言葉が「他人より優位に立とうとする行為」として用いられる例が徐々に増え始めました。
特に2014年頃、女性同士のマウンティングを描いたドラマ『ファーストクラス』が放映されると、一気に世間の注目を集めます。
さらに2016年から2017年頃にかけては、雑誌やWebメディアでも「マウントを取る」「マウンティング女子」といった表現が頻繁に取り上げられ、あっという間に定着しました。こうして現在では、日常会話やSNSでも一般的に使われる言葉となっています。
参考文献:PHP研究所『マウンティング女子の世界』(2015)
2)「なぜ人はマウントするのか?」マウンティングの主なタイプ
マウンティング行為は、日常のあらゆる場面に潜んでいます。上司が部下に威圧的な態度を取る、友人同士で「どちらがすごいか」を競い合う、SNS上での「映え」アピール…。こうした行動には、どんな心理が働いているのでしょうか?
マウンティングにはいくつかのタイプがあり、それぞれ異なる動機が潜んでいます。
本記事では、小説の中に登場する具体的なシーンを交えながら、代表的なマウンティングのパターンを解説していきます。
権威マウンティング

「てゆーか、神林くんてまじで彼女いないの? なんで? 特殊な趣味?」
「いやこいつ、ほんっと忙しいんだって。な? 洗濯もの、段ボールに詰めて実家に送ったりすんだぜ」
「田中くんに訊いてないよ、私はこの人に訊いてんの」
「うわ、なんだよすみれさーん、冷たいじゃん、今日ー」
「田中くん、ちょっとビールないから焼酎頼んで、ボトルでいいよ」
角田光代さんの代表作のひとつ、『愛がなんだ』のワンシーンです。
主要人物であるすみれについて、作者の角田さんは「今で言うマウンティング女のようなつもりで書いた」と述べています。
引用箇所では、すみれが神林や田中に対してぞんざいに指示を出したり、勝手に話を仕切ったりしています。
これは、「自分が中心で上の立場」というヒエラルキー意識を暗に示す典型例でしょう。相手を軽んじる言い回しや雑務の丸投げで、「あなたは私より下」というメッセージを発信しているわけです。
「権威マウンティング」とは、こうした地位や力関係、あるいは雰囲気だけで相手を支配しようとする行為を指します。
職場の上司や先輩が無意識に部下へ取るケースも多く、グループ内でのヒエラルキーを維持するために使われることがしばしばです。
なぜ、人は権威マウンティングに駆られるのか?
権威マウンティングをする人は、自分の優位性や重要性を確かめたいという欲求が強い傾向があります。
組織や集団の中で「自分が主導権を握っている」という安心感を得るために、周囲を見下すような態度を取るのです。また、内面に潜む劣等感を打ち消そうと、あえて横柄な言動に出る場合もあり、「自分が上だ」と思い込むことで不安を抑えているともいえます。
フロイト系の精神分析理論によれば、人は自分の弱さや認めたくない要素を他者に押し付けることで安心感を得ようと、「過剰補償」や「反動形成」といった防衛機制が働くことがあるといいます。
これは、「自分が下に見られたくない」「優位を保ちたい」という無意識の恐れから、自らを過剰に権威づけることで安心しようとする心理的働きです。
つまり、権威マウンティングを取る人は、実はその人自身が自分の弱点を直視できず、他者を下に置くことでしか安定を得られない心理構造の可能性があるのです。
参考文献:Anna Freud (1936). The Ego and the Mechanisms of Defence
セルフブーストマウンティング

「現代文学を信用しないというわけじゃないよ。ただ俺は祝祭的なものを好まないし、重大な時間を無駄に費やしたくないんだ。人生は短かい。」
「永沢さんはどんな作家が好きですか?」と僕は訊ねてみた。
「ベルザック、ダテ、ジョセフ・コンラッド」
「あまり今日性のない作家とは言えないですね」
「だから読むのさ。他人と同じものを読んでいたら他人と同じ考え方しかできなくなる。そんなものは田舎者、俗物の世界だ。
まともな人間はそんな恥ずかしいことはしない。なあ知ってるか、ワタナベ?この寮で少しでもまともなのは俺とお前だけだぞ。あとはみんな紙屑みたいなもんだ」
続いては、村上春樹さんの代表作『ノルウェイの森』からの引用です。
『永沢さん』とは東大に通っている「非凡さと低俗さが同居した」ような人物で、その後主人公の『僕』は、彼と決別することを選択します。
引用では、永沢さんは文学作品への批評を通じて「自分は俗物とは違う」「自分だけが特別」という意識を強調しています。
こうした自分を高く持ち上げ、周囲を見下すことで承認欲求を満たすマウンティングは、「セルフブーストマウンティング」といえます。
このタイプのマウンティングは、「自分はまわりの人と違う」「自分にはこんな強みがある」といった発言がよく見られます。学歴・趣味・嗜好などを盾にして“俺様”“私様”状態に浸ることが多く、聞き手からは「自慢ばかりで鼻につく」とストレスを感じることがあるでしょう。
なぜ、人はセルフブーストマウンティングに走るのか?
セルフブーストマウンティングをする人は、しばしば何らかの劣等感を抱えていると言われます。
周囲と比較した際に「落ち込みたくない」という心理が強く働き、時には自分自身や周囲に対して「自分は優れている」と無理にアピールしてしまうのです。
アドラー心理学では、人が劣等感を克服する過程で「優越性の追求」を行うと指摘しています。
セルフブーストマウンティングをする人も、内面にある自信のなさを隠すために「自分は特別だ」「凡人とは違う」という言動に走っている可能性があります。周囲に対して優位性を誇示することで、一時的に劣等感を和らげているのです。
しかし、アドラーの理論によれば、他者との比較や見下しによる優越感は長続きしません。
真の自信は、他人より上か下かではなく、自分の成長や目的意識によって生まれるからです。
参考文献:岸見一郎・古賀史健 (2013)『嫌われる勇気』ダイヤモンド社
マインド破壊マウンティング

「第一の問題はこうだ。」と、灰色の紳士はまた話し出しました。
「きみがいることで、きみの友だちはそもそもどういう利益をえているかだ。なにかの役に立つか? いや、立っていない。」
「成功に近づき、金を設けて、えらくなることを助けているか? そんなことはない。」
「時間を節約しようという努力をはげましているか? まさに反対だ。きみはそういうことをぜんぶじゃまだてしている!」
「いずれにせよ、きみがいるってことだけで、きみは友だちに害悪を流しているんだよ。そうだ、そのつもりはなくとも、きみはほんとうはみんなの敵なんだ!」
不朽の名作『モモ』からの引用です。
灰色の紳士が主人公モモの存在価値そのものを否定することで、彼女の心を揺さぶり、支配しようとしています。
これは「マインド破壊マウンティング」と呼べる行為です。
「お前なんて役に立たない」「むしろ害悪だ」と人格否定することで、被害者の自尊心や自信を奪い、言うことを聞かせる狙いがあります。
このタイプは相手の人格を否定するような極端な言葉を用いるため、攻撃された側は自分の価値を疑ってしまいがち。深刻な心理的ダメージにつながる危険なマウントの形です。
なぜ、人はマインド破壊マウンティングで攻撃するのか?
マインド破壊マウンティングでは、「相手を完全に追い詰めれば、自分に従うしかなくなる」という発想が根底にあります。相手の心を折ることでコントロールしやすくし、自分が圧倒的優位に立ちたいわけです。
また、こうした極端な方法を選ぶ人は、内面的な恐怖や孤独感を抱えていることも珍しくありません。自分の弱さを直視できず、他者を踏み台にすることでしか精神の安定を得られない可能性があります。
社会心理学者フェスティンガーの「社会的比較理論」によれば、人は自分の意見や能力を、他者との比較を通じて評価しがちです。
マインド破壊マウンティングをする人は、相手の存在価値を徹底的に否定することで、自分が絶対的に優位であると感じ、自己評価を高めようとします。
相手を「役に立たない」「害悪だ」と攻撃するほど、比較対象が低い位置に押し込まれ、自分が上にいる錯覚を得られるということです。
しかし、その手段は周囲との信頼関係を損ね、いざ比較対象がいなくなったとき、自らの自尊心が崩れやすいというリスクもはらんでいます。
参考文献:Festinger, L. (1954). “A Theory of Social Comparison Processes.” Human Relations
3)イライラしない!マウンティング女子・男子への華麗なる対処法
ここからは、他人からのマウンティングに対して「もうムダにイラつきたくない!」「どうにかうまく対応できないか?」という方へ向けた具体的な方法をご紹介します。
対処法①「内心スルー」で相手を満足させる

マウントを取る人は、「自分を認めてほしい」「優位であると証明したい」という欲求が強いです。
そこで、内心ではスルーしつつ、表面的には相槌を打ったり軽くほめたりして、相手を満足させてしまう方法があります。
マウンティングのタイプごとの攻略法
タイプ | 説明 |
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権威マウンティング |
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セルフブーストマウンティング |
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マインド破壊マウンティング |
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対処法②「うわべだけ承認」で相手を泳がせる

「自分はこんなに偉い」「私はこんなにすごい」と言いたい人には、“うわべだけ承認”という手段が有効です。
例えば、「へぇ、すごいね」「なるほど~」などと相手の話に一応同調します。そして、それ以上の質問や深堀りはしません。あくまで淡々とした反応に留めます。
マウンティングのタイプごとの攻略法
タイプ | 説明 |
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権威マウンティング |
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セルフブーストマウンティング |
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マインド破壊マウンティング |
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対処法③ 話題を“自分ペース”で変える転換術

マウント話を延々と聞かされるのに耐えられない場合は、話題を上手に切り替えるテクニックが有効です。
基本のステップは、以下の通りです。
- 1)相手の話をある程度受け止める(「そうなんだ、面白いね」など)
- 2)合図を送るように「ところで~」「そういえば~」と、まったく別の話題へ移行する
マウンティングのタイプごとの攻略法
タイプ | 説明 |
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権威マウンティング |
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セルフブーストマウンティング |
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マインド破壊マウンティング |
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対処法④ “ぎゃふん”と言わせる!一泡吹かせる方法

どうしても相手の自慢や上下アピールがひどく、こちらの我慢が限界を超えそうなときは、“ぎゃふん”と言わせるカウンターを試す手段もあります。
ただし場の空気が悪くなる可能性もあるため、あくまで最終手段として考えましょう。
マウンティングのタイプごとの攻略法
タイプ | 説明 |
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権威マウンティング |
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セルフブーストマウンティング |
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マインド破壊マウンティング |
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そのほかのカウンターフレーズの例
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さすが、なんでもお見通しですね。──ところで、〇〇の件はご存じでしたよね?
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なるほど、〇〇さんはそういう風に思ったんですね。色んな考え方があっていいなと思いました!
まとめ)あなたの心が乱れなければ、マウントはただの独り言

相手を変えようとするより、自分がどう受け止めるかを意識するだけで、マウンティングに振り回されるストレスは大幅に減らせます。あなたの心が乱れなければ、相手の「偉そうな態度」や「自慢話」は、ただの空回りに終わるでしょう。
大切なのは、相手のペースに巻き込まれず、自分らしさをしっかりキープすること。 上手にかわしつつ必要に応じてカウンターも使いこなし、ストレスフリーな毎日を手に入れてください。