介護の仕事で「食事介助」が不安…という方が知っておきたいポイント3点
[最終更新日]2023/10/08

「介護職に就きたいけど、食事介助が不安…」
「失敗しないためにも、正しい食事介助の方法が知りたい…」
本記事ではそんな悩みに応えるべく、『食事介助のポイント3点』を徹底解説していきます。
未経験からスタートし、2年以上介護職員として食事介助を実践してきた筆者による記事ですので、ぜひ参考にしみてください。
読めば食事介助の正しいやり方や、注意すべきポイントを網羅的に理解できます。
この記事を読んでわかること
目次
1)食事介助ってどんなもの?

そもそも食事介助とは、『自分では食事を取れない方が、ストレスなく安全に食事をとって頂くためのサポート』をする仕事です。
食事には栄養摂取という側面もありますが、介護の世界では「日常生活の楽しみ」として非常に大切な行為である…という認識がされています。
そのため認知症を患う高齢者の方や、身体障害(マヒなど)によって思うように体を動かせない方が「食事という楽しみ」を思う存分享受するために、介護職員は正しい食事介助を行う必要があるのです。
また、もし食事介助が上手くいかず、「味わって食べられない」「喉を詰まらす」などの失敗を繰り返すと、それが利用者様の食事嫌いに繋がってしまいます。
すると介護職員としての仕事が滞ることはもちろん、利用者様が十分な栄養を摂ることができず、認知症の悪化や、最悪の場合寿命を縮めてしまう可能性もあるのです。
そんなリスクもある食事介助ですが、逆に正しい知識があれば利用者様の笑顔が見られ、本当に楽しい時間を過ごせるのも食事介助の醍醐味です。
本記事を読んで正しい方法をしっかり抑え、いざ介護職員になったとき困らないような予習をしておきましょう。
知っておきたい利用者(高齢者)の食事の特徴

ここからは『利用者(高齢者)の食事の特徴』を説明していきます。
- 噛む力が衰えている
- 飲み込む力が衰えている
- 自分では喉の渇きを感じづらい
- 味覚や嗅覚が若い頃より衰えている
- 胃もたれしやすい
➀噛む力が衰えている
人は年齢を重ねるにしたがって、「噛む力」がドンドン衰えていきます。理由は細胞組織の減少に伴い、筋肉が衰えていくからですね。
そのため、固い煎餅や噛み切りづらい肉など、食材にも考慮する必要があるのです。具体的には豆腐など「柔らかいもの」を積極的に取り入れることで、高齢の方であっても問題なく食事を摂取することが出来ます。
ちなみに私が以前勤めていた老人ホームでは「配食サービス」を利用し、介助のため食べやすい食材のみを使った料理を扱っていました。
現代にはこういった介助用の食事が多いのも、食事介助をする上で抑えておくと良いポイントです。
②飲み込む力が衰えている
筋肉の衰えにより、「食べ物を飲み込む力」が弱くなっていることを考慮しなくてはなりません。
高齢者の方はサイズの大きい食材があると、喉を詰まらせて窒息してしまう可能性があります。そういった最悪のリスクを避けるために、利用者様の飲み込む力に合わせたサイズ感を意識しましょう。
私も以前働いていた老人ホームでは、1人1人に合わせて「細かくカットする」「ミキサーでペースト状にする」などの工夫をしていました。
勿論これらは働き始めてから覚えればいいのですが、介護職員はこうした仕事をリスク回避のために行っている…という事実を抑えておくと良いでしょう。
➂自分では喉の渇きを感じづらい
高齢者の方は、一般的に1,500~2,000mlの水分摂取が必要だとされています。シッカリ水分を取らないと尿が頻繁に出なくなり、その分老廃物が体に貯まってしまうのです。これが血液の巡りを悪くし、脳梗塞や認知症の悪化に繋がってしまうと言われています。
しかしそれだけ大切な水分摂取を、全体的に感覚が弱っていくため高齢者の方はしなくなる…という特徴があります。
ですので、介護職員は積極的に水分補給を促し、食事介助の際は随時飲み物を飲んでいただくことが必要になります。水分摂取量を記録している施設も多いですが、無い場合もあるので自ら水分摂取の大切さを意識しておくようにしましょう。
④味覚や嗅覚が若い頃より衰えている
味覚や嗅覚も、高齢になればなるほど衰えていきます。
そのため、「味付けの濃いものを好むようになる」「匂いがわからず、食事そのものに意欲がわかない」という悪影響が出る可能性が高いのです。
介護職員はその事実を抑え、調味料を足し過ぎていないか、見栄えなどを工夫して美味しそうに見せられているか…などの工夫をすることが求められます。
⑤胃もたれしやすい
高齢になると胃液の分泌量が減り、結果として消化機能が衰えて胃もたれするリスクが高くなります。脂っぽいものばかり食べると、「便秘」に繋がることも多いですね。
これらはそのまま「食欲不振」に繋がってしまう重大な問題なので、栄養バランスを見極めながら、偏った食事をしない工夫を施しましょう。
とはいえ、先ほど話したように濃い味付けが好きになり、食べ物の好き嫌いが明確になるのも高齢者の特徴です。
そのため「副菜を変える、使う食材を低カロリーのものにしていく…」などの微調整を加えながら、何とか食事を楽しんでもらえるよう考え抜くのが、食事介助の難しさ、面白さだと私は感じています。
2)食事介助は、どんな点が大変?注意すべきポイントは?

ここからは、『食事介助で大変なところ&注意すべき点』を解説していきます。
これまでも述べてきた通り、食事介助は利用者様が心地よく健康に過ごすために必須のスキルです。その分、失敗すれば大きなリスクもある…ということを、改めて知って頂けたらと思います。
食事介助において大変な点、注意すべき点は──。
- #1 しっかりと覚醒した状態で行う
- #2 1人1人に合わせたペースで行う
- #3 実は「介助しない」のがベスト
それぞれの点について、順を追って見ていきましょう。
#1 しっかりと覚醒した状態で行う

食事介助で最も気を付けるべきなのが、「食事を喉に詰まらせる」ということです。窒息という最悪のリスクを回避することは、食事介助において最低条件とも言えます。
そして喉に詰まらせないために大切なのは、「利用者様が食事をとる気持ちになっていること」です!
これは私の実体験からいえるのですが、認知症が進んでいる方は食事を始めると「睡眠」をとってしまうことが多いです。「そんなバカな」と思われるかもしれませんが、消化や食事前までの行動でエネルギーを多く使い、疲れて寝てしまうことは頻繁に起こるのです。
そのため、「〇〇さん、ご飯ですよ!」とシッカリ目を醒ましてもらい、食事を取るんだ!という心持ちにすることが大切なのです。この前提条件を抑えていないと、そもそも食事を開始することすらできないので、積極的に声掛けをしましょう。
#2 1人1人に合わせたペースで行う

これまでの生活習慣・性格などは1人1人異なります。同じ人間は一人としていないからこそ、「お相手のペースに合わせた食事介助をする」というのが非常に大切です。
例えば、「ゆっくり味わって召し上がるAさん」に合わせて、「食事はさっさと済ませたいBさん」にも同じペースでゆっくり介助していては、Bさんが嫌な気持ちになってしまいますよね?食事が嫌いになると、必要な栄養が足りず、認知症の悪化などに繋がってしまいます。
そんなリスクを回避するために個性を把握し、食事を好きになって貰えるようペースを合わせて介助することが、介護職員には求められているのです。
#3 実は「介助しない」のがベスト

実は食事介助は「しない」のが理想です。というのも、やはり人に食べさせてもらうのは気分が良いものではありませんし、自分のペースで食べたいように食べるのが利用者様にとってもベストだからです。
つまり、あくまで食事介助というものは、「どうしても自分1人じゃ食べられない方のサポートとして入る」という意識を常に持っていなくてはなりません。
よく「介護職員が食べさせたほうが早く済むから介助する」という方がいますが、それは非常にナンセンスです。
食事介助に限らず、あくまで介護の目的は「利用者の自立支援」ですから、もし少しでも自分で行える部分があるのならば、積極的に行って頂きましょう。
食事での自立をキッカケに自分一人でできることを増やし、最終的には一人暮らしに戻った…というケースもあります。利用者様の自分らしい幸せな暮らしや、介護職員の仕事量軽減につながるとも考えられるので、食事介助では意識的に「1人で出来そうなところはないか?」と探るのを忘れないよう注意してください。
3)利用者の食事介助を適切に行っていく為のポイント3点

ここからは『食事介助の具体的なやり方・適切に行うべきポイント3選』を解説していきます。
食事介助にはいくつものポイントがあるのですが、今回は中でも「初心者でも直ぐに実践できる」という点に重きをおいて、重要な3つを厳選しました。
- 最初は水分からスタート
- 同じ目線で行う
- 絶対に急かさない
最初は水分からスタート

食事介助を始める際は、必ず「水分=飲み物」からスタートしてください。
理由は、最も喉を通りやすい水分を最初に摂取してもらうことで、喉が開き、今後の食べ物が通りやすくなるからです。
この時、介助者がグッと流し込もうとするとむせたり、吐き出したりする原因になります。そのため、あくまで「すすってもらう」というスタンスを意識して行うと良いでしょう。ストローがあればなお良いですね!
「お茶・水など、飲みやすい水分を用意して最初に喉を開ける」という介助方法は、知ってさえいれば必ず実践できます。ぜひこの機会に覚えてみてください。
同じ目線で行う

利用者様と介助者の目線が、常に同じ高さになることを意識しましょう。
理由は、利用者様の顎が上がり過ぎると、喉に詰まる原因になるからです。また逆に顎が下がり過ぎると飲み込みづらいので、やはり地面と平行の状態を保つことが食事では最適です。
何度も述べていますが、食事介助で最も気を付けるべきことは「窒息」です。そのリスクを回避するために、喉に詰まらないような工夫は徹底して実践してほしいと思います。
また「こちらみて下さい」…などと声をかけながらですと、目線が合いやすいです。ぜひこのテクニックも覚えておきましょう。
絶対に急かさない

少し前に「1人1人のペースに合わせる」と解説しましたが、食事介助では「急かさない」ということが非常に大切です。
介護の仕事は流動的に行われるからこそ、1つの仕事が遅れると、他の仕事もズルズルと遅れてしまいます。そのため食事介助でペースを上げたい…と考えてしまうのはよくあるのです。
しかし、食事を急かせば利用者様もその時間が楽しいものではなくなってしまいますし、喉に詰まらせるリスクも増してしまいます。
だからこそ、「食事介助は落ち着いておこなう」という教訓を常に意識し、少し遅すぎるかな…くらいのペースで行うのが良いでしょう。
もし仕事が遅れたとしても、それを取り返すのは食事介助以外の部分だということを覚えておいてください。
まとめ)食事介助のポイント3選
食事介助のポイントをおさらいします。
- 最初は水分からスタートする
- 同じ目線で行い、詰まらないよう注意!
- 絶対に急かさない
この3点を抑えるだけで、介護職に就職した際、食事介助で注意されることは劇的に減ります。
とはいえ、いきなり完璧に食事介助を行うことは難しいです。実際、私も以前働いていた老人ホームで食事を急かしてしまい、食事介助の担当を外されたこともありました。
そこから1年以上の勉強を経て、ようやく食事介助のコツをつかみ始め、今では「楽しいねえ」と利用者様に言われながら、自分も楽しんで介助できるレベルに到達できています。
ぜひあなたも今回の内容を踏まえ、食事介助のやり方について勉強を続けてみてください。