『仕事のワクワクを探す旅』#003

KEITOさん|AIが浸透して、僕たちの社会はどう変わっていくのか?

KEITOさん インタビュー
 

AIによって、『数字を持つ人が優位に立つ時代』は終わりを迎えるかもしれない。

2022年11月30日にリリースされたChatGPTに触れて、早くからその可能性を確信したというKEITOさん。

元々は美容師で、その後はアパレル販売員、そして「何かパソコンを学べる仕事に就こう」とまったくの未経験から印刷会社のDTPオペレーターに就職。
数年でIT・Webの最先端の技術をキャッチアップし、現在では9万人以上の登録者を持つYouTubeチャンネルを運営。さらに、AIコンサルタントとしても活躍の場を広げています。

時代の変化を常に見据え、新たな挑戦を続けるKEITOさんが、AI技術が普及しつつある現代社会とその先の未来をどのように捉えているのか、その視点に迫ります。

目次

Profile

KEITO(三浦 圭人)

職業:AI × WEB YouTuber 兼 ディレクター
住所:東京都
Web/SNS:AIディレクター|KEITOのポートフォリオサイト  

1)「ITに強くなる」ために。

美容師、アパレル、DTPオペレーター。そしてWebディレクターを経験して

美容師

──はじめに、KEITOさんのこれまでの経歴を教えていただけますか?

はい。東京の美容専門学校に2年間通って、その後は吉祥寺の美容院に就職しました。業界ではそれなりに名の通ったところで、そこで僕もちょっとカッコつけた感じで笑、美容師をしていました。

給料は、手取りで15万円ほどでした。業務は結構ハードで、夜の10時以降も「アフターレッスン」といって、技術を磨くための練習があるんですね。0時くらいになってようやく終電で帰るような毎日で。
体力的にもきつかったですし、なにより理想の働き方とは全然違うと感じて、美容師は辞めることにして、次に代官山のアパレルショップで販売員として働きました。

──なぜ、アパレル販売員を選んだんですか?

「やっぱり、もっと給料が高くないとダメだな」とは思っていたのですが、当時は美容師以外のスキルがありませんでしたから、「とりあえずオシャレなことを仕事にしよう」という理由でした笑。

勤務先の店舗はセレクトショップで、海外のハイブランドを多く扱っているお店でした。ダウンやジャケットなどのアウターですと、20万円とか30万円とか。一つひとつの商品が高額なので、お客様も「パッと決めて買う」という感じではなく、店員と色々話しながら購入を決める流れが多かったです。いわゆる富裕層の方々とたくさんお話しする機会があって、そこで彼らに共通している特徴や傾向が色々見えてきたんですね。

たとえば、「(お金を多く稼ぐためには、)どうやらITに強くないといけないらしい」ということ。

当時の僕はWordやExcelもよく分からないくらいでしたので、とにかくパソコンを覚える職に就いたほうがいいだろうと、タウンワークで「PC初心者OK」と書かれている求人を探して。そこで見つけたのが、印刷会社のDTPオペレーターの仕事で、早速応募しました。

──すごい思い切りのよさと、行動力ですね笑。その印刷会社に転職して、パソコンを学んだんですか?

はい。タイピングから勉強させてもらいました笑。業務ではAdobeの「イラストレーター」も使いましたので、デザイン系のソフトも学びました。そして、お小遣いを貯めて、自分でもパソコンを買って。

ですが、その印刷会社の給料も手取り20万円弱とあまり高くありませんでした。そこで今度は、「副業を始めてみよう」と、アフィリエイトブログを始めました。

仕事をしながら、プライベートの時間を使ってブログの運営を3年間続けたんですね。最終的には、月間PV数100万PVまで行きました。

Webディレクター

──100万PV!すごいですね。

ゲーム攻略系のトレンドブログでしたので、比較的ユーザーの集まりやすいジャンルだったというのもあります。また、すでに多くのユーザーを獲得している同ジャンルのサイトがいくつかありましたので、それらを参考にしつつ作成していったら、わりとうまく行った感じですね。

そして、この実績を武器にWebディレクターの求人に応募したら、一発で内定をいただけて。
そこでまた転職をして、埼玉のWeb制作も行うイベント会社で、イベントやパンフレットのデザインやWebシステム開発などの、諸々のディレクション業務を3年ほど経験しました。

──アパレル販売のときに意識した「ITに強くなる」が、ここで実現できたんですね。

はい、たしかにそこまではたどり着いたんですけど、「ここがゴールではないよな」という感覚は常にあって。
アパレルショップで出会った多くのお客様のように、「もっと稼ぎたい」というのもありましたし笑、そのためには「どこかのタイミングで独立した方がよい」とも考えていました。ただ、なかなかその一歩を踏み出す勇気が持てずにいたんです。

そんなときに2022年11月にChatGPTがリリースされて、初めて触ってみたときに「これはやばい」と笑。その瞬間に、「独立しよう」と決断できました。

ChatGPTに触れて、「独立しよう」と決断できた

Tips1 ChatGPT

ChatGPT

ChatGPTは、OpenAI社が開発した、AIを使って多様なタスクを支援できる対話型ツール(生成AI)です。質問を投げかけることで、文章作成、情報検索、プログラミングのサポート、アイデア出しなど幅広い対応が可能です。

プログラムコードの生成やデバッグ、ビジネスの課題解決にも役立ち、AIへの専門的な知識がなくとも直感的に使えるのが特徴です。

参考サイト: ChatGPT

──「ChatGPTがあれば、独立の助けになる」と感じられたのですか?

はい。当時のChatGPTは現在のものほど高性能ではなく、「たくさんのことを知ってるけど、どれも中途半端」な感じだったのですが、これが、僕が当時キャリアを積んでいた「ディレクター」と似ていると思ったんですね。

ディレクターは、プログラムを作れるわけでもなく、デザインもできません。ただ、幅広くかじっているからこそ全体像は見えているところはあって、ChatGPTがまさにそうだなと。
完全ではないにしろ、「世界中のほぼすべての領域を知っている」──という感じでしょうか。そこに可能性を強く感じました。

2)「今日やったことが、明日に成果が出る」ことは殆どない。

YouTubeチャンネルの大ヒット

KEITOさんの仕事シーン

──独立後はどのような状況だったか、教えていただけますか。

はい。以前勤めていたWeb制作会社が繋がりを大切にしてくれる会社だったので、退職後もいくつか仕事を紹介してもらえました。そのおかげで、独立後もある程度は生計の目途が立っていました。

ただ、それだけを頼りにしていたら1~2年後は不安だなと思い、「これからは自分で仕事を取れるように、道筋を作っていこう」と。そのためには「発信力」を高めていく必要があると考えて、YouTubeを始めてみたんですね。

そこで「ChatGPTはじめ生成AI関連の情報を発信する」という位置づけでYouTubeチャンネルを始めてみたのですが、これが一気にバズったんです。
当時はまだChatGPTや生成AIに関する情報を発信している人が少なくて、一方で情報を欲している人がたくさんいたわけです。

チャンネル登録数はどんどん増えていきました。その勢いのまま続けていたら、いつの間にかディレクターの仕事よりも、AIに関するセミナーやコンサルタントの仕事がメインになっていきました笑。

Tips2 YouTubeチャンネル「KEITO【AI&WEB ch】」

YouTubeチャンネル「KEITO【AI&WEB ch】」

KEITOさんが運営する、ChatGPTやクリエイティブ系生成AIなどの活用方法、新しいツールやサービスを紹介しているYouTubeチャンネルです。

現在300本以上の動画を掲載しており、業務効率化はじめ仕事や日常のちょっとしたPC作業に活かせる役立ち情報から、AIの最新動向まで、初心者の人にもわかりやすく解説しています。

参考サイト: YouTubeチャンネル「KEITO【AI&WEB ch】」

毎日継続することで「1年後に全然違った世界にする」こと

──新しく事業を始める際は、目標設定などもされているのですか?

分かりやすい目標みたいなものは、ちゃんと立てていないかもしれないですね笑。それよりも、「継続すること」を大切にしています。

僕は、「今日やった成果がすぐに出る」ことは、滅多にないと思っているんですね。一方で、「毎日継続することで、1年後に全然違った世界になる」ことは、これまで何度も経験しました。

ChatGPT×生成AIのYouTubeチャンネルも、2022年12月頃から立ち上げて、それから1年間は必ず毎日投稿していました。

補足しておくと、「毎日投稿する」ことが必ずしもいいこととは言えませんし、実際にYouTubeの運用をしている人たちの間でも、「毎日投稿がいいのか、本気のものを1本出すのがいいのか」といった議論がよくされています。ですが、大して経験のない人が本気の1本を出したところで、完成度はたかが知れていますよね。まさに当時の僕がそれだったんで、「それだったら、毎日投稿しよう」と笑。

──「毎日の投稿」は結構大変だったと思うのですが、どのように進められたのですか?

以前にゲーム攻略系のブログを運用していた時も同じようにやっていたのですが、毎朝6時に起きて、──朝の時間は頭が回るので、アイデアとか企画とかを考えるためにひたすらメモをする時間にしていました。

それで、日中の仕事を終えて帰りの電車の中で、スマホでそのメモを見直して企画を固めていって、家に着いたらパソコンでまとめて投稿する──といった流れです。

YouTubeの投稿もだいたい同じような感じでしたね。とにかく、「決めたことは必ずやる」という風にやっていました。

3)AIが浸透して、僕たちの社会はどう変わっていくか?

AIの浸透イメージ

多くの反響があった「#SOZO美術館」プロジェクト

──これまで手掛けたお仕事で、特に楽しかったことやワクワクしたことはありましたか?

なにか新しいことを始めるときは、いつもワクワクしています笑。どれか一つを挙げるのは難しいですが、最近の活動でいうと、多くの人たちを巻き込んで進めた「#SOZO美術館」のプロジェクトは楽しかったですね。

「画像生成AIで何か新しいことをやりたい」という会社さんがいて、そこに僕がアドバイザーとして入らせていただいて、「画像生成でこんなこと、あんなことができるよ」って話していくなかで、「なんかもっと大衆を巻き込んだ何かを作り出したいね」みたいな話になって、形になっていったプロジェクトです。

Tips4「#SOZO美術館」

「#SOZO美術館」

画像引用元:株式会社海馬「#SOZO美術館

全国各地の自治体や映画製作委員会と提携して、テーマに沿ったAIアート(画像生成AI)をSNS上で一般公募し、入賞作品が美術館内などで展示販売されるイベントです。

KEITOさんはプロデューサー兼アドバイザーとしてプロジェクトに参加し、これまで東京都港区(六本木)、福井県坂井市、大阪府大阪市、山口県美祢市などで開催。いずれも多くのクリエイターと観客が参加しました。

Instagram「#SOZO美術館」

参考サイト: #sozo美術館(Instagram)

AIを使った新しいサービスは、これからも考えていきたいですね。

「#SOZO美術館」のようなクリエイティブなコンテンツも面白いですが、僕はどちらかというと、皆が便利と思ってもらえるようなものを作りたいです。

たとえば翻訳ツールとか、機能は優れていても使いづらい・分かりづらいサービスがまだ多いですよね。それらをもっと使いやすく、馴染みやすくすることは、きっとできると思います。──やるためには、お金と人手を用意しないといけないですけど笑。

世の中が、「AIで生成された情報」で溢れかえる

AI検索の風景

──AIにより仕事や生活が便利になる一方で、人々の行動様式も否応なく変容していくと思うのですが、その点についてはどうお考えですか?

そうですね。自動運転や自律型ロボットなど、AI化のスピードは今後更に進むでしょう。

分かりやすいところで言うと、人が何か調べものをする際は、今後「Google検索」から「AI検索」に推移していくでしょうね。
Googleの検索エンジンを使って調べものをするよりも、AI検索で調べものをした方が、より的確な情報を得られるケースがどんどん増えてきています。

また、僕たちが接するネット上の情報の多くが、今も非常に速い速度で、人の手で作られたものからAIで生成されたものに置き換わりつつあることも、大きな変化ですよね。X(旧Twitter)の投稿でも、「実はAIで生成された文章だった」というケースがよく見られます。

これらは、良い点と悪い点の両面があると思っています。すなわち、AIによって誰しもが平等に情報を得られるようになる。その一方で、世の中がAIで生成された情報ばかりになってしまう、ということです。

──世の中の情報がAIばかりになってしまうと、それはそれで味気なくなってしまいそうですね。

そうですね。いずれ、多くの人が「より人間らしい」情報や、それこそ生の体験に基づいた話を欲するようになると思います。
最近若い人たちの間で流行っている「BeReal」も、その一環といえそうですよね。誇張された情報ではなく、自分自身のありのままを伝えたい欲求というか。

Tips5「BeReal(ビーリアル)」

「BeReal(ビーリアル)」

画像引用元:BeReal公式サイト

2020年にフランスで開発された、リアルな日常を投稿するSNSアプリ。
1日1回、ランダムな時間にアプリから通知が届き、通知から2分以内に写真を撮影して投稿する必要があります。

アプリにはフィルターや加工機能がなく、「盛らない」「映えない」SNSとして、等身大の自然な日常を共有することに、Z世代の若者を中心に人気を集めています。

AI社会を、「ポジティブ」に生きるために

──「AIによって仕事が奪われる」という懸念があるように、AIに対して不安や否定的な見方を持つ人も少なくありません。これからのAI時代を前向きに受け入れ、共存していくためには、どのようにAIと向き合っていくのが良いのでしょうか?

ポジティブな側面を見ていくとしたら、AIが当たり前になるほど、普遍的な知識よりも一人ひとりの行動が重視されるようになると思うんですよね。

誰もが知ることができる情報ではなく、その人自身が生み出す行動によって得られた感情や、経験。──多くの人が、それらを今以上に求めるようになるのではないでしょうか。

そして、同じような想いや価値観を持った人たちで集まったコミュニティが、存在感を増していくと思います。これは、ネット上のコミュニティもそうですし、リアルなコミュニティも同様です。

現代社会では、「多数派が主導する構造」がありますよね。たとえば、SNSではフォロワー数の多い人や、Google検索で上位に表示される記事に注目が集まりやすいなど。

しかし、これら注目されている情報と、他の場所で得られる情報との違いがなくなれば、その注目は次第に薄れていくでしょう。「数字を持つ人が優位に立つ時代」は、終わりを迎えるかもしれません。

逆説的ではありますが、AIによる情報化によって、これまでのやや閉鎖的ともいえる情報社会から解放されて、人との繋がりを重視したコミュニティ社会へと移行する可能性もあると思うんです。

──面白いですね。これまで大企業やインフルエンサーなど、情報をたくさん持っているところに集中していた世の中の関心が、個人の経験や思想に分散していくというか、一人ひとりの価値が見直されるというか。

そうですね。今ある情報に追随するのではなく、その人ならではの行動やアウトプット自体が、より大きな価値を持つようになると思います。たとえば、自分自身の体験談をどこかで話すとか、そういうことですね。そして、それらが届きやすいのが、コミュニティなんですよね。

同じ目的や価値観を持った人たちで集まったコミュニティで、体験を共有し合うことによって、AIでは再現できない情報や新しいものの考え方を学べる。それを繰り返すことによって成長していけるような環境に、これからの人たちは価値を感じるようになると思います。

もちろん、ビジネスを中心に「こうすればうまく行く」「売上を上げていくためにはこの法則が大事」といった考え方も重要ではあるのですが、そうした仕組みやロジックを追い続けるのはそれこそAIに任せておいて笑。

そして僕たちは、自分自身がいいと思えるもの、価値を感じられるものにもっと意識を向けていく──。そう捉えることで、これからの社会をよりポジティブに、受け入れやすくなるのではないでしょうか。

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