なぜあの人は何度言っても分からないの?相手の「メンタルブロック」の原因と4つの対処法
[最終更新日]2025/01/12
「こんなに丁寧に説明しているのに、どうしてあの人は分かってくれないんだろう……」と感じたことはありませんか?
話が伝わらない原因には、知識不足や誤解などさまざまな要素が考えられます。
しかし、実は相手に“メンタルブロック”がかかっている可能性もあるのです。メンタルブロックとは、心理的な抵抗感や思い込みによって、新しい情報や考え方を受け入れられない状態を指します。
目次
1)そもそも「メンタルブロック」とは?
メンタルブロックの定義
メンタルブロックとは、主に心理的抵抗感や過去の失敗体験、固定観念などによって、新たな情報を素直に受け取れなくなる状態を指します。
例えば、過去に「同じような提案でひどい目に遭った」という経験があると、似たような話題を拒否しやすくなるのです。
「何度言っても分からない」の真相
あなたが「当然理解できる」「合理的である」と思う内容でも、相手にとっては必ずしもそうではありません。
恐怖心や不安、認知バイアスなどによって、相手の頭の中では「それは危険な考え」「リスクが大きい話」というふうに変換されてしまうことがあるのです。
これが、“何度言っても分からない”という状況を引き起こす大きな要因となります。
メンタルブロックの主な原因① 恐怖心や不安
過去の失敗体験やトラウマ、あるいは「もし失敗したらどうしよう」という未来への不安が、心のブレーキとなります。
ケース | 具体例 |
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組織の変革に対する抵抗 |
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新しいツール・技術への不安 |
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メンタルブロックの主な原因② 認知バイアス
人は自分に都合の良い情報ばかりを集めたり、自分の思い込みに合った解釈をしがちです。これを「認知バイアス」といい、代表的なものに「確証バイアス(confirmation bias)」などがあります。
認知バイアスが強いと、新しい意見や異なる見方が入ってきても「自分の考えと違うから」と排除してしまい、“何度言っても分からない”状態を引き起こします。
ケース | 具体例 |
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「やっぱりそうだよね」と思い込みが強化されるケース |
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データの読み飛ばし・誤解 |
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メンタルブロックの主な原因③ 固定観念・思い込み
「自分はこういう人間だから無理」「このやり方は昔から決まっている」というように、能力ややり方を固定化してしまう考え方が根付いている場合、新たな情報が入ってきてもスルーされる可能性が高いです。
スタンフォード大学のキャロル・ドゥエック教授が提唱する「固定マインドセット」に近い考え方で、「今さら変えようとしなくてもいい」「どうせ変わらないし」という姿勢に陥りがちです。
ケース | 具体例 |
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「この部署はこういうやり方でやってきたから…」 |
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「私は変わるのが苦手だから仕方ない」 |
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なぜメンタルブロックは厄介なのか
恐怖心や不安、認知バイアス、固定観念といった要素は、一度形成されると簡単には解消されないのが特徴です。相手は無意識のうちに自分を守るために、これらの壁を頑なに維持しようとします。
だからこそ、「何度説明しても分かってもらえない」状況になると苛立ちを感じがちですが、それは単に相手が頑固なのではなく、心理的なブレーキが強く働いているためなのです。
2)相手の靴を履く:共感の大切さ
相手のメンタルブロックが認められた際は、何よりもまず「共感」することが大切です。
海外(アメリカなどの英語圏)では、こうした行動を「相手の靴を履く」と表現し、相手の立場に立って気持ちを理解する姿勢がコミュニケーションの基盤になると考えられています。
「相手の靴を履く」とは?
英語の “put oneself in someone else’s shoes” に由来する表現で、相手の立場に立って物事を考えることを意味します。日本語では「相手の身になる」「相手の視点で見る」などが近いイメージです。
共感がカギになる理由
メンタルブロックがかかっている相手に対し、いくら論理的に正しい説明を重ねても、まずは相手が感じている不安や懸念を理解しようとしなければ、心を開いてもらうのは難しくなります。
「自分の考えを否定するわけではない」と相手が感じたときに初めて、拒否感が薄れていくのです。
「相手の靴を履く」やり方(共感のコツ)
- 相手が抱えている背景や置かれている状況をまずヒアリングする
- 話を途中でさえぎらず、最後まで聞く(アクティブリスニング)
- 「分かります」「そう感じていたんですね」と、相手の気持ちを繰り返し確認する
3)メンタルブロックを外す4つのステップ
ステップ1|相手の状況・背景を理解する(共感的コミュニケーション)
目的 | 相手がなぜその意見を受け入れにくいのか、心理的バリアの正体を探る |
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具体例 |
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いきなり結論を押し付けるのではなく、相手の話をまずしっかりと聞いてみましょう。相手の背景を知るほど、「あぁ、だから抵抗を感じているんだ」と納得できるようになります。
ステップ2|共通の目的やメリットを探る
目的 | 組織やチーム内での議論であれば、最終的なゴールや相手にとってのメリットを洗い出す |
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具体例 |
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相手がメンタルブロックを外すには、「自分にもメリットがある」と理解してもらうことが大切です。
どんなに優れたアイデアでも、相手にとって意味がなければ抵抗だけが残ってしまいます。
ステップ3|リフレーミングで新しい視点を示す
リフレーミングとは、物事の捉え方や前提を意識的に変えて、新しい意味づけを行う手法です。
たとえば「失敗」を「成長のきっかけ」と再定義するだけで、ネガティブな感情が和らぎ、前向きに問題解決へ取り組みやすくなります。
目的 | 相手の固定観念をゆるやかに揺さぶり、考え方を柔軟にする |
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具体例 |
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一方的に「あなたの考え方は間違いだ」と言うのは逆効果です。あくまで「こう見るとこういうメリットもあるかもしれない」と、別のフレーム(見方)を提案するイメージで行うとよいでしょう。
ステップ4|一緒に考える・共創する
目的 | 「押し付けられた」と感じさせず、相手自身を協力者として巻き込む |
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具体例 |
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人は自分の意見や経験が必要とされると、主体性が高まります。
主体的に関わるほど“自分ごと”になるので、メンタルブロックが次第に外れていくのです。
4)ケーススタディ:部署間の意見の対立
ここでは、新規システム導入をめぐる具体例を見ていきましょう。 A部署とB部署の考え方が噛み合わず、なかなか合意に至らない――。実は、部署間の対立には互いのメンタルブロックが影響していることも少なくありません。
状況と問題
状況 |
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問題 |
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メンタルブロックを外すアプローチ
ステップ | 具体的なアプローチ | 内容 |
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1. 相手の状況・背景を理解 |
| Bさんの部署は、以前のシステム導入でトラブルが続き、部署内の人手不足も影響していた。 |
2. 共通の目的やメリットを探る |
| 「このシステムでミスが減れば、そちらの部署の負担が実は軽減されるかも」と具体例を示した。 |
3. リフレーミング |
| 「今はコストがかかるけれど、将来的には作業時間を大幅に減らせる」と説明。過去の失敗を「同じ過ちを繰り返さないデータ蓄積」として活用。 |
4. 一緒に考える・共創 |
| Bさんの意見を反映させ、トライアル期間中に成功事例を共有。段階的に導入を進めた。 |
このアプローチの核心は、まず相手が抱える背景と不安をしっかりと理解し、そのうえで双方のメリットを見いだす点にあります。 固定観念や恐怖心にアプローチするリフレーミングを取り入れ、相手が「一緒にやっていこう」と思える環境を作ることが重要です。
Bさんの意見をあえて組み込むことで、押し付けではなく「共創」へと導くことができ、結果として抵抗感が緩和され、スムーズな導入や合意形成が期待できるのです。
6)相手にメンタルブロックが見られたときのよくある質問(Q&A)
Q1:対策を講じても相手がまったく意見を聞き入れてくれない場合は?
無理に説得し続けると、相手のブロックは強化されるばかりです。必要ならば上司や第三者を交えて議論の場を設定し、客観的なデータや事例を検証してみるのも手でしょう。
Q2:共感ばかりしていると、こちらが疲れてしまうのでは?
共感とは「相手の感情に巻き込まれる」ことではなく、「相手の気持ちを尊重して受け止める」こと。境界線を保ちながらアクティブリスニングを実践し、自分を必要以上に追い込まない工夫も大切です。
Q3:上司(またはリーダー)からの指示でもメンタルブロックを外せない場合は?
立場の違いがメンタルブロックを深めるケースは多いです。指示だけを押し付けるのではなく、その背景や目的を丁寧に説明し、相手にも判断材料を共有しましょう。
自分ごととして捉えられるような対話を重ねることが、ブロックの緩和につながります。
Q4:メンタルブロックはどれくらいの期間で解消されるもの?
根深いブロックは一朝一夕には解消されません。相手の思考や感情に配慮しつつ、段階的なコミュニケーションを続けることが大切です。
一度や二度の対話で結論を急ぐよりも、少しずつ理解を深め、信頼関係を築き上げるプロセスを意識しましょう。
まとめ)まずは相手の靴を履き、そして双方にメリットのあるゴール設定を
「言っても分からない」と感じる背景には、相手の中にあるメンタルブロックが大きく影響している可能性があります。
ブロックを外すには、まずは「相手の靴を履く(共感)」姿勢で状況を理解し、双方にメリットがあるゴール設定やリフレーミングを行いながら、一緒に解決策を考えるプロセスを重視しましょう。
「相手の分からなさ」に苛立つのではなく、「何が原因でブロックが生じているのか」を探ることで、意外にもスムーズな合意形成が期待できるはずです。