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「AIコピペ部下」に振り回される上司たちへ:生成AI時代のマネジメント改革術

[最終更新日]2025/09/17

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「AIコピペ部下」に振り回される上司たちへ|生成AI時代のマネジメント改革術

生成AIツールは、今や職場にすっかり浸透し、私たちは日々それを使ってアイデアを形にし、資料を作成するようになりました。

一方で、心のどこかに「小さな不安」を抱くことはないでしょうか。
仕事のスピードは上がったけれど、この内容で本当に大丈夫なのだろうか」と立ち止まってしまう瞬間もあるかもしれません。

特に部下を持つ立場の方にとっては、若手社員のアウトプットが一見きれいに整っていても、実際には内容が浅かったり誤った情報が含まれていたりして、結局修正に追われる…そんな経験も少なくないはずです。

目次

本章では、「部下はきちんと成長しているだろうか?」といった、モヤモヤとした不安を抱いたことのある方々のエピソードを3つご紹介します。
いずれも、AIを活用する若手社員と、それを見守る上司との間に生まれるギャップが浮き彫りになる事例です。

それぞれのエピソードには、AIのアウトプットがもたらした驚きや戸惑い、時には失望の感情が含まれています。
読み進める中で、「うちの職場にも似たようなことがある」と感じる場面があったら、そこから課題のヒントを見つけ、一緒に解決策を考えていきましょう。

エピソード1:クライアント提出書類にちりばめられた「嘘」

FAKEと書かれた資料に驚く人|怒る上司

Web制作会社の営業課長・Tさんは、期待の若手社員であるSさんに新規クライアントの大型案件の提案書作成を任せることにしました。
SさんはAIツールを巧みに使いこなし、これまでも短時間で質の高い資料を作成してきた実績がありました。

「今度の案件もSくんなら大丈夫だろう。AIも使えるし、きっと素晴らしい資料を作ってくれるはず」
Tさんはそう確信して、安心して任せました。

ところが3日後、クライアントから電話がかかってきました。「申し訳ございませんが、今回はお見送りとさせていただきます」という、まさかの失注の知らせでした。
動揺したTさんが理由を尋ねると、「提案書に記載されている実績やスケジュールに違和感があり、確認を取らせていただいたところ、不自然な点がいくつか見つかったものですから」と説明されました。

慌ててSさんが作成した提案書を見直してみると、Tさんは愕然としました。
競合他社の有名な制作事例が堂々と「弊社実績」として記載され、参照先として記載されたURLは存在しない架空のもの、さらにプロジェクトのマイルストーンも到底実現不可能な非現実的なスケジュールが組まれていました。

解説:部下への期待も、「幻影」だった?

このエピソードが示すのは、AIによる生成コンテンツの「ハルシネーション(事実のように見える誤情報)」の危険性です。

生成AIは、与えられた指示に従って、体裁の整った、もっともらしい文章を高速で出力します。しかし、そこに書かれている情報が実在するかどうか、信頼できるかどうかまでは保証してくれません。
特に、実績・日付・数値・URLなど、事実確認が必要な項目では、「存在しない情報」や「現実離れしたスケジュール」があたかも本当のように登場することがあります。

そしてもう一つ見逃せないのは、部下がAIの出力を「完成品」として受け入れてしまったことです。Sさんは、AIが生成した内容を鵜呑みにし、事実確認や社内情報とのすり合わせを怠ってしまいました。

AIを活用する力と、それを見極める判断力・責任感は別物です。生成されたコンテンツをそのまま提出するのではなく、自らの目でチェックし、自社の文脈と照らし合わせる姿勢が不可欠です。

エピソード2:即レス部下の“丁寧すぎるメール”の正体

落ち込む部下と困惑する上司|AIから届くメール

経理部の課長Oさんは、部下のKさんを高く評価していました。どんな質問を送っても、数分で丁寧で的確な回答が返ってくるからです。

「Kさんは本当に頼りになる。理解力も高いし、文章もしっかりしている」
Oさんはそう感じていました。

ところが、ある日の会議後のことでした。複雑な予算案について話し合った後、OさんがKさんに「今日の結論、どう思った?」と質問したところ、返ってきた回答はどこか曖昧で要領を得ませんでした。

さらに驚いたのは、メールの文末に「ChatGPTに質問する」という文字が紛れ込んでいたことです。
「まさか…」と思ったOさんが確認すると、KさんはAIに質問内容をそのまま入力し、生成された回答をコピー・ペーストして送信していたのです。

「自分の言葉はどこにあるの?」Oさんは思わずそう聞き返してしまいましたが、Kさんはうつむいたまま何も言ってくれませんでした。

解説:AIが奪う「自分の言葉」

このエピソードは、AI依存による「思考の外注化」問題を示しています。
AIは確かに整った文章を素早く生成できますが、そこには個人の経験や感情、文脈の理解が欠けています。

特にビジネスコミュニケーションでは、相手との関係性や場の空気を読んだ微妙なニュアンスが重要です。
AIの回答をそのまま使用する働き方は、ときに「自分で考える機会」を失い、結果として「非人間的な業務」になってしまうことがあるのです。

エピソード3:上司のアドバイスよりAIを信じる部下

AIはOKとNGを出す|上司と部下の対立

研修会社でディレクターを務めるIさんは、マーケティング研修用の教材作成を若手社員のSさんに任せました。AIの活用にも積極的なSさんなら、新しい切り口で魅力的な資料をつくってくれるだろうと期待してのことでした。

数日後、Sさんが仕上げた資料を確認したIさんは、思わず首をかしげました。見慣れないマーケティングフレームワークが、大きく取り上げられていたからです。

「このフレームワーク、どこで知ったの?」

Iさんがそう尋ねると、Sさんは自信ありげに答えました。「生成AIから提案を受けました。とても論理的で、今の時代に合った手法だと思ったんです

Iさんは続けて確認します。「この手法、実際に実務で使われた事例はあるのかな?根拠がないと、現場で使うには少し心配なんだけど」

その言葉に、Sさんは少し傷ついた様子でこう返しました。「では、Iさんはこれより論理的で新しいアプローチをご存知なのですか?」

Iさんは感情的になりそうな気持ちをぐっと抑えながら、冷静に伝えました。「まずは、基本的なフレームワークをしっかり押さえたうえで、新しい手法を紹介したほうが、受講者にも伝わりやすいと思うよ」

ところがSさんは、なおも引き下がりません。「でも、その基本的なフレームワークって、みんな知ってますよね?“持ち帰り感”を大切にしようって、Iさんも前に言ってましたよね?」

Sさんなりの意図があったことは確かでした。しかし、結果としてその教材は使用に適さないと判断され、Iさんが一から作り直すこととなりました。

研修は無事に終わりましたが、この一件をきっかけに、IさんとSさんのあいだには小さくない距離が生まれてしまいました。

解説:「AI信仰」が生む世代間ギャップ

このエピソードは、AIに対する信頼が原因で生まれる、世代間の価値観の違いを象徴しています。

若い世代にとって、AIは常に最新の情報を素早く提供してくれる、信頼できる存在に映ります。しかし、AIが提示する情報の中には、根拠が不明確であったり、実務にそのまま応用するには不適切なものも含まれています。

一方で、上司やベテラン社員は、現場経験に基づく再現性のある知見や、実践に裏打ちされた判断軸を持っています。ただし、そうした経験を重んじるあまり、新しい視点を受け入れにくくなってしまうこともあります。

こうした背景が重なることで、AIが導いたアイデアと、人間の経験から生まれた判断とが衝突する場面が生まれてしまうのです。

これからのマネジメントにおいて重要なのは、AIか人かという二項対立ではなく、どちらの視点も検証し、冷静に評価する姿勢を持つことです。──大切なのは、「AとBのどちらが正しいか」を争うことではなく、「よりよいCをどう生み出すか」を一緒に考えられる環境をつくることでしょう。

先の3つのエピソードはいずれも、AIの出力をそのまま信じてしまうことによる信用リスクや、本人の言葉が薄れてしまう課題、そしてAIを信じる若手と経験を信じる上司との価値観ギャップを示していました。

本章では、AIが生成したアウトプットにどう向き合い、若手の成長を促しつつ、あなた自身の時間や心の余裕も守るための3つのヒントを紹介します。
難しい理論ではなく、明日から実践できる工夫ばかりですので、あなたのチームに合った方法を探してみてください。

対策1. 上司がまずマスターすべき「ファクトチェック・プロンプト」

対策1|ファクトチェックプロンプト

生成AIは、文章の体裁を整えたり、情報を要約したりするのがとても得意です。一見すると、まるで“正解”のようなアウトプットを返してくれるため、ついそのまま使ってしまいたくなることもあるかもしれません。

ですが、見た目が整っていることと、内容が正確であることは別問題です。どれだけそれらしく書かれていても、その情報が本当に正しいのか、私たち自身の目で確かめる必要があるのです。

その第一歩として、ぜひ取り入れてほしいのが「ファクトチェック・プロンプト」です。
これは、AIに出力内容の根拠や別視点を確認するための“問いかけテンプレート”のようなもので、AIをそのまま使うのではなく「問い直す」ことで、より確かなアウトプットへと導くことができます。

実際に使えるファクトチェック・プロンプト例

AIが出した文章の一部をコピーしたり、スクリーンショットを撮って添付した上で、以下のような質問を投げかけてみてください。ChatGPTやGeminiなど、どの生成AIにも応用できます。

  • この情報の一次情報と出典元URLを提示してください。
  • この主張に反対する意見やリスクにはどんなものがありますか?
  • この内容を裏付ける信頼できる第三者機関の情報はありますか?

何よりも、上司であるあなたがこうした姿勢を率先して見せることが、チーム全体に大きな影響を与えます。
「情報は受け取るだけじゃなく、自分の手で確かめるものだ」という文化は、誰かに教え込むよりも、日々の行動で自然に伝わるものです。

「パッと見はしっかりしているけれど、よく見ると中身が薄い」——そんなAIアウトプットをどう育て直すか。そのプロセスこそが、実は部下に“考える力”をつける絶好のチャンスです。

AIを活用すること自体を否定するのではなく、その先でどう磨き直すか。
そうした“姿勢”を伝えることが、これからのマネジメントに必要とされているのではないでしょうか。

参考文献
Qiita記事「生成AIに指示するときは“裏取り”が必須」

対策2. AIを「ドラフト(たたき台)」に、部下を「レビュアー」に

対策2|AIはあくまで“初稿”とする

AIは、構成の整った下書きを一瞬でつくれる、非常に優秀な“たたき台メーカー”です。
とはいえ、そのアウトプットはあくまで「初稿」にすぎません。多くの場合、完成度を高めるには人の手による見直しや修正が必要になります。

そこでおすすめしたいのが、「AIはドラフト担当」「部下はそのレビュー担当」というように、役割を明確に分けて運用する方法です。

よくある場面:たとえば、週次レポートを部下に任せた場合

NG例 改善アプローチ
  • 部下がChatGPTに「〇〇の週次レポートを作って」と打ち込む
  • 生成された文面をそのまま提出
  • 見た目は整っているが、事実と異なる点や現場のニュアンスが欠けている
  • 生成された文面をもとに、部下自身が内容をレビューする
  • 事実確認や現場のニュアンスを加味して修正する
  • 理解力や思考の深度が高まり、業務の質も向上する

部下に伝えたい“レビューのポイント”

文章の意味はきちんと伝わるか?
→ 抽象的な表現は、自分の言葉に置き換える(例:「インパクトが大きい」→「月間売上に15%影響」など)

一次情報・根拠を添えているか?
→ 出典URLや社内のデータを付記(例:「2025年は〇%の上昇が見られました」→「2025年は〇%の上昇が見られました(2025年1月~6月の自社調査データより)」)

この文章は“テーマに沿った文脈”になっているか?
→ 最初に定めたテーマやゴールから文脈がずれていないかチェック(例:「最も大切なことは、〇〇することです」→「この提案書のメインメッセージは〇〇ではなく□□では?」)

「レビュー」をただのチェック作業ではなく、“自分の頭で考え直すプロセス”にすることが大切です。

上司の役割:完成品だけでなく、レビューの「過程」を見る

提出された文書が整っているかどうかだけではなく、「どの点を気にして直したか」「何を根拠に補強したか」など、レビューの着眼点や思考プロセスそのものを評価してあげてください。

いいね、この視点は自分では気づかなかった」「出典をつけたの、すごく良かった」と声をかけるだけで、部下の思考の定着スピードはぐっと上がります。

AI活用が“思考放棄”で終わらないために

このプロセスを通じて、部下は「AIが便利だから使う」ではなく、「AIを使うことで、もっと深く考えられるようになる」という実感を得られるようになります。
上司がそうした姿勢を評価し、育てることができれば、「AIで速くつくる」だけではなく、「AI+人間で意味ある仕事をする」チームへと進化していくはずです。

参考文献
Hammer et al.「Delegating Meaningful Work to AI Assistants Improves Human Task Performance and Satisfaction」

対策3. チームで「AIとの共創文化」を設計する

対策3|AIの使用範囲をチームで共有

ここまでで、AIの出力をそのまま使うことのリスクや、レビューを通じて「自分の言葉で考える力」を育てる重要性について見てきました。

「AIコピペ部下」に向き合うために更に意識したいのは、この姿勢を“個人の努力”で終わらせないために、チーム全体で土台をつくっておくことです。

「使う/使わない」ではなく、「どう使うか」を共通認識に

AIをどう活用するかは、もはや“個人の工夫”の領域ではありません。
「どこまでAIに任せてよいか」「どこから人の判断が必要か」——その境界線をチームで共有しておくことが、共創の第一歩になります。

たとえば、こんな分担がイメージしやすいでしょう。

AIに任せる場面 人が担う場面
  • 事実の整理
  • リサーチ
  • 構成のたたき台づくり
  • 顧客への提案
  • 意思決定
  • 文脈の補完と感情の表現

こうした認識があらかじめすり合わされていれば、「ここまでAIに任せて大丈夫?」「ちょっと手抜きじゃない?」といった不安や誤解も減っていきます。
むしろ、「ここはAIでいこう」「ここは自分が噛んでおいたほうがいいね」と、前向きな判断ができるようになるのです。

成功したプロンプトも、つまずいた経験も、みんなで共有する

もう一つ大事なのが、「チーム内での“知見の共有」です。

「このプロンプトで聞いたら、精度がグッと上がった」
「このタスクは、AIにやらせたら逆に手間が増えた…」
「こう伝えると、AIが行間を読み取ってくれるようになった」
といったちょっとした発見や工夫を、SlackやチームのWikiなどで“見える化”していくと、一人の工夫がチーム全体の底上げにつながっていきます。

AIを「共通言語」にできるチームは、変化に強い

AIとの共創を支えるのは、日々の実践知の蓄積です。そして、AIをうまく使いこなすことそのものが目的ではありません。
AIを通じて、チーム内での「考え方」や「判断基準」がすり合っていくことこそが、共創文化の本質です。

うまくいったことも、うまくいかなかったことも、オープンに持ち寄れる雰囲気こそが、強いチームをつくります。

「この資料、AIでここまで作って、ここからが人の仕事だよね」そんな会話が自然と交わされるようになれば、もう“AIに振り回される職場”からは卒業しているはずです。

参考文献
MIT Sloan「When humans and AI work best together and when each is better alone」
Ricoh「リバースメンタリング 世代間ギャップを乗り越える知恵」

世代間の価値観ギャップを乗り越え、AIネイティブ世代と上司世代がうまくやっていくには、どんな心構えが必要なのでしょうか?

この章では、AIと共に働く時代における「共存」のヒントを3つにまとめてお届けします。
明日から実践できるような小さな工夫ばかりですので、あなたのチームに合ったヒントを、ぜひひとつでも拾ってみてください。

ポイント1. フィルターバブルを壊す:対話で価値観をゆさぶる

AIの中立な見解でフィルターバブルが柔軟に|自分に近い意見|今まで受け付けなかった新しい意見

1章でも触れたように、「AIに慣れた若手」と「経験に基づく判断を重視する上司」という構図は、それぞれの立場や慣れ親しんだ情報の受け取り方の違いからくるものかもしれません。

このような違和感やすれ違いは、いわゆる“フィルターバブル”のような現象としても説明できます。

本来の意味では、フィルターバブルとはSNSや検索エンジン上で自分に都合の良い情報ばかりが表示され、異なる意見や新しい視点に触れにくくなることを指しますが、これはネットの話に限らず、職場の中でも十分に起こり得ることです。

この“バブル”に気づき、相手との距離感を少しずつ縮めていくうえで、実は上司のほうが先に動きやすい立場かもしれません。

その理由のひとつが、AIという第三者の存在です。

AIは感情や利害に左右されることなく、淡々と情報を整理してくれる中立的な存在。上司にとっても、「自分の思い込みに気づかせてくれる」きっかけになり得ます。

加えて、人生経験が長い分、「世の中にはいろんな考え方がある」という前提に慣れているのも、上司側の強みです。
だからこそ、一度AIを“自分のチームの一員”として向き合ってみる。弱点だけでなく、なぜ若手がAIを重宝しているのか、その理由や使いどころにも目を向けてみる。──それが、「AIを巡るギャップ」を埋めていく一歩になります。

たとえば、

  • 若手の提案を聞いて、「それAIからの出力?」と確認しつつ、どこに納得して採用したのか尋ねてみる
  • 自分もAIに同じ問いを投げてみて、若手と答えを比べてみる
  • 「自分ならこう直す」とレビューして、その理由を言語化して伝えてみる

こうしたやり取りを通じて、お互いの前提や判断のクセが見えてくることがあります。そして、自分自身の考え方にも、少しだけ“遊び”が生まれるかもしれません。
それこそが、AI時代の対話に必要な“ゆさぶり”のあり方なのではないでしょうか。

ポイント2. チーム&AIでゴールを明確にする(WHY共有)

ゴールの共有で成果がブレない|GOAL=WHY

生成AIを活用して仕事を進める際、つい「どうやるか(HOW)」ばかりに意識が向いてしまいがちです。
ですが、AIも人も、「なぜそれをやるのか(WHY)」が曖昧なままでは、成果物の方向性がブレやすくなります。

まずは、AIに指示を出すときこそ、“目的”をはっきりさせることが大切です。
たとえばAIを使った資料作成の際は、プロンプトの冒頭にこんな一言を添えるだけで、出力の精度が格段に変わります。

「この資料は営業部長向けに提出するプレゼンです。目的は、新商品Aの導入意義を理解してもらい、会議で承認を得ることです。」

「目的や対象が明確にすること」。──この姿勢は、AIへの指示だけに限らず、チームの中でも同じように重要です。

チームで資料や提案をつくる際も、冒頭でこんな問いかけをしてみておくとよいでしょう。

  • この資料は「誰に」「何のために」届けるものか?
  • それを読んだ人に「どんな行動を起こしてほしい」のか?
  • このタスクの「最終的な目的・ゴール」は何か?

こうした“WHY”をメンバー同士で確認するだけで、作業の精度やスピードが大きく変わります。

AIはスピーディーに下書きをつくるのが得意。
人はそこに、文脈や判断・納得感といった“人間らしい価値”を加えるのが得意。
その役割分担を成立させるには、「そもそも何を目指しているのか?」という共通認識が欠かせません。

同じゴールが見えていれば、やり方が違ってもチームは前に進めます。AIも人も、同じ目的地に向かって進める状態をつくることが、これからのチームワークの土台になっていくはずです。

ポイント3. 即時フィードバックで軌道修正する

即時のフィードバックが部下を育てる

近年、「即時フィードバック(リアルタイム・フィードバック)」の重要性が、組織づくりやマネジメントの分野で改めて注目されています。

即時フィードバック(リアルタイム・フィードバック)とは

相手の行動や成果に対して、その場で素早く反応・コメントを返すコミュニケーション手法のことです。評価や指摘を後回しにせず、気づいた瞬間に伝えることで、本人の理解や改善意欲を高め、学びや行動変容につなげやすくします。

Gallupの調査によると、週に1回以上「意味のあるフィードバック」を受けている社員は、そうでない社員と比べてエンゲージメントが約3倍高いという結果が出ています。

参考文献:
Gallup“State of the Global Workplace”( 2022)

このデータは、フィードバックの「内容」だけでなく、「タイミング」がモチベーションに大きく影響することを示しています。

とくに、人とAIが共にアウトプットを生み出す今の職場環境では、この“即時性”がこれまで以上に欠かせない要素になっています。
たとえ短い一言でも、資料を受け取った直後に「構成がわかりやすいね」「この言い回しは相手に響きそう」といったポジティブな感想を伝える。あるいは、「ここの部分は、もう少し広げてみてもいいかもしれないね」と軽く示唆するだけでも効果があります。

重要なのは、“すぐに反応が返ってくる”という事実です。その一言が、部下にとっては「自分の仕事を見てもらえている」「もっとよくするために考え直そう」という意識につながります。

また、即時フィードバックは、上司にとっても貴重な機会になります。その場で感じたことを言葉にすることで、自身の判断基準や経験知を自然に言語化する訓練にもなるからです。

後になってまとめて伝えようとすると、細かな違和感や背景のニュアンスが薄れてしまいがちです。思ったときに、そのときの温度感で伝える。それが、メンバーにも伝わる「育てる姿勢」になります。

人間らしさ×AIの力|共に進むマネジメント

生成AIの進化によって、私たちの仕事は以前よりもスピードアップし、見た目も整ったアウトプットが簡単に作れるようになりました。
しかしその一方で、「この中身、本当に信頼できるのか?」「人が関わる意味はどこにあるのか?」といった、目に見えない不安を感じる場面も増えています。

これからのマネジメントに求められるのは、AIを「使うか使わないか」といった二者択一ではありません。
たとえば、AIが出力した情報のファクトチェックを行う、自分の言葉で下書きを読み直す、プロンプトや成果物をチームで共有して視点をすり合わせる──。
こうした小さな習慣の積み重ねが、AIと人間が共に働くための「共存マネジメント」の基盤になります。

AIがある時代でも、上司の経験や判断は決して無意味にはなりません。
むしろ、AIを活用する場面だからこそ、上司の言葉の重みや判断の価値が、よりはっきりと伝わる機会が増えていくはずです。

このコラムが、あなた自身のマネジメントを見つめ直すきっかけとなり、
そしてチームが「AIと共に成長していける組織」へと近づく一助になれば幸いです。

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