責任感の今を可視化。「信頼」、それとも「義務」?300人の声で見る現代人の価値観
[最終更新日]2025/09/22

働き方の多様化が進み、リモートワークや副業など、個人の裁量が増す一方で、組織や社会との関係性もより複雑になってきました。こうしたなか、「責任感」は今どのように捉えられているのでしょうか。
アンケート概要
テーマ「責任感についての意識調査アンケート」
集計期間:2025年8月31日~2025年9月10日
回答者:ネット上のアンケート回答者
全300名(20代:31名 30代:118名 40代:92名 50代:49名 60代以上:10名)
回答者の年代・性別、働き方内訳
目次
1)責任感の代名詞は、「約束を守ること」?

「責任感とは何か」に対する認識に9割が「約束を守ること」と回答
「責任感」と聞いて、どのような行動を思い浮かべるでしょうか。
今回の調査では、9割の人が「約束を守り、役割を果たすこと」を責任感の本質と捉えていることが明らかになりました。
Q) あなたにとって「責任感」とは何ですか?「最も当てはまる」と思えるものを【3つまで】選んでください。
「責任感とは何か?」という問いに対し、最多の91%が「役割や約束を守り、きちんと果たすこと」を選択しました。
2位以下には「失敗も含め自分が引き受ける意識」(55%)や「他人に迷惑をかけないように行動する」(51%)などが続いています。
責任感とは、「他者との信頼を維持し、迷惑をかけず、やるべきことをやること」という価値観に集約されている傾向が見られました。
年代・性別の回答割合内訳
全体的に年代・性別による大きな偏りは見られませんでしたが、60代以上では「他人に迷惑をかけないように行動する」(80%)や「他人に与える影響への配慮」(70%)といった“周囲への気遣い”に関する項目の選択率が突出して高く、年齢とともに責任感の視点が「義務」から「配慮・共生」へと変化していく様子がうかがえます。
一方、20代では「果たすべき義務」よりも「自分が引き受ける覚悟」や「信頼関係の維持」に軸足を置いた傾向が見られました。
責任感を持つようになったきっかけ(自由コメント 一部抜粋)
-
上司が理不尽な叱責を受けていましたが、自身の立場から最後まで責任を果たして業務を遂行し、感情的にならずに日々一つ一つに真摯に向き合っていた姿を見て、尊敬する姿でこういう人になりたいと自分の中でロールモデルになった方でした。あの経験があるから今の自分が居ます。
(女性|30代|北海道|フリーランス)
-
同僚が納期を守らず、仕事が自分に集中したことがありました。その結果、残業が増え焦りも強くなり、チーム全体の成果にも影響が出た経験があります。責任感の欠如が周囲にどれほど影響するかを実感しました。
(男性|30代|東京都|正社員・正職員)
-
他の人の責任感ある行動を見て、私が良い影響を受けた経験は、母親の行動が多いと思います。母はパートで仕事をしながらも家事には一切手を抜かず、学校へ通っていたころは、朝も早く起きて弁当を作ってくれるなど、母親としての責任感を見せてくれましたので、今まで、それを手本としてきました。
(女性|60代以上|愛知|専業主婦・主夫)
自由記述の回答からは、特に職場での経験で「他人の責任ある姿勢に感化された経験」が責任感の芽生えに直結しているケースが多く見られました。
また、責任感の欠如によるトラブル体験から学びを得たというコメントもあり、「誰かの行動が他人の意識を変える」という連鎖が責任感を社会に浸透させている様子が見て取れます。
他人と比較した“自己評価”に見える、責任感のセルフイメージ
Q) あなたは、他の人と比べて「責任感があるほう」だと思いますか?もっとも近いものを1つ選んでください。
「他者と比べて自分の責任感はどうか」という問いに対し、「責任感があるほうだと思う」(37%)、「かなり責任感が強いと思う」(10%)と、全体の約半数が“平均以上”と回答しました。
また、「平均的だと思う」は41%を占め、「あまり責任感がない」「やや弱い」と自己評価する人は合計12%と少数にとどまりました。
つまり、9割弱が「自分には一定以上の責任感がある」と捉えていることが明らかになり、責任感は自己認識としても肯定的に捉えられている傾向がうかがえます。
年代・性別の回答割合内訳
年代・性別による大きな傾向差は見られませんでしたが、60代以上では「かなり責任感が強いと思う」が20%と最も高く、年齢とともに自己評価が上昇する傾向も見られました。
一方で20代では「平均的」「責任感が弱い」とする回答がやや多く、経験の浅さや自信の有無が影響している可能性があります。
自身の責任感が「強い」と答えた人のコメント(一部コメント)
-
個人的には責任感のある人がいて助かった経験より、無責任な人のせいで困らされた経験の方が印象に残っている。だからこそ、責任感を持つことが大切だと思う。自分の体験を一つ挙げると、以前、働いていた職場で、同僚が何の断りもなく、本来なら他の人が使うはずだった事務機器を勝手に使用し、作業が混乱したことがあった。しかし本人は迷惑をかけたと思っていないようで、涼しい顔をして作業を続けていたので、呆れてしまった。こういう人がいると困るので、責任感は大切だと思った。
(女性|50代|千葉県|無職)
-
過去にチームでのプロジェクトに参加した際、最初は自分の担当範囲だけに集中していましたが、プロジェクトが進むにつれ、他のメンバーが困っていることに気づきました。その時、自分の責任範囲を超えてサポートをするべきだと感じ、協力した結果、プロジェクトが無事成功しました。この経験から、責任感を持って行動することがチーム全体の成果に繋がると実感することができました。
(男性|20代|長崎県|正社員・正職員)
自身の責任感が「ない」「あまりない」と答えた人のコメント(一部コメント)
-
気疲れしてしまうので責任感は重要視しない。責任がある仕事が来たら出来るだけ断るようにしている。また、責任感がないので家族も持たないでいる。
(男性|50代|大分県|フリーランス)
-
製造工場のアルバイトの研修で一生懸命仕事のやり方を覚えた。速さと正確性を求められるもので自分にはできるという自負があったのだが、いざ実践という段になって、まるで役に立たないことに気づいた。自分でなんとかしようとしたが無理なものは無理なのだと痛感した。人に相談するなりすればよかったのだができないことを他人のせいにしたりと他の仲間や会社に迷惑をかけてしまい、自分の能力を過信しての失敗であったと思う。以来あまり、責任感を重視しようとは思わなくなった。
(男性|60代以上|青森県|無職)
自由記述の回答からは、責任感の「ある・ない」という自己評価が、単なる性格や能力の問題ではなく、過去の経験や職場環境、他人との関係性によって大きく左右されることが分かります。
「周囲の無責任な態度に困らされた経験が自分の責任感を育てた」とする声や、「責任を負ったことでチームに貢献できた」とのポジティブな経験談がある一方で、「責任を重く捉えすぎて気疲れした」「過信して失敗した」といった声も見られました。
これらのコメントは、責任感が“自分一人で抱え込むもの”になったとき、精神的負担として作用する側面もあることを示唆しています。
責任感の形成には、自己効力感だけでなく、適切な支援環境の存在が不可欠であると言えるでしょう。
2)責任感は「人のため」か「義務」か

信頼と義務のあいだに分かれる責任感の“起点”
Q) あなたは、「責任感」とは何のためにあるものだと思いますか?最も当てはまるものを1つだけ選んでください。
「責任感とは何のためにあるのか?」という問いに対し、最も多かったのは「他人や社会との信頼関係を築くため」(32%)、次いで「自身が果たすべき義務を遂行するため」(30%)と、上位2つで全体の約6割を占めました。
この結果から、現代人にとっての責任感とは、「誰かと関わるための信頼の道具」であると同時に、「社会の一員としての自覚」であるという、2つの意識が拮抗していることが読み取れます。その他にも、「秩序維持」や「納得感」などが理由に挙がるなど、多面的な価値観が存在しています。
年代・性別の回答割合内訳
年代・性別による傾向差は大きくは見られないものの、60代以上では「信頼関係の構築」が50%と突出して高く、一方で30代以下では「義務の遂行」が上回る傾向にありました。
「自分の責任」の境界線、どこまで広がる?
Q) あなたは、どこまでを「自分の責任範囲」として考えるべきだと思いますか?【あてはまるものをすべて】選んでください。
責任の範囲に関する質問では、「自分自身」(97%)をはじめ、「家族」(80%)、「所属する組織」(67%)、「顧客・利用者」(60%)と、比較的身近な範囲への責任感が強く意識されていることが分かりました。
一方で、「友人」(37%)や「社会全体」(28%)、「将来の世代」(26%)、「地球環境」(24%)といった“抽象的”または“長期的”な対象についても、一定数が責任の範囲と捉えており、個人を起点としながらも、意識は社会や未来へと拡張していることが読み取れます。
責任とは義務であると同時に、“関係性”や“未来への関心”でもあるということが、こうしたデータから浮かび上がってきます。
年代・性別の回答割合内訳
世代別では、年齢が高まるにつれて責任の範囲が拡がる傾向が見られました。特に60代以上は、「社会全体」「地球環境」「将来の世代」など抽象度の高い対象への責任意識が、他世代より高い数値を示しています。
一方、20〜30代では「家族」「職場」「顧客」など、より“現実的・実務的”な対象に集中しており、これはライフステージや役割の違いを反映した自然な傾向とも言えるでしょう。
責任感は「信頼関係構築のため」と答えた人のコメント(一部抜粋)
-
責任感は、人々の信頼関係を築く上で最も重要な要素だと考えています。個人レベルでは、約束を守り、自分の役割を果たすことで、家族や友人、同僚からの信頼を得ることができます。この信頼の積み重ねが、良好な人間関係を築く基盤となります。
(男性|50代|愛知県|正社員・正職員)
-
一人ひとりが自分の役割や行動に責任を持つことで、トラブルが減り、信頼関係が築かれやすくなると思います。社会全体でも、無責任な言動が減ることで安心して暮らせる環境が整うのではないかと感じています。
(男性|30代|富山県|正社員・正職員)
-
責任感は、人や社会の信頼関係を築く土台だと思うので、誰かが自分の役割を果たすことで、周囲は安心し、協力を得ることができると甘いまふ。一人が責任を持って行動すると、チーム全体の士気が高まり、成果にもつながります。
責任を果たすことが「自分のため」だけでなく「誰かのため」になるとき、社会はより温かいものになると思います。(女性|20代|三重県|正社員・正職員)
責任感は「果たすべき義務」と答えた人のコメント(一部抜粋)
-
国民全員が労働、納税、教育といった基本的な義務を果たすという責任感をもって行動すれば社会は確実に良くなると思います。近年、日本という国の衰退が言われていますが、年齢が上の世代ほど政治に参加する機会が多かったので、現在の社会の状況に責任を持つ必要があると思います。会社などでは従業新全員が責任感を持って働く方がいいと思いますが、正しく評価されるということも併せて必要だと思います。
(男性|50代|愛知県|フリーランス)
-
自分は昔から政治に興味がなく、選挙にも行かないことが多くありました。しかし、最近のニュースを見ていると、私たち国民が政治に興味がないせいで国がおかしくなっているとさえ思う様になってきました。こんなことから、これからは日本国民の責任として積極的に選挙等に参加して、皆の手で国を変えていく義務があるように思います。
(女性|30代|愛知県|正社員・正職員)
自由記述のコメントからは、「信頼」と「義務」、一見対立する2つの起点が、実はどちらも“社会を良くしたい”という想いに根ざしていることが分かります。
「誰かの信頼に応えたい」「社会の一員として義務を果たしたい」——どちらの意識にも共通しているのは、“これからの社会や周囲をより良くしたい”という未来志向でした。
また、「信頼関係が築かれるとチームが活性化する」「義務を果たすことで社会の秩序が保たれる」など、責任感がもたらすポジティブな影響に言及する声も多く、責任は“負担”ではなく“前向きな関与”として認識する見解も多く見られました。
3)私たちは、誰に、そして何に対して責任を感じている?
責任感は「誰に」「何に」対して抱かれているのでしょうか。
ここからは、家族・友人・職場や学校・地域社会・将来の5つの視点から、私たちがどのように責任を意識しているのかを見ていきます。
家族には「健康」と「生活基盤」、実務的な配慮が多い

Q) あなたが「家族に対する責任」として、普段から意識していることは何ですか?【3つまで】選んでください。
最も多かったのは「家族の健康や安全に気を配ること」(64%)、次いで「生活面・経済面を整えること」(58%)という結果に。家族に対しては“感情的な支え”よりも“実務的な配慮”がより強く意識されており、責任感の対象としての「家族」は、暮らしの基盤を支える存在と捉えられている傾向が見られます。
年代・性別の回答割合内訳
男女ともに全体的な傾向に大きな差は見られませんでしたが、「家族の健康への配慮」は女性よりも男性(特に50代~60代)で高く、「生活環境を整えること」や「育児・介護などの担い手意識」は男女で比較的均等でした。
また、「感情的にならず丁寧に接する」「家族の話に耳を傾ける」などコミュニケーションに関する項目は30代女性の選択率がやや高く、家庭内での役割や心理的責任感が世代と性別で微妙に変化している様子がうかがえます。
友人・仲間には「信頼」の維持が最優先

Q) あなたが「友人・仲間に対する責任」として、普段から意識していることは何ですか?【3つまで】選んでください。
圧倒的多数(73%)が選んだのは「約束や時間を守るなど、信頼を大切にすること」。「友人・仲間」との関係が、感情的な結びつきよりも“信頼関係”を軸に成立していることを示しています。
次点には「困っているときに助ける」(39%)や「距離感を大切にする」(34%)が続いており、“ほどよい関係性”を意識した責任感が現代的な特徴として見て取れます。
年代・性別の回答割合内訳
全体を通じて「信頼を重視する」傾向は一貫して高く、特に30代以降の女性や40代以降の男性で選択率が高いことから、社会経験や対人関係の成熟が影響していると考えられます。
一方で、20代では「気遣い」「尊重」「誠実なコミュニケーション」など、対等で丁寧な関係づくりに関する項目の選択が目立ち、フラットな関係性を保とうとする意識が強い傾向が見られました。
性別では、男性よりも女性の方が「話を丁寧に聞く」「感情を傷つけないよう配慮する」などの回答率がやや高く、共感的責任感の高さがうかがえます。友人関係においては、「距離感と信頼感のバランスをどう保つか」が、現代人にとっての責任のかたちとなっているようです。
職場・学校では「役割遂行」が強く意識されている

Q) あなたが「職場・学校における責任」として、普段から意識していることは何ですか?【3つまで】選んでください。
回答の上位には「担当業務や役割を最後までやり遂げること」(75%)、「納期や約束を守ること」(70%)、「失敗があった場合は隠さず誠実に対応する」(52%)が並びました。
全体的に“責任感=自分の仕事や義務を果たすこと”という意識が強く表れており、職場や学校という集団においては、信頼や成果の維持が重要視されていることが読み取れます。
年代・性別の回答割合内訳
「役割をやり遂げること」と「納期を守ること」は、全年代・性別で高い数値を示しており、最も共通意識としての責任感が見られる項目です。
一方で、「失敗時の誠実な対応」や「仕事の成果に対する責任」ではやや男女差が見られ、特に「成果への責任感」は男性(特に40代〜50代)で高い傾向があります。
また、20代では「情報共有」や「言動の影響」など協調性や周囲配慮に関する意識がやや高めに出ており、若年層の責任感は“結果”よりも“周囲との関係性”に重きを置く傾向があるとも言えそうです。
地域や社会には「ルール遵守」と「マナー」が責任の中心

Q) あなたが「地域や社会に対する責任」として、普段から意識していることは何ですか?【3つまで】選んでください。
「ごみの分別など、地域のルールを守ること」(82%)、「公共の場でのマナーを大切にすること」(71%)が突出して高く、地域社会における責任感は“秩序の維持”や“迷惑をかけない行動”に集約されていることが分かりました。
「あいさつや声かけ」(31%)、「社会問題への関心」(20%)など、関係づくりや社会課題への参加は比較的低めで、全体として“最低限のルール遵守”に意識が集まっています。
男女差はそれほど大きくないものの、「マナー」や「挨拶・声かけ」は女性の方がやや高い傾向にありました。また、50代以上では「地域活動」「投票・署名」「情報発信への責任」といった“公共的な行動”の項目選択率が比較的高く、年齢が上がるほど地域や社会への当事者意識が強まる傾向も見られます。
一方、20〜30代では「社会問題への関心」が比較的高く、情報への感度や自分ゴト化の意識が読み取れます。
全体としては、社会的責任=“人に迷惑をかけないこと”という受動的なイメージが強い中、年齢や個人の立場によって積極性の度合いが異なっていると言えるでしょう。
将来や地球への責任は「できる範囲」での行動が主流

Q) あなたが「将来世代や地球環境に対する責任」として、日常の中で意識していることは何ですか?【3つまで】選んでください。
年代・性別の回答割合内訳
このテーマにおいて最も多かったのは、「できる範囲で節電や節水、エコ活動を行うこと」(55%)でした。
続いて「リサイクルやごみ削減への配慮」(49%)、「子どもや次世代へのよい影響を意識する」(39%)などが続きます。
全体として“無理のない範囲での行動”が基本になっており、地球環境や未来への責任も「重荷」ではなく「日常の中でできることから」が主流となっていることが分かります。
4)まとめ)責任感は経験で養われ、未来を見据える

- 91%が「約束を守ること」を責任感と定義
- 9割弱が「自分は責任感がある」と自己評価
- 責任感の“起点”は「信頼」と「義務」に二分
- 責任の対象は「自分自身」「家族」「職場」が中心
- 家族への責任は「健康管理」と「経済面の安定」
- 友人・仲間への責任は「信頼を損なわないこと」
- 職場・学校では「業務の遂行」と「誠実な対応」が責任の柱
- 地域・社会への責任は「ルール遵守」「迷惑をかけないこと」
- 将来や地球への責任は「できる範囲で」が主流
本調査からは、責任感が一人ひとりの経験を通じて育まれ、やがて家族や職場といった身近な相手から、社会や未来といった広い対象へと意識が広がっていく傾向が見えてきました。
一方で、責任感の捉え方や重きを置く対象は、世代や立場によって異なり、そのあり方には多様性があることも明らかになりました。異なる価値観を受け止め、互いの「責任のかたち」を尊重しながら協力していくことが、これからの社会においてより良い関係を築く鍵となると考えられます。
責任感は、誰かに求めるものではなく、共に育てていくものなのかもしれません。
このレポートが、日々の暮らしや人との関わりを見つめ直すきっかけとなれば幸いです。